夕眸のカノン   作:色龍一刻

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質量兵器、質量兵器こそが正義。


4・偵察任務/状況判断

 

 

......相互リンク確立

中継機、情報伝達機能問題なし

マニュアル操作に切り替え

補助制御機構起動

オペレーション:タイプワン

 

模造星間通信安定/対魔力嵐通信防護術式、オブザーブモジュール、稼働開始/人工魔眼出力規定値内/魔眼個体名:識眼(カラーフロー)との魔力同調を開始/眼球及び視神経保護を最優先/疑似神経接続/視覚情報処理/情報補正処理/魔眼同調率80%/レンズバレル形成/オブザーブモジュールとの視覚共有を開始します

 

 

 

 

 

 

ピリピリとした感覚が目の奥を通り過ぎ、視界がくらりと揺らいで直る。もうそこは遠い遠い魔力災害の中の景色。

 

大地が暴風で剥ぎ取られ、木々は粉砕の果てに欠片となって飛んでいる。川は境を失いどこまでも広がり、水跳ねで白く煙る世界に数え切れない竜巻が昇っている。

 

そんな世界。わかりやすい程に強力な魔力反応一つ。

 

目に魔力を集中させる。魔力嵐と水滴と風圧でぼやけていた光景を無理矢理魔術で鮮明にしていく。カノンの手による調整も効いてきたのか肉眼レベルの視力を取り戻してきた。よし。

 

今現在俺たちは、ガチガチに補強したオブザーバー型を魔力災害に突入させ、魔術で視覚を共有することで討伐対象を偵察している。

 

「どうですー? 見えてますかー?」

 

「ああ、見えてる見えてる。完全に特異魔獣級の大蛇だわあれ。嵐の中を悠々と這ってやがる。あれ、倒せるのか....?」

 

魔力災害。星を循環する魔素の流れが滞り、特定地域の空間魔素率が一定値を越すと発生する大規模な魔術現象。主に嵐の形をとって表れる。まあこれ自体は現代において様々な対策や対応があるので特に問題とされない。

なのに、未だ魔力災害が全世界で恐れられる理由には、今までの被害記録や伝承の他にもう一つある。稀に魔力災害内でのみ発生、活動する魔獣の中の特異個体、特異魔獣。通常種と比べ巨体化し、身に刻まれた術式も変異し、大出力化、下手したら固有魔術へと至った個体もいたとされる。その巨体ゆえに活性魔素が豊富な魔力災害内でしか肉体を維持できず生きられないが、もしそれが災害と共に国を直撃したらどうなるか。

多くの場合、国は破滅した。幾度も城壁は崩れ落ち、逃げ仰せた人々はその恐怖を伝承として語り継いだ。

 

今回、俺達は伝承のそれと相対する。ぶっちゃけ実際に見るまで実感が湧かなかったが、こうも動いている姿を見ると背筋が凍る。

 

「倒せるのかって....それ言っちゃいます? 倒せないと国が一つ無くなっちゃうかもしれないのですよ?」

 

「あーいやまあ、わかってるけどさ。心持ちの問題。『やる』と『できる』じゃあ全然違うわけよ。今回は『やる』の方。倒せると思いたいけど、明確な実感が湧かん。」

 

「聖剣でぶった斬るとか?」

 

「あの嵐の中で大出力の武装を正確に弱点(首、頭)に当てられる態勢をつくる必要があるか。あの巨体だと距離感覚も狂う。アイツも連続で谷を作れるような術式は扱えんだろうし。」

 

モジュールの超遠距離稼働を実現するために、多くの中継機を飛ばしているため、カノンの魔力消費と精神疲労がヤバイ。偵察部隊に配属された他の魔術師に魔力提供してもらってなんとか視覚を維持している状況、早めに終わりにしたい。

 

更に魔力を眼に送る。

現実の色と、魔素に付着した思念の色が混ざり合う視界、第一層を抜け、第二層へ。

物質を透過し、物質と紐づいた魔力の流動を捉える。大地や大気をめちゃくちゃに流れる線の情報をカットしつつ、なんとか蛇の肉体を捉える。次。

第三層、呼吸と共に吸収された魔素を追跡し、魔力の合成場所を探す。もうここまで潜ると、第一から第三層それぞれの色が混じり合いほぼ何も見えない状況。そこをモジュールとカノン、サポートしてくれている魔術師の手をかり情報処理を実行。俺の視覚情報から必要な情報と思われるものだけ抜き取り、補正をかけて視界を開ける。

 

「あった魔石....と合成器官を発見。心臓よりだいぶ離れた上。意外だったな。」

 

渡されたペンを動かし、視えているものを大まかに皮紙に書き出す。

 

あの巨体を維持するための身体強化術式は、主に血流に沿って運ばれる魔力を消費する。故に魔力合成器官は心臓近くに存在する場合が多い。一時的に合成した魔力を貯める部位、魔石を目印にそれを探し、いざ討伐時にそれを破壊し自滅を狙うわけだが、今回それが心臓より遠かった。これは面倒だ。

 

生命活動を止めるなら心臓や脳、魔術行使を止めるなら合成器官や魔石を破壊するのが魔獣討伐のセオリーだが、あの魔力が乗りに乗った蛇鱗の装甲を都度4度貫くのは至難の技だ。だから聖剣で一度に心臓、合成器官、魔石を纏めて破壊し、体が動かなくなったところを脳を狙う......感じを考えていたが、これは無理か?

 

どうせだから保有しているだろう術式も探査する。身体強化術式はほぼオートで動いているようなので無視、いやまてその裏になんかある。この魔力の動き。思念色。形式的に....カノンそこのバックから茶色のメモ帳持ってきて。そう、その魔獣の保有術式ってやつ。.......やっぱ再生系の術式か! めんどくせー....そりゃあ概念系列で持ってるか。後は....毒、魔眼、脱皮あたりか。そこら辺の類似術式も調べよう。

 

............ん? 魔力が切れる? 流石にあちら側の魔眼を酷使し過ぎたか? 悪い、了解、回線切断とモジュール回収作業よろしく。

 

 

 

 

作戦本部にて。

 

「以上が偵察部隊よりもたらされた情報だ。作戦部としては、勇者殿に一発、シュタークが用意した霊脈直列型魔力放射礼装(極太ビーム)で一発、が確実にあの装甲を貫ける手となる。」

 

「手が不足しているな。相手は再生術式持ちだ。不足の事態も予想し四発は用意できねば確殺は取れまい。」

 

「おっしゃる通りだ。そこで一度相手の(移動機能)を潰し、近距離での聖剣解放を考えている。今までは遠距離からの各部位一点狙いを考えていたが、近距離であれば身体全体を巻き込む斬撃が可能....勇者殿、そうですね?」

 

「ああ、可能だ。しかし、威力及び範囲は込められる魔力量によって前後する。時間が必要になるな。また、ヤツを消し飛ばせる威力となると安定した足場も必要となるな。」

 

「馬鹿な、余りに危険すぎる! 聖剣解放の隙は余りに大きい! やつがそれを見逃されることはないだろう!」

 

「そこで俺が掛け合いこれを支給してもらった。設置型の対魔力と対物理に特化させた大型結界礼装だ。これを相手の動きを封じて同時展開、魔術で地盤を補強、磐石な守りの中で聖剣解放。どうだろうか。」

 

「おお、かの大戦でも活躍したという例の....廉価版とは聞き及ぶが、よく借りられた。これならば。」

 

「ああ、聖剣は必要出力で起動できる。問題は、どう相手の足を潰すかとなる。」

 

 

 

 

 

 

「作戦は以上だ! 一同一人一人の活躍が勝利の手となる! 更なる奮起と勇猛を! "伝説"を、倒すぞォッ!!」

 

 

 

『オオッ!!!』

 

 

 

 

「お疲れ様です。どうでしたか?」

 

「まあぼちぼち勝機はある感じだな。近距離職でヤツを誘導し、特注の大型魔術罠と遠距離砲撃で完全に足止め、そこで聖剣とシュタークの大型礼装で仕留める。三段階の作戦だ。多分カノンは遠距離砲撃の"目"として動くことになるだろうな。操具師としての特性上、"めっちゃ飛ばす系"の砲撃魔術は苦手だろ。魔力嵐でモジュールとの通信も結構妨害されるだろうし、今日はお留守番だな。」

 

「えー。結構色々用意してたんですけど、無駄ですか。まあそういうこともありますよね....新調した大型武装、使いたかったです。」

 

「まあ、苦戦したらこの前の魔眼同調と、装着型中継機でヘルプ出すからよろしく。オブザーバー型含めて4、5個なら通信防護しながら操作できるだろ?」

 

「言ってくれますね。勿論です!......心配なのでシグニ型も付けちゃいます。あの子達なら相互支援も可能ですし。何持っていきます?」

 

「ま、それは後でじっくり話し合おう。問題は....勇者パーティーの魔術師達と仲良くできそうか?」

 

「..............ガ、ガンバリマス。」

 

「........おう。」

 

「わ、わたし考えたんですっ。この前届いたラージソード型に使い捨て推進機つけて曲射するとか! やはり質量×速度は威力ですよね!」

 

「唐突なロマン攻撃提案。あの重い重い文句言ってた武装か。まあ....狙いがつくのなら現実的か?元々の役割に支障が出ないのなら.....事故は勘弁したいし。」

 

「モジュールでの遠距離通信だけしか仕事無いので余裕です。小型推進機もつけてアナログ調整しますし、自然落下の計算はもう頭に入ってますし、その段階になれば通信妨害も関係ありませんので大丈夫です! 流石に砲撃部隊のようにバカスカ撃てないので主力にはなり得ませんが.....刃の付いた投石とでも思ってくくれば。」

 

「前言撤回。それもう砲撃部隊でいい気がする。ほんと頼りになるな....何本用意できる? こっちから陽動部隊に伝えておく。」

 

「わかりました。四本ぐらいは組み立てられると思います。えーと、これを渡しておきます。座標指定用の刻印石です。落としたいところに投げてもらって合図してくれればそこに落とします。」

 

「了解。じゃ、隊長に話通してくるわ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

討伐部隊の移動まで後数日。

ギリギリまで魔力災害の外縁部まで接近し、そこで部隊を近接職主体の陽動部隊と、魔術師主体の砲撃部隊、少数の罠師部隊、作戦本部と伝令部隊に分けて討伐開始となる。

 

俺は陽動部隊に充てがわれた。カノンは伝令部隊。詳しく言うと砲撃部隊の情報支援に充てられた。凄まじく妥当である。リアルタイムで着弾地点の誤差修正できる"眼"を持つのは、このキャラバンにカノンしかいなかったようだったしな。

 

 

「ゲルンさん、ちょっといいですか?」

 

「おう、ちょっと待て.....いいか、俺達が展開する場所は地形的に泥濘が酷くなる。身体強化の出力を上げるにしても移動速度は必ず落ちるし、連携、ましてや回避行動すら一苦労となる。泥を舐めるなよ。体力消費が馬鹿にならねえ。後でそこら辺の装備のアドバイスを出す。休憩を挟んだら知りたいやつはここに集合しろ。わかったな!」

 

『はいっ!!!』

 

「よし、解散!」

 

 

 

 

「待たせてすまんな、パドナ。」

 

「いえいえ、きり悪いところで声かけました、すいません。.....それにしても流石ですね。」

 

「ハン、お前さんにそんなことを言われる日が来るとはな。明日は槍でも降るのか?」

 

「剣は降るかもしれません。 パートナーがこの刻印石の位置に質量兵装を落とせる準備があるがどうかと。」

 

「ほう....正確性は?」

 

「俺が保証します。 スペックとしてもカラン鋼合金と魔銀の複合鋳造で、表面を高ランクの攻性障壁で覆ってるので威力的に確実に刺さります。」

 

「......当てるだけならばどうだ。」

 

「大きくよろめかさせて隙を作るぐらいはできるでしょうね。」

 

「採用だ。カノンちゃんにはよろしく言っておいてくれ。」

 

「了解です。あとちゃん付けを許すような歳じゃないぞアイツ。」

 

 

 

「いやあ、それにしても少女を拾ったと噂で聞いた時は、遂にあの最強剣士様も狂ったかと思ったが、あの娘がそんなものまで扱えるようになるとは、お前さんの眼に狂いは無かったと。いやー参った。」

 

「初めて会った時、真っ先に鼻を伸ばしやがったやつがそれを言うか? こっそりお小遣いあげてたの知ってるぞ。」

 

「バレてちゃあ、格好つかねーな。....大事にしろよ。どちらにしろ、あんな良い()はそう出会えないだろうよ。」

 

「お陰様で危険度の低い後方に配置できたが、まだ魔力災害の進行速度や方角は予想困難だ。あのサイズの特異魔獣討伐も未経験だしな。最悪に備えて準備してるさ。」

 

「ならいい。お前さんの()()()()が見れないことを祈るぜ。.....因みに今夜が()()()()()のピークだぞ。」

 

「............いつ終わる命かどうかっていうもんだ。俺は許そう。だが俺の剣が許すかな?

 

「いや告白ぐらい許してやれよ。親バカかよ。」

 

「離せや。今のうちに告白ポイントを洗い出しておかないと闇討ちポイントを用意できねえ!」

 

「流石に討伐前に人員が減るのは容認出来ねーぞ!!」

 

「いやまあ告白ぐらいは別にどうだっていいんだ。問題は調子に乗ってセクハラ紛いのことをする《規制音》野郎の方だ。」

 

「詳しく。」

 

「ある町を離れるときも似たようなことがあってな。俺もカノンもスルーしてたんだが数人《規制音》がおってな。」

 

「おう。」

 

「天井と床にそれぞれ半分づつ埋めてやった。」

 

「.......剣で?」

 

「安心しろ、首をこう剣の平打ちで跳ね上げたり叩き落としたり。」

 

「いや平打ちとかいう以前にお前さんの馬鹿力じゃ首の骨折れて死ぬだろそれ.......」

 

「安心しろ、平打ちだ。」

 

「.......。」

 

「安心しろ、平打ちだ。」

 

「......そんな危機感の無いアホがいたとしても、数日で直るレベルにしといてくれ。作戦に響く。」

 

「勿論だとも。」

 

保証はしかねるがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






丸5日間、24時間中15時間くらいずっと寝てました。
ロングスイーパーを越えてるなと自分でも思います。
溜まりに溜まったタスクをこなすとまた眠気が.....


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