アイちゃんよりやべーのいたらアイちゃん救われる説 作:グナードン
警察やべーやつ知りたいよぉです。
私がかずきと再会してから一時間くらいだっただろうか。暗い病室の中で、優しく髪を撫で、手を握る。
どこにもいかせないからね、と意識のないかずきに分かるように優しく丁寧に教えていく。
彼はまたやってくる。かずきを狙ってまたやってくるはずだ。次に襲われたら今度こそ命が危ないかもしれない。今回は生かしておいただけかもしれない。次は生きているか、その保証はどこにも存在しない。
そう考えると思わず布団を力強く握っていた。
いつ、いつ襲われるか分からない。
私はある程度落ち着くと考え始める。
あのタクシーの運転手は彼のことを親友といっていた。つまり、どこに彼の友達がいるかわからない。
彼、という人はそんなにも友達がいるのだろうか。
運転手の男性は確かに、彼は私の救世主、素敵な友達、素晴らしい親友と声を荒げていた。
言葉通り読み取っていいものか、疑問を感じるけど、男性の目がキラキラと子どものように輝いていたのは確かだった。
かずきがこれまで彼に出会って帰ってきた時、酷くやつれて帰ってくるのが基本だった。あんな顔をしたことがない。
彼は傷つけるだけが特技だけではなさそうで、かずきを狙いに仲間を作ったんだ。
昔とおんなじだ。みんな寄ってたかってかずきを虐める。最低な人たちだ。
人間じゃない。彼らは人間じゃない。思えば、運転手の男性は突如意味のわからないことを言っていた。何かに取り憑かれるように笑っていた。
私は手を固く握った。
かずきを狙っているのは彼だけではない。彼の友達も同様に狙っているんだ。その全員から守らなければいけない。
やれるか、やれないかの問題じゃない。やらなくちゃいけないんだ。
「やってみせる」
思わず声が漏れてしまったのは、当然のことだった。
それからまたしばらくすると、病室に足音が近づいてくるのを感じた。静かな空間に廊下を歩く音が聞こえる。コツコツと音を立てていたその音は私たちの病室でピタッとやんだ。
心臓が跳ねる。私はすぐにカーテンを閉め、開かれないように固く握った。
彼だ。彼がきたんだ。私の直感がすぐに働いた。
先ほどまで恐怖で力が入らなかった身体に自然と力が入る。かずきは渡さない。渡してはならない。もう二度と取り返しがつかなくなる。渡してなるものか。
ガラッと開く音がすると同時に、パチンという音が耳に入る。ふっと部屋が明るくなった。
私はカーテンを握りながら、息を潜める。
出ていって欲しい。幸せを奪わないで欲しい。そんな願い込めながら目を固く閉ざす。
「いやー参ったねぇ」
「ほんとっすよ、名前すらわからないんだから」
男性二人の声が聞こえる。その瞬間、背筋がゾッとする。一人じゃない。相手は二人だ。私がどうこうできる相手ではない。
あと数秒もない間にこのカーテンまで着いてしまう。二人がかりであれば私の力ではどうにもすることはできない。
どうしよう……どうしよう……どうしよう……!
頭の中にその言葉が詰め込まれていく。グルグルと回り、それ以上の答えが見当たらない。つい先ほど、あんなにも固く決意したのに、もっていかれてしまう。力の前では役立たずになってしまう。無力が全身を襲う。
「……ん?おい、このカーテンおかしくね?」
「あ……?そうっすね。まるで中に人がいるような……人?」
男性たちはカーテンの閉まりが不自然なのか、疑問を感じたようだった。
しかし、それは一瞬で、カーテンを開けるように力を入れる。
グッと持っていかれそうになるのを必死に堪える。
「人いますよ!!人が!」
「身内か?」
「知らないっすよ!すんませーん!警察です」
持っていかれそうになるカーテンを抑えつつ、その言葉に耳を傾けないように必死に頭を振る。
絶対に渡さない。そんな思いを込めて手に力を入れる。ここで諦めることになる。それだけは、いやだ……いやだ!
しかし、私の思いとは裏腹にカーテンは開けられてしまう。当然だ。男性の力に勝てる筈がない。私は咄嗟にかずきの横に置いてあるナースコールのボタンを握った。さすがに誰かが来ればこの二人も手出しはできないと考えたからだ。
男性たちはそんな私をぼうっと見つめていた。
「来ないで!かずきに近づかないで!」
気づいたら私はそんなことを言っていた。
「かずき?」
中年の男性が首を傾げながら、かずきの名前を口にする。もう一人の男性はいまだぼうっとしている。
「渡さないから!絶対に渡さない!」
かずきだけは守らなければいけない。
「落ち着いてください、私達は警察です」
そう言いながら、警察手帳を見せてくる。ふっと運転手の言葉を思い出す。警察官も彼は用意できる。警戒は緩められる筈がない。
すると、いままでぼうっとしていた若い男性が何かに気づいたのか、私の方を指して、中年の男性の肩を何度も叩く。
「せ、先輩!アイですよ!星野アイ」
「アイ?お前知ってるのか?」
「有名じゃないですか!!ほら、あのアイドルの!」
中年の男性は怪訝そうな顔をしながらこちらを見てくる。
「なんで知らないんですか!いま有名なアイドルですよ!」
「疎いんだよ。そういうのは……あーすいません」
中年の男性は軽くあしらいながら一歩前に出る。来る、そう感じると、私はさらに手に力を入れる。
そんな私の様子を見てか、男性は前へ出ることをやめた。
「落ち着いてください。警察ですから、安心して」
信用も安心もできるわけがなかった。どうすればこの状況でこの二人を信用できるのだろうか。もしかしたら彼の仲間かもしれない。
「とりあえず、かずきさんでしたっけ?なんでここに運ばれたか知ってますか?」
私の態度にため息をつきながら、内側のポケットから手帳を取り出した。見たことある花形の紋章が目に入る。
そんな様子を見ていると、本当にかずきのことを知らなさそうに見える。いや、信じてはいけない。タクシーの件だってそうだ。一つも安心してはいけないんだ。
男性はいまだ警戒を緩めない私に諦めたのか事情を説明し始める。
今朝方にこの病院の来館用入口に救急車が突然止まった。不自然に思った警備員が近づくと複数の男性が逃げるように出ていった。残った救急車をその場に居合わせた医師と確認すると中にナイフで刺された男性がいた。
急いで手術が施され一命をとりとめた。しかし、財布も、携帯もないため、男性の身元が分からない。しかも、ナイフで刺されたという事件性の高いものであるため、誰かが訪れる可能性をみこして、一日過ごしていた。
男性の話しはそんな感じだった。聞く力があまり働いてなかったためか、なんとなくしか入ってこなかった。
しかし、この二人は本当の警察官であることがわかった。信用してもいい、そう感じると私はナースコールのボタンから手を離し、かずきの頭を撫でる。
そんな私を見て男性たちは息をつき、近くの椅子に座り始めた。少しだけ頭を掻いた後に、ここからが重要なんですが、男性が言葉を続けた。
「一つだけ気になる点がある。これは後から医師に言われたことなんですけど、あの救急車の中でかずきさんは最大限の処置が施されていた」
その言葉に男性の方を見る。
「救急車の中には大量の輸血用の血と点滴があり、本当に治療行為をしていたとされるものが見受けられた」
頭が困惑する。
「しかも、輸血は救急車の中では本来できないものらしい。なのに、それができている。まるで、そうなることが前提のように」
男性は次第に鋭い目つきに変わっていく。
「こんな事件は今までになかった。これでは犯人の目的もわからない。事実だけ見れば、殺すという意思表示がない。じゃあ何故刺す必要があるのか、見当もつかない」
男性は胸ポケットにあるボールペンを取り出す。その鋭くなった目は私の奥を見ているような気がした。
「だから貴方が知っている全てを教えてください」
あとちょいで他のキャラクター出せる。
ルビーちゃんとかマジ空気だからなぁ。
次回、やべーやつ意識戻す