物理攻撃でひん曲げるブルーアーカイブ(仮) 作:かんばさだー
白色に色が飛んでいる車内。
「……私のミスでした」
カタンカタンと揺れる電車の中で声が一つ。
左胸に血を流しているが苦悶の表情は浮かべず、服は戦場を乗り越えたのか血や泥で汚れていた。
一つ一つ、言葉を丁寧に置くように吐き出す。
「私の選択、それによって招かれたこのすべての状況」
対する男は、同じく服が汚れているが見られる外傷はない。静かに最期の言葉のように吐かれる言葉に耳を傾けていた。
対して俺は。
カタンカタンと揺れるその電車。
車両と車両を分け隔てるドアにへばり付きながら話を聞いていた。
気づいたら俺はこの車内にいて、誰もいなくて隣の車両へは行けず、異様な雰囲気のそこにこうして聞き耳を立てるしか出来なかった。
そんなマヌケな状況の俺と違い、向こうは話が続く。
「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」
まるであちらの雰囲気は継承だ。世界を任せる、世界を生かす選択を。あなたに任せる。そんな空気だ。
こんな意味不明な状況でも少しづつ分かってきた気がする。
俺は多分、蚊帳の外なんだ。英雄継承でもあるようなソレを眺めることしか許されない。
「私が信じられる大人である、あなたたちになら」
車内に差し込む光が強くなっているように感じる。眩しい。しっかりとあいつらの顔はついぞ見えない。
「この捻れて歪んだ終着点とは、また別の結果を……」
声が遠くなっていく。
「そこに繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。」
俺はこんな事を見てどうするんだ。
「図々しいながら、お願いします」
「あなたにもーー」
▶︎あまねく奇跡のーー
――銃撃の音が聞こえる。
排莢された薬莢が地面を叩く音、痛みに耐えるような悲痛な声。
それにこれは……キャタピラ?重いものがこちらに向かい移動している音
「んぁ、あえ?」
頭がやっと動いてきた。地面に仰向けで倒れていた。太陽眩しい。
身体を起こす。倒れたのか土やらで汚れているが特に身体に痛みなし。
ん? んんんんんん!?!?
あれ!? わたしこんな小さな体だった!?
え、てか俺今声
「…あーー、うっゔっ、あー…」
幼さが残る細い声。でもちょっと低い?
喉の不良を祈り喉を鳴らしたが変わらない。
嘘だろ俺、女の子になったってこと!?!?
ドッ!!!!――キーーン
突然の砲台のような轟音に耳をつんざく、音のキャパシティを超え耳は限界をならした。
というかここ街中なんですけど。銃声も砲台みたいな音も普通聞こえちゃいけねえんですけど!?
大切なのは現状把握。普通このような非常時音の方向には近づかないが吉だが、向かったほうがいいと直感が示す。大通りを走って向かった。
「先生! こちらシールド耐久値限界です!」
「…了解、閃光グレネード投擲します!」
通りを抜けた先は戦場であった。わらわらと増えるヘルメット集団に対し見るところ三人で殲滅している。
どうしてもその光景に俺には既視感があった。
記憶が逆流するような頭痛が突然発生する。
白い電車の中で行われた会話、今の状況、この世界。
『私が信じられる大人である、”あなたたち”になら』
――ここはブルーアーカイブ。いまの状況はシャーレオフィスを占領下に置くヘルメット集団殲滅途中。戦っている生徒はユウカ・ハスミ・スズミの三人。支援系はチナツか。
頭痛が治まってきた。
つまり俺はブルーアーカイブの世界に転生? 憑依? をした。どうやら俺は先生ではないらしい。少し残念なところ。てかなんで生徒なの。なんで女の子なの!?
現実逃避として眼の前の抗争に意識を移すことにした。あれ以上考えたら別で頭痛くなるわ。
なんか苦戦してね?
あんなにここは苦戦するところか? というかヘルメットども多くね。一個大隊くらいいるくね? ヘルメット共の持っている兵器最新型って感じじゃね? こんなに敵強いっけ?
「――ユウカ!!」
悲痛を叫ぶような声が思考を中断させる。叫ばれた彼女は地面に膝をついておりシールドは限界を示すように点滅していた。
そんなチャンスをヘルメット共は見逃さない。戦車の砲塔はユウカを捉えている。
「発射ッ―――」
その声をスタートの合図にするように。俺は走り出していた。
■
砲弾が当たるのは必然だった。かばえる距離には誰も居ず、シールドは崩壊を始めている。
しかたない、目に迫ってくるそれに目を瞑った。
ザッ
誰か私の前に立ったような音がする。ただそれだけは確認しようとして――。
「――ぇええええええええ!!」
眼の前にたった小柄な少女に、そして現実とは思えない現象に声を挙げるしかでかなかった。
私に放たれた砲弾が私にも少女にも当たることなく、砲弾の向きが上空に変わった。
行き先を失った砲弾は空中で爆発する。
そんな摩訶不思議に目をとられ、目の前の戦場に目を向けるともう終わっていた。
どうやらヘルメットを被っている生徒も砲弾を目で追っていたらしくその隙を突かれたようだった。
「ユウカさん! 大丈夫ですか!?」
「あ、ええっと大丈夫でした」
スズミがユウカに駆け寄り、ハスミは銃こそ構えないが砲弾の向きをかえた存在に警戒を顕にしている。
「あなたは…何者ですか?」
ハスミの声に反応するように身体をビクリと揺らした。
”私も気になるね。ユウカを助けてくれたお礼もしたい。名前を教えてくれないかい?”
どうやら後方から先生も合流したらしい。
「あー、えっと。私は――」
■
名前を聞かれて、わからんとも返事はできない。しかし答えは随分と簡単にみつかった。
とっさに出てきたこれが名前なんだろう。
だから、ブルーアーカイブの世界で俺は。
今日から私は――
「水村ナツメ、です。」
はい。第一話でした。
今回のアタオカポイントは砲弾の向きを変えたことですね。イメージとしてはワンパンマンという作品の流水岩砕拳って感じで弾いたと思っていただければ。
ブルアカにナツメって名前の娘いないよね?
いてももう書いちゃったから撤回はしないけども。
んじゃ次回。
果たしてそれは職権乱用ではないだろうか。