こうして報告してくれた方って、お名前を挙げて感謝を伝えても良いものなのでしょうか?
そしてこの拙作にご感想、ご評価、お気に入りをしてくださった皆様。
本当にありがとうございます。
手を振ったらざわつくのやめてくれよ…。トラウマが蘇るんだよ…。
高1の冬の朝。登校中。
クラスメイトのかわいい子がさ、俺に手を振ってくれたと思って手を振り返したら、俺の後ろにいた彼女の友達に手を振ってたオチ。
察した彼女たちにぷーくすくすされて、引き返して学校休もうかと思ったもんだわ。
トラウマっていつ治るの?
こんにちは、ゴライアスです。
苦い思い出に、ちょっとだけ心折られそうだったんだけど、いやいやいや、いるじゃん。
アスフィいるじゃん。
あの助けた3人組の隣の人、アスフィでしょあれ。フード被ってるけど、あの聡明そうなお顔に眼鏡。フードからちらりと零れる水色の髪。
しかもその隣にまた、二つ名泥犬だっけ?名前は忘れた。でもヘルメスファミリアの犬人女性もいる。これもうアスフィ確定でしょ。
嬉しくなってさらに大きく手を振る。
おーい、アスフィーさーん!俺だよ、ゴライアスだよー!分類的には多分ゼノスのゴライアスだよー‼
ざわめきが大きくなったけど気にしない。これはチャンス、チャンスだよ!
なぜか、くそ眼帯ことボールス達はお馴染みの冒険者しぐさ(問答無用モンスター即殺害)してこないし、なんか話し合ってるし。
アスフィさんに俺はゼノスみたいなもの。って認識してもらえたら、ヘルメス様経由でウラヌス様、ガネーシャ様に伝わるでしょ。
そうすれば経験値提供マシーンから脱却できるかも…‼
やばい、テンション上がってきた。
やっぱ死にたくないのよ。耐えられる痛みだけど、嫌なもんはいや。
どうする、どうすればいい?
まず、「アースーフィーさーん!」って叫びたいけど絶対「ゴッ、ラッ、ラー!」みたいな発音になるだろうから声を出すのはダメ。
怯えられてからの魔剣魔法コンボで殺される未来が見える。
次、近寄ってみる。ダメ。攻撃の意志ありってみなされるかもしれない。やっぱり魔剣と魔法で死ぬ気がする。
手を振り続ける?うーん、悪くはないけど、状況が進展しない気がする。
うっわ、マジでどうしよう。
馬鹿みたいに手を振り続ける俺、ざわめている冒険者達。マヌケな絵面の状況を切り裂いたのは。
3人娘の一人、エルフのねーちゃんだった。
えええぇ⁉なにしてんのこの子⁉
エルフのねーちゃん、エルフっ子が全力ダッシュで俺に向かってきた。
え、なに、攻撃?君意外とリューさんみたいな前衛エルフなの?
おいおい、お友達めっちゃ叫んでるよ。絶対、「待ってー!」みたいなこと言ってるってあれ。
いいの?心配してるっぽいよ。泥犬さんが腕掴んで止めてるけど、2人ともエルフっ子に続きそうな鬼気迫った顔してる。
あっ、アスフィーさんがいなくなってる。どこいった?
突然のことに思わず体が固まる。
めっちゃエルフっ子走ってくる。いいフォームだな。陸上部だったりする?怪我は大丈夫そうだね。よかったね。
なんて混乱してたら、エルフっ子、俺の足元で急ブレーキ。
な、なに、何なの?殴ったりすんの?ちょっと怖いんだけど。
エルフっ子は顔を上げて、俺の目を見つめながら叫んだ。
「?????????‼???????、?????!」
なんて?
まってまってまってほんとムリ。
押しのアイドルに突然遭った女子ってこんな気持ちなの?
なんかエルフっ子が迫真の表情で俺に語りかけてくれてるのは分かるんだけど、全く理解できないのよ。
「ゴラ?ゴラララァ、ゴララ?」
(待ってまって、申し訳ないんだけど言葉が理解できないんだ)
相変わらず役に立たないゴライアス声帯で必死に訴える。
ほんっと、人を脅かす以外は仕事できないよね!俺の声帯!
それでも、なんかハッ、とした顔でまた俺に話しかけてくるエルフっ子。
「????????、?????????、??????????」
まっじでわからん。
コイネー?だっけ、ダンまち世界の言葉。何なのこれ、ギリシャの古語だっけ。
首と手を振ってゴララァ。(だめだ、わからない)
通じてくれないかな。いや解りません、って通じた所でどうにもなんないけどさ。
めげずに俺に話しかけてくるエルフっ子。その度に首を傾げてゴララァ、と返答する俺。
でも、でも。楽しい。
言ってることはさっぱり理解できないけど楽しくて嬉しい。
話しかけてくれている、会話をしようとしてくれている人がいることが、たまらなく嬉しい。
なんならちょっと泣きそう。涙腺ってあるのかなゴライアス。
状況は理解できないけど、俺ゴライアス生で初めて話しかけられたよ。
後方集団もじりじりと俺に近づいてくる。
お、君たちも俺とお喋りしてくれるのかーい⁉
なんて浮かれ気分は彼らの顔を見て吹き飛んだ。
恐怖、困惑、敵意、そして殺意。
各々、表情は違うけど、マイナスであろう感情が見てとれる。
あぁ、そりゃそうだよな。
一瞬で冷めた。
なんで浮かれていたんだ俺。馬鹿かよ。あーFラン卒のバカだったわ。
しかもそのよくない感情、俺だけじゃない、エルフっ子に向けられてる。
まずいって。
ウォーゲームでアポロンファミリア倒した、街で噂の人気者であるベル君ですらあれよ。
ちょっとウィーネちゃん庇っただけで、金に目がくらんだ体にしてたけどめっちゃ叩かれた気がする。
ついでに、仲良しのはずのアイズちゃんとは殺し合い寸前までやってたよな。
信頼関係が出来てるはずのベル君とアイズちゃんでもああなる。
モンスターを庇う、あるいは、一つの生命として扱う。
リリスケ言ってたじゃん。そんな奴はモンスター愛好者として最大級の軽蔑を受けるって。
ガネーシャファミリア?モンスターフィリア?違うよあれは、本質はどうあれ、民衆の受け止められ方はきっと違う。
ペット感覚なんかじゃない。モンスターを徹底的に服従させ、冒険者たちは、自分たちはモンスターなんかより上等な生命体なんだってプライドと安心感を満たさせる見世物だよ。だから調教する、テイムするって言われてんだろうな。
そしてそんな下等な生き物であろう、俺ことゴライアスと意志を通じ合わせようとしているエルフっ子には、不信と軽蔑、そして敵意が向けられてる。
まてよ、まってくれ。
どうすればいい、アスフィさん何とかしてくれねえかな。ダメだ、やっぱいねえし。あ、ハデスヘッド装着したな、多分。
オロオロしていたら後方集団から男が飛び出してエルフっ子の肩を乱暴に掴んだ。
「??????????!????!?????????‼」
エルフっ子の肩を掴みながら何か叫ぶ男性。
「????!???????????!」
なんか反論してるっぽいエルフっ子。
ちょいちょいちょい、まって、暴力はよくないって。
「ゴラァ…」としか言えない声帯が本当に憎い。攻撃って思われないようにゆっくり丁寧にエルフっ子の服をつまんで、男性から離す。
呆然とした表情の男性。そんな彼に何かを叫ぶエルフっ子。
そうしたらまたざわめきが大きくなった。どうしよう、絶対よくない方向に進んでる気がする。
エルフっ子が何か叫びながら俺に背を向け、両手を横に広げた。まるで俺を守るように。
うっそだろおい…。
ヤベーでしょそれは。
悲鳴と怒声が聞こえる。
そんな大騒ぎの中、冒険者集団から走ってこっちに向かってくる2人。エルフっ子のお友達の剣のねーちゃんと獣人のねーちゃん。
うわぁ、泥犬ちゃんがめっちゃ叫んでる。
2人はエルフっ子の隣まで来て、なんか話して、同じように手を広げた。
マジかよ君たち…。
何やってんだよ⁉
やばいやばいやばい。
ボールス筆頭に冒険者たちとねーちゃん達が言い争いしてる。
うわっ、ボールスの隣の人剣抜きやがった。魔剣だろあれ。
まずいまずいまずい。
どうするどうする、どうしたらいい⁉
その時、酷く醜い、浅ましくて、最低な考えが浮かんだ。
あぁ、これをやったらモンスターに堕ちる。
心だけは人間で居たかったけど、本当の意味でモンスターになる。
人の心を踏みにじり、馬鹿にする真のモンスターに。
少しだけ悩む。でも、やる。自分の都合のためだけに。
決して3人娘のためではない。俺は俺のためだけに、自分が可愛く、救われたいから行動する。
目の前で手を広げている3人組を、出来るだけ優しく掌で横に押し出す。危ないからね。
なんかピャーピャー叫んでるけど無視。ごめんよ。
俺は冒険者集団に向かって歩く。可能な限りゆっくりと、相手を刺激しないように。
頼む攻撃しないでくれ。魔剣の人、もう少しだけ待ってくれ。
3歩。それが近づけた距離。これ以上は無理だ。魔剣だけじゃなくて魔法の詠唱みたいなの始まった。
その場でひざまづき、手と額を地面にすりつけた。
そう、いわゆる土下座をした。
下を向いてるから分からないけど、一瞬の静寂後にまた騒がしくなった。
そうだよね。土下座の意味とか多分タケミカヅチ・ファミリアとかじゃないとわからないよね。
でも、このポーズはまるで首を差し出すかの様に見えないだろうか?
俺が思いついた最低最悪の策は、この場にいる俺以外全員の良心を踏みにじり、利用するものだった。
俺はきっと殺される、今回はもちろん、これから先何度だって殺されるだろう。
だけど、その度に、下等であろうが一応人型の生命体が、頭を下げ首を差し出し続けても、あなたたちは遠慮なく殺し続けられますか?
舐めた考えであることは分かっている。害虫を殺すのにためらったりする奴はいない。
いや、触るのも嫌でーす。って人もいるだろうけど、触るのも嫌だったらそれこそ存在自体が嫌だろう。
でも今回の騒ぎを見て思った。俺が人型なのが俺にとっては幸いに、冒険者達にとっては不幸に作用してるって。
その根拠がエルフっ子であり、同じパーティであろう、剣と獣人のねーちゃん達。
なぜそんな行動を起こしたのかは解らないけど、彼女たちは俺を庇った。
モンスターである俺を、だ。
助けた事を理解し、感謝してくれたのかもしれない、ティオナのように、純粋な考えを持てる稀有な人間なのかも知れない。
ただ、彼女たちはきっとこんな騒ぎになるであろうことは理解したうえで俺を庇ってくれた。
それを踏まえたうえでの土下座。殺してくださいってポーズ。無抵抗な相手は殺しにくいでしょう?しかも仮にも人型。なんて相手の良心につけ込む策。
ウィーネちゃんがアイズちゃん相手に、ベル君のために純粋な思いで自らの爪を叩き折ったこととは違う、どこまでも自己中心的な浅ましい行動。
庇ってくれる3人がいるからこそ生まれるこの状況。
モンスターと言えど、害虫でも、それを庇う人たちを押しのけ、首を差し出す。殺しにくくないかい?
本当に申し訳ない、3人娘。今俺は、君たちの善意に唾を吐き、踏みにじっています。
だって嬉しかったんだ。話しかけてくれて。
ずっとずっと暗い部屋で一人で、脳内会話しかすること無くて。人に見つかったら駆除される毎日。
辛いんだ。こんな訳の分からない状況になって。
寂しいんだ。ひとりぼっちって。
救われたんだ、エルフっ子。あなたの勇気に。
また会話したいんだ。貴女と。できれば次はあなたのお友達とも。
だから、あなたたちの善意を利用して、この状況を利用して、俺は俺が将来生き抜くための布石を打ちます。冒険者達が俺を殺しにくいような環境の手始めにします。
いつの間にか静かになっていた。
少しだけ顔を上げる。視線の端にチラリとぐったりして、気絶してる?エルフっ子とそれを支えるアスフィさん。泥犬ちゃんに手を引っ張られている残り2人が見える。
ナイス。アスフィさんと泥犬ちゃん。
ついでにアスフィさん、多分3人とお知り合いですよね?三人娘の行動は、なんか変なゴライアスを観察するためのものだった、とかなんでもいいから庇って言い訳してくれたら嬉しいです。
生まれて初めて優しくしてくれた人たちなんです。
正面にいるボールスが頷いた。隣の男が魔剣を振り下ろした。
閃光。
また俺は灰になった。