とある異種族掲示板での…   作:更川有希

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遅くなりました。
1話の続き?裏側?です。


とある妖狐さんとの…(裏話)

 俺は世間一般で言うところのニートだ。

 

 

 これと言って、何の特筆するべき項目もない、よくある典型的なニートだ。そして、その生活を続けてかれこれ8年目になる。

 

 

 

 ニートになったきっかけは、高校入学を期に、中学時代のダサい髪型をイメチェンしてみようと思い立ったが、金も知ってる美容室もないので自分で切ったのがいけなかったのか、はたまたクラスでの自己紹介の時に噛み噛みで何を言ってるのか分からなかったのがいけなかったのか。高校デビューしようとしたその日が腹痛だったからか?それとも単純に面倒だったからなのか?。××か? ××なのか? ×××が駄目だったのか? ××××なのがいけなかったのか?

 

 分からない。何もかも分からないが、気付いたら部屋で一日中寝る生活が続いていた。

 

 あの時の俺は何故高校に行けなくなったのだろうか?

 

 いや、全部言い訳だ。分かってる。……今更この話をしてもしょうがないのも分かってる。過去は変えられない。大事なのは未来がどうするのかだ。…ってY◯uTubeで偉そうな偏屈爺が言ってた。

 

三十歳になるから。

 

 

 

 でも、家から出るってどういう意味なんだろうな。

単純に、仕事が決まれば家出すればいいだけか?だったら家出をして仕事を探せばいいんじゃないのか?家から出るだけなら今すぐ出来る。やったところで家にすぐ帰ってくるのが関の山だろうが。

 

 

 よくてホームレスか?なんとか生きることは出来るかもしれないが…まぁ…それもいいか。これまでずっと家族に迷惑を掛けてきたんだし。

 

 

 でも、具体的に、家から出て…俺は何か変わるのか?というか、俺は何をするべきなんだ?

 

 

 

 ……。憂鬱だ。

 

 そういえば高校はどうなったんだろう?

 

 多分だが、今から行っても卒業どころか進級すら出来ないだろう。何を今更という話でもあるし…親ともここ数年喋った記憶がないから分からないが、籍すら無いだろう。今から教室に行っても席が無いってか。いいジョークだ。笑えないが。そもそも今は午前3時だしな。高校閉まってるよ。アハハ、アハハ…アホか。

 

 

 妙に整頓されていながら乱雑になった自分の部屋を見ながら、俺はそろそろ眠りにつく。

 

 つかなきゃならないんだ。夜のうちに。そうじゃないと、朝が来てしまうから。

 

 俺は朝が嫌いだ。1日の始まりを期待させておきながら、実際には日付が変わる真夜中を置き去りにして、我が物顔で光を照らす。新しい1日が、幸せな1日が来ていることを半分の人類に知らしめて偽善者ぶってるツラしてる太陽が嫌いだ。

 

 

 幸い、俺はロングスリーパーであるので(単に睡眠の質が悪いだけかもしれないが)ともかく、太陽をカーテンから感じさせることはほとんど無い生活であると言っていい。

 

 

 

 

 

 

 寝るか。

 

 

 

 

 

 

 

 布団に入り、目を瞑ったのはいいが…眠れない。むしろ、何故かテンションが上がってきた。ヤバ。今日の俺はどうしたんだ。

 

 体の中にある変なギアがガチャリと音を立てて歯車に嵌まった感覚がある。つまり、情緒が不安定になってきた。あー、なんか急に誰もいない深夜の学校行きたくなってきたな。俺がいた席って今どうなってたんだろう。ものすっごい気になって仕方がない。

 

 あと、家出をしてみたい。小さい時は真面目ちゃんで通ってきて、挫折してニートになった俺は生まれてこの方一度も家出をしたことがない。どうせ俺ん家片親だし、こんなニートいてもしょうがないだろう。どうしようもなくなったら帰ってくれば…いやなんか帰らないような気がするな。でも、まぁいっか。こんな家思い入れも何もないしな。

 

 多分、人生においてこういう時の感覚って大事にした方がいいんだよな。

 

 前にもこういう時があったんだよな…いつだったっけ。

 

 

 あぁ、なんとなく思い出した。

 

 小学校から自宅に下校する途中、可愛い狐がいて追いかけて行ったら綺麗な公園について、その可愛い狐と一緒に遊んだんだ。

 

 今思うと、狐が郊外とはいえ町中にいたのかの理由が分からんが…。その公園から帰ろうとしたはいいが迷いに迷って、さらに夜になってしまって、それでも何とか帰ろうと感覚だけで走り回ってたら偶然目を引く喫茶店があって、ポケットの中に小銭があったし喉も渇いてたからとりあえず入ってメロンソーダ飲んだんだよな。

 

 そしたら何故かたまたまクラスの友達とその家族がいて、俺が家に帰ってないことが親の連絡網で回っていたらしくてその親御さんに車で連れて帰って貰ったんだったな。今思えば楽しいひとときだった。あいつ、今元気にしてるかなぁ。

 

 と、まぁ後先考えずにとりあえず行動した方が、振り返ってみたら案外いいものになるってことを俺は知ってる。

 

 

 親は今の時間帯は寝てるだろうし、これから俺が出ていくことはバレずに済む。家の鍵がどこにあるかは分からないが、あと2.3時間もすれば親は起きて来て、仕事に行くときに不審に思うかもしれないが構わん。そもそも、俺という存在が家の中に居ても居なくても構わんのだがな。ガッハッハッハ。…はぁ。

 

 

 

 そうと決まれば早速行動しよう。

 

 

 

 俺は何年も使ってないザラザラした埃が被った小さなリュックサックをクローゼットから取り出し、着替えを詰め込む。台所にあったお菓子とジュースを詰め込んで。気分は完全に遠足だ。

 

 高校入学と同時に親に買って貰った成金趣味の変な長財布の中身を確認する。ひーふーみー…5000円と小銭がちょっと入ってるな、多分なんとかなるだろ。

 

 玄関に行くと、俺の靴が無い。靴棚を見ても無いので、仕方ないが裸足になるだろう。なんか冒険みたいでワクワクしてきた。

心臓がバクバクと音を立ててるのが分かる。走ってもないのに息が上がってきた。

 

 玄関のドアを開けたら開閉音で親が気付いて起きてくるかもしれないし、開けた瞬間に全力ダッシュで近くのコンビニ…今はあるかは分からないが、とりあえずそこまで行ってみよう。

 

 

 

 よし、予定は決めたし、なら行くぞ。3.2.1………。

 

 

 

 俺はドアを開けると同時に外へと走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……そして?なんだこれ。

 

 なんか柔らかいものにぶつかった。あといい匂いがする。

一歩後ろに下がろうとすると、にゅっと"何か"に体全体を抱きしめられる。そして耳元で囁かれた。

 

 

「はじめまして」

 

 

 うぇへぇっ!?

 

 急に耳元で囁かれたものだから背筋がぞわぞわして珍妙な悲鳴を上げてしまった。

 

 誰かは分からないが、声的に女の人だろう。

 

 完全な事故ではあるが、とりあえず人にぶつかってしまったので、一旦距離をとろうと右手を前に突き出そうとしたが、何故か止まってしまった…というより、抱きしめられた?

 

 あれ?この状況マズいんじゃ…俺見ず知らずのお姉さんにセクハラしてる?

 

 俺の頭の上から声が聞こえる。しっとりしていて、落ち着きのある声だ。

 

 

 

「妾は月伃<つくよ>。貴方様を此処でずっと待っておったのじゃ」

 

 

 

 え?どういうこと…なんですか?あと、ちょっと…近いです。

 

 

 

「あ…すまぬのう。息がし辛かったかの?」

 

 

 

 そう言って抱かれた腕を少し緩めて顔を見せてくれた女性…女性だよな?は何故か頭頂部に可愛い狐耳が生えていた。髪は綺麗なブロンドヘアで、びっくりするほど…その、美しい顔だった。あ、タレ目なの個人的に好き。

 

 

 月伃さんかぁ、いい名前だなぁ…。

 

 狐耳あるの意味分からんが…。

 

 

 真っ赤で重そうな着物を着てるのに髪色がアバンギャルドな金色なのギャップがあっていいね。

あとおっぱいの大きさがやばい…!谷間が目に毒なんだが。ついチラチラ見ちゃうけど仕方ないよこれは。

 

 なんかいい匂いもするし、人?かは分からないが…とりあえず女性と接する機会もなかったので、思考がショートしている。何も考えられない。

 

 その感想を抱いたと同時に、この人の台詞が気になった。

『貴方様』って俺のこと?とか、此処で?ずっと?なんか俺を前から知ってるみたいな変な感じがする。

 

 月伃さんは、俺の体をぎゅっと抱きしめながら顔を近づけてきた。睫毛も瞳の色も金色でなんとも神秘的な美しい顔だった。

 

 

 

「ここは妾の領域…人は此処のような場所をマヨイガと呼ぶ。じゃが、普通の人間は此処へは来れぬ。家主である妾の許可があれば話は別じゃがな。つまり…」

 

 

 

つまり…?えーっと…俺は許可が下りたってことですか?

 

 

 

「大正解じゃ。妾の領域である此処は妾の家も同然じゃからな。貴方様のことはこの数年見守っておった。そしてついに、妾はこの瞬間を迎えることが出来たのじゃ」

 

 

 

 それは、おめでとうございます?で、合ってますかね。よく分かんないですけど。

 

 

 

「クフフ。ようやくの。ようやく…貴方様を救って差し上げることが出来るのじゃ」

 

 

 …………はい?

 

 

 

「もう、世界に絶望などせんでよい。孤独感に苛まれ、自暴自棄にならずともよい。部屋の中で一人きりで泣かんでよい。他人と比べ、傷つき、泣くことも──貴方様の悲しみは、妾の悲しみと同じ。貴方様があの部屋の中で抱いてきた苦悩、苦痛、苦悶…それら全てが今日この瞬間をもって救済されるのじゃよ」

 

 

 

????????

 

……仰っている意味が分からないのですが…月伃さんは俺の何を知っているんですか?確かに、俺は今まで引きこもりで、全てにおいて駄目人間でしたが、今日から変わるんですよ俺は。具体的には家出するんです。

 

 

 

 俺はここまで捲し立てるように喋ったが、月伃さんが言っている台詞と俺が今喋った内容は似ていると思った。そして、不思議と俺は────、あれ?なんだか眠く?なってきたような──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまぬ。…ただ毎日を懸命に生きているだけの貴方様が、世界の不条理に踊らされ、妾のためでなく、他の誰かのために生きていく日々を送ってほしくないのじゃ。勿論、妾は妾の都合で貴方様を此処に呼んだのは事実じゃが、あの部屋で一人きりで過ごすくらいなら…家から出て社会の荒波に揉まれ、昏い海の底に沈んでしまうくらいなら……此処で、此処で。妾と共に…。」

 

 

 




ヤンデレちっくな妖狐さんすき。


次回はドラゴンさんです。



作者:名無しの妖狐様へ。はやく幸せになりたいです。何でもしますので、是非うちの玄関とマヨヒガを繋いで、呼んでください。お願いします。
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