レッツゴージャスティス!   作:ジャスティス仮面

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序章
Prologue.「渡我被身子:オリジン」


 今は悪が微笑む時代なんだ。

 私が生を受ける以前、そう呼ばれる時期が確かに存在していた。

 超常黎明期、今は個性。過去に超常、もしくは異能と呼ばれる特異な能力の存在が空想(フィクション)から現実(リアル)になったばかりの頃、超常を用いた犯罪が多発した。そんな中でオール・フォー・ワンと呼ばれる悪のカリスマが世に解き放たれて、日本は統治機構は一時的に停止する事態にまで発展する。

 悪は益々栄えて、国家機関が、その機能を取り戻した今も悪が根強く残り続けている。

 

 そうだ、悪はまだ深い深い闇の中で虎視眈々と機を窺い続けている。

 世界的英雄のオールマイトがオール・フォー・ワンに深傷を負わせたけども、それだけだ。光も届かぬ地中の奥深くに潜り、息を潜めて、闇の中から裏社会を牛耳っている。光の中に居る者は、闇の奥地まで手を伸ばす事が出来ない。毒には毒を以て制す、という言葉があるように悪の討滅には、悪の力が必要だ。深海に潜む魚を討伐するには、深海に生きる存在の協力が必要不可欠だ。

 故に私は悪になる。

 オール・フォー・ワンの生き様に憧れた者達が築き上げた治外法権、東洋のゴッサム・シティと呼ばれる暗黒街に生まれ落ちた私は物心の付いた時から自分が悪の支配者になるのだと心に決めていた。手始めに暗黒街を掌握する事か始まり、古い伝説に終止符を打つ事が私の目的となる。

 しかし、その計画は、とある日を境に瓦解してしまった。

 

「地獄にも蜘蛛の糸が垂らされるものね」

 

 暗黒街は、たった一人の少女の登場によって壊滅する。

 少女の名は心根(こころね)真純(ますみ)

 非公式のヒーロー、ヴィジランテ。私は彼女のファンである。

 

 

 喉が渇いた。ごくりと唾を飲み込んで、ギョロリと開いた目で周りを見渡す。

 据えた臭いが充満するコンクリートジャングル。ビルの側面を植物が侵食しており、壁には亀裂が走っていた。見て分かる耐久年数が過ぎた建造物に多くの人が住み着いている。此処は所謂、不良の溜まり場だ。違法な薬物が取引される事でも有名な場所であり、本番アリの売春行為は勿論、異性に対する暴行事件も頻発していた。此処に足を踏み入れるのは自己責任、そこで不幸な目に遭っても「あんな場所に足を踏み入れるから」と言われるような掃溜であった。

 そんな救いようのない場所を、私は我が庭の如く鼻唄混じりで徘徊する。

 

 車で連れ去られた人を見た事がある。

 身包みを剥がされた中年男性を見たのは一度や二度ではない。

 ゴミ捨て場に棄てられた女を見たこともあれば、実際に人が死ぬ場面に遭遇した事もある。

 如何にもな連中に声を掛けられる、なんて事は片手じゃ数え切れない。

 幸いにも、まだ弄ばれる立場になった事は一度もなかった。

 

 臭い息を吹きかける輩には、刃を以て応える。

 汚い手で触られるのを嫌って躱し、反撃する余裕があれば蹴りを入れる事もある。喧嘩になってしまった時は適当な刃物で容赦なく切り捨て、刃物がなければ、股間に蹴りを入れて睾丸を潰す。迷惑料に財布を漁り、金目の物を奪い取る。本当に酷い相手の時は身包みを剥がして、二度と表で歩けないように公園のベンチや道端の電柱に縛り付けてやった事もあった。

 まだ殺人を犯した事はない。

 嫌われたくない相手が居るから人を殺さないようにしている。

 

 クラスメイトに想い人がいる、初恋だった。

 だけど今は好意を抱く程度に鳴りを潜めている。

 

 両親に拒絶されて以後、普通の子で居られるように自分の欲求を抑え込んできた。

 無意識に溜め込んだフラストレーション。決して解消される事のできない欲求不満を耐え続ける事は、今にして思えば、酷く息苦しかったのだと理解できる。当時はまだ苦しいという自覚すらないまま、自分自身を閉じ込めた心の檻を爪が剥がれるまで掻き毟って生きてきた。

 気付いた時には、もう手遅れになっていた。

 檻に閉じ込めた心という名の器はもう無数の爪痕でガサガサになっていて、自分の流した血で満たされている。もう手遅れだったのだ、罅割れた器から満たした血が滴り落ちる。満たせぬ欲求を抑え込むのも限界で、あの頃は何時も心の軋む声が聞こえるかのようだった。

 きっと私は、気付いた時には、既に、普通という道から一歩、足を踏み外していたのだろう。

 

 暗黒街で出会った女の子が、破綻した私を社会に繋ぎ止めている。

 初恋を終えた私は、それ以前と比較して、精神的に落ち着いた、気がする。

 

 明るくなった、と誰かが言った。

 普通になった、と両親は安堵した。

 人生が楽しくなった、その自覚があった。

 

 それも全て、この路地裏で彼女と出会ってからだ。

 

 今、私が熱を上げる彼女はヴィジランテ、非公式のヒーロー。名前は真純ちゃん。

 会いたくなれば、適当に事件を起こせば良い。そんな軽い気持ちで私は無防備な姿を晒し、甚振っても心の痛まない連中が声を掛けてくれるのを待った。近頃は食い付きが悪くなった。問題ない、幸いにも此処は事件に絶えない。暗黒街を滅ぼした後、その残党が作った第二の暗黒街──と呼ぶには、規模が小さいのですが──悪党が悪事を働くのにうってつけの環境だ。適当に悪い奴を見つけて、ちょっと過剰な制裁を加えてやれば良かった。

 罪を犯した事はない。だって目に見えて分かる悪事は愛しい人に嫌われちゃう。

 

 性質が悪い。と愛しい彼女は言うけども、悪い奴だからって遠慮なく殴る彼女も他人の事を言えないと思う。

 

 そんなこんなで今日も適当な相手を見つけて甚振った。

 裏路地の隅で身を丸くして謝る青年男性の腹を爪先で蹴り上げる。嘔吐する彼の頭を踏み締めた。地面に撒き散らした吐瀉物に割れた額から流れる赤い液体が滲んだ。それを見ても、ちっとも綺麗だなんて思わなかった。シャブに穢れた血なんて触れたくもない。血なら、なんでも良い訳でもじゃない。

 昔は、そうだったかも知れないけど、今は違った。

 

「トガちゃんはグルメなのです」

 

 愛しい彼女と出会えたのは、幸運だった。

 取り返しの付かない何かを犯す前に彼女を遭遇し、その血を舐めた。

 その時に得られた充足感は、魂に刻み込まれた。

 彼女の血以外では、もう渇望を満たす事が出来ないのだ。

 

 

 初めて彼女と出会ったのは、去年の話。

 私がまだ中学一年生だった時の事だ。

 こんな時、普通の女の子なら記念日にするみたけど、詳しい日時は忘れてしまった。

 あの時は刺激を求めていた。まだ欲求に心が支配されていた頃になる。

 

 鮮明に覚えている。

 鮮やかに咲いた鮮血の徒花、路地裏でボロボロになって倒れる彼女の姿は、今も瞼に焼き付いていた。

 床に散乱する生ゴミのように捨て置かれた彼女に私の心がトキめいた。解像度の低いモノクロの景色が、陰鬱な雨が晴れた空に架る虹のように、パアッと色が差した。鮮やかに彩られる世界に、無意識に荒くなる呼吸。興奮に震える手でスマホを取り出す。目の前で血塗れの少女が倒れている、それを見た普通の女の子ならどうするか? それを考えた末での行動だった。

 この時はまだ、私は普通という名の檻に囚われていた。

 

「やめてくれるかな?」

 

 しかし、少女は、スマホを弄る私を呼び止める。

 

「怪しい者じゃない、ヴィランにやられた」

 

 今は相手の個性の影響で身動ぎひとつ取る事もできやしない、と彼女は吐き捨てる。

 どう見ても怪しい者だったけど、それを彼女が望むなら、と私はスマホをポケットに戻す。

 だからといって怪我を負った彼女を見捨てるのも忍びない。

 何故なら、普通の女の子の行いではないからだ。その程度の事は私にだって分かる。

 

 逸る動悸を抑えながら、彼女の手当をする為に腰を下ろす。

 偶々持っていたミネラルウォーターで傷口を洗い流した後、肌にこびりついた血をハンカチで拭い取る。濃厚な血の香りに頭がくらりとする。思わず、血を舐めたくなる。だけど、今は駄目だ。ペタペタと絆創膏を貼ったり、彼女の上着で傷口を結んだりした。ハンカチには、べっとりと付いた彼女の血。早く舐めたかった。駄目だ、今、舐めてしまうと普通の女の子じゃなくなる。

 我慢する。濃厚な鉄の香り、甘美な誘惑に唾を飲み込んだ。

 

 葛藤する最中、ふと私の脳裏を過ぎったのは、幼い頃に見た猫の親子だった。

 怪我を負った子猫の傷を親猫は懸命に舐めて癒していた。

 

 唾液が溢れてくる。

 溢れる欲求、抑え切れない好奇心。

 これは医療行為だからと自分に言い聞かせる。

 ゆっくりと彼女の傷口に顔を近付けた。

 まだ血が溢れている箇所がある。

 絆創膏では防げない傷だ。

 

 早く血を止めてやる必要がある。

 僅かに残る良心が作る建前が、

 早く血を味わいたい。

 という欲求に塗り変わっていった。

 

 もう我慢が出来なかった。

 

 すんと鼻を鳴らせば、鉄の臭いが鼻腔に刺激する。

 彼女の傷口に、ねっとりと舌を這わせる。

 口腔に広がる血の味、鉄の味。

 その甘美な味に思わず、頬に両手を添える。

 豊潤な味と香りに身震いする程だ。

 

 あゝ、私が求めていたのは、これだったんだ。

 

 小動物の血とは比べ物にならない。

 誰かの個性で身動きの取れない彼女は格好の獲物であり、これは傷を治す為だから、と必死に自分を言い聞かせて血を啜る。

 今にして思えば、これが私の吸血欲求の箍が外れた瞬間だったのかも知れない。

 

 翌日、

 私は血に対する欲求を抑え切れず、学校を休んだ。

 家から持ち出した包丁で死なない程度に野良猫を切ってみたけども、満たされる事はなかった。路地裏の人間も試してみたけども、不味かった。次は彼女と同じくらいの少女を襲ってみる。ほんのちょっと指先を切る程度、美味しかったけど、愛しい彼女の味には遠く及ばなかった。

 彼女と他とでは、何が違うのか分からない。

 だけど、あの時、路地裏で野垂れていた愛しい彼女じゃないと得られない栄養素があるのだと理解する。

 不思議に感じられた、これの正体が気になって仕方なかった。

 

「あんた、ヤバい奴だとは思っていたけども……」

 

 襲った少女の指を舐めていると背後から声を掛けられた。

 丁度、想いを馳せていた愛しい人の声。振り返り、その彼女の姿を見てキラリと世界が輝いた。

 トクンと胸が高鳴る。早くなる心臓の鼓動、呼吸が荒くなって涎が垂れる。

 全身から漂わせる血の香り、初恋の斎藤君と似た匂い。

 彼女から感じる彼以上の濃厚な味わいには、死の気配が纏わりついていた。

 口元がだらしなく歪むのが分かる。

 

「やあっと会えました、探したしたよ」

 

 それまで指を舐めていた少女を解放する。

 血、美味しかったです。と感謝の言葉を述べながら愛しい貴女と対峙した。

 敵意を込めて、睨み付ける彼女の姿に、ゾクゾクと全身が歓喜に打ち震える。

 嗚呼、この胸の高鳴りは、きっと、恋なのだ。

 私は今、最高に、恋をしちゃってる。

 

「マスミちゃん……いや、ココちゃんの方が可愛いですかね?」

 

 二度目の対面、もう逢えないかと不安になっていた。

 でも逢う事ができた。彼女の財布の中に入れてあったレンタルビデオ店のカードから名前を知った。残念なのは住所が書かれていなかった事、名前もカタカナで特定するのが難しそうだった。

 おかげで自分から会いに行けず、この暗黒街に足を運ぶしかなかった。

 

「浮気していた訳じゃないんです、自分の気持ちを確かめていただけです」

 

 もう行っても良いです。と少女を解放する。

 少女を襲ったのは、暗黒街に迷い込んでいた彼女を味見をしていただけだ。

 おかげで、美味しいだけじゃ駄目なんだって理解できた。

 

「言葉の意味が理解できないんだけど?」

 

 愛しい彼女は呟き、バタフライナイフを片手に構えを取る。

 

「……私を、助けてください」

 

 もう耐え切れなかった。

 吸血衝動を抑え続けていた、普通で居る為に頑張ってきた。

 だけど、彼女の血を味わったが最後、もう耐え切れない。

 彼女が欲しい、彼女をもっと味わいたい。

 愛しい愛しい貴女に流れる血は、禁断の果実のように甘美だった。

 あの味を想像するだけでトクンと胸が高鳴った。

 嗚呼、と嬌声が漏れる。

 頬が蕩けるように、檻に閉じ込めてあった心が氷解する。

 願わくば、血を媒介に一緒の存在になりたかった。

 

「もう私、貴女じゃないと満足できない身体にされちゃいました♪」

 

 私は包丁を握り締めて、愛しい貴女を欲して駆け出す。

 暗黒街に来たばかりの彼女は、まだ弱っちくて、簡単に組み伏せる事ができた。

 だから、あの時は、出会う度に、チウチウと血を頂くことができた。

 何時でもボロボロな貴女ことが大好きで仕方ない。

 

 彼女と運命的な出逢いを果たした日から今日に至るまで、

 衝動的に不特定な誰かの血を欲する事はなくなった。

 

 傷付いた小動物の血で気を紛らわせる事もない。

 誰かが怪我をする度、物欲しげな視線を送る事もしなくなった。

 血を流している子を目の前にしても、

 普通の少女の立ち振る舞いとして、善意で手当てをしてあげられるようになった。

 私は愛を知ることで社会に適合することができた。

 愛の力は偉大である。

 

 

「その辺りでやめておきなさい」

 

 愛しい人の言葉に意識は過去から現在に引き戻される。

 足元には芋虫のように丸くなった性犯罪者、制服を着た女学生をホテルに連れ込もうとしていたのを見つけたので制裁してやった。普通の道徳心と倫理観で悪党だって分かる相手を痛めつける分には、愛しい人が苦言を口にすることはない。

 困ったものを見るような目で溜息を零すだけである。

 

「ココちゃん、待っていました」

「いい加減、小悪党を私を呼び出すブザー代わりにするのやめてくれない?」

「少女を一人、助けているのですから良いじゃないですか」

 

 まあ、そうだけど。と愛しい彼女は目を細める。

 心根真純、ヴィジランテをやっている事以外は詳細不明。あまりプライベートな事を語ってくれない秘密主義者であった。今日もまた怪我をしていないようで血の香りが薄かった。ちょっと残念、暗黒街を壊滅させて以後、彼女が怪我をする機会がめっきりと減ってしまった。その事、自体は喜ばしいものなのだけど、それでは私の欲求を満たせない。

 だけど、まあ、愛しい人と出会えた今に胸が高鳴っていた。

 もう性犯罪者に興味を失った。彼には彼女を誘き出す以上の価値なんてなかった。

 

「……この辺りに格安のホテルがあるのですが、御一緒しませんか?」

 

 駄目元でデートに誘ってみる。

 このまま刃を交えるのも良いのだけど、偶には恋人のように語らいたい。

 そう思ってのお誘いだった。

 

「学生服の貴女と行ったら止められると思うのだけど?」

「大丈夫です。そういうのに目を瞑ってくれる場所なので」

「それもどうかと思うんだけど?」

 

 少女は小さく溜息を零した後、腰を落として構えを取る。

 

「あんたは何度倒しても懲りてくれない」

「それはそうですよ。だって私の目的は貴女なんですから!」

「私だけが目的なら他に危害を与えるのやめてくれない?」

「や、です! 前に教えて貰った連絡先、現在使われていませんって出ましたよ!」

「……出会い頭に刃物を持って襲ってくる友達はお断りだよ」

 

 だから決めました。と私は彼女と御揃いのバタフライナイフを構える。

 

「今時の女の子は押しが肝心だって話です!」

 

 コンクリートの地面を踏み締めて、猛る想いのままに彼女へと飛び掛かった。

 

「どうか私の恋人になってください!」

「寝言は寝てから言って欲しいかな!」

 

 愛しい人がバタフライナイフで応戦する。

 刃と刃が交錯し、火花を散らす。互いに全力の全開、視線誘導からのフェイントを挟んでも彼女は的確に対応してくる。あと半歩でも踏み出せばキスが出来そうな至近距離で凶刃を振るい合った。お互いに相手を殺す意思はない、じゃれ合いのような攻防を数十分と繰り広げる。

 最後は私の武器を絡め取られた。そのまま投げ技で地面に叩き付けられる。

 

「……痛い! 痛いです!」

 

 寝技で関節を極められるまでが一連の流れだ。

 場合によっては背後から抱き締める形で体を密着させる事もあるけども、今日は俯せで腕を取られてしまったのであまりおいしくないやられ方だった。ちょっと抵抗しようとすれば、背中に押し付けられた膝に力が込められる。これは抜け出せそうにない。血も頂けなかったし、残念です。

 むうっ、と不貞腐れてやれば、愛しい人は腕を極めたまま大きく息を吐き捨てる。

 

「また腕を上げてるじゃん」

 

 溜息を零す愛しい彼女に「それはこっちの台詞です」と返す。

 初めて出逢った時は、私の方が上だった。

 だけど暗黒街で戦っている内に彼女の方が強くなってしまった。

 今はまだ実力が縮まっているのだけど、

 それは私が強くなっているというよりも、むしろ……

 

「……本当に誰も殺してないんでしょうね?」

「殺してません! 私はココちゃんに嫌われるようなことはしないって決めてるのです!」

「だったら私に斬りかかるのをやめてくれないかな?」

「ごめんなさい! やめられません!」

「どうしてそんなに私に執着するのかな?」

 

 彼女は腕を放すと、ゆっくりと腰を上げる。

 私は衣服に付いた汚れを手でパンパンと叩きながら立ち上がった。

 次会う時までに頑張れるかな?

 我慢はします、しますけど。我慢のし過ぎは体に毒です。

 

「血を求められるのは複雑なんだけどね」

 

 愛しい人は人差し指を噛み千切り、そのまま私の口に押し込んできた。

 

「……んぷっ?」

 

 あ、美味しい。蕩けそう、女の子がしちゃいけない顔をしてる気がします。

 そんな私に若干、引き気味の愛しい人。

 これは違うんです。と否定したくともチュウチュウするのをやめられなかった。

 

「まだ犯罪に問われた事ないんだから私が高校に入るまでには折り合い付けてよね」

 

 そんな事は無理です、絶対に離れません。

 始まりは貴女の血でした。でも、貴女の事をもっと知りたくなって、知れば知る程に好きになっちゃうのです。好みの相手はボロボロで血の香りがする人。これが恋愛感情なのかはよく分からないけど、でも惹かれていることだけはわかった。普通じゃない、と引かれるのも嫌だったので、これは心にしまっておくのです。

 その衣服の下に隠された姿は、私だけが知る秘密なのです。




前に書いていた分の焼き直し。
原作再構築というよりも、原作に物語の軸をもう一本、ぶっ刺すタイプです。
ある程度は原作沿いになるはず。
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