レッツゴージャスティス! 作:ジャスティス仮面
公的には、暗黒街における心根真純の活躍は認められていなかった。
それも当然、彼女は未成年で
これは民衆に対して政府が「匿名の協力者」とお茶を濁すのに納得のいく理由を与える為だ。
実際には、
表沙汰に出来ないような犯罪歴を持っている人物が多い中、綺麗な経歴の持ち主が真純だけだった。なので公安は彼女をスケープゴートとして活用した。公式の発表では、暗黒街でも活動をしていたプロヒーローのミルコとレディ・ナガンを前面に押し出し、地元の協力者として心根真純の名が隠されている。
暗黒街で生活をしていた人達も真っ当なヒーローとして認識していたのは真純だけだったので工作そのものは難しくなかった。
実際、ステインを始めとする暗黒街の壊滅に協力した
心根真純に関わる情報の隠蔽から開示まで公安が一手に委ねられていた。
そして、公安の誰一人、真純自身が暗黒街の壊滅させる為の神輿に過ぎないと考えていた。常識的に考えて、まだ小学生の少女が
だが、それが間違いである事を私達は知っている。
「真純は強いのよ」
某秘密基地、少女趣味が全開の私室で私は呟いた。
何度も致命傷を負った。闇医者が黙って首を横に振り、死体を見飽きた
しかし彼女は生きている。
銃を撃たれた程度では止まらない、トラックに轢かれても生きている。心臓が止まった後、自力で復活した事もあった。致死量の毒を流し込まれた時も血清が手に入るまで限界を超えて命を持たせていた。何度、打ちのめしても立ち上がる。殺したと思っても死なず、死体が見つからなければ、必ず生きていると言われていた。
事実、終盤は、心臓を止めても首を落とすまで安心するな。と配下に厳命する程だ。
常識を超えたしぶとさに暗黒街の悪党は、彼女の事をリビングデッドの二つ名で呼んだ。
当時、暗黒街に住んでいた者なら誰もが口を揃える。
暗黒街で最も強かった人間は心根真純だ、と。
無論、私もその一人である。
「今日は通学初日、オールマイトなら初日から戦闘訓練を入れてくれそうね」
もし訓練の様子を撮影する事があれば、
是非是非、映像を手に入れて欲しいものだ。
「あ、頼めばいいじゃん。そういうのオールマイトならチョロそうだし」
今日の朝、登校前の話である。
◆
「負けた~!」「ぎゃぼ~!」
即落ち一行、隠れ兎同盟はものの見事に撃沈した。
常闇踏陰の個性に抑えつけられた私達に、蛙吹梅雨が確保テープをペタペタと張り付けている。だが、このままで負ける隠れ兎同盟ではない。常闇の本体が核兵器に触れようとした時、くすくすと大兎転狐と葉隠透が肩を揺らす。その様子を不思議に思った常闇が手を止めた。オールマイトもまだ罠が仕掛けてあるのかと考えて一旦、勝利宣言を保留にする。
勝利条件を満たしたにも関わらず、まだ勝利宣言が為されない事に梅雨が疑念を抱いた。
「……何がおかしい?」
常闇の、その言葉が皮切りだった。
「確かに私と透を倒したのは褒めてやる」
「だけど私達は四天王でも最弱!」
「隠れ兎同盟の面汚しよ!!」
「なん……だと……!?」
聞き慣れない組織名、
四天王で最弱という事は彼女達よりも上の人間があと二人も居るという事だ。
いや、首領も含めれば、更に一人追加という話になる。
これで終わりではない、これからが始まりなのだ。
そう告げる二人に常闇は衝撃を受けた。
核兵器に触れる手を止める。
「ただの茶番だから」
その場のノリに流されなかった梅雨が核兵器に手を付けて、決着が付いた。
余談だが隠れ兎同盟の四天王の残りは泡瀬洋雪と角取ポニー、首領は心根真純である。
勿論、当人には未承諾であった。
地下モニタールームにおける講評会。
屋内では無類の強さを誇る常闇踏陰によるパワープレイの他、蛙吹梅雨による補助が大兎転狐と葉隠透のトリックプレイを封殺した。鮮やかな試合運びによる決着なので、ほとんど勝利した側を褒めるだけで講評は終わる。ほぼほぼ何も出来なかった隠れ兎同盟の二人は大きく溜息を吐いて、項垂れてしまった。
そんな二人に、個性に頼り過ぎるのも駄目だよ。と戦闘服の上から外套を羽織った心根真純が伝える。
第位置戦、緑谷出久が放った衝撃波で近場のカメラが破損した。
遠くから映したカメラでは砂煙のせいでよく見えず、近場に居た麗日お茶子の機転でオールマイトに真純が裸を晒していると撮影の中止を促した。その後、駆け足で階段を降りて来た八百万百が真純の為に外套を作り、結果として第1戦の参加者以外に真純の傷が露呈する事はなかった。
ちなみに真純が傷を隠すのに深い意味はない。
入学前の顔見知りに傷は隠した方が良いと言われたから隠している。
「ところで、その訓練映像って後で貰っても良いですか?」
第一戦の時とは違って、真面目な講評が為された今回。
手を上げたのは長い黒髪の少女、為人影狼だ。「俺の分もよろしいでしょうか」と続いたのが眼鏡の飯田天哉。そして「にゃあも、にゃあも~!」と玉手川蹴子も元気よく手を上げる。こうなれば、貰えるのであれば、と他の生徒達も続いた。その生徒達の反応にオールマイトは「皆が良いのであれば、後で学園のネットワークに上げておくよ」と言った。
そんなやり取りを終えた後、時間が押している。と第三戦の準備が進められる。
◆
第三戦は、ヒーロー組は青山優雅と瀬呂範太のペア、ヴィラン組は障子目蔵と峰田実のペアになった。
先ず瀬呂範太が個性のテープを使って、壁面から内部の偵察を試みる。4階の窓から核兵器を確認し、外で待機していた青山と合流。改めて核兵器の部屋を覗き見た時、中に居るのは峰田一人だけだった。青山のネビルレーザーを使って、壁から室内への侵入を果たす。
しかし部屋に踏み入れた直後、死角から取り外された扉を押し付けられた。
扉には峰田の頭からもぎもぎしたボールを取り付けられており、そのまま地面に押し倒すことで地面と接着される。障子が扉の上から二人を抑えつけたまま、峰田が確保テープを二人に巻き付けて試合終了。
ヴィラン組の圧勝となった。
「……どうして入る瞬間が分かったんだよ」
瀬呂の疑問に障子は「俺は耳が良いんだ」と複数の耳を複製してみせる。
講評では、MVPは障子目蔵。しかし、これを障子は辞退。作戦を考えたのは峰田との事である。わざと見えやすい位置に核兵器を設置し、誰も居ないと逆に警戒されるからと峰田自身も窓から見える位置でドアを警戒している風に見せていた。これに引っかかったのが瀬呂と青山であった。
窓からの侵入した時は、それでいい。「もしも相手が素直に扉から来た時はどうしていましたか?」という八百万の疑問に「障子の聴力があれば、屋内と屋外どっちかなんて直ぐ分かるんだ」と峰田が答える。先程、やったのと同じ事を扉から入って来た瞬間にすれば良かった。
瀬呂の個性に対策した上で保険も掛けた作戦、これによりMVPは障子目蔵と峰田実の二人になる。
◆
第四戦。ヒーロー組は砂藤力道と轟焦凍。
焦凍は訓練開始直後、ヴィラン組を制圧する為に先ずビル全体を個性で一息に凍らせてしまった。
その後に焦凍達は悠々とビル内を探索し、5階に部屋の扉を開ける。部屋の中心に設置された核兵器を見つけた。「これで訓練終了か、呆気ないな」と砂藤が零す。焦凍もひと通り、部屋を見渡して、相手の姿がない事を簡単に確認する。
此処まで相手には出逢わなかった。
別の部屋に移動している時に氷で拘束してしまったのかも知れない。
後で探しに行って救助しないといけないな。
そんな事を考えながら焦凍は、核兵器まで歩を進める。
「……なんだ?」
焦凍の足元に氷が砕かれた痕があった。
直後、開け切った扉を蹴る音がする。振り返る、開けた扉の裏に隠れていた尾白猿夫が個性の尻尾で砂藤を地面に叩き付けていた。右手を振るって、氷の個性を発動しようとした。しかし、後頭部に強い衝撃を受けて、地面に倒れ伏す。背中を踏まれた感覚、何が起きたのか理解ができない。
とりあえず焦凍が個性で反撃を試みたが、それよりも早く腕に確保テープを巻かれる。
「実力はプロ以上、そう聞いていたんだけどね」
背中から足をどかし、自分を見下ろしたのは女性だった。
童話の赤ずきんをモチーフにしたゴシック調の衣服。「どれだけ強い個性を持っていても個性に使われているようじゃ世話ないね」と為人影狼は強気の笑みを浮かべてみせた。
ちなみに彼女は、核兵器の裏に隠れていた。
講評、訓練開始直後の話。
偶々片脚を上げていた影狼は、そのまま氷を踏み砕いていた。
同じく氷に囚われていた尾白の氷を砕く、窓の外から焦凍が悠々とビルの中へと入っていく様子から相手が油断していると判断。核兵器の部屋で待ち伏せることにする。
事実、焦凍は碌に警戒をしていなかった。
核兵器を見つけた時も待ち伏せの可能性を考慮せず、勝利を確信して無防備に核兵器へ歩み寄った。その結果、二人は奇襲に反応できず、一撃で確保されてしまった。
MVPは勿論、為人影狼になる。
◆
第五戦。
ヒーロー組は玉手川蹴子と口田甲司のペア、ヴィラン組は飯田天哉と爆豪勝己のペアになる。
核兵器の設置は5階、爆豪は荒れていた。
緑谷が個性を隠していた。
その緑谷に心根が勝ったのは良いが、衝撃波で1階を吹き飛ばしたのは認められない。第四戦に自分じゃ敵わないかも知れない強個性を見た。その強個性を、ほとんど個性を使わずに制圧した奴がいた。その両方が気に食わなかった。まるでクソナードにも可能性があると言っているようで嫌だった。そして、自分はビルを一瞬で制圧する事も、個性なしで氷野郎を制圧する事も出来ない。
やっぱり個性を隠していた事実が気に食わなくて仕方なかった。
爆豪は平常心を失ったまま、訓練が開始される。
「俺が前に出る」
そう言い残して、彼は部屋から飛び出した。
鬱憤を晴らす為に先ずは、目の前の敵の排除から始める事にした。
相手は、にゃあにゃあ言ってる猫野郎と陰キャの岩野郎。
一瞬で片を付けてやる、と意気込んだ。
事実、相手を視界に収めた瞬間、彼は爆破の個性を使って一瞬で間合いを詰めた。
先ずは岩、次に猫。岩の顔面を掴もうと右手を前に突き出す。
「にゃあを無視するにゃんて良い度胸にゃ」
真横から放たれた蹴りが、爆豪の胴体を捉えた。