【完結】クイーン・オブ・デザイア~ソシテ宇宙ハ灰ト化ス~   作:詠符音黎

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5.社交界の夜に

「まさかあんたもいるなんてね……」

「び、びっくりです……!」

 

 青いドレスを着ているミオリネが苦い顔で言い、続けて赤いドレスのスレッタが驚き顔で言う。

 インキュベーションパーティ。

 新規事業の立ち上げに際し投資を募るイベントである。

 ベネリットグループの様々な企業が己の事業を立ち上げようとし出資を求めているこのパーティにミオリネとスレッタは突如いなくなったエランを探すために参加していたのだが、そこで予想外の人物と出会うことになった。

 それこそ、エーファであった。

 

「いてもいいだろう? 私だってベネリットグループの人間なんだ。招待状は当然貰っている」

「そういう割には、今までのこうした社交界であんたの姿を見たことなかったんだけど」

「まあそういうこともあるだろう。人間、意識しなければ相手の顔など分からんさ」

 

 エーファは笑って言う。彼女は黒のドレスをまとっており、まるで人形のような愛らしさがあった。

 

「それよりも、どうして君達こそこんなところに? てっきりミオリネはこういう場は嫌いかと思っていたけれど」

「それは――」

「――あっ、あのっ! そうだ! エランさん見ませんでしたか!? 私達、エランさんを探してて……!」

 

 スレッタが食い気味に言う。その剣幕に若干押されつつも、エーファは少し考える素振りを見せる。

 

「エラン……? ああ、そういうことか。確かに彼、あの決闘の日以来姿を見せていないものね」

 

 もちろん、その理由をエーファは知っている。元々皆にエランと呼ばれていた強化人士四号は、ペイル社によって処分されてしまったからだ。

 そして、この日本物のエランが辻褄を合わせるために来ている、ということも。

 

「そういえばどこかで見た気もするな……」

 

 なので、彼女は少し思わせぶりに言ってみる。

 

「ほ、本当ですかっ!? ど、どこですか!? どこなんですか、エランさん!」

 

 すると、大慌てで聞いてくるスレッタ。まるで餌に食らいついた魚のようだとエーファは思った。

 

「ま、まあまあ落ち着いて。見かけただけだから今は移動していると思うし、そもそもはっきりとした場所は覚えていないんだ」

「そ、そうですか……」

「何落ち込んでるのよ、少なくともこの会場にいるってことは分かったんだからしゃっきりしなさい!」

「は、はい! そうですよね!」

「まったく……仲がいいね、君達は」

 

 二人のやり取りを見ながらエーファは微笑み言った。

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 それに素直に礼を言うスレッタ。一方でミオリネもまんざらでもない雰囲気を出している。

 

「まあ頑張ってくれ。私はこれから、新規事業のための出資を募らないといけないから」

「新規事業って……イェンザイツの事業を? あなたが?」

 

 ミオリネが不思議そうに聞く。エーファはそれにコクリと頷く。

 

「ああ。私だってただのお飾りの社長令嬢じゃあいつまでもいられないからね。事業の立ち上げの一つや二つ、こなさなくては。そこのところ、ミオリネは分かってくれると思うけれど」

「……本当に、いちいち癇に障る言い方するわね」

 

 ミオリネはまたむっとした表情になる。エーファはそんなミオリネに笑いかけながら、今度はスレッタを見て言う。

 

「ああ、そうだスレッタ。後で聞いて欲しい話があるから、時間を作ってくれないかな? このパーティが終わるときにでも、さ」

「え? 分かりました……けど、なんですか話って?」

「それはその時言うよ。じゃあ、よければ私のプレゼンを鑑賞でもしていってくれたまえ。じゃあね。sweet dreams(よい夢を)

「よい夢をって……まだまだ寝ないのに、変な口癖よね、あれ」

 

 そうして彼女は去っていき、壇上に立つ。それとともに会場の照明が落ち、彼女が演説を始める。

 

「お集まりの皆さん。私はイェンザイツ・インダストリアルのエーファ・ツァラトゥストラです。今宵皆様に出資していただきたい事業は、こちらです」

 

 エーファが背後のディスプレイに手をかざすと、そこには黒い二等辺三角形の形をしたドローンが映し出された。そのドローンの下部には、円柱状の赤いクリアパーツが備え付けられている。

 

「あれは……パーメット?」

 

 ミオリネが言う。エーファはプレゼンテーションを続ける。

 

「これはこれまでのレーダーよりも遥かに遠方をより詳細に観測することのできるドローン、モーゲンロェーテ(曙光)です。モーゲンロェーテは地球、宇宙、フロントとあらゆる環境で使用でき、その性能は低空で飛ばしても最新鋭の偵察衛星に匹敵します。コストも従来の偵察衛星を遥かに下回るコストで運用が可能です」

 

 そうして画面に実際の金額が表示される。それは確かに驚くべきほどに安価であった。

 

「とはいえこれもドローン。出資者の皆様はパーメット・電子対抗装備で落とされるのではと考えている方も多いでしょう。ですが心配ありません。モーゲンロェーテには我がイェンザイツの技術の粋を集めた防護機能が備わる予定であり、理論上出回っている役八十七パーセントの対抗装備を無効化する効果があります。さあ皆さん、宇宙を自由に見渡す目は今、あなたのものになるのです! どうか、ご出資をお願いします!」

 

 エーファの言葉と共に出資が始まる。すると、みるみるうちに出資が募っていき、規定金額に達する。彼女のプレゼンテーションは成功したのだ。

 

「なるほどね……また、戦争が厄介になりそうな開発をしたものね」

 

 それに対しミオリネが言う。壇上では出資者達に礼を言うエーファの姿があった。

 

「イェンザイツ……ちょっと気にしたほうがいいかもしれないわ」

「はぁ……?」

 

 ミオリネの言葉の意味をスレッタはよく分かっていないようだった。

 そんなスレッタにミオリネは「はぁ……」と軽くため息をつくと言う。

 

「ほら、そんな事よりエラン探すんでしょ。さあ、行くわよ」

「あっ、はい!」

 

 こうしてミオリネとスレッタはエランを探しにまた会場を歩き回り始める。

 そうした中で、ミオリネはプロスペラと会い、スレッタは本物のエランと出会い、そしてスレッタはペイル社の四人の共同CEOであるニューゲン、カル、ネボラ、ゴルネリにハメられエアリアルがガンダムだと言うことが公表、それを救うためにミオリネは株式会社ガンダムを設立することになるのだった……。

 

 

「ごめんねぇ、とうとうバレちゃった。エアリアルは、ガンダムなの」

 

 そしてその結果、スレッタはエアリアルがガンダムだということを知った。それは、スレッタにとってあまりに大きな衝撃であった。

 

「――へぇ、エアリアルってガンダムだったんだ。それは、驚きだ」

 

 と、そこで新たな声がした。もちろん声の主はエーファだ。

 

「あら、あなたは……」

「どうも、プロスペラ・マーキュリー。私はエーファ・ツァラトゥストラ。イェンザイツの社長令嬢兼次期CEOです」

「ええ、知っているわ。先程のドローンの出資獲得、お見事でしたわ」

「いいえ、これでようやくお飾りから一歩前進というところです」

 

 本当のお飾りは社長であり、イェンザイツを牛耳っているのは彼女なのだが、それはエーファ以外その場にいる誰も知らない事である。

 

「ところでスレッタ」

 

 そして、エーファは未だ困惑した表情のスレッタに声をかける。

 

「……え、あ、は、はい」

 

 スレッタは未だ驚き冷めやらぬといった様子だった。

 

「ちょっとエーファ。今は……」

 

 そんな状況を見かねてミオリネが言う。しかし、エーファは続けて言った。

 

「私とぜひ決闘して欲しい。エアリアルを賭けて、ね」

 

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