仮面ライダーヴェスタ   作:虎ノ門ブチアナ

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12TH LOVE ラスト・インターミッション

 トワイライト幹部との決戦から夜が明け、新たな1日が始まる。

 

 店長は修理を終えた玩具を整理すると、店舗のシャッターを開ける。

 

「店長…いつも思うのですが、この時間からお客様は来ないのでは」

 

 ハルカからの指摘を受け、店長が苦笑いを浮かべる。

 

「まぁそうだな、朝っぱらからウチに来るお客さんなんて一度もいなかったしな。でも店ってのはいつ誰が来ても良いようにオープンしとくのサ」

 

 すると、まるで開店のタイミングを見計らったように陽炎(かげろう)が来訪する。

 

「大将、やってるかい?」

「お前は…黒木陽炎」

(カゲ)ちゃんって呼んでね。太陽の(よう)なのにカゲって倒錯的で良いよな」

 

 おおよそ客人では無いであろう彼の到来に店長が眉を八の字にゆがめると、無視して開店準備を進める。

 

「えっオイオイオイオノス!? なんで無視してんだ!」

「冷やかしなら帰った帰った」

「ケチくさいこと言うなよ、仲間だろ?」

「一体何の用だ」

 

 邪険にする店長に、陽炎は少し頬をふくらませながらも用件を伝える。

 

「何は無くとも、お前に恩返しがしたくてな」

 

 そうか、と答えると店長は再び陽炎を無視して”OPEN”の看板を店にかける。

 

「また無視かよ!?」

「どうせそんなことだろうと思ったぜ…恩返しなんて必要ねーからな、帰ってくれていいぜ」

「ご無体(むたい)な~!」

 

 残念がる陽炎に、店長は不敵に微笑む。

 

「お前が見ず知らずの俺のために必死で戦ってくれたんだ、それだけで俺は十分だ。自分と同じ顔の人間なんて他の世界に行けばどこにでもいるだろ、いちいち俺の世界のことなんて気にしてたらキリがねーぞ」

「…いいや。キリが無くても、世界が違くても、俺の犯した(あやま)ちは俺が責任を取るんだ」

 

 常にふざけた態度を取る陽炎が真剣なまなざしを向ける。

 

「どうやら俺は…黒木陽炎はどこの世界でも極悪人らしい。だから仮面ライダーやらせてもらってる俺としちゃ肩身が狭いワケよ。ムカつくよな、同じ顔したアホのせいで自分がいっつも責められるんだから」

「そうか…お前の事情を理解せず無神経なことを言っちまったな。スマン」

「あ~いや、そうじゃなくてだな! 俺は、俺のことを信じてほしいだけなんだ」

 

 ライドエージェントとして世界を渡る中で、多くの場所で黒木陽炎が起こした混迷を目の当たりにしてきた。

 いつも別世界の自身に会うことはできず、手遅れで、瓜二つの自分が責められてきた。

 

「だからさ、誰かのために戦って、黒木陽炎でも良いヤツなんだって、思っていてくれるように、たとえ俺だけでも正しくありたいって思うんだ」

「……」

「オイオノス、アンタの家族を手にかけたのは俺じゃないかも知れないが、俺は自分の罪だと思って生きてる、そして償いのために生きていく。それが俺にとっての正義で、仮面ライダーとしての道だ」

 

 熱い決意を語る陽炎に、店長はうつむいたままおう、と返事をする。

 

「それと俺は藤村金剛、以後よろしくな、陽炎」

 

 2人が握手をしていると、信真、紅子、ユカリがやって来る。

 

「店長、おはようございます! 昨晩は大変でしたけど、色々と話したいことがあったんでシフト前に来ちゃいました」

「おはよっす、信真」

 

 と、信真は陽炎に視線を移す。

 

「あなたは…もしかして」

「そ、例の助っ人ライダー、仮面ライダーイオニアンこと黒木陽炎だ。(カゲ)ちゃんと呼んでね」

(カゲ)ちゃんさん、すか?」

「”さん”はいらな~い、フランクに頼むわ。タメ口も許しちゃうゾ」

 

 ウインクをする陽炎に信真は気圧(けお)されながらも微笑む。

 

「挨拶はいいが、いつトワイライトが現れるか知れない。信真少年の話はまだ私たちもまだ聞いていないし、早速聞かせてもらいたいのだが」

 

 紅子にせかされ、一行はダイヤ模型の中で腰を落ち着かせる。

 

――

 

「取り急ぎお話をさせてもらいますね。かいつまんで言うと、『トワイライトが狙う人間の特徴』と『ヴェスタに起こった異変』についてです」

 

 信真の話に全員が耳を傾ける。

 

 まず、トワイライトが狙う人間の特徴。

 自分や紅子が狙われたこと、幹部らが”愛”という言葉に過剰な拒否反応を示したことから、信真の予想によると、”愛を喪失した人”が標的にされ、トワイライトにされるのでは無いかと予想したのだ。

 

「トワイライトがなぜそうした人間を狙うのか…それはまだ謎なんすけど、まぁ共通点を見つけまして」

「信真が愛を失った…?」

「その話はまた追々」

 

 次に、ヴェスタに起こった異変。

 ヴェスタが”ドラゴン”ロムカードを使用した際、ブラックフォルトの弊害が無くなり、ベルトをしていなかった信真まで変身してしまった。

 

「あの時そんなことが起きてたのかよ!? 技術屋としてはほっとけねぇな!」

「今まで色んなライダーを見てきたがその件は初耳だぞ」

「原理は分からないんですが、まずは再現可能か試して、それからベルト内部の調査が必要かと」

 

 

 信真の指示を受け、紅子がもう一度同様の変身をしてみる。

 結果、前回と同じようにヴェスタとリンドが同時変身した。

 

「何がどうなってるんだ?」

「俺だって聞きたいですよ」

 

 店長と信真が頭を抱える。が、その状況を容易に再現できた以上、これは機能として考えられる。

 

「あとはジェネレートドライバーの中を調べてこの力の詳細を確認するか」

 

 そう告げると、店長が紅子のベルトを受け取って中央バックル部を取り外す。

 

「えっ!? 外せたんすかソレ!?」

「長年使ってたのに俺も知らなかったよ!?」

 

 驚く信真と陽炎をよそに店長が分解を始める。

 

「ライドロムカードの読み取りは全てこの中央部が担っている。ロムカードに関するデータもこん中に集約されてるからここで調べりゃどんな動作してんのか丸わかりってワケよ」

 

 そう言いながらベルト内部の端子をPCと接続させ、データを読み取っていく。

 

「……ふむ、何が起こってたのか大体わかったぞ」

「早いな!?」

 

 店長の調べたところによると、”ホーネット”と”ドラゴン”のロムカードを使用するヴェスタとリンドの2体に変身と装備、両方の効果が作用しているらしい。

 通常、変身の動作しか行わないはずの”ドラゴン”が左側のスロットに装填されたことで、装備をおこなうカードと同様のものと認識されてベルト内の認識にバグが生じ、一連の不具合とも言える動きを見せているのであった。

 

「つまり想定外の挙動を見せてんだな、ベルトが。これらの動作に対応した専用のアイテムを作ってやればバグが解消されて前の戦い以上の性能を発揮できると思うな」

 

 店長の説明に信真がなるほど、と返すと神妙な面持ちを向ける。

 

「店長、そのアイテムって俺が作ってもいいですか?」

「…確かに電子工作の心得があればいけなくも無い話だが…どうしたんだ急に」

「今度は俺の力で紅子さんを助けたいんです。俺は昨晩も紅子さんに守られて…悔しかったんです。情けないっすよ、全く」

 

 紅子は言い返すこともできず、信真の辛そうな顔を見つめることしかできなかった。

 

「だから、今ある俺の力をフル活用して、紅子さんを…みんなを守れる力を、自分で掴みたいんです! じゃなきゃ俺は…何一つ自分の思いを果たせなくなっちまう、気がするんです!!」

 

 仮面ライダーの変身にかかわる重要な機構の開発を信真に任せてもいいのか、店長は頭を悩ませるが、そんな彼に陽炎が助言する。

 

「コイツぁ男の頼みだ、如何(いかが)するよ、金剛」

「……そう言われると弱いな…しゃーねぇ、信真!」

「はい!」

「最強の仮面ライダー、お前の力で作ってみせろ! まぁ何かあったら手伝うけどな」

「…はいッ!!」

 

 

 それから、信真のアイテム制作作業が開始した。

 店長からプログラミングについて学び、それによって構成された装置類を得意の電子工作で繋げていく。

 

「どうだい、少年。順調かい?」

「あっ、紅子さん…お茶ありがとうございます」

 

 紅子が()れた緑茶を受け取り、すする。

 彼女は料理の腕前のみならず茶の淹れ方に関してもプロ級の腕前を持っているらしい。その美味に信真は舌鼓(したつづみ)を打つ。

 

「ところでなんだが信真少年、提案があるんだ。その新作は私でも扱えるように制作してもらえるかい?」

「…これは紅子さんを守るための力です。あなたが変身しなくても世界を守れるモノにしたいんです」

「私も、世界を守りたいんだよ」

 

 紅子がこぼすように放った一言に信真は口をつぐむ。

 

「仲間が戦っているのに何もできない悔しさは君が一番知っているだろう。私だってそうさ、これ以上大切な人を失いたくない。だから、私も戦う…君の隣でね」

「……」

 

 少し言葉に詰まりながらも、信真は答えを導く。

 

「わかりました。でも! あなたがピンチになるようなことは二度とさせません!! 俺が絶対守ります!!」

「なんだい、頼もしいなぁ少年〜?」

 

 茶化す紅子に信真はふてくされる。が、以前に信真が抱いていた恥ずかしさや反抗心とは少し違う心持ちが彼にはあった。

 

「はぁ…なんか知らんうちに紅子さんがこんなに大事になるなんて」

「? 何か言ったかい?」

「や、なんでも無いッス」

 

 

 数日後。

 CADで制作していた新たなアイテムの外装デザインをアルミ素材で出力した完成品が届いた。

 

「信真様、それがアイテムの外装ですね」

「ハルカさん! 貸してくれた漫画が参考になってデザインできたんですよね、ホントありがとうございます」

「何よりです」

 

 ハルカが頭を下げると、店長から渡されたガマ(ぐち)財布を持って外出しようとする。

 

「ところでハルカさん、いつも聞きそびれてたんすけど…どうして店長に厳しいんすか?」

「ああ、アレですか。アレは店長からのお願いなのです。かつての世界では地球で唯一のCDと対抗できる英雄として持て(はや)されておりまして、それが増長を生み、失敗したのだと…(ゆえ)に自らに過度な叱責をおこなう者が欲しいと言われたのです」

 

 店長のストイックな一面に触れ、信真が驚く。

 

「あっハルカ! その話はハズいからすんなっつったのに!? 罰として晩飯の食材買ってきてもらうぞ!!」

「嫌ですー」

 

 2人のやり取りに信真は苦笑いしながら作業を再開する。

 

――

 

「……できた」

 

 小声でつぶやいた信真がアイテムの完成とともに大きく息を吐く。

 その様子を見ていた面々が信真の努力を激励する。

 

「なんちゅー器用さだよ!? マジでやったな信真!」

「あざます、(カゲ)ちゃん」

「主さま、お見事です」

「ユカリも手伝ってくれたじゃん、俺だけの頑張りじゃないよ」

 

「これで君を守れるんだね」

 

 紅子の言葉に信真は不敵な笑みを浮かべる。

 

「俺が、紅子さんを守るんです」

「こんなトコで言い合ってないでテストしろよな」

 

 店長に(さと)され、信真はジェネレートドライバーを腰に巻く。

 

「ところでこのアイテムに名前はあんのか?」

 

 陽炎に問われ、全く考えていなかった信真はそういえば、と顎に手を当てる。

 

「ネーミングセンスある人に名付けてほしいっすね」

「だったら”ラヴァーズ”と付けるのはどうだい?」

「ラヴァーズ? とっからその命名が」

 

 紅子の提案に信真が由来を問う。

 彼女いわく、リンド、オイオノス、ヴェスタ、イオニアンのアルファベット頭文字を抜き取ると”LOVE”になるから、そしてそれを複数形にすることでラヴァーズと表したのだ。

 

「愛する者たち、ってか。いいじゃんソレ、俺も世界をアイラブユーだしよ」

 

 手でハートを形づくる陽炎に店長もうなづく。

 

「俺も異論はねぇ。あ、だけど機器の名称として”アダプター”って加えてほしいな。それがなんであるか分かりやすいほうが名前としちゃしっくりくるだろ」

「わかりました、そしたらこの強化アイテムの名前は『ラヴァーズ・アダプター』としましょう」

 

 そう宣言すると、信真は腰のベルト中央部をラヴァーズ・アダプターに付け替え、”ドラゴン”を右スロットに、”ホーネット”を左スロットに装填する。

 

「以前私が使ったときとは装填するカードが逆なんだねぇ」

「俺が変身するからリンドをベースにするためです」

 

 説明を終えた信真がベルトを操作し、その力を実証する。

 

「……うん、想定通りの稼働をしています。これこそが新たなる力、名前はなんてつけようか」

 

 

 強化されたリンドの力を得た信真が唸っていると、トワイライトの出現を知らせる通知音が響く。

 

「久しぶりのトワイライトか…みんな、急行するぞ!」

 

 店長に続いて陽炎、紅子とパートナーらがマシンワールドシフターに乗り込む。

 信真も変身を解除して一向を追う。

 

「信真少年、ラヴァーズ・アダプターはピンチのときまで使わないようにね。敵の強さを把握してから奥の手を出すものさ」

 

 そうします、と信真が返す頃には一行はトワイライトの出現地点に到着していた。

 目の前にはクラゲを模した黒い怪人が立っていた。

 

「よくきたクラ! ライドエージェントども、ブッ潰してやるクラ」

 

 怪人がこれみよがしに高笑いを浮かべていると、背後に立つ男の手が怪人の心臓部をつらぬいた。

 

「…あれ?」

 

 全くの見せ場なく、クラゲ怪人が機能を停止し、ただの鉄屑(てつくず)となり果て、その場に倒れ込む。

 

「え? あの怪人…やられた?」

「イヤイヤ、ンー。いかにも、オレが破壊した」

 

 動揺する信真に言葉をかけたのは、クラゲ怪人を手にかけた男だった。

 一瞬で怪人を葬ったにも関わらず顔色一つ変えない不気味な存在に、一同は困惑するのみだった。

 ただ1人をのぞいては。

 

「お前…部下を使って俺たちを呼び出したっていうのか……?」

「そうだ、わざわざお前らを呼びつけるためにオレの力を使いたくなくてな。緑のからお前らの拠点を聞きそびれてたし、探すのも面倒なワケだ」

「相変わらずクズなんだな」

 

 男を前に憤慨する店長を見て、信真は何か嫌な予感をよぎらせながらも一言訪ねた。

 

「店長…あの人を知ってるんですか?」

「アイツは人間なんかじゃねぇ…俺の家族を、世界を奪った、”癌”だ」

 

 癌、そう言われて全員が彼の正体を察知する。

 それと同時に、その覇気に恐ろしさを感じ始めていた。

 

「イヤイヤ、ンー。何も今からお前らを壊す…違うな、殺す、だ。そう、殺すワケじゃない。ただデータ取りを終わらせたくてな」

 

 そう言うと男―――クリアー・デザイアラヴは紅子に近づく。

 

「お前! 紅子さんから離れろ!!」

「落ち着けって、紫のこども。少し聞きたいんだが、お前はこの紅いのが好きなのか?」

「す、好きかはわかんないけど、すごく大事な人だ! データの回収が目的なら紅子さんに危害を加えるな!」

 

 うんうんとうなづくとクリアーは紅子に視線を移す。

 

「紅いの、お前はあのこどもが好きか?」

「信真少年はこどもなんかじゃない! 強い魂を持った戦士だ!!」

「で好きなのか聞いてるんだが」

「大好きだ! 愛している!!」

 

 紅子の宣言にクリアーは微笑む。

 

「いいじゃんか、想定以上に『オリジンオブラブ』が育ったな」

 

 と、クリアーが笑うと―――。

 

 

 ―――紅子の唇を奪った。

 

 

「―――」

 

 紅子と信真、2人の思考が真っ白になったのを尻目に、クリアーは唇を介して紅子の収集した情報を吸収した。

 

「イヤイヤ、ンー」

「お前―――何、してんだよ」

 

「本来この紅いのは俺に人間の”愛”という情報を教えるために作られたアバターだったんだよ。その辺の愛を失った女を使い、その辺の愛を失った男とくっつける。そうして育まれたクソ強い原始的な愛のエネルギー…『オリジンオブラブ』を得て、それをオレに授ける。このオリジンオブラブがあれば…俺は透明で無くなる」

 

 やたら饒舌に説明するクリアーに信真の精神は崩壊寸前であった。

 目の前でおこなわれた悪虐非道に、何も言えなくなっていた。

 

「これが人の愛か…これでようやく俺は透明なモノから、何者かになれる」

 

 クリアーが感嘆すると、その恐るべき力で衝撃波を発生させて信真たちを吹き飛ばす。

 

「! 紅子さん!!」

 

 紅子はクリアーの手中にあり、そのまま彼が立ち去ろうとする。

 

「待て! 紅子さんを返せッ!!」

「コイツには継続してオリジンオブラブを供給してもらう必要があるからな。もらってくぞ」

 

「待て!! チクショウ!! 待てぇぇぇぇぇ!!」

 

 怒り狂う信真に目もくれず、紅子と共にクリアーは姿を消す。

 残された面々は、圧倒的な力を垣間見(かいまみ)せる敵に何もできないまま、呆然と立ち尽くしていた。

 

「よくも…よくも紅子さんを……!!」

 

 悔しさを抑えられないまま、信真は天を仰いで叫び続ける。

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