【完結】クイーン・オブ・デザイア~ソシテ宇宙ハ灰ト化ス~   作:詠符音黎

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15.邪悪顕現

「あの機体の詳細はまだ掴めないのか!」

 

 カテドラルにおいてグエルがカテドラルトップのラジャン・ザヒとケナンジに問い詰めていた。

 しかし、ラジャンもケナンジも首を横に振る。

 

「今のところ、何も」

「あれは我々にもシャディクにも攻撃してきました。それに加えて議会連合にもプロスペラ・マーキュリーとも関係がない。とすると、我々の知らないまったく別の勢力のモノ、としか言いようがないですね」

 

 ケナンジとラジャンはそれぞれ言う。

 グエルはその言葉に悔しそうに拳を握る。

 

「とすると、一体どこなんだ……! あんな機体を密かに開発できるのは、相当大きな企業でないと無理だぞ!」

「ええ、とすると、可能性は一つ」

「……ベネリットグループの中に、敵が潜んでいる、ですね」

 

 ラジャンの言葉にケナンジが言う。

 グエルはまた驚いた顔をする。

 

「グループの中に!? ……待て、心当たりがある。あの電撃のようなビームは、おそらくイェンザイツのものだ……あそこの時期CEOであるエーファ・ツァラトゥストラが同じ攻撃をするモビルスーツに乗っているのを見たことがある」

 

 グエルは言う。彼はエーファとスレッタの決闘を思い出していた。

 

「よし、今すぐにでも調査を……!」

「分かりました。しかし、今は議会連合を抑えるのとクワイエットゼロへの対処で人手が足りません。時間がかかるかと……」

「くっ……!」

 

 ラジャンに言われ、グエルは頭を抱える。

 現状、ベネリットグループは危機に立たされていた。

 議会連合がベネリットグループへの解体を目的とした介入を実行。

 だが、それをプロスペラが操るクワイエットゼロが撃滅。

 とてもグループ内の調査をしている余裕などなかった。

 

「ともかく、今はクワイエットゼロを止めるしかない……か、クソ。アレを調べるのは、後回しだ。今はあそこに向かうスレッタ・マーキュリー達を見守らないといけない」

 

 そして、今そのクワイエットゼロにスレッタ達が向かおうとしている。

 プロスペラが起こした事変は今、最終局面に向かおうとしていた。

 

 

 

「私はお母さんを止める……! お母さんを悪い魔法使いになんてしたくない……!」

「スレッタの……わからず屋……!」

 

 それから数時間後。

 クワイエットゼロで、スレッタはフィルターを介さずにスコア5を出力できるガンダム・キャリバーンに乗って戦っていた。

 エアリアルを操るエリクトと。

 スレッタの仲間達もまた、クワイエットゼロの中で停止コードを打つために戦っている。

 そして、それはついに一つの終局を迎えていた。

 

「お母さんっ!」

 

 ミオリネが改変されていた停止コードを入力、クワイエットゼロを停止させたのだ。

 しかし、ほぼ同時に議会連合が操る惑星間攻撃兵器である惑星間レーザー送電システム「ILTS」を発動しようとしていた。

 

「君たち企業は、大きくなりすぎた……」

 

 議会連合のトップはデリングにそう伝え、発射しようとする。

 だが、そのときだった。

 

「どうした? 何故撃たない?」

「…………」

 

 突然オペレーター達が手を止めたのだ。それに、議会連合のトップはガラス越しに問う。

 すると、次の瞬間、オペレーター達が次々と倒れ始めたのだ。

 

「なっ、何事だ!?」

「何が起こっているの!?」

「これは……」

 

 それに連合のトップも、同じ場所にいてフロント復興の裏約束を取り付けていたニューゲン、カル、ネボラ、ゴルネリ、そして本物のエラン・ケレスも動揺する。

 

「……ぐっ!?」

 

 またすぐさま、彼らにも異変はすぐに訪れた。胸に激痛が走ったかと思うと、その場で力を失い倒れ始めたのだ。

 

「これ、は……」

 

 エランが部屋の上方を見る。どうやら、部屋内部にガスが流し込まれたらしい。

 その次の瞬間、部屋の扉が開いた。すると、ガスマスクをした謎の兵士らしき者達がなだれ込んできたのだ。

 

「貴様ら……一体何も――」

 

 議会連合のトップが問おうとする。だが、彼が質問をすべて口にする前に、連合トップはその頭を銃で射抜かれた。

 

「ひっ……!?」

「そ、そんな……!?」

 

 それに怯えた顔をするニューゲン、カル、ネボラ、ゴルネリ。

 

「た、助け……!」

 

 彼女達もまた、すぐさま頭を銃で撃たれ死んでいく。

 そして最後に残ったエランにも、その銃口は向けられた。

 

「き、貴様ら……!」

「我らが自由なる意志の翼が羽ばたかんことを」

 

 それが、エランが聞いた最後の言葉だった。

 

 

 

 それと、ほぼ同時のタイミングだった。その姿が、クワイエットゼロの前に姿を現したのは。

 

「……あれは!」

 

 先程まで弟であるラウダと戦っていたグエルがそれを見て叫ぶ。それは、モビルアーマー、エーヴィヒ・ヴァインダーケーレンの姿であった。

 

「クワイエットゼロを止めてくれてありがとう、スレッタ」

「その声……エーファさん!?」

 

 エーファは声を変えることなくスレッタの乗るキャリバーンに通信する。

 

「ああ、そうだよ。私だ。随分といかついモビルスーツに乗ってるじゃないか」

 

 そしてエーファは、そう言いながら攻撃を開始した。エアリアルに向けて。

 

「くっ!?」

 

 それをエリクトは避けながらビットで攻撃する。だが、ビットからのビームはすべて触手先端に展開されるバリアで防がれてしまう。

 

「私自身がクワイエットゼロに攻撃を仕掛けても良かったが、さすがにあの数の無人機は私の手勢では骨が折れたからね。君達が対処してくれて、本当に助かったよ」

 

 エーファはそう言いながらも別の触手でスレッタの乗るキャリバーンにも攻撃を仕掛ける。

 

「待ってください、どういう事ですかエーファさん!? どうしてエーファさんが私達に攻撃するんですか!?」

 

 スレッタはその攻撃を避けながら言う。

 

「私の敵はあくまでそこのエアリアルの中身と、君の母親だよ。でも、君はもちろんそんな事許さないだろう? だから君にも黙っていてもらおうと思ってね」

 

 エーファはそう言いながら攻撃を続ける。また、攻撃してくるのはエーファだけではなかった。

 突如、スレッタのキャリバーン目掛けて触手のない方向からもビームが飛んできたのだ。

 

「っ!? あれは……!?」

 

 その方向を見て、スレッタはまたも驚く。

 攻撃を仕掛けてきたのはガンダム・ルブリス・ウル。ソフィだったのだ。

 

「スレッタ・マーキュリーぃぃ!!」

 

 ソフィはスレッタのキャリバーンに接近戦をしかける。そして、叫ぶ。

 

「お姉ちゃんのために、死ねええええ!」

「ソフィさん!? そんな……!」

「ソフィ、スレッタの相手は任せたよ」

「うん、お姉ちゃん!」

 

 ソフィの嬉しそうな声が響く。そして、エーファはエアリアルとの戦闘に集中する。だが、エーファは一人ではない。ソフィのルブリス・ウルと共に大量のモビルスーツ、量産型ヴィレ・ツァ・マハトがその後方からやって来たのだ。

 

「くっ! お母さんに近づけはさせない……!」

 

 エアリアルもといエリクトはビットを操り反撃する。それにより、いくつかの量産型ヴィレ・ツァ・マハトは落ちていく。だが、その数はゆうに三十機はあり、とても対処しきれる数ではなかった。

 また、近くにいた議会連合の船も他に大量にやってきていた量産型が急襲し、手が出せない状況に陥っている。

 エーファは完全に戦場の主役に躍り出ていた。

 

「あなた、何なの!? 何が目的で私とお母さんの邪魔をするの!?」

「おお怖い、幽霊の声が響いてくる。しかしまあ、私も幽霊みたいなものか。ククク!」

 

 エーファは笑っていた。大きな無数の暴力で相手を追い詰める快楽で、笑っていたのだ。

 

「どういうこと!?」

「私も君と同じということなのさ、エリクト。ま、これから消える君に説明は省くがね」

 

 触手はうねうねと動きながらエアリアルを追い詰めていく。

 その圧倒的質量を前に、エアリアルは徐々に追い詰められていった。

 

「くっ、ならばこれで……!」

 

 エアリアルはビットを一つに集結させ、巨大なライフルを作る。それならば触手のつくるバリアをも撃ち抜きダメージを与えられると思ったのだ。

 だが、その判断は間違いであった。

 

「待っていたよ、それを!」

 

 エリクトがライフルから射撃した瞬間、エーヴィヒ・ヴァインダーケーレンは前方に小さな球体を発射する。そしてその球体は爆発し大きな煙を噴出させた。

 すると、ライフルのビームはその煙の前に霧散してしまったのだ。

 

「なっ!?」

「物覚えが悪かったね幽霊さん!」

 

 それはかつてスレッタとの戦いでみせたビームを無効化する煙だった。それにより、エアリアルの攻撃は無効化されたのだ。

 そしてその次の瞬間、エアリアルの体を、ドリルのようになった触手の先端が貫いた。

 

「エリクトっ!?」

 

 スレッタは叫ぶ。だが、エリクトからの声は返ってこない。

 エアリアルは、瞬く間にいくつもの触手に貫かれ、宇宙に浮かぶスクラップの一つにされてしまったのだった。

 

「さようなら、二度目の死を味わうと良い」

「エリクトおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 そして、通信からエーファの声が響く。スレッタはその声に動揺し、叫び、動きが止まる。そこをソフィが強襲し、スレッタはクワイエットゼロから距離を離される。

 

「よそ見してる場合じゃないでしょぉ!? キャハハハハハハ!」

「ぐっ……!?」

「さて、次はアレだな……」

 

 エーファは次に機体をクワイエットゼロに向ける。モビルアーマーを前にしても巨大なクワイエットゼロ。

 だが、エーファは怯む事なく、ドリルとなっているその触手を、クワイエットゼロに突き刺した。

 

「っ!? 止めて!? そこにはみんなが……母さんがっ!」

「お姉ちゃんが止めるはずないじゃない! それよりも、今はこっちだって言ってるでしょ! スレッタ・マーキュリー!」

 

 どんどんと破壊されていくクワイエットゼロ。

 だが、その発着場から一つの影が見えた。クワイエットゼロに乗り込んだミオリネ達が乗っていた船である。

 どうやら、彼女達は無事脱出できたらしい。

 

「良かった……ミオリネさん……! 今、助けますっ!」

 

 それを見たスレッタは一瞬ホッとするも、すぐさま思考を切り替えてルブリス・ウルをはねのけその船の下に向かう。

 

「待てっ!」

 

 そんなキャリバーンを追おうとするソフィ。

 だが、そのときエーファから通信が入る。

 

「まあ待てソフィ。見たまえ、とりあえずの目標は果たした。今は見逃してあげようじゃないか。昔の友人のよしみでね」

 

 エーファに言われ、ソフィはクワイエットゼロを見る。クワイエットゼロは、すでに大きな穴がいくつも空き、各所で爆発が起こり、崩壊を始めていた。

 

「うん……分かったよ、お姉ちゃん」

 

 こうしてエーファとソフィ、そして彼女の率いる量産型ヴィレ・ツァ・マハトは去っていく。

 それを追う者は、一人としていなかった。

 

「ミオリネさん! 大丈夫ですか!」

 

 一方でスレッタは、船に乗るミオリネに通信する。

 すると、

 

「……ごめん、スレッタ」

 

 ミオリネからの、謝罪が返ってきたのだ。

 

「どうしたんですか、ミオリネさん……どうして、謝罪なんか」

「プロスペラを……あんたの……母親を……」

 

 ミオリネは言った。手に、血濡れた状態のプロスペラがつけていたマスクを持ちながら。

 

「助けられなかった……」

「……そ、んな……お母さん……まで……あああああああああああああああああっ!」

 

 ミオリネは叫ぶ。

 今はただ、深い絶望に落ちることしか、彼女にはできなかった……。

 

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