仮面ライダーヴェスタ   作:虎ノ門ブチアナ

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FINAL LOVE The Spicy “ORIGIN OF LOVE”

「刺激的にいこうか!」

 

 4人の叫びがクリアーを圧倒する。

 

 計画が崩壊し、怒りの感情に身をゆだねたクリアーの攻撃がライダーらを狙う。が、力任せな攻撃で彼らを倒すことはできない。

 

「今まで戦ってきた幹部よりも弱いぜ、アイツ!」

「油断するな信真! 火力はやたら高いぞ!」

 

 リンドとオイオノスがクリアーの放つ光線を回避するが、その凄まじい威力による爆風にあおられる。

 その一瞬を見はからってクリアーは都庁から飛び降りる。

 

「あっ! アイツまさか、さらに民間人を巻き込む気か!?」

「させるかッ!」

 

 ヴェスタがクリアーを追おうとするが、オイオノスに止められる。

 

「この高さからの着地は流石に死ぬぞ!」

「だったら! 飛べる人数を増やしますっ」

 

 リンドがそう言い放つと、オイオノスに”アームド”ロムカードを託す。

 

「ユカリを頼みます」

 

 何かに気づいたオイオノスがうなづくと、ヴェスタへとラヴァーズ・アダプターが手渡される。

 

「紅子さん、これで強化変身を」

 

 ああ、と返したリンドはバックル部を取りかえ、”ホーネット”とリンドから渡された”ドラゴン”で新たなる姿へと変身する。

 

《ヴェスタ・ブーストアップ》

 

「いこうか―――大変身!」

 

《インジェクト・ヴェスタ・ジェネレート―――フォーム・アット…リンド!!》

 

 ヴェスタからリンドへ…リンドからヴェスタへと―――。

 2人の愛によって結ばれた力が、互いを補い、高め、進化する。

 

 

 落下しながら世界を見渡すクリアーに新しき力を得たヴェスタとリンドが追いつく。

 装甲に意匠を残したまま強化された2対の戦士。それぞれのメインカラーを差し色に(はい)した彼らの姿は、まさしく一心同体というべきであった。

 

冥途(めいど)の土産に名乗っておこう、今の私は仮面ライダー…ヴェスタ(エル)!」

「ひるがえったこの名前、刻んで滅べ!!」

 

 ヴェスタL、そしてリンド(アール)。2人の戦士が同時にクリアーを蹴りつけ、都庁の外壁に叩き付ける。

 

「貴様らァァァァァッ!!」

 

 クリアーによる光線の乱射と増殖する腕による殴打(おうだ)が2人を襲う。しかし彼らが(たずさ)えた翼から繰り出される高機動で全てを回避、そして周囲への被害を最小限にとどめるように防御もおこなう。

 

 負けじとクリアーがその体を(みにく)く変貌させながらヴェスタL、リンドRへと飛びかかる。

 どこが腕か脚か頭なのか、何もわからなくなった半透明な異形のバケモノが迫りくるが、2人は微動(びどう)だにせず同時にかかと落としを決め、直下にある都庁広場へと墜落させる。

 落下の衝撃によってクリアーが動きを止めていると、ヘリポートから飛び降りたオイオノス、イオニアンがヴェスタLとリンドRに抱えられて降下してきた。

 

「それじゃ、行きますよ店長!」

「黒木君、準備はいいかい?」

 

 放り投げられたオイオノス、イオニアンの2人はそれぞれの”アームド”ロムカードを装填、装備すると早速必殺技を繰り出す。

 

《パンドラ! アームド! 最終激破!》

《シャドウ! アームド! 最終激破!》

 

()ぜろ…パワーアームグラインド!!」

陽討(かげうち)無限掌(むげんしょう)!!」

 

 2人の鉄拳が再起しようとするクリアーを押し込むように打ち倒す。

 

「…邪魔…だァ!!」

 

 クリアーの体から無数に生える腕が彼らを掴もうと伸びるが、ヴェスタLとリンドRの翼に切り裂かれる。

 

「今です、店長!!」

 

 リンドLから指示を受けたオイオノスはさきほど借りていたリンドの”アームド”ロムカードへと装填しなおすと、ユカリセイバーを呼び出す。

 

《インジェクト・エフェクト・ジェネレート―――イクイップメント・”アームド”》

《掴み取れ!》

 

 手に持った(つるぎ)でオイオノスはクリアーの(かろう)うじて形状を残していた頭部を突き刺した。

 

「がッッ!?」

「食らえ…CD!」

 

 クリアーの額を傷つけるオイオノスが喉の奥からひねり出すような声を上げる。

 

「オイオノス―――どうしてお前はオレを傷つける…? オレはただ、何者かになりたかっただけなんだ。人々から見放され、世界からも忘れられ、無為(むい)に消耗させられたオレという命に(むく)いたかっただけなんだ」

「……それはお前が生きたいと思う理由か」

「ああ、オレという可哀そうな存在の、生きたい理由だ」

「それが世界を滅ぼしていい理由にはなんねぇよ」

「…オレは世界を壊す(何者か)になっちまったんだ、だから自分の役割を全うしたまでだ!」

「そうか、お前も大変だな」

 

 そう呟くと、オイオノスはクリアーの額からユカリセイバーを引き抜くと、彼を見下ろす。

 

「同情はしてやる、だが…お前みたいな大悪人の存在は許さねぇ」

 

 最後にそう告げると、4人が合流し、弱体化を続けるクリアーへと最後の一撃を加えんと身構える。

 

「オレは…透明になんかなりたくない……愛がほしい…愛をくれない世界などいらない」

「哀れだね、クリアー・デザイアラヴ。誰かに愛されたいなら、愛されるような人間であるべきだった」

「社会に…世界に認められたいなら、方法を選ぶべきだぜ」

 

 ヴェスタL、リンドRに(さと)され、クリアーは顔をゆがめる。

 

「…お前らの愛を奪うようなこの世界が、憎くは無いのか」

 

 クリアーの問いに対して、ライダーたちは黙々と必殺技の動作をおこなう。

 

《ヴェスタ! 超・最終激破!》

《リンド! 超・最終激破!》

《パンドラ! 最終激破!》

《シャドウ! 最終激破!》

 

「最後に言っておこう……愛は失うばかりじゃない、君もそれに気づけていればこうはならなかったのだろうな」

 

 ヴェスタの言葉と共に4人のライダーが跳躍し、宙に舞う。

 空中で前転したあと、脚をクリアーへ向けて重力のままに勢いづけて飛び蹴りをする。

 

 ラヴァーズ・ライダーキック。愛を失ってもなお戦い、新たな愛を紡いだ戦士たちによる、愚か者への制裁(せいさい)

 クリアーは苦しまぎれに全方位に光線、火炎、幾多(いくた)の攻撃をしかけるも、彼らには効かない。クリアーがずっと求め続けたオリジンオブラブの力が見せる真の力が、彼らのもとにあったからだ。

 

「クソ…! 俺は…透明になんか…なりたくない!!」

「アンタはもう充分透明なんかじゃねぇよ…悪というドス黒い色に染まっちまったがな!!」

 

 リンドRの言葉にクリアーは諦観(ていかん)を含んだため息をついた。

 

「馬鹿なオレは…敵として死ぬことだけが存在価値だったワケか…イヤイヤ、ンー……」

 

 その言葉と共にクリアーは爆散、消滅する。

 

 

 無事トワイライトを壊滅させた4人は爆炎を見つめて複雑な気持ちに浸る。

 

「アイツ…死んだ、んですよね」

「気を落とすな信真。ライドエージェントに倒されたCD(カンケルデータ)は別の世界で転生し、()(とう)に生きていくと聞いている。アイツもそこでいいヤツになってるかもな…だから、笑え!」

 

 変身を解除した4人は、笑いながらお互いの健闘を称える。

 そして、日の出が彼らを照らしていく。

 

 と同時にハルカ、ユカリ、カナタが大量の”メモリー”ロムカードを砕き、東京に広がった被害をすべて消していく。

 

 

「なんかスッゲー勝ったぞ、って気分すね…紅子さん」

 

 信真が視線を移した先にいる紅子は、全身が破損しひび割れていた。

 

「紅子さん!?」

 

 クリアーによる吸収や戦いの中で、機械の耐久性を超えたダメージを負っており、いわゆる寿命を迎えていたのだ。

 そんな彼女の終わりを強調するかの様に、“ホーネット”ロムカードに亀裂が入る。

 彼女の象徴とも言えたそのカードの無惨な状態に信真は嫌でも紅子が果てていくことを実感させられた。

 

「オリジンオブラブの供給による電脳の欠損…ヴェスタLの機動性に耐えられなくなった……原因はいろいろあるが、そんなのはどうでもいいね…」

「紅子さん、すぐに店長と修理しますから!」

「ダメだな、今度こそ私はジャンクだ。という訳で最後に君に伝えなくちゃいけないことがある」

「紅子さん! ちょっと待ってくださいよ!!」

 

 信真の呼びかけに微笑みながら、紅子はカードホルダーから”メモリー”を取り出し、握りしめる。

 

「…最後に、信真―――愛してるよ」

「そんな…紅子さん」

「なぁ、後生だ。最後に…好きだって言ってくれないか」

 

 今ですか、と呆れと悲しみを織り交ぜた言葉を漏らす信真だったが、安らかな表情の紅子を見て、涙を浮かべながら口を開いた。

 

「…一回しか言わないんでちゃんと聴いててくださいね」

「ああ、聴いてるよ」

「―――あなたのことが、好きです」

 

 既に紅子の意識は無かった。

 結局、彼女を守ることはできなかった。

 自分の弱さに信真はただ(なげ)く。

 

 ―――それでも。

 

「この世界は守りましたよ、紅子さん」

 

 と、紅子が持っていた“メモリー”ロムカードが目に入る。

 それを見たとき、信真は何かに気づいた。

 

(紅子さん…そういうことすか)

 

――

 

 1ヶ月後。

 

「……もうこんな時間か」

 

 重たいまぶたをこすりながら、紅子が起き上がる。

 

 トワイライトアバターとしての体を失った彼女は、今までの記憶を持たない人間としての生活に戻っていた。

 恩師である(おぼし)の死はやはり受け入れられないが、忙しい日々の中で哀しみが()えてきていると思えていた。

 

 だが、記憶の奥底にうっすらと浮かぶ少年が一体何者なのか、それだけがわからなかった。

 

(…気のせいか)

 

 気の迷いだと自嘲(じちょう)しながら、紅子が自転車をこいで病院へと走る。

 

 

 が。

 

「カーカッカッ蚊! この病院をオレの血液レストランにしてやるよ!」

 

 ―――怪人。

 日常をいともたやすく破壊する、蚊のバケモノが病院内の人々を襲っている。

 

「な…なにあれ……」

 

 怯える紅子を発見した蚊の怪人は、口にある吸血用の針を小刻みに動かしながら歩みよる。

 

「カカ、べっぴんさんじゃない蚊。お前からも血をいただく蚊……」

 

 怪人に狙いをつけられた紅子は、そこから逃げようとするが腰が抜けて動けなくなってしまった。

 

「嘘…」

 

 自分はここで死ぬ。

 そう思ったとき、今まで出会った人々の姿が頭をよぎる。

 父、思…そして。

 

(頭の中に浮かぶ…あの少年? なんで今……)

 

 鮮明に写りはじめたその少年は、まぼろしでは無かった。

 今、自分の目の前で、怪人に蹴りを食らわせ、紅子を守った。

 

「君は……」

「やっと守れた…紅子さん」

「しん、ま」

 

 記憶の最奥(さいおう)から彼の名前が呼び起こされる。

 紅子は、彼を知っている。

 

「1ヶ月間探したんですからね」

 

 そう言うと彼―――信真はかつて紅子から手渡された”メモリー”を返却する。

 紅子がそれに触れると、今までの記憶がよみがえる。

 

「紅子さんが最後に渡してくれたコレん中に、自分の記憶を全部詰め込んでたんです。こうなることをわかってて、あとで思い出せるように」

「ああ、まさかまた記憶喪失を経験するなんてね。笑えるよ」

 

 紅子が不敵な笑みを浮かべると、信真に挑発するようなハンドサインを送る。

 

「あ、ハイハイ、ベルトすね…コイツで一緒に戦いましょう、紅子さん」

「わかってるじゃないか、信真。それじゃ―――」

 

《ジェネレートドライバー》

 

「!? エージェントが…ふたり!?」

 

 たじろぐ怪人に2人は笑みを向ける。

 

「―――刺激的にいこうか」

 

 

『仮面ライダーヴェスタ』完

 

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