11秒でオニウケる天才メスガキサンゴちゃん   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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総登場時間11秒で小説を書かれる女


11秒でオニウケる天才メスガキサンゴちゃん

 ――俺には何も才能が無い。

 

 園児だった頃から常にそうだった。

 何をするにも一番になれた試しどころか、上位に入れた事すら無かった、そう何一つだ。

 かけっこも縄跳びも……小学校も中学校も結局勉学でもスポーツでも下から数えた方が早いレベル、何をどれだけ、どういう角度から学ぼうとしても無駄だった。

 そこで『俺には何一つ才能が無い』そう感じた俺は愛想をとっくの昔に尽かされていた家を飛び出し単身で死に場所を探していた。

 

 そんな時にこんな無能な俺にでもずっと寄り添ってくれたのが幼馴染のサンゴだった。

 

「今日もバカにされたの?オニウケるんですけど!」

 

 そう言って傍から見たらバカにされてるとしか思えない言葉を浴びながら、愚痴や弱音をずっと聞いていてくれる。

 時々そうやって『オニウケる』そんな事を言いながら。

 

 だが俺にとってはその言葉こそが救いだった。

 慰めなんて要らなかった、同情なんて要らなかった、共感なんて要らなかった、説教なんて要らなかった、ただただ笑い飛ばしてほしかった。

 だからそんな俺に対していつも変わらずにケラケラと笑いかけてくれるこの幼馴染は何よりも救いだった。

 

「ねえねえ、アタシ旅に出るんだけどアンタも本格的に付いてきてよ」

 

 ある日、一緒に家出をしていたサンゴからそう投げかけられた。

 そうなるだろうと言う事は薄々感じていた、彼女の思考は誰も彼も読めないと言っているがそこだけは何となく感じ取れた。

 だが、こんな俺が付いて行って良いのかという躊躇いが生まれた。

 当たり前だ、なんの役にも立たない人間が大切な幼馴染の邪魔なんて出来ない、そう思ったからだ。

 

「んー、邪魔とか邪魔じゃないとかアンタが考える事じゃなくなーい?少なくともアタシはアンタがいればいつでも弄れるし楽しいと思うけど?それともアンタってばアタシにそこまで好かれてないと思ってた?オニウケるんですけど!」

 

「え?ポケモンもいないのに邪魔にしかならないだろってー?もー本当に頭良くないのに小難しい事は考えるとかほんとウケる。ほんっとーに仕方ないか・ら☆これテキトーに捕まえたポケモンだけど〜?特別にあげちゃう〜。ほらこれでポケモンもいるしぃ?付いてこれるでしょ〜?」

 

「そ・れ・と・も?アンタはアタシまで失って一生な〜んにも出来ずにウジウジ過ごすのカナ〜?」

 

 だがこの幼馴染は口調からは考えられない程に俺に欲しい言葉を与えてくれた、俺に『理由』をくれた、『意味』をくれた、『原動力』をくれた。

 ならば、自分に何が出来るのかなんて分からないけれど。

 ほんの少しだけでも理由があるなら。

 この幼馴染の手を掴もうと、そう思えた。

 

「は〜いそれじゃ行くわよ〜。え?決めてから行動に移すまでが早すぎる〜?えーなにそれー、別に良くない?即断即決は三文の徳ってやつ?それは早起きは三文の徳?細かい事気にし過ぎオニウケるんですけど!」

 

「ところでそのモンスターボールに入ってるポケモンはなにかって?出してみればー?」

 

 即断即決の彼女は決めてから数秒後には家出を旅に変更して本格的に冒険を始めていた。

 あまりに早すぎるものだから振り回されたが、あれもまた彼女らしさだと今なら笑い話に出来る。

 

 ……ところで初めてのポケモンはなんだったか?

 

「このポケモンはカラカラって言って『こどくポケモン』なんだって、アンタとおんなじ『こどく』でオニウケたから最初のポケモンとしてあげたワケ、ウケるっしょ?」

 

 カラカラ、こどくポケモン。

 死に別れた母親の骨を頭に被って常に孤独なポケモン。

 常人には到底理解出来ないこの選出だが……俺には分かった、サンゴは『孤独と孤独がタッグを組めば孤独じゃないのに孤独でオニウケる』と思っている事を。

 

「……その顔は完全にウケててウケる。孤独と孤独が引き会わされて孤独じゃなくなるのに孤独って名乗ってるのオニウケる。どうしよアタシ天才かも。あ、天才かもじゃなくて実際天才なんだケドね〜」

 

「あ、やっと笑ったじゃん。辛気臭い顔ばっかりされてたら弄り甲斐が無いから少しは笑っといてほしいんだケド。てか色んな表情しといてよ、その方が弄った時楽しそうだし」

 

「えー?俺といてそんなに楽しいのかって……聞くの今更過ぎなーい?弄ってたり百面相しながら愚痴とか弱音吐いてるアンタ見てるのが楽しいから楽しいに決まってるじゃ〜ん、ほんとアンタって変わってるわね〜」

 

 今度こそもう振り返る必要が無いと感じた彼女はそう言ったきりとことこと歩き出していた。

 彼女は、サンゴは昔からそうだった。

 俺が誰かに馬鹿にされていたり自己嫌悪に陥っているとどこからともなく現れては弄る為と称してどこかへと身勝手に連れ去る。

 そして連れ去る割にはこちらに興味があるのか無いのか、こうして振り向かずに歩いていく事もあった。

 

 だが俺はそんな時必ずその後ろを歩いてきた。

 唯一彼女といる時間は何ものにも代え難く心地良かったからだ。

 サンゴが実のところ俺に何を思っているかは明確には分からない、もしかしたら本当にただのオモチャ扱いで連れていってるだけかも知れないし便利な道具扱いかも知れない。

 

 それでも良かった。

 彼女が俺を必要とするなら本心なんてどうでも良かった。

 もしも万が一の時に捨て駒扱いにされるのだとしてもそれは寧ろ本望だ、こんな無能でも『捨て駒になれる』なら喜んでなろうと思っているくらいだ。

 その為に、無能は無能らしく人より時間を掛けてでも必要となれる様に少しでも強くなろう、隣を歩くカラカラを見つめながらそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、アンタもアタシの足元にも及ばないけどそこそこ強くなったじゃん?」

 

 それから数年経ち、共に旅をしていた俺達はアテもなく気ままに様々な地方を渡り歩いていた。

 サンゴはリーグに興味も無いのにバッジを集めたり、ポケモンを捕まえたり、時には他者を蹴落とす為に残酷な方法も使ってきた。

 そして俺はそれに付き従う様にして同じ事をして、彼女程に無いにせよ無能なりにそこそこ形にはして悪行もしてきた。

 だがそこに後悔も反省も無い。

 サンゴがやると言うのなら俺はそれをサポートするだけだった。

 元よりこの世界に散々見捨てられてきた、気付けば自分の世界はサンゴただ一人を映し出していた。

 だからこの世に人間はサンゴ以外は誰も必要無い、自分さえも必要無い皆等しく同じく無価値なのだ。

 

 そんな折、いつも通りアテも無く歩いていた時彼女がくるりと自分を振り返りそう切り出してきた。

 

「今までもいろーんな悪事してきたケドさ〜?今度はちょー怪しいとこから勧誘掛かっちゃって。えくすぷろーらーず?ってとこ、結構良い待遇みたいだけど強盗とか誘拐とかはするみたい」

 

「アタシ?アハハ!そりゃ行くに決まってるでしょ〜?だ・か・ら!アンタが来るのかどうかだけ聞きたかったの」

 

「で〜?来るの?来ないの?」

 

「うわ即答じゃん、行くって躊躇無さ過ぎてオニウケるんですけど」

 

「サンゴが行くところには何があっても付いてくってアンタもしかしてアタシの信者?……あ、そう。別に良いケド、あっちでも弄れるならたのしーし」

 

 彼女の行く場所行く場所で色んな連中とつるんで来た俺にとって今回の誘いも別にどうと言う事は無かった。

 この世の全てがサンゴで出来ているのであれば彼女のする事が正義でありその他は全て悪であるからだ。

 ポケモンハンター、詐欺、誘拐、強奪。サンゴが『やる』と言うのであれば何一つ疑問を抱かない、抱く理由が無い。

 そして何よりこの世は文字通り誰も俺に手を差し伸べなかった。

 それどころか捨てられてきた。

 だったら俺がこの世界を見捨てたとしても何一つ問題が無い。

 

「んじゃちゃんと付いて来てよね〜?ま、途中で死んだとかなんかやったら一生バカにするだけだケド」

 

「それまではちゃんと弄ってあ・げ・る☆」

 

 サンゴさえいれば後は何も要らないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハ!またアタシに手も足も出ずに負けてやんのー!オニウケるんですけど!」

 

「うっせバーカ、サンゴが俺の手の内熟知してる上に強過ぎるだけだ」

 

「はいはいそういう事にしといてあげま〜す。でもちょっとはやる様になったんじゃない?」

 

「そりゃどーも」

 

 アレから何年か経ち、今サンゴはエクスプローラーズの幹部にまで昇進、俺はサンゴ直属部下という立ち位置にいた。

 随分とまた差が広がってしまったという気持ちもあるが、元より俺は何の才能も持たない。

 だとすればこうしてサンゴに認められているならそれで良いと思える。

 

「まいーや、疲れたしちょっとカフェ付き合ってー」

「はいはいいくらでも付き合ってあげますよ」

 

 ケラケラと笑いながら引っ張っていくサンゴを見つめる。

 

 ――ああ、この笑顔を守る為なら世界とだって敵対してやろう。

 

 そう思って、笑い返すのだった。




オニウケたら続き書くかも知れない
pixivにあるのは同一人物
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