レッツゴージャスティス!   作:ジャスティス仮面

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No.3「超大型ロボヴィラン討伐戦」

 実技試験の監督を務めるプレゼント・マイクは、大量のモニターのある部屋に自らを押し込んでいた。

 此処に映される映像は各会場に設置された監視カメラから送られたものであり、全ての会場の様子を観察することが出来た。仮想敵のロボットは根津校長が手ずから作った代物で、怪我をした者が出た場合、ロボットが救援信号と共に地図にマーカーを記す仕組みになっていた。

 それを受けて、各会場に配置されたスタッフが何時でも飛び出せるように待機している。

 怪我をした者への対応も評価のひとつになっている為、出来るだけ手を出さないように指示が出されているのだが──実際問題、ロボットも歯向かってくる者を優先的に攻撃するプログラムが施されており、ダウンした者に対する追撃もしないので大事なる事は少ない。

 それでも年に一人や二人、危ない目に逢う事はある。

 

 それを防ぐのが、各演習場の監視塔。その屋上で待機する女性であった。

 雄英高校の制服を着る彼女は、日本の千を超えるヒーローの中でも二桁内に入るトップヒーローの一人。今はまだ仮免許だが、近い将来、トップ10入りを確実視される逸材でもある。そんな彼女はホットドッグを頬張りつつも、各会場の様子を双眼鏡で監視していた。

 彼女は雄英高校が用意した最後の保険。彼女の師匠であるイレイザー・ヘッドとプレゼント・マイクのお墨付きを頂いての参戦だ。雄英ビッグ3ではなくて、彼女が選ばれたのには勿論、理由がある。

 それは彼女が持つ個性が関わっていた。

 

「今年は豊作だな。個性もそうだが、根性のある奴が多い」

 

 まあ私には敵わないがな、とケラケラと肩を揺らす。

 トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼らの多くが話の結びに「考えるよりも先に身体が動いていた」と言うものだ。だが、去年の受験生にそういった逸話を残している者は一人も居なかった。

 それはトップワンも同様だ。彼女が同じ質問を受けた時、彼女は誇張表現を使わない。

 

 ──気付いた時には救っていた。

 

 ただ一言。事実のみを、そっけなく語るのみである。

 弾丸ヒーローが見守る実技試験、万に一つの事故も起こり得ないのだ。

 

 

 超大型ロボヴィランを前に一歩、前に踏み出した。

 ビルよりも高い巨体が街を所狭しと破壊する姿は正に圧巻、圧倒的脅威と呼ぶに相応しい光景である。

 それでも竦む足を踏み出すことが出来たのは、

 並び立つ五人の勇士が足並みを揃えてくれているおかげだった。

 

「あいつら本気かよ」

「やめておけって」

「どうにもならないってのが見て分からないのか?」

 

 周囲からの声が耳に入る。

 これが正気沙汰じゃない事は分かっていた。

 地響きを上げて暴れる圧倒的な脅威を前に誰も彼もが背を向けて逃げ出す。

 それが恥だとは思わない、可笑しいのは私達の方だ。

 実際問題、今すぐにでも恐怖に屈してしまいそうだった。

 

 だが、しかしだ。

 私達の中心に立つ真純は、欠片も臆さず、次なる一歩を踏み出し続けている。

 飛来する破片を拾った鉄パイプで弾いては前に前にと歩み出す。

 そんな彼女が居るおかげで、

 私達は圧倒的脅威に挑むことが出来ていた。

 

 0ポイントの仮想敵、試験的に倒す意味なんて皆無だ。

 そんな事は分かっている。必ずしも私達が相手にする必要はない。だけど誰かがアレを相手にしなくちゃいけない訳で、他の誰も立ち上がってくれないから自分達が相手をする。

 そんな後ろめたい理由で私達は挑もうとしていた。

 

「実際問題。これが街で暴れるヴィランを想定しているのであれば、全員がアレを無視するのは問題だと思うんだよね」

 

 歩みながら真純が告げる。

 

「私達をヒーローだと過程するのであれば、私達は民衆に残された希望なんだ。私達が逃げてしまえば、誰が民衆を守るんだろう? 実際の私達は素人でヒーローとして実力が足りている訳ではない。だけど、勝てないにしても、次に繋げるまではヴィランによる被害の拡大を食い止める必要がある」

 

 彼女は歩く速度を少しずつ上げる。

 地響きで揺れる中、真純の踏み出す一歩は力強かった。

 臆せず、ただ前だけを見据えている。

 

「その判断を評価せずに私達を落とすのであれば、最初から入る価値なんてなかったって事だよ」

 

 真純の言葉に泡瀬洋雪と峰田実の表情が変わった。

 泡瀬が、自らの頬を叩いた。峰田も、必要以上に両腕を振って、自らを鼓舞している。

 二人は覚悟を決めたようだ。

 

「それで退治するにしても、足止めするにしても、どうするつもりなの?」

 

 超大型ロボヴィランとの距離を詰める従って角取ポニーが角を発射し、その上に飛び乗った。

 

「現実的な話、私達の火力だと超大型を破壊することは不可能だ」

 

 だけど、と真純が続ける。

 

「行動不能に追い込む事は見た目ほど、難しくはないはずだよ」

 

 真純は視線だけで私達を見る。

 それだけで気が引き締まる想いだった。

 堂々とした彼女の立ち振る舞いには、

 安心感を感じられる。

 

「先ずは私が相手の注意を引き付ける」

How do you think(どうやって)?」

「方法は角取ちゃんの個性を使って、自分を頭上まで運んで欲しい」

 

 あとは自分でどうにかする。と彼女は笑ってみせる。

 

「重要なのは泡瀬君と峰田君の二人だ。ロボットの弱点は関節部だって相場で決まっていてね、二人には其処を攻めて欲しいんだ。移動は角取ちゃんがフォローして欲しい」

 

 関節部に異物を挟んで機能不全を起こす。それが真純の作戦だった。

 しかし泡瀬は首を横に振る。

 

「俺はモノがなければ溶接が出来ない。仮に歯車の中に突っ込んだとしても、生半可なモノだと粉砕されるだけで終わるんじゃないか?」

 

 泡瀬が角取を見る、角取も首を横に振った。

 

「私が個性で運べるのは人間一人が限界デース」

 

 角取の言葉に「大丈夫だよ」と真純が答える。

 

「此処で大兎ちゃんの個性が活きるんだ」

「ふえっ?」

 

 急に話を振られて、変な声が出てしまった。

 入れ替えによる物資の運搬。私の個性は重量ではなくて、体積に依存する。

 だから仮想敵を破壊する時にも、

 頭上に投げた小石と瓦礫を入れ替えて破壊する事ができた。

 

 ああ、でも。最初の一発は私に欲しい。

 と真純が言ったので、右手に掴んだ小石を彼女に手渡した。

 

 マーキングに必要な動作は、素手で握るか掴むだけだ。

 自分の意思とは関係なく、

 素手で掴むだけで、勝手に上書きされる欠点があった。

 

「葉隠ちゃんには、大兎ちゃんを守って欲しい。他の仮想敵と遭遇しないとも限らないからね」

 

 じゃあ、と真純が両手を叩いた。

 

「ミッション開始だ」

 

 質問する間も与えず、角取が真っ先に動き出す。

 発射される四本の角。一本は角取が乗り、残り三本が真純と泡瀬、峰田を持ち上げる。

 先ず真純が空高くまで運ばれて、

 超大型ヴィランの頭よりも高い位置まで駆け上がった。

 

 米粒ほどにも小さくなった彼女は、小石を超大型ヴィランの上に放り投げる。

 それを見た私は、近場にある大きめの瓦礫に左手で握った。

 個性発動。唐突に小石と瓦礫が入れ替わり、瓦礫が超大型ヴィランの頭を叩き付ける。

 

 よし、と私が右手の拳を握り締めたのも束の間、

 真純は角からヴィランの頭を目掛けて、ぴょんと飛び降りた。

 ビルよりも遥かに高い位置、落ちたら絶対に死ぬ高度。

 にも関わらず、彼女は躊躇せずに飛び移った。

 

 確か彼女の個性は、鋼精神(メンタル)

 それがどういう個性なのか、いまいち分からなかったのだけど、

 彼女の特異性が今、はっきりと理解できてしまった。

 

 片手に持った鉄パイプで超大型ヴィランの片目に突き刺した。

 その後、まとわりつく虫を振り払うように首を振ったロボヴィランによって、

 真純は何もない空中へと放り出される。

 

 誰もが恐怖する一歩目を躊躇なく踏み出す個性。

 死地にも簡単に身を投じてしまう彼女は、

 少しでも目を離すと簡単に死んでしまいそうな危険性を孕んでいた。

 

 彼女を一人にしては駄目だ。

 真純の覚悟を見た、誰もが同じ感想を抱いたに違いない。

 

 

 角取ポニーの個性によって助けられた真純は、笑っていた。

 地面に降ろした後、真純はポニーに、大兎から小石を受け取るように指示を出す。

 片目を破壊されて暴れ狂う圧倒的脅威を振り返る。

 超大型ヴィランの矛先は、真純に向けられた。

 頭上からの一撃、片目の破壊。二度のダメージは、真純の攻撃と結び付けられる。

 故に超大型ヴィランは、自身の脅威である真純の無力化に動き出した。

 

 対する真純は、鉄パイプ一本。冷や汗ひとつ流さず、対峙する。

 

 彼女の心に不安はない、恐怖もない。

 何故なら彼女は仲間達の事を信じていた。

 即席のチームアップではあるが、

 圧倒的な脅威を前に立ち上がった仲間達の精神性を信じている。

 故に彼女は己の責務を全うする。

 

「これが最善、これが最大効率」

 

 心根真純は揺るがない。

 一度、これだと決めた以上、絶対にやり通す覚悟があった。

 鋼の精神。それが彼女が持つ特異性なのだ。

 

 超大型ヴィランが振り下ろす右手、

 自分の身体なんか簡単に圧し潰してしまいそうな質量を見て、

 臆さず前に駆け出した。

 自身の脚の速さを鑑みて、敵の右手が地面に触れるよりも早く、

 懐に潜り込んだ。

 砕けた地面が隆起し、その衝撃で身体が跳ねてしまったのだけど、

 素早く受け身を取って立ち上がる。

 

 多少、身体を打ち付けてしまったのが、

 痛みはあっても身体が動かない程ではない。

 ならば駆け出す。

 自分以外を矛先にしないように、

 超大型ヴィランの視界に入るように動き出した。

 

 自分に課した使命が時間稼ぎであるが故に、

 彼女は自らを囮に逃げ回るのだ。

 

 

「クソッ! 鉄筋コンクリートじゃ砕かれちまう!」

 

 背後から見た超大型ロボヴィランの駆動部は剥き出しだ。

 真正面からでは分からなかった弱点は、角取ポニーの個性により、背後に回り込む事で露見した。

 しかし、しかしだ。あれだけの巨体を動かすという事は、それだけの馬力がある。

 馬力があるという事は、駆動部に使われている機材は巨大で頑丈だった。

 

 作戦目的は超大型ヴィランによる被害の拡大の抑止。

 機動力を奪ってやろうと脚部に瓦礫を押し込んでやったが、歯車は瓦礫を砕いて何事もなかったかのように動いていた。反対側に居る峰田は、頭のボールをもぎっては投げてを延々と繰り返しており、胴体と脚部を繋ぐ関節のひとつを止めるのに成功していた。

 しかし、そこが限界で角取ポニーに回収されて、後方まで搬送される。

 

「瓦礫じゃ駄目だ、もっと頑丈なものが必要だ!」

 

 適度に大きくて頑丈なモノ。

 真っ先に思いついたのはポストだったけど、あのサイズでは焼け石に水だ。

 もっと大きなものが必要になる。

 街にあるもので、何かないかと考えを巡らせていると、

 

「あっ」

 

 と街に散乱する残骸を見て、思い付いた。

 なにも最初から街にあるものじゃなくても良い。

 頑丈で手頃なサイズがあるモノ!

 俺は、角取に大兎への伝言を頼んだ。

 

 

 泡瀬の元まで小石を運んで貰うこと幾数回、周辺に落ちている破壊済みのロボヴィランを握り締める。

 入れ替え。した瞬間、許容量を超過した負荷が全身に圧し掛かった。エレベーターが止まる時にズシリと感じる重量感を、もっと酷くした感じのものだ。ロボヴィランの体積は、人間一人分のサイズを超えている。超えた分の負荷が身を襲った。鼻血が垂れて、目尻からも血が溢れ出す。透が心配してくるけど、まだ、超大型ヴィランが止まってくれないのを見て、軋む身体に無茶を言わせて、転送を続ける。

 超大型ヴィランの矛先を引き受ける真純を思えば、泣き言なんて言ってられない。

 

 五度目の転送、何かがプツリと切れる感覚に平衡感覚を失った。

 前を向いているはずなのに、地面が近付いた。

 気付けば倒れていた、吐き気がする。倒れる私を透が抱きかかえてくれた。

 超大型ヴィランは、まだ動いていた。

 

 しかし、ガクン、と一度、硬直する。

 

 上半身は動いている、両手を忙しなく動かしていた。

 しかし下半身が止まっていた。緩やかに前へと傾き始める超大型ヴィランの様子に冷や汗を流す。

 あ、これ。駄目な奴だ。

 超大型の巨体が、太陽を遮って、私達を影で覆い尽くした。

 逃げて、透を突き離そうとした。

 だけど、身体は動かず、言葉は声にならなかった。

 透は、ただ私の事を覆い被さるように抱き締める。

 

Get away(逃げるデース)!!」

 

 角取の角が私達を拾い上げて、高速で超大型の巨体から距離を離す。

 透に抱えられながら周囲を見渡した。

 真純の姿もあった、泡瀬と峰田の姿はない。

 二人は安全な場所に居るんだろうか。

 兎も角、寸でのところで超大型の巨体から逃げ切った。

 

 本当にギリギリだった。

 角取も余裕もなかったようで角の制御が利かなくなって、全員が空中に放り出される。

 受け身も取れず、四人が地面を転がった。

 そして、地面に倒れた衝撃で、空を舞った仮想敵の装甲版が宙を舞っていた。

 くるくると私達を目掛けて落下する。

 

「……実は弾丸ヒーローって名前は、あまり気に入っていないんだ」

 

 光が、煌めいた。

 閃光のように眩い光が視界一杯に埋め尽くす。

 鉄板を蹴りつける強い衝撃音が会場内に響き渡った。

 強い光で閉ざされた視界が開けた時、

 私達の前には雄英高校の制服を着た一人の少女が立っていた。

 

「なんせ私は弾丸よりも速いからな!」

 

 太陽を背に、歯を見せて笑うヒーローの姿。

 私は、そんな彼女の強い輝きに見入ってしまった。




トップワン。
普通は○○ヒーローと自分で決めれるものだが、
彼女が提出する時に出したのが「ザ・ヒーロー」だったので、無記入扱い。
後にマスコミが勝手に付けて、それが定着した。

明日は多忙の為、投稿できないと思います。
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