修正適用をクリックするだけでいいなんてすごいですね。びっくりしました。
ヒューマンの女性冒険者 ポテコ
なんで私達死んでないんだろう。
憧れだったはずの18階層に到着して、ホッとして、ネネネとサラリアと抱き合って、ひとしきり泣いた後そんなことを思った。
ゴライアスのハウルを受けて、腰が抜けて。走馬灯みたいなものを見た?感じた?どっちでもいいや。
パパママごめん、二人の言う通り実家のじゃが丸屋継いでればよかったよ、とか。
女神様ごめんなさい、シャクティさん、ギルドのローズさん、じゃが丸君よく買いに来てくれたアイズちゃん、ティオナちゃん、ミアハ様ナァーザさんヘルメス様アスフィさんルルネ、キークスさんファルガーさんごめんなさい。
みんなみんなみんな、ごめんなさい。
皆優しいから私達が死んだら傷つく、悲しむ。
でも、もう私達死ぬんだろうな。
なんて諦めたら私の両腕を握って泣いている二人の幼馴染の顔が見えた。
自慢の耳をぺたりと伏せて泣いてるネネネ。美人なのに鼻水垂らしながら嗚咽を漏らすサラリア。
私の中の何か、よくわからない感情。だけどその何かが燃え上がった。
私たち、じゃない。
私が死ねば、私が2人が逃げる時間を作れれば、2人は助かるかもしれない。
そう思ったのは覚えてる。
気が付けばゴライアスに突っ込んでた。
なんだか後はゴライアスに掴まれたり離されたり、サラリアが掴まれて無我夢中でゴライアスを殴ったりした気がする。
最後は、ありえないんだけど、サラリアを離したゴライアスがまるで道を示してくれた様に階段を下った気がする。
そう、気がするだけなのだ。なんか記憶がふわふわしててよくわからない。
興奮しすぎてたのかな。
「おっ、おい!お前ら大丈夫か⁉ってポテコとネネネとサラリアじゃねーか⁉」
ぼんやりしてたらなんだか聞き覚えのある声が聞こえた。
「アスフィー‼アスフィ来てくれ!ポテコ達がいる!サラリアが血だらけになってるー‼」
声のした方に顔を向ける。
ルルネがなんか叫んでた。
無事なのか確認された後、アスフィさんとルルネに引っ張られて、噂のきれいな湖で体を洗い流した。
顔面も下半身も大洪水だったから、こんなにきれいな水を汚してしまうのちょっと抵抗あったけど、水はさらさらと汚れを洗い流してくれて気持ちがよかった。
興奮してると怪我していることに気が付かないことがあるからって、アスフィさんも一緒に入ってくれて隅々まで体をチェックされた。
ルルネは見張りをしてくれた。二人とも優しいな。
ネネネ、泳ぐの止めて。気持ちは分かるけど止めなさい。飛沫がかかるし、全裸で平泳ぎってもう見てらんない。
お願いだからお尻こっちに向けないで。
サラリアのふとももをすりすり触る。足に傷跡が残らなくて本当によかった。女神様がくれたポーションすごい性能だったんだね。
なんかサラリアが考え事?してるのかな。ぼけーっとしてる。いつもお風呂とかで抱き着いたら恥ずかしがるのに。
まああんな体験して、さらに怪我までしてたんだもん、しょうがないよね。
それにしてもサラリアは奇麗だな。反則でしょこんなの。おっぱい以外全敗じゃん私。
いやいかんいかん。そうじゃない。
「サラリア、大丈夫?足痛かったりするの?」
「ポテコ…。うん。うん。足は大丈夫だよ。大丈夫なんだけど、んー、ごめんね。ちょっと考えてることがあって。後で話すね。」
えー、気になるから今話してよ。なんて言っても話してくれないことは経験上知ってるから、はーいわかった。って返す。
きれいな水で体を清めたら、さっぱりして心も落ち着いた。
幸い3人ともバックパックは無事だったから持ってきた予備の服に着替えて、胸当てとかの装備も洗って。下着とかは…。うん。もう捨てよう。なんかひどいことになってる。
その後、アスフィさんとルルネが泊ってる宿に連れて行ってもらい。
あったかいお茶までいただいて。
「で、何があったのですか?」
アスフィさんとのお話が始まった。
アスフィさん。万能者って二つ名を持つ、レベル4のすごいおねーさん。
きれいで賢くて、なんか所作が優雅でちょっと憧れてる。
ルルネ。泥犬って呼ぶとちょっと不機嫌になる気のいいやつ。
私たちと同じレベル2って思えないほど色々すごい。なんか時々びっくりするくらい速く動いたりする。
うちの実家は屋台じゃなくて、店舗でやってるじゃが丸屋、ネネネの実家は焼き鳥が人気の飲み屋、サラリアの所は喫茶店。
メインストリートからはちょっと離れた地区の、こじんまりとした商店街。そんなところで生まれ育った私達3人。
ヘルメス様たちの本拠地、『旅人の宿』だっけ。が、近くにあるからヘルメスファミリアのメンバーはちょくちょく私たちの実家に飲みに来たり、お茶したり、お土産ってことでじゃが丸君を買ってくれたりする。もともと私たちの女神様とヘルメス様が仲が良いこともあって、ヘルメスファミリアの人達には昔から可愛がってもらっている。
まあ簡単に言うと頭が上がらないんだよね。特にアスフィさんとファルガーさんにはお世話になり過ぎてて。
なんで絶対怒られるからケーキに目がくらんで中古のサラマンダーウール買った事とか、アンリゾ処女の件はごまかして経緯を説明。
レベル2になったんで、リヴィラに来てみたかったんです、みたいな。
まあ一瞬でばれたよね。サラマンダーウールも持たずにですか?とか、そもそもレベル2だけの3人でなぜ来ようと思ったのですか、なんて突っ込まれて。
もうめっちゃ怒られた。
ルルネが止めてくれてなかったら3人ともまた泣いてたと思う。
「はぁー…。もう、本当にあなた達は…。」
溜息を吐きながら眉間をもむアスフィさん。
ううう、いや私たちが悪かったですぅ…。ぐうの音も出ない。
「まあまあアスフィ。あんまり怒んなよ。無事だったんだからそれでいいじゃんか」
ナイスフォロー!ルルネさすが!さすルル!
「いいわけがないでしょう。あなたやファルガー、ヘルメス様がこの子たちを甘やかすからこんなことになるのですよ…!」
あっ、油に火を注いだ。ルルネのバカ、バカルル!
いや、かばってくれたのに今のはないわ。ごめんねルルネ。ごめルル。
「ひゃっ!わ、私に怒んなようぅ、でもよぅ、こいつ等も反省してるみたいだしさ、な、お前ら反省してるよな⁉」
3人そろってぶんぶんと頭を上下に振り回す。
「ほらほら、な、だからさ、後はローズの姉さんに叱ってもらおうよ、な、な?」
うそでしょ。あっさり死刑宣告しやがった。
眼鏡越しの厳しい視線に体が震える。
アスフィさんはややあって、大きくため息をついた。
「…。言いたいことはまだまだ山ほどあります。帰ったら3人とも覚悟しなさい。ですが、今はそれより聞きたいことがあります。もう一度最初からゴライアスに遭遇した時のことを話してください。ポテコだけじゃなくてネネネやサラリアからの話も聞きたいです。」
え、なんで?
私の話そんなにわかりづらかった?
まあ、そんな気がしました、だと思います、みたいな感想ばっかりだったけど。
そんなこと思ってたらアスフィさんが説明してくれた。
いわく、最近ゴライアスの挙動がおかしいと。
ここ数か月ゴライアスによる冒険者への被害が出ていない。攻撃あるいは反撃してこない、17階層を徘徊している。
噂ではあるが、寝ていたり、モンスターを攻撃しているような、あるいはモンスターと遊んでいるような行動が見られる。
その他にも色々おかしな動作を目撃した冒険者による報告が多数ギルドに届いている。
で、ギルドとしても本格的に調べる必要があるかもしれない。その調査を行うかの是非の調査を私たちはやっているのです。と。
はえー、下請け。
なんて考えたら、アスフィさんにまたキッ!って睨まれた。
ひええぇ、す、すみません…。
「大体あなたが考えていることは分かりますし、否定もしません。ですが、あなたとネネネは表情に出過ぎです。正直は美徳ですが、冒険者として感情はコントロールしなければいけないと教えたはずでしょう?表情などはその最たるものです、よいですか、まず…。」
たすけてルルネ‼
「あー…、あのアスフィ?お叱りはもっともだと思うんだけけどさ、今は先にゴライアスの話きかねぇか…?」
ありがとうお助けルルネ!たすルル‼
「…。それもそうですね。ありがとうございます、ルルネ。では、ネネネ。あなたがゴライアスに遭遇してから、見て、感じたことを教えて下さい。」
また溜息。ごめんねアスフィさん。
ネネネが喋りだす。ほぼ私と似たような感想だった。私がゴライアスに掴まれたとき槍を投げてくれたのは知らなかったけど。嬉しかった。
喋り終わって最後にサラリア。
彼女の視点は私たちと全く異なっていた。
「私は、私たちはあのゴライアスに命を救われたのではないか、そう考えています。」