仮面ライダーヴェスタ   作:虎ノ門ブチアナ

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7TH LOVE 天翔ける竜のひらめき

「まさか信真が蘇生するとはな」

「やっぱあんまし驚かないですね、店長は」

 

 紅子の体を補修しながら会話する信真と店長。

 ハルカは信真の身を案じながらも店番を担当している。

 信真の話を聞いた店長はどうやら彼が生き返ったという話に心当たりがあるようだった。

 

「だってよ…起こってんだよ、俺と同じことがよ」

 

 そう言うと、店長は目を閉じる。

 

 店長と同じことが起こった―――その言葉の意味は、信真が持ち帰ったもう1つのジェネレートドライバーが物語っていた。

 

「信真お前……ライドエージェントになったのか」

「はい。死んだな〜と思ったら、機関を名乗る声に導かれて―――」

 

 信真は、自らの身に起こった出来事を回想しながら店長に語る。

 

――

 

「―――聞こえますか、竜胆信真さん」

 

 紅子をかばって息絶えたはずの信真を呼ぶ声が聞こえてきた。

 白靄(しらもや)に覆われた視界の中、信真は声に気付き、意識を取り戻した。

 

「ここ…天国?」

「天国ではありません…私は『対CD機関』、世界と戦うライドエージェントのオペレーターです。不幸にも死んでしまったあなたとの契約を結ぶため、生と死の狭間から語りかけています」

「うーん、オカルトじみた話されても困るんすけど」

 

 状況を飲み込めない信真に、オペレーターを名乗る声は申し訳ありません、と丁寧な謝罪を返す。

 

「信真さんはライドエージェントをご存知ですね?」

「ああ、いわゆる仮面ライダーっすね」

(ちまた)ではそう呼ばれていたりしますね。それで…単刀直入に申し上げますとあなたにもなってもらいたいのです、その”仮面ライダー”に」

 

 信真から奇妙な声が漏れる。

 

「俺が、仮面ライダー? …まさか俺には仮面ライダーになる資格があって、今契約すれば生き返らせてもらえるって感じのアレっすか?」

「その通りです、よく分かりましたね」

「あはは、妄想です」

 

 場に幾ばくかの静寂が流れたあと、信真とコンタクトする声…機関の者は話を再開する。

 

「ですが、仮面ライダーの資格を持つ者は無条件で生命を保障すると当機関では規約していますので、契約に応じずとも生き返ることは可能です」

「マジか」

「なので、あなたがライドエージェントとして戦うかどうかはお任せします。ただ一つ申し上げますと、ライドエージェントとして契約した者はその命果てるまで戦っていただきます」

 

 途端、重々しい言葉を突き付けられ、信真は息を呑む。

 

「過酷ですが誰かが世界を守らねばならないというのが実情なのです。答えは今すぐで無くとも構いませんが、よろしければ後で差し上げる端末にご連絡を―――」

「あーやります、やりますよ仮面ライダー」

 

 信真の即答にオペレーターはえ、と返す。

 その驚きように信真が笑うと、言葉を続ける。

 

「その力があれば紅子さんのことを守れるんですよね? だったら大変そうだけどやります。あ、でもたまには休みも欲しいかな…あと学業ともできれば両立させたいな~」

「はい、それらのご希望を叶えるのは容易ですが…本当によろしいのですか?」

「その力で紅子さんや店長の助けになるなら後悔はしません!」

 

「かしこまりました、これにて契約を開始しますがよろしいでしょうか?」

「よろしいですっ」

「了解しました…エージェントID・F25V766。対CD機関のライドエージェントにあなたを任命いたします」

 

 信真がうなづくと、手元にハルカが持っていたものと同様の端末が届く。

 

「あとは…パートナーも派遣しましたのでじきに会えるでしょう、これで契約作業は完了です。これからよろしくお願いいたしますね」

 

 オペレーターが告げると、白靄がさらに濃くなり、目の前が真っ白になる。

 そして次に目を開いたときには、信真は倒れている紅子と、イエローマンティスを発見したのだった。

 

――

 

「無我夢中だったんすけど、なぜか仮面ライダーに変身できちゃって、そんで勝っちゃって、紅子さんを運んじゃって…っていうのがここまでの経緯です」

「やっぱりライドエージェントへの変身は無意識にインプットされていたか、俺の時もそうだった」

「おっと店長、ライドエージェントじゃなくって、仮面ライダー! の方がカッコいいっすよ」

 

 信真の熱烈な訂正に店長はたしかに、と微笑む。

 

「仮面ライダーとして戦うのはキツいぞ、それでもお前は―――」

「戦います、俺だって守りたいモノがありますから」

 

 そう言って覚悟を表明する信真に店長は何も言わず、うなづいた。

 

「あれ? そーいや信真、パートナーはどこだ? すぐに派遣されてくると思ってたんだが」

「実はまだ見当たんなくて…シャイなんすかね?」

「かもな……」

 

 と、信真とハルカの端末から同時に通知音が鳴る。

 

「店長、トワイライトアバターです」

「らしいな」

 

 そう呟くと、店長は、作業台の上に置かれた紅子のジェネレートドライバーを凝視する。

 恐怖で変身ができなくなった自分の不甲斐なさを思い出しながら、彼は眉を曇らせる。

 

「大丈夫っす店長、俺が仮面ライダーになりたかったのは、店長が戦わなくても良いようにって理由もあるんですよ」

 

 信真が笑うと、作業台に置かれたもう1つのジェネレートドライバーを軽々と手に取る。

 

「…信真、1つだけ聞いときたい」

「はひ?」

「お前は…自分の大切な人や家族が殺されても、トワイライトと戦えるか?」

 

 店長の問いに信真はいつもの太陽のような笑顔とは違う、少し困った笑みを見せる。

 

「家族はもうどうでも良いし、大切な人ならもう死んでます」

「お前……!」

 

 店長が声をかけるが、信真は何も言わずにワールドシフターへまたがる。

 

「じゃ行ってきます!」

 

 ワールドシフターと共に信真がその場から消える。

 信真の秘めたる過去の一端に触れた店長には、返す言葉が無かった。

 

――

 

「ゲジゲジゲジ! さ~て本日のターゲットはどこゲジ?」

「見つけた、トワイライトアバター!」

 

 信真がおおよそ”ゲジ”の姿をした怪人を指差すと、怪人は気持ちの悪い生えそろった白い歯をむき出しにする。

 

「きっっしょいデザインだなお前! 名前はどうせブラックゲジゲジとかだろ」

「ゲジジジ! 正解はブラックスクティゲラコレオプ―――」

 

《ジェネレートドライバー》

 

「あっごめん名前なんて?」

「だから、ブラックスクティゲラコレ―――」

「変身!」

「聞けよ! 」

 

 変身ポーズの練習をしていたところ、声まで出てしまった信真はゲジ怪人の叱責に頭をかく。

 

「すんません、変身ってめっちゃ(りき)んじゃうんすよ」

「人が話してるときに変身の練習すんじゃねーゲジ…改めて、俺はブラックスクティゲラコレオプトラタ。 覚えた?」

「覚えられません!」

 

 信真が叫ぶと、ブラックスクティゲラコレオプトラタ、以下『ブラックゲジ』が憤慨する。

 

「お前…どれだけ人をコケにすりゃ気が済むゲジ…?」

「でもゲジさんも”ゲジ”って言っちゃってんじゃないすかぁ!」

 

 痛いところを突かれたブラックゲジが怒りに身を任せ腕のケーブルを伸ばし信真を拘束する。

 

「ターゲット変更、約束も無視ムシ、お前を殺すゲジ!!」

 

 ブラックゲジの締め付けにより信真は息もできない状態で体の自由が奪われる。

 が、ケーブルが何者かによって断ち切られた。

 

「ゲッ!?」

 

 咳き込む信真がよろけると、その体を忍者のような装いの少女が支えた。

 

(あるじ)さま、無事でござるか」

「君は…もしやパートナー?」

「いかにも…かつての学びから主さまの危機を影から支えておりました」

「何はともあれ、助かりました……」

 

 感謝する信真に少女は一礼すると、姿を消す。一瞬でその場からいなくなった彼女に信真は驚くが、今は敵を倒すことを優先する。ようやく体が動かせるようになり、ホルダーからライドロムカードを取り出した。

 そこに描かれているのは竜胆(りんどう)色の竜。

 

 カードをジェネレートドライバーにセットすると、両腕を前に伸ばしたあと、左腕を引いて腰を落とす。

 右腕を突き出した空手の構えのような態勢を取ると、信真は叫ぶ。

 

「変身ッ!」

 

 そして勢いよく右スロットを中央へスライド、ベルト手前で両手首を交差させ、息を吐く。

 

《インジェクト・エージェント・ジェネレート―――フォーム・アット・”ドラゴン”》

《激しく(ひるがえ)せ!》

 

 その変身音と共に、信真の体に竜を模した竜胆の鎧が装着される。

 その背面には翼と推進器が備え付けられ、大空を羽ばたく姿を連想させる。

 

「え……ライドエージェントは、レッドベスパだけじゃなかったんゲジ…?」

「ついこないだまではね」

 

 竜の戦士は翼を広げると、格闘ゲームを真似た派手な戦闘態勢をとる。

 

「仮面ライダー竜胆(リンド)……刺激的にいくぜ」

 

 怯みながらも隙を見つけたブラックゲジは再び腕のケーブルでリンドを拘束しようとする。が、リンドは飛翔しそれを回避する。

 

「と、飛んだ…! 卑怯卑劣ゲジ!」

「こちとら戦いは素人なんだ、有利なポジションで戦うゲジよ!」

 

 敵の語尾を真似て煽りながら、リンドはブラックゲジのケーブルを回避しつつパンチやキックを食らわせる。

 

 が、それだけでは決定打になり得ない。どうしてもリンドの攻撃力が足りないのだ。

 

「そんなへなちょこ攻(ゲジ)じゃ俺は倒せないゲジよ」

「ゲジゲジうっせーわ! 大人しく待ってろ今すぐお前をブッ倒してやっから!」

 

 啖呵(たんか)を切るリンドではあったが、必殺技を使ってなお敵を撃破できるとも限らない。

 決め手に欠けるこの状況においてリンドは悩むが、腰に手を当てたときある方法を思いついた。

 腰に手を当てた姿勢からホルダーへと手を伸ばし、1枚のライドロムカードを見つける。

 

「アームド…そうか、コレ武器のカードか! やっぱもう1枚くらいカード支給されてたな…!」

 

 嬉々として”アームド”のカードを左側スロットに装填、中央へスライドさせる。

 

《インジェクト・エフェクト・ジェネレート―――イクイップメント・”アームド”》

《掴み取れ!》

 

 しかし、その音声の割には武器が出現しない。故障かと疑ったリンドだったが、次の瞬間、それが杞憂であったと知る。

 

「主さま、拙者を使うでござる!」

 

 その意味不明な言葉と共に件の忍者少女が現れると、その体を眩く発光させ、巨大な大剣へと姿を変えた。

 

「え、武器って君!? だいじょーぶ、体痛くないの!?」

「痛くないでござる。拙者らパートナーに備わったFFR(ファイナルフォームライド)機構によるモノゆえ、存分に使うでござるよ」

「ファ…? よく分からないけど、これで決めるぜ!!」

 

 専用の武器を手にしたリンドは飛行速度を上げ、ブラックゲジのケーブルを一刀両断する。

 

「ヒューッ最高! この切れ味は冷却機械(ヒートシンク)で指切った時ぶりだぜ!」

 

 恐ろしいほどの切断性能にリンドは昂る。一方のブラックゲジは彼とは裏腹に驚愕と恐怖で顔を歪ませていた。

 

「ところでパートナーさん、君の名は?」

「拙者の名は『ユカリ』…そうお呼びいただければ」

「ユカリさんね、了解。じゃあ武器になった時の名前は『ユカリセイバー』でどうだ!」

「……好きに読んでいただければと」

 

 リンドが頷くと、右側スロットを中央にスライドし直してから、再び左側スロットを中央へとスライドさせる。

 

《ドラゴン! アームド! 最終激破!》

 

「ぶった斬れ、ユカリ! セイバー! エェェェンド!!」

 

 必殺技を高らかに叫んだリンドは背部からの出力を最大にしてブラックゲジへと突っ込み、胴体を横一文字に切り倒す。

 機械の断面を露わにしながら活動を停止したブラックゲジはそのまま爆散する。

 

――

 

「という訳で…店長、俺勝ちました!」

「記憶処理はしたか?」

「大丈夫です!」

 

 派手な勝利を決めた信真はサムズアップしながら店長に報告すると、彼も少し微笑んで信真の肩を叩く。

 

「それでそっちがお前のパートナーか。随分とニンジャな見た目だな」

「流石に目立ちすぎるんでなんか別の服とかあれば良いんですけど…」

 

 信真が顎に手をあてて悩んでいると、ユカリはなぜか持っているファッション雑誌を信真に見せる。

 

「現代に沿った服装なら研究させていただくので、もうしばらく待つでござる。なお服飾費は経費から落とすでござる」

「えっどこの経費?」

「機関だナ…あそこは福利厚生結構しっかりしてんだよな、この店の開業費も機関が出資してくれてるし」

 

 ますます訳がわからなくなる信真だったが、パートナーの健全な生活が守られることは理解できた。

 

「それじゃあユカリさんは―――」

「ユカリと呼び捨てて構わないでござるよ」

「…ユカリ、は急に現れるとびっくりするからこれからは普通に生活してほしいな」

 

 普通、と言われてユカリは首を傾げる。

 

「拙者が以前エージェントとして活動していたのは戦乱の世界…くノ一(くのいち)として召使われることが当たり前でござった……ゆえにまだこの世界の平時に慣れず、申し訳ない」

「これから知っていけばいいよ」

 

 信真が笑うと、ユカリは頭を下げる。

 

「ところでハルカ、お前も女の子だし服装に気を遣ったら? いっつもメイド服じゃねーか」

「気に入ったら飽きるまで同じ物を着る、ヘビロテ万歳です」

 

――

 

 トワイライト幹部、ブルーバット―――蒼い軍服の(おきな)は、先ほどブラックゲジとリンドが戦っていた場所を見つめ、腕を組む。

 

(まるで何事も無かったかのように全てが修復されている…戦闘していたブラックアバターの残骸もすべて消滅しているが……ワシは忘れておらんぞ、ライドエージェント)

 

 ブルーバットはどうやら先の戦いを観戦していたらしい。記憶処理をおこなうメモリーロムカードを使ってもトワイライトアバターから記憶は無くならない。残された戦いの情報を活かしブルーバットは次の作戦を考える。

 

(恐らくあれはこの世界で誕生したライドエージェント…イエローマンティスめ、やらかしおったな。だが、まだ未熟な奴を倒すのは容易なことよ)

「…近い内にしとめてやるわ、ライドエージェント・リンド―――!」

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