ゴライアス生活   作:春雨と椎茸

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ふふふ、日本は今頃夏真っ盛りだったりするのかな?

温度はもちろん湿度が高いときついよね。熱中症には気を付けましょう。

こっちは常にヒヤッとしててじめじめしてて、さらに薄暗くてなんだか洞窟みたいです。

 

あっ‼ここダンジョンだったわー‼うふふふっ!

 

 

全然笑えねえよ。

 

 

こんにちは。

人命救助したらめっちゃ恐れられてちょっと悲しい気持ちのゴライアスです。

 

誰に話してんのって?俺だよ、俺自身にだよ。脳内トークだよ。

いやだって薄暗い部屋でポツンと一人誰とも喋らず長時間いるわけですよこっちは。

そんなん脳内で会話でもしないと気が狂うわ‼

 

まじもーなんなのこの状況。

人助けたら怯えられ、ボールス筆頭に殺されるエブリデイ。もーいいことなんて無くない?なんて思ってたんですけど。

 

でもね、禍福は糾える縄の如しって言うじゃない。その通りで良いこともあったんだよ!

なんとね、お友達候補が出来たんだ!

あ、ほらほらちょうど来た。俺のお友達候補のミノタウロスのみっちゃん。

よーし、今日もやるかい!みっちゃんよ!

 

 

何をやるかって?相撲だよ。

 

 

 

 

あの女性冒険者達助けてさ、あんなに怯えなくてもよくない…?って体育座りしながらへこんでたらさ。

ぶももーとか言いながらミノタウロスの群れが来たのよ。

いつもならでかい声出してはいお終い。あっちいってねー。

みたいな感じなんだけどさ。

ちょっとあれだけビビられた後だと大声出す気になれなくてね。

ぺちぺち殴ってくるから、つまんでは投げつまんでは投げしてたのよ。

あと、斧とかこん棒みたいな武器持ってる奴等からは全部取り上げてゴライアスハンドで粉砕しました。

だって危ないもんね。

なんでそんなことするの…?みたいな呆然とした顔で見られたけど知らんよ。

むしろこっちのセリフよ。なんで襲ってくんの君たち。

 

んで一頭、また一頭としょんぼりしながら去っていく中で、いたのよ彼が。そう、みっちゃんが。

みっちゃんは違った。他のミノタウロスとは違った。

みっちゃんだけは最初から武器も持たずに己の体一つで俺にぶつかってきた。

殴り、蹴り、体当たりをし、その度にぽいっーて投げられても彼は諦めなかった。

そしてとうとうみっちゃん以外のミノ達が部屋から出て行っても彼は傷だらけの体で立ち向かってきた。

 

ナイスガッツ‼

俺は感動していた。一人っきりで、自分よりも遥かに大きい化け物に何度転がされようが立ち向かう。

そんなことが俺に出来るだろうか?否、出来ない。

 

こいつ、かっこいいじゃねえかよ…‼

 

だがしかし、すでに彼は満身創痍。投げられた時に出来たであろう、体中の細かい擦り傷から血が滲み、痛痛しい。

ぶもーっ、ぶももーっ…と息も絶え絶えだ。

 

「ゴララァ…。ゴラ、ゴラララ、ゴララララァ。」

(認めよう。君はすごいミノタウロスだ。だがしかし今日はもうお帰り。)

相変わらずどーなってんだよ声帯。

だが頼む。届いてくれこの思い。

これ以上君を傷つけたくない。

 

君?君ってのもなんだな。でも誇り高い彼を他の有象無象のミノ達みたいにミノタウロスって種族名でも呼びたくないな…。

 

名前名前なーまーえ…。うーん、よし!彼はみっちゃんだ‼

よし、君は今日からミノタウロスのみっちゃんだ。心の中ではそう呼ばせてもらうよ。

 

俺の思いが通じたのか、少しだけ呼吸を整えたみっちゃんが俺に背を向け歩き出す。

よかった。怪我を癒したらまたおいで。

 

なんて甘い考えは振り返ったみっちゃんの覚悟を込めた視線に貫かれて消えた。

 

 

振り返った彼は頭を低く下げ、右足で地面をがりがりと掻き、俺を貫かんとする突進の構えを取っていた。

逃げ帰るためでなく、俺を打ち倒すための後退だったのだ。

 

震えたよ。

なんたる、何たる漢よみっちゃん‼

 

 

「ぶもおおおおおおおおぉぉぉぉ‼」

みっちゃんが気合一番叫びながら突進してくる。自慢であろう角を俺に突き立てるため、視線は下を向いている。

避けるのは簡単であろうし、カウンターで殴るのも容易い。

だが、だが、そんなこと出来るだろうか。乾坤一擲の大勝負をしかけてきた彼に無作法かましていいのだろうか?

 

否である。断じて否である。

ゆえにがっぷり四つ。

 

 

かかってこいやぁ‼みっちゃん‼

 

 

 

 

 

まあふつうに組み合って投げ飛ばして終わったよね。

いや体格差よ。どう頑張っても幼稚園児はプロの力士に勝てんでしょ。

そのあとは、よろよろーって感じでみっちゃん去って行った。

「ゴララ、ゴララララァ」

去り際にちらりと目が合ったので(またいつでも来なさい。挑戦待っているよ)と告げる。

気のせいかもしれないが、みっちゃんの目の奥の何かがキラリと光ったように見えた。

 

いやー楽しかった。

間違いなくゴライアス生で一番うきうきした時間だった。

やっぱ運動よ。

へこんだときは体を動かして発散するに限る。

なんでそのままるんるん気分で17階層散歩へ。

冒険者はいなかったけど、熊とか白いトラが襲い掛かって来たんで相撲スタイルで撃退。やだー楽しい。

調子に乗ってそこら辺にいたキノコと組み合ったら、めっちゃ臭い胞子出してきてあんぎゃーってなった。

 

実家(嘆きの大壁)に戻ったらもうみっちゃんがいた。

えっ⁉みっちゃんもう来たの?早くない?

ちょいと失礼してつまみ上げる。はいはい大人しくしなさいな。

うーん…、すごいなモンスター。いやみっちゃん。怪我が大体ふさがってる。

人形みたいな扱いして申し訳ないけど、360度見回しても血が出てるところが無い。

おそらくだけど、半日も経ってないと思うんだけどな。

 

あっ、ごめんごめん。ほいっと。

降ろしたら、もーなんなの?みたいにちょっと不満げなみっちゃんだったけど、すぐさま気を取り直したように俺との距離を開けて突進してきた。

 

よっしゃ、かかってこいや‼

 

ぶつかり稽古を何回も。

めっちゃ頭いいわ、みっちゃん。上手投げとかしたら次回では同じような動きするんだもん。

まわし無いから互いの皮膚つかんでやってるんだけどね。

 

おいおいおい、将来のダンジョン番付横綱候補かよ。

なんて思いながらヘロヘロで去って行くみっちゃんを見送る。

うふふ。またおいで。

 

今日は楽しかったなー。部屋の隅で横になって幸せな気分で眠りにつく。

あ、俺ふつーに寝れるんよね。他のモンスターはどうか知らないけど。

ゴライアス的感覚で、何かが近づいてきたらすぐ目は覚めるけど、まあ寝れることは寝れる。

 

で、起きてラジオ体操ならぬゴライアス体操してたらまたみっちゃんが来たってわけ。

 

よーし、今日もやるかい!みっちゃんよ!

体操も終わって準備万端なところで俺のゴライアスイヤーが不吉な音を捉えた。

リヴィラの街へ続くであろう階段から。

 

あ。やっべ。

これけっこう大人数な気がする。またボールスたちが俺を討伐しに来たのかもしれない。

みっちゃん、今日は中止!中止です‼

腕でバツ印を作って、みっちゃんに逃げるよう通路を指さす。

 

 

首傾げて、ぶもぉ?じゃないでしょ。

 

 

あー、どーしよ、時間無い。すまぬ、すまぬ!みっちゃんよ‼

みっちゃん掴んで通路の奥にぽーい、かーらーの、通路の上の壁にゴライアス全力パンチ!

 

よーし、ガラガラガラっていい感じ崩れてくれた。これでみっちゃんこっちこれないし、討伐隊も向こうに行けんでしょ。

リヴィラに行きたい冒険者たちはすまんな。ちょっとだけ我慢して。

俺が殺された後に、きっとボールス達ががれき撤去してくれるはず。

 

さーて破壊音聞きつけてたからか、足音が早くなって、案の定ボールスたちが現れた。

あー。また死ぬんか。やだなあ。

あ、助けたねーちゃん達もいるじゃん。

元気ー?あのあと大丈夫だったー?って気持ちを込めて手を振ってみた。

 

 

 

 

めっちゃ冒険者達ざわついた。

 

 

 

 

 





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