【完結】クイーン・オブ・デザイア~ソシテ宇宙ハ灰ト化ス~ 作:詠符音黎
エーファが学園を去ってからしばらく。世の中の状況は大きく動いていった。
スレッタはエアリアルを奪われ、ミオリネはグエルを後ろ盾にベネリットグループの代表戦に出馬。
ミオリネが地球のアーシアンとの交渉をするために地球に降り立つも、そこでエアリアルによって逆に争いの火蓋を切ってしまう。
ミオリネはその渦中の人間として報道され、グエルが解決のために地球に降り立つ。
だが、そこでグエルはサリウス誘拐の首謀者がシャディクであることを知り、学園に急いで向かっていくのだった。
そして、グエルとシャディクは、学園宙域で戦いの火蓋を切る……。
「シャディク! サリウス代表をどこへ隠した!」
「グエルっ! お前がそんなだからミオリネは!」
グエルのダリルバルデとシャディクのミカエリスが宇宙で火花を散らす。
そして、一方でグエルと共に訪れたケナンジ・アベリー率いるドミニコス隊がシャディクの配下であるサビーナを始めとする少女達との戦闘を繰り広げる。
ドミニコス隊と少女達の戦闘はドミニコス隊有利に進み、一方でグエルとシャディクの戦闘は拮抗していた。
また、そんな状況でシャディクは軟禁していたノレアやニカ、五号を解放。
感情にかられたノレアが学園を攻撃し始める。
「壊してやる……学園ごと、何もかも!」
状況は混沌としていた。
そんな状況で、宙域にある影が接近していた。
エーファのモビルアーマー、エーヴィヒ・ヴァインダーケーレン、そしてソフィのガンダム・ルブリス・ウルである。
「ふむ、大分大事になっているね。……ソフィ、やる事は分かってるね?」
「うん……で、でも、私……」
「分かっているね?」
「……はい、お姉ちゃん」
通信で念を押すように言うエーファ。その言葉に、ソフィは逆らうことができなかった。
「よろしい。それじゃあ行くよ」
そして、そのまま二機は混沌の戦場へと向かい、それぞれ分かれていく。
エーファはグエル達の下へ、そしてソフィは学園へ、である。
「シャディクうううううううううううっ!」
「グエルうううううううううううううっ!」
接近する悪意をつゆ知らず、今にも決着がつきそうなグエルとシャディク。そこに、
「いいねぇ、私も混ぜてよ」
その悪意は、牙を向いた。
「っ!?」
「なんだ!?」
触手からのビームが、二人に襲いかかった。二人は接近戦を止め、咄嗟に回避する。
しかし、触手は攻撃を止める事はしない。
四本の触手がすぐさま方向転換し、回避していくシャディクに集中的に攻撃を浴びせかけていく。
「こいつは……あのときの!?」
その攻撃をなんとか回避しながらもシャディクはカメラでその姿を捉える。宇宙の暗闇に浮かぶ巨大な影、エーファのモビルアーマーの姿を。
「何者だ! 一体何が目的だ!」
シャディクは迫りくるエーヴィヒ・ヴァインダーケーレンに対し通信でそう叫びかける。
すると、通信から加工された声でこう返ってきた。
「目的は単純だよ、シャディク・ゼネリ。君の死だ」
「何っ!?」
シャディクは驚きながらも触手めがけて反撃のビームを撃つ。
だが、それは触手の先端に形成されたシールドによって弾かれてしまう。
「君の理想……宇宙と地球の架け橋になる、だっけ? 目障りなんだよ、その理想は。もっと宇宙は混沌としていなくてはならないんだ。人が欲望のままに暴れられるぐらいにはね。故に邪魔なのさ、君は」
「貴様……! 何者かは知らんが、邪悪な存在なのは分かった!」
シャディクはエーファの言葉に怒り、攻撃を加えようとする。だが、触手の巧みな攻撃と不規則なエーヴィヒ・ヴァインダーケーレンの動きに攻撃を当てられず、徐々に追い詰められていく。
「やめろっ! これは俺達の問題だっ!」
と、そこにグエルがシャディクに加勢するようにビームサーベルで攻撃を仕掛けてくる。
もちろん、エーファはその攻撃を避け、逆にグエルに攻撃をしかける。
「グエル・ジェターク……今は君に用はない。大人しく黙っていてくれないか?」
「この状況、放っておけるか! そいつは俺達が裁く! だから殺させはしない!」
「まったく、正義感が強い人間は厄介だね」
エーファはシャディクだけでなくグエルも相手をすることになる。
だが、それでエーファの形勢が不利になるわけではなかった。依然として、エーファの圧倒的有利な状況が続いている。
「そろそろ諦めて、楽になれ」
「誰が……!」
「シャディク! 今助けるっ!」
と、そこでシャディクに更なる加勢が加わる。サビーナ達だ。ドミニコス隊との戦闘をかいくぐり、彼を助けに来たのだ。
「シャディクに何かあったらただじゃおかねぇ!」
「強そう……でも、ここで引けない!」
「私達が守るよっ!」
レネ、イリーシャ、メイジーが続けて言いながら続く。
また、戦線に加わったのは彼女達だけではなかった。
「どうやら学生を相手にしている場合じゃないらしいな……!」
彼女達と戦っていたドミニコス隊もまた、エーファに銃口を向けたのだ。
差し迫った状況を鑑みての事であった。
「やれやれ、他はともかく魔女狩り部隊相手は少し骨が折れるな……仕方ない」
エーファはその四面楚歌の状況に一人呟く。
かと思うと、エーヴィヒ・ヴァインダーケーレンを戦場の中心に一気に加速して飛んでいき、言う。
「これを使うと足がつきそうだから嫌だったんだが……仕方ない、一網打尽だ」
彼女がそう言った瞬間、エーヴィヒ・ヴァインダーケーレンの四本のトゲから、突如電撃のように不規則なビームがいくつも発射された。ヴィレ・ツァ・マハトが発射していたのと同じ、宇宙塵の薄いところを通って対象へと攻撃をしかけるビームだ。
それをシャディク、グエル、サビーナ達、そしてドミニコス隊の面々は避けることができず、機体に大きなダメージを負ってしまう。
「ぐうっ!?」
「何っ!?」
「がっ!?」
角からのビームで動きを止めてしまう面々。それを、逃すエーファではなった。
「それじゃあまずは取り巻きからさようならだ」
触手はものすごい速度で動きを止めたサビーナ達に向かう。そしてそれぞれが触手の爪に捕まり、ゆっくりとコックピットを潰されていったのだ。
その際に、
「がっ……!? シャディク、私はお前と共に……!」
サビーナはコックピットから見えるシャディクに手を伸ばしながら、
「嘘……!? 嫌、私こんなところで死にたくな……!」
レネは恐怖と共に叫びながら、
「シャディク、ごめんなさい……!」
イリーシャはただシャディクに謝りながら、
「嫌……嫌ああああああっ……!」
メイジーは怯え悲鳴を上げながら、死んでいった。
また、四人だけではなかった。
エーヴィヒ・ヴァインダーケーレンのビームは他にも、今にも逃げようとしていたサリウスとエナオを乗せた宇宙艇も捕らえていたのだ。
今、その宇宙艇が爆発しようとしていた。
「……ここまでか」
「シャディク、どうか生きて……」
サリウスとエナオは警報鳴り止まない船内でそれぞれ呟く。そして、直後に船は爆発して沈んだ。
「サビーナ! レネ! イリーシャ! メイジー! エナオ! ……父さん!」
シャディクはその惨状に叫ぶ。その表情は、今まで彼が見せたことのないほどに絶望と怒りに染まっていた。
「……貴様ああああああああああああっ!」
そして、シャディクは機体をなんとか動かしエーファに向かっていく。だが、
「さようなら、シャディク・ゼネリ」
エーファは容赦なく、シャディクの機体のコックピットを触手で突き刺した。
「……俺は……俺は……!」
死の瀬戸際に立たされるシャディク。そんな彼が最後に見たのは、
「……ミオリネ」
彼が密かに愛した、ミオリネの姿だった。
そして、シャディクのミカエリスは爆発する。こうして、シャディクが夢見た野望は、塵と消えた。
◇◆◇◆◇
――同時刻。
学園では、相変わらずノレアが怒りに任せてガンダム・ルブリス・ソーンで暴れていた。
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!」
感情のままに暴れる彼女。そんな彼女を、誰も止める事ができなかった。
それは共に囚われていた五号もそうであった。
「ノレア! 止めろっ!」
彼は必死に地上で叫ぶ。だが、その声は届かない。
だが、そんなときだった。
「……ノレア」
ルブリス・ソーンに突然通信が入る。それは、ノレアにとってよく聞き馴染んだ声だった。
「……ソフィ?」
ノレアは驚き動きを止める。それは、ルブリス・ウルに乗るソフィからの通信だったからだ。
いつの間にか、ソフィはノレアの近くにやって来ていた。
「ソフィ! 生きてたんだね……! 私、ソフィは死んじゃったのかと……!」
「うん、ごめんねノレア。今まで黙ってて」
「いいよ……帰ろう、ソフィ。二人で、一緒に」
ノレアは機体をソフィの機体にゆっくりと近づける。しかし、
「ごめんノレア。私、行けない」
「え?」
ソフィからの突然の拒絶の言葉。それに、ノレアは驚く。
その、次の瞬間だった。
「ごめんねノレア……ごめんね」
ソフィは持っていたライフルの銃口をルブリス・ソーンに向け、そして――
「――お姉ちゃんのために、死んで」
引き金を引いた。
「あっ……あああああああああああああああああっ!」
地上で叫ぶ五号。そして、そんな彼に気づくこともなく去っていくルブリス・ウル。
こうして、アスティカシア学園での虐殺は一応の形でケリがついた。
◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん……終わったよ」
ソフィは学園から出ると、エーファの下へと機体を近づける。
そんなソフィに、エーファは言った。
「よくやった。こっちもちょうど終わったところだよ。君は、本当によくできた妹だ……」
「……うん……うん……私は、お姉ちゃんの妹だから……」
ソフィは、そう言いながらも泣いていた。
だが、その涙にソフィ自身は気づいていない。
一方で、エーファは思う。これで完全に、躾は終わったと。
「さあ戻ろうソフィ。もうここにいる理由はない」
「はい……」
そうして去っていくエーヴィヒ・ヴァインダーケーレンとルブリス・ウル。生き残ったドミニコス隊はその姿を追おうとするも、その場の惨状に断念せざるを得なくなる。
「それではグエル・ジェターク。また機会があれば会おうじゃないか。
去りゆくエーファは最後に、グエルにそう通信を残して消えていった。
「くそっ……くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
その言葉と状況にグエルはただ、叫ぶ事しかできないのであった……。