【完結】クイーン・オブ・デザイア~ソシテ宇宙ハ灰ト化ス~   作:詠符音黎

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7.異物混入

「クワイエットゼロ……まさかエアリアルがあそこまで高いパーメットスコアを出せるとは……それで戦争をなくすということは、何らかの拡張装置を使い戦場の機械すべてのオーバーライドでもするつもりなんだろうな……」

 

 自室に戻ったエーファはベッドの上で一人呟く。

 彼女が片手に持っているタブレットには先程の決闘の様子の映像が流れていた。

 

「まるで私のヴィレ・ツァ・マハトが土壇場で力負けしたかのような構図になっている……案外策士じゃないか、スレッタ・マーキュリー。……いや、本当にこれはスレッタが操っているのか?」

 

 エーファはそこで疑問に思った。

 あのスレッタがオーバーライドを操っているにしては、あまりに彼女の行動や発言に嘘がなさすぎると思ったのだ。

 普段から嘘で身を固めているエーファだからこそ、他人の嘘には敏感になれるのだ。

 

「そもそも、他のモビルスーツすら操ってしまうオーバーライド機能なんて相当高いパーメットスコアのはずだ。そんなにスコアを上げて本人はああも平気そうなのもおかしい。一体何があの機体に隠されている……? まったく、こうも謎が多い相手とは想定外だ」

 

 彼女はそう言いながらタブレットを枕の横に投げ置く。

 

「……より、知らねばならないな。スレッタ・マーキュリーという少女、そしてガンダム・エアリアルという機体について」

 

 そしてそっと呟き、目を閉じた。

 

「ともかく、“次”は私もパーメットスコアを上げなければいけないな。まったく、この体で良くもあり悪くもあり、と言ったところか……」

 

 脳にパーメットが刺さっているからこそリスクなくパーメットを上昇させられるし、だからこそ相手のパーメットスコア上昇によるオーバーライドの干渉を体にも受けてしまう。

 そんな諸刃の刃である自分の状態を思い、エーファは軽く苦笑するのだった。

 

 

 それから一週間と少し。

 エーファは決闘の条件通り株式会社ガンダムの外部協力者として彼女らを手伝った。

 株式会社ガンダムは最初の方向方針で少し揉めたが、彼女はそれについてあえて口を出さずあくまで数字の面での手助けをするにとどまった。

 具体的にはマルタンが定款を作る際にあれこれと口出しをする、などである。

 そうして中で、株式会社は会社の方針としてガンドの技術を人助けする医療の方向に使っていくことに決定。

 彼女も特にそれには異論なく同意した。

 エーファ自身の野望はともかく、彼女らが会社を大きくしていこうとする行動は肯定的に見ていたからだ。

 だが、事態は思わぬ方向に転がった。

 突然校則が変更され、株式会社ガンダムは起業できなくなってしまったのだ。

 そこにはシャディクが陰謀を絡めているようだった。

 彼は株式会社ガンダムの事業譲渡を望んでいたが、ミオリネはシャディクを信用できないとそれを拒否。そして現状を打破するためにシャディクに決闘を挑んだ。

 そして、その決闘の方法は六対六の集団戦とのことだった。

 シャディク率いるグラスレーは集団戦では無敗の相手。対して、株式会社ガンダムにはパイロットもモビルスーツも足りない。

 そうすると、エーファに声がかかるのは当然の話であった。

 

「いいよ、協力してあげる」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 エーファは二つ返事でスレッタの依頼を了承した。

 他の地球寮の面々もそのことに喜ぶ。

 

「いやーよかった! パイロットはスレッタとチュチュしかいなかったからどうしようかと思ってたんだ!」

「エーファ先輩と一緒に戦えるんですね! 心強いです!」

 

 アリヤとリリッケがそれぞれ嬉しそうに言う。

 

「よかったぁ。これで僕は戦わなくていいね……」

「いやお前はいかないと駄目だろ。寮長だし」

「なんでぇ!?」

 

 一人ホっとしていたマルタンにヌーノが言った。

 そんな様子にエーファは少しばかり笑う。

 

「いいか!? あーし達と一緒に戦うんなら足引っ張るんじゃねぇぞ!」

「それはむしろこっちの台詞じゃねーの? だってスレッタとやり合ってあと一歩ってところまで追い詰めたんだしよぉ」

「あぁん!?」

 

 チュアチュリーの言葉にオジェロが言い、そんなオジェロをチュアチュリーは睨みつける。

 相変わらず賑やかな連中だ、とエーファは思った。

 

「いえ、あのときはエアリアルが助けてくれたから勝てたようなもので……」

 

 と、そのときスレッタが気になる発言をしたのを、エーファは聞き逃さなかった。

 

「エアリアルが助けてくれた? どういうことだい? 確かにあのとき機体の自由が効かなくなったけど、それと何か関係が?」

「ああ、エーファさんは気になりますよね……実はあのときエアリアルが手助けしてくれたんです。それでエーファさんの動きを止めてもらって……」

「……まるで、エアリアルに意思があるような言い方だね?」

「はい、エアリアルにはちゃんと心があります。私の家族なんです」

「……ふぅん」

 

 エーファは推察する。

 ――つまりエアリアルには高機能のAIが搭載されている? それが自己の判断でパーメットスコアを上げて機体をオーバーライドした? いや、それにしてもまだ疑問が残る。AIがパーメットを上げるなんて聞いたことはないし、そもそもそれで他の機体をああもオーバーライドできるのだろうか? やはり、謎は尽きない……。

 

「まあ、よく分からないけどエアリアルが君の大切な家族なのは分かったよ」

「はい! えへへ……」

 

 スレッタは嬉しそうに笑う。やはりこの少女には演技などは無理だろうと、エーファは改めてそういう印象を受けた。

 これで演技しているなら彼女はパイロットではなく女優になるべきであると、そうも思った。

 ともかく、そうした状態で実質的なパイロットはスレッタ、チュアチュリー、そしてエーファの三人のままシャディク達との決闘に至る事になった。

 

 

「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」

「操縦者の技のみで決まらず」

『ただ、結果のみが真実』

「フィックスリリース」

 

 ミオリネとシャディクがそれぞれ言い、立会人として寮を追い出されたグエルの代わりに寮長になったグエルの弟、ラウダ・ニールが開始を宣言した。

 場所は都市部を模した第四戦術試験区域。

 地球寮の面々はエアリアルに乗るスレッタ。

 専用のデミトレーナーに乗るチュアチュリー。

 ヴィレ・ツァ・マハトに乗るエーファ。

 そしてペイル社から借り受けたザウォートに乗るリリッケ、ティル、マルタンである。

 一方でグラスレーの面々はグラスレー社のモビルスーツ、星型のモニターが印象的なミカエリスに乗るシャディク。

 同じくグラスレーのモビルスーツ、ベギルペンデに乗るシャディクの右腕的存在のサビーナ・ファルディン。

 気弱な雰囲気なイリーシャ・プラノ。

 科目でどこかミステリアスなエナオ・ジャズ。

 明るくポジティブなメイジー・メイ。

 多くの男性にアイドルとして見られているも女性には厳しいレネ・コスタの五人である。

 

「ミオリネさん、前衛は私とエーファさんでいいんですか?」

「そうよ、腕がしっかりとあるのはあんたとエーファなんだからしっかり前衛で攻守兼任しなさい」

「あーしにはないってのかよクソが!」

「あんたはあんたで後方支援っていう大事な仕事があるでしょ」

「ふむ、それにしても相手はシャディク以外全員女性か。ちょっとしたハーレムだねぇ」

 

 無線にエーファは楽しげな声で参加する。

 そうした中で、邂逅した両陣営はさっそく戦闘になった。

 まず、シャディクが後方のチュアチュリーを攻撃にかかる。

 が、

 

「っ!?」

「おっとぉ、最初は数を減らしにかかるのかな? やっぱり冷静だねぇ、シャディク君」

「……ふん、随分と余裕だね」

 

 それをエーファが剛腕の爪から展開するバリアで阻止する。

 結果として、エーファはシャディクと戦う形になった。

 そしてスレッタはサビーナが足止めし、他の四人はティル、リリッケ、マルタンを攻撃しにいく。

 結果としてティル、リリッケ、マルタンは頭と武器を潰され戦闘不能にされる。

 構図はあっという間に六対三の構図になってしまった。

 

「なぜミオリネ達にそこまで友好的に接する? 今回の決闘だって君に旨味はないはずだ」

「と言っても、決闘で負けて彼女らに協力する事になってるしねぇ」

「……っ」

 

 シャディクの冷たい言葉に煽るように言うエーファ。

 

「というか、冷静ではあるけど感情的でもあるよねぇ君。今回の決闘だって、あーだこーだ言いながら本当は女が欲しかったんだろ? ミオリネっていう女をさぁ!? まったく、意中の相手を仕留めるのに随分と情けない手を使うじゃないかぁ!」

「……君は、信用ならない。君みたいのは……ミオリネの近くにいるべきではない!」

 

 ミオリネ達との通信だけを切った状態で煽るエーファに、怒りながらミカエリスの腕を飛ばし後方から攻撃しようとするシャディク。

 だが、それを強力な跳躍でビルの斜面を飛んで避けるエーファ。

 そのまま遠方から剛腕より発射される雷のように不規則なビームを発射する。

 

「ちっ……! 機動が読みづらいビームだ……!」

「シャディク!」

「やらせない!」

 

 そこにエナオやメイジーが戻ってきてエーファを攻撃し、邪魔する。

 

「……男に靡く雌にしては頑張るじゃないか。嫌いじゃないよ、そういうの」

 

 若干の不利を感じ、エーファはブーストで少し後方に下がる。

 

「地球寮舐めんじゃねぇ……!」

「すいません、四つです」

 

 一方で、イリーシャおよびレネと戦っていたチュアチュリーの足と手が落とされてしまう。

 

「……ふん、こっちの味方もそんなものか」

 

 やられるチュアチュリーを見て、エーファは通信を切った状態でそう呟いた。

 

「スレッタ、どうやら残ったのは私達二人のようだ。一旦シャディクと一人二人は私が受け持つ。他のを任せるか? エアリアルのビットなら多数相手でも不利は少ないはずだ」

「は、はい! 分かりました!」

 

 エーファはその言葉通りシャディクとエナオ、メイジーに向かってヒット&アウェイの形で攻撃を繰り返す。

 

「くそっ……離れろ!」

 

 シャディク達はそれを必死に捉えようとするも、なかなか攻撃を当てられない。

 

「こうなれば……二人共! こいつは俺が相手をする! 五人であれを使ってガンダムを落とせ!」

『コピー!』

「逃げる気かい? させな……」

 

 スレッタの方へと向かっていく二機を落とそうとするエーファ。だが、それをシャディクがミカエリスの腕とワイヤー経由で飛ばして攻撃して邪魔する。

 

「……はっ、しつこいね」

 

 こうしてエーファはシャディクとの一対一の構図になる。そうしてシャディクに時間を取られている、そのときだった。

 

「エ、エアリアル!? どうしたの!?」

「っ!? あれは……アンチドートか!」

 

 五機に囲まれたエアリアルが突如動きを止めたのだ。それは、対ガンドフォーマット用兵器のアンチドートであった。

 

「若干まずいか……? いや……」

 

 エーファは一瞬考え、あえてシャディクから大きく距離を取る。

 それはシャディクにとっては好機だった。

 

「なぜ……? いや、今は水星ちゃんを落とす!」

 

 シャディクはこの機を逃すまいとエアリアルの方へと向かう。

 だが、そのときだった。

 

「なんだ!?」

「オーバーライド!?」

 

 サビーナやエナオを始めとしたグラスレーの面々は動揺する。動けないはずのエアリアルが行動を開始し、更に自分達のモビルスーツの自由がなくなったのだから。

 

「……やっぱりね」

 

 その姿を見てエーファはほくそ笑む。ピンチになれば、エアリアルは高いパーメットスコアによるオーバーライドを使う。そう踏んでいたからだ。

 

「ありがとう! 一緒にやってくれるんだね、エアリアル!」

「楽しそうじゃないか。私も仲間にくれてくれよ」

 

 エアリアルに話しかけるスレッタの横に並ぶエーファ。そして、二人の反撃は始まった。

 スレッタはあっという間にレネ、イリーシャ、メイジーを落としていく。

 そして、エーファもまたサビーナやエナオと相対する。

 

「シャディクをやらせは……!」

「残念、君達に誰かを守る力はないよ」

 

 まずエナオのベギルペンデの頭をその腕で押し潰す。

 更に、素早くサビーナの方へと跳躍したかと思うと、その爪からの雷撃ビームを撃ち、手足をもいだ。

 

「があああっ!?」

「ほい五つ。それじゃあ、仕上げにかかるよスレッタ」

「はい!」

 

 こうして追い詰められていた状態から逆に二対一の構図へと持っていったスレッタとエーファ。

 

「くっ……スレッタ・マーキュリー! エーファ・ツァラトゥストラ! まだだ! ミオリネの隣に立つのはこの俺だ……!」

 

 シャディクは最後の意地を見せ、二人に突撃してくる。

 

「ほい隙だらけ」

 

 だがエーファのヴィレ・ツァ・マハトはその剛腕により向かってきたミカエリスの胴体にラリアットし、ビルの壁面に吹き飛ばしたのだ。

 

「ぐうっ!?」

 

 それにより叩きつけられ、なんとか動き出そうとするミカエリス。

 

「まだ――」

 

 ――瞬間、ミカエリスの頭部がビームで吹き飛ばされる。

 別の遠く離れたビルの屋上に陣取っていた他の地球寮の機体がチュアチュリーのデミトレーナーを支えて狙撃してきたのだ。

 

「地球寮舐めんなっつったろうが……!」

「ふふっ」

 

 エーファは笑う。

 彼女達がタイミングを伺っていたことを、エーファは知っていた。

 

「今回は君達に華を持たせて上げるよ。その方が株式会社ガンダムはやりやすそうだしね。それに、私が個人でこそこそ動くのにも、ね」

 

 エーファはまた通信を切った状態で、そう呟く。

 ともかく、こうしてシャディクとの決闘騒ぎは終わり、株式会社ガンダムは無事起業を迎えられたのだった。

 

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