いつものように衝動で書きました。
ヒロインは可愛ければ可愛いほど書く方もノれますよね。
ピンク髪大好き。人外地味た瞳の輝きが超好き。
星を見ていた。
正確には、夜番の暇潰しをしていた。
「東の空。あれがドハヘ、イロチウロ、ホギ。南の.....そう、あの赤い星。イァチヮセと言うんです。今回の仕事は特に郊外だから、凄く綺麗に見えますね。」
おまきれ。
夜闇に映えるさくら色の髪と、日が落ちる前のような紫色の瞳。
そんな色彩と星空を肴に、そんな美しきパーティーメンバーとの交流会の真っ最中である。
堅物のアランがこの光景を見れば、なに夜番が周囲の警戒を怠っているんだと小言が飛ぶ様が容易に想像できる。
周囲の警戒は勿論しているとも。その上で暇になって、こんなことをしているわけだが。
「宙の川....いや、あの星の群生をこっちでは何て言うんですか? .....
実際、今宵の役割としては相棒、カノンの能力だけで完結しているといっても良い。
魔術師の中でも道具操作に特化した珍しき操具師。
遠隔操作や動体、魔力感知を可能とする魔術道具によるリアルタイムの情報収集能力。
例え月の無い暗闇でも、空間魔素の流動と生物の魔力波長をキャッチし、周囲一体の情報を確保する驚異の占領力。守りも奇襲にも便利なサポート役だ。つよい。
まあそれをすり抜けてこられた場合でも俺がいる。
飽きるほどいる長剣と小盾の近距離役だが、定番というものはそれだけ強く、それだけ安定するということだ。
俺の眼のこともあり、協会指定の練度に基づいた認定ランク程度には強いと思ってはいる。
そんなこんなで、警戒に漏れは薄い。
キャラバンを囲うように二重三重に展開された索敵網で十分に足りてはいるし、連携を深める上でコミュニケーションは重要だ。
ずっと杖を握らさせているのも精神的にも体力的にも厳しいだろうし。
息抜きはどこでも重要である、ということで。
そういえばこんな持ち合わせがあった、とばかりに俺はリュックからポット一式を取り出した。茶会の
もうすぐ夏季であるが、ここの地域一帯は近くのウプリシテ山から降りる風が中々に寒い。
もっと暑くなれば癒しの風となるが、夜に長時間浴び続ければ体調に関わる。
つまり温かいお茶の準備だ。菓子もあるぞ。
カノンの顔が輝いておるわ。うん、喜んでくれて大変嬉しい。
うん......うん。
抜剣。
驚く様子なくささっとお茶が組み立てテーブルに置かれ、杖に両手を添えるカノン。
流石相棒。わかってるな。
頭上から色。赤色の害意を盾で弾く。カウンター気味に剣を振るう。体液が盾に飛び散る。悲鳴とうめき声。
追撃。針のような魔術道具が闇を飛ぶ。串刺しでフィニッシュ。うん完璧。
空を見上げれば、チチチと闇夜に鳴き声が続く。まだまだ数がいるようだ。面倒な。
「すいません、感知範囲から外れていたようで.....吸血コウモリですか。なかなか大きい.....」
感知用の魔術道具を広い空に設置しておくことは難しい。魔力消費も時間単位で膨大になる。キャラバン直上から疎らに点々と、カノンの負担にならない程度に設置して貰っていたが、案の定すり抜けたようだった。しょうがないないし、その為に俺がいる。
「その判断を下したのは俺だし、気にすんな。気をつける点としては、毒持ち、爪も長く鋭い。音もなく夜道に頭上または背後からグサリってところだ。そして、こいつらは主に群れで行動する。」
上を向くカノン。飛翔する輝く魔術道具。数は流石に少ない。優先順位はこちらの対処が上だが、周囲の警戒も仕事のうちだ。つらいよね。
「タイミングは?」
「合わせる、いつでもいいぞ。」
「では遠慮なく、です!」
模造星間通信確立/魔力伝達/格納術式組換/主要術式点火/恒常術式出力増強/演算領域拡張/戦闘体制展開/魔力弁解放
空中で弾けるスパーク。バチンバチンと火花が散っている。
わざわざ空中を高速で動き回る
つまり範囲攻撃が常套である。
ショックウェーブ。空間魔素の過剰振動と、魔素による電子干渉、強制帯電による無差別攻撃魔術。
感電し、麻痺、火傷状態でぼとぼと落ちてくるコウモリは無視して、未だ濃い赤色のみ注視する。
滑空気味を4体。急降下を6体。わざわざ地面すれすれで襲い来るのを2体。カノンを狙ったヤツを盾で殴り飛ばす。
「閃光、カウント3!」
「了解。閃光カウント3。」
空気と共に魔素を吸い込み、魔力を合成、体内で廻す。
剣に内蔵された魔術触媒を点火する。
剣は
大袈裟な儀式は必要ない。特に原始的でシンプル、単純かつ強力な魔術行使。
肉体と体の動きだけで成立させる、儀式系統魔術式。
所謂、
3。
剣が仄かに光を灯す。空間魔素との反応光。これに多くのコウモリが目を向けた。
2。
剣の燐光が形を描き、ただ構える。
術理、装填。
身体強化、完了。
1。
殺到するコウモリ。その中心点にて浮かぶ一つの魔術道具。
それが術師の意思に応え、魔術を起動する。
0。
模造星間通信増強/魔力伝達/格納術式組換/主要術式点火/術式エラー修正/思考補助率60%/神経回線修復効果の低下を観測/治癒術式効果増強を上申/承認/承認/承認
それは強烈に発光した。星は消され、宙は色を失くす。
ただそこに、混乱と失神に満ちた黒い翼があるだけだ。
今。
「はぁアッ!」
剣を振るう。
燐光は現象へと置換され、届かぬ筈の斬撃は宙を駆ける。
まあよくある斬撃波。練り上げた魔力の量と質でその威力は決定される。
特にデカイ1体、多分巣別れ中だった女王コウモリに突き刺さった斬撃は、余すことなく全威力を肉体の寸断に注ぎこんだ。
コポリ。
2つに断ち切れた骸が落ちてくるのを横目に残身。
まだまだ取り巻きも多い。散り散りになる前に可能な限り仕留めておきたい。
「数体頼む。」
「了解です。」
模造星間通信増強/魔力伝達/格納術式組換/第一、第二、第三補助術式点火/分列思考安定/加速式補整/全星印連動式自律運転問題なし/視覚情報処理/敵味方識別及び動体検知優先/警戒体制及び戦闘体制維持/コードクラフト・
改めて
駆け出しながら剣を振るい、燐光を強める中、閃光魔術が続いている宙をスタイリッシュに針が飛ぶ。
1コンボ2コンボ3コンボ。焼き鳥みたいな刺さりかたをするなあ。
魔術道具の曲芸飛行を鑑賞しながら、地面に落ちたコウモリや後衛狙いを捌いていく。上空を光と針で占拠されたとわかるやいなや低空飛行が増えやがった。俺の仕事が増えるよなそりゃあ。
横一文字、縦一文字。盾でホームラン、剣の腹でホームラン。
うーん、体液と糞が酷いなマジで。
魔力による高速振動を行使して、汚れや脂を落とせるし無理矢理切断できるのである程度の切れ味を維持できるが、流石に防具までもやるには魔力がもったいない。
殺意の高い無音夜襲に加え、こういうところが嫌われてるんだよなあ。
まあ居着く前に対処できて良かった。
後で協会に周辺にもう一つ巣別れする前の巣がある可能性を報告だな。
近いうちに捜索か討伐、撤去依頼が貼られるだろう。
模造星間通信再接続/魔力伝達/全攻性術式基底状態へ移行/全星印損傷情報を集計/全星印連動式による自己修復術式点火/恒常術式部位の破損を優先/警戒体制維持/魔力消費縮小モード展開を棄却/マスターからの提案を承諾/通常運転を開始します
「お疲れ様でした、パドナ。」
「ああ、お疲れ。カノン。」
やっと終わった。ついてなかった。
そんな風に一段落つくと、カノンは俺に笑いかける。
涼しい風がさくらの髪を揺らす。
紫瞳を通して、神経を流れる魔力が煌めいた。
うーん眼福。
そんな感想を飲み込んで、殊勝な顔で言葉を返す。
変な顔だったらしく普通に笑われた。解せぬ。
夜が終わり、朝が来る。
冷めてしまったお茶を飲みながら、交代要員と朝の挨拶を交わす。
これで見張り番は終わりだ。
深夜に閃光魔術をぶっ放したことは咎められたが、必要な処置だったってことで許しを得る。流石に女王コウモリを逃すわけにはいかなかったから。
討伐対象や被害状況、消費した資材などを協会指定の簡易書類に纏めておく。
キャラバンのテントでうとうとし始めたカノンを部屋に返し、未だ地に散らばるコウモリを処分するため外に出る。
「おいパドナ。お前があの吸血コウモリを倒したんだろ? さっさと片付けてくれ。キャラバン周辺が臭くなるのは困る。」
「わかってますよ。今向かうところです。」
「カノンはもう寝たのか。少しぐらい話したかったんだが。」
「昼過ぎには起きると思うのでその頃にどうぞ。」
カノンに限らず(他の操具師に会ったことはないが)、魔術道具の操作は脳への負担がそこそこ大きい。
それを戦闘で大量且つ並列に扱う。それほどの集中力と演算能力を保ち続けるには多くの睡眠を必要とする。時には脳に作用する薬も使う。
どうしても活動時間は短くなる。
まあ希少職種というものは往々にして相応の理由があるのだ。
あと需要がどうしても高い。負担が増えて下手すれば命を落とす。
そういうことで、相棒といえどやはり交流時間も短くなる。
だが、依頼をこなしながらでも会話できる機会を探すのが相棒というものだろう。
ちょっとしたチャンスを掴むため、俺のリュックには無駄な嗜好品が多い。
大金はたいて第三階梯の
そんな持ち合わせの中で貴重品であるバックに、ポイポイと吸血コウモリから剥ぎ取った毒腺、ついでに爪、舌を放り込む。
毒腺は吸血コウモリも討伐の証と市場需要を兼ね揃える部位だ。
協会で提出すると、協力金が貰え、同時に部位も返却される。
このまま協会下の買取所で売っても良いし、他に高く買い取ってくれる穴場があれば持っていってもいい。
爪と舌は、ついでである。爪は長く鋭いが、空洞になっているため脆い。曰く粉末を薬で使うらしい。舌は珍味らしい。......流石にこの臭いの中で食欲はゼロだ。
ここに素材がありますよーとばかりに空を停滞する魔術道具を目印にして、どんどん捌く。これがあるお陰で放置されていた素材をちょろまかす輩は少ない。
第二マスターを確認/マーカー設置物質確保/視覚情報より認定/自立任務解消/拠点へ帰還します
便利すぎるぞ、流石カノンが保有する数少ない自律型だ。カノンが遠く離れていても、または制御を離れていても活動できる設計らしい。
確か......名前をシグニ、そう、シグニ型と読んでいた。
昔出会えたインテリジェンスウェポンから預かった補機らしい。
オリジナルと比べたら性能が月とすっぽんらしいが、普通にお礼を言えば光って返してくれるし、手を振れば機体を振ってくれる。
うーん、中はどうなってるのだろうか、小鬼の脳でも使ってんのかな?
役割を終え、主のいるテントめがけて飛んでいく各シグニ達を横目に、朝日に照らされたキャラバンを眺める。
人の気配が濃くなってきたテント。火が灯った骨組みだけの見張り台。
各種移動屋台の馬車が並び、金属の音、食材の匂い、商人の特徴的な声が響く。
白い煙が朝焼けを昇る。調停者を失った草原に、開拓の手が伸びつつある。
まだ堀は無く、城壁は無く、讃えるべき威光の薄い、町の始まり。
柔らかな幼体に近いこんな町が比較的賑やかなのは、一重にここが安全だからだ。
驕りはない。俺達は防衛班だしな。今日の昼頃に帰還するであろう偵察班は、周囲の環境情報を3日ごと収集し、調停者を撃破した影響をつぶさに観察し続けている。
町の始まりに立ち会うのは今回が初めてだが、中々にハラハラする。
成長した町には、魔獣や災害に対応できる施設、機材、人材、技術がある。
しかし、ここには無い。全て簡易的なものと、人材で賄わなければならない。
俺達の役割はその中で結構厳しい夜間警戒。
その殆どの負担をカノンが背負っている。
一度は辞退しようと考えたのだが....カノンの優しさに甘える結果となった。
一緒に来てくれませんか?は反則だと思うんですよキミィ。
まあ、つまりだ。
薄皮一枚の壁で防げる魔獣はいないし、魔術的作用を持たせていない堀はただの段差に過ぎない。
夜の闇を照らし続けるリソースは無いし、その灯りは下手すれば魔獣を呼び出すこともある。
例え暗視や、夜目を持っていたとしても、闇夜に溶け込むことに特化した脅威の発見は大変難しい。
人拐いや賊の襲撃もある。俺達は最も狙われやすい役割だ。
地上だけでは無い、天空、または地下。その全てを
.......そろそろ限界も近いだろう。疲れている筈なのに睡眠が浅い様子も見受けられた。
本来、4人で行う筈のことを2人でやっていることもおかしいんだ。
1日前に集合予定のパーティーが事故とか不幸すぎた。
その分賞金は上乗せされるとかなんとか虫のいい条件だったが、俺は渋面せざるえなかった。
確かに能力的にはカノンには可能だ。俺要らなくない?って思うほどに。
そりゃあ協会も逃したくないだろうけどさぁ.....。
流石にもう無茶だと思うんですわ。
現に昨日、夜襲への反応は遅かった。
俺がお茶を出してたからという理由もあるだろうが.....その程度で乱れる集中力だと侮ってはいない。
協会と、ここの監督者に呼び掛けてはいるが、まだ適任者の予定が空かないらしい。面倒な。
苛立って来たので、落ち着くためにお茶を取り出す。まだ残ってくれていたシグニ型の一機が付き合ってくれるらしい。君お茶飲める?飲めない。うんまあそうだよな。
お茶を飲みながら眼を開き、カノンの様子を確認する。
色は薄い空色。夢は見ていないようだ。チャンネル変更。
魔力波長も平常。疲労による澱みも無し。
そのままぐるっとキャラバンを確認。悪意害意敵意の反応は......無い。終了。
お茶を飲み干す。付き合ってくれたシグニ...6号機にお礼を言う。
さて、俺も仮眠をとろう。流石に疲れた。
キャラバン、その一角。
協会の雇人スペースに張られたテントは、そこそこ広い。
まだ城壁が築かれてないし、キャラバンの外側に配置されている分だろう。ま、主力陣とはいえ雇人の価値はそんなもんだ。贅沢にも自己防衛力なども求められているんだろう。睡眠中にも気を張るのは戦場か未開拓地ぐらいにしときたいもんだがな。
テントに組み込んである幾つかの防衛、防御術式の状態を確認しつつテントに静かに入り込む。
ちらりと簡易ベッドを見ればそこに、カノンは熟睡している。
微かな吐息。上下する肺部。シャツとショートパンツ。
うーん、俺はどうかと思いますよカノンさん。
ふわふわと、テント内を消音モードで浮遊するシグニ型達に貯蔵魔力が切れるぞと苦笑しつつ、警戒してくれていることにお礼を言っておく。そうすると、音も光も出さず動きだけで返してくれる。律儀だ。
ベッドの横、散乱した大型トランクケースの整理に奮闘するシグニ型を宥めつつ、
色とりどり、多様多種の魔術道具とその金属部品やら外骨格やらが納められたそれを端に避け、
リュックから敷物と手入れ用品を取り出す。剣も魔術も使った日には、点検をしておかねばならない。カノンの散らばった魔術道具とその部品もその名残だろう。.....眠気で片付けまでは気が回らなかったようだが。
コウモリの体液と肉片を大雑把に拭い取られたままの直剣を敷物におき、錆防止の油や潤滑剤、拭い布や動物性の汚れ用の薬液を取り出す。
なかなかに面倒だが、仕事道具の手入れを怠ることは言語道断だ。仕事仲間からも笑われてしまう。
相棒を起こさぬよう、静かに静かに手入れを始める。
お、6号のシグニじゃん。付き合ってくれんの?
サンキュー。
私らしくもなく今回はストックというものが存在しますが、多分書き直したり、没って存在抹消したりします。