レッツゴージャスティス! 作:ジャスティス仮面
弾丸ヒーロー、トップワン。本名は
まだ学生の身である彼女は仮免許で出動する彼女は、昨年のヒーロービルドチャートJPでは88位にランクインしている。仮免許時点で2桁台に入るのは史上初。学業との兼ね合いで活動時間が削られる中での2桁入りは、デビュー年にトップ10に入った早過ぎる男ホークスを髣髴させる。
勿論、これには種がある。
雄英高校の教師である相澤消太が、たった一人の為に教室で講義をするのは非効率と断じ、イレイザー・ヘッドとしてのヒーロー活動に付き添う形で講義を続けていた。勿論、現場に連れて行くだけの能力があっての話。仮免許は最短で取得。雄英体育祭では独走し、試験では学年トップを駆け抜けた。
既に二年でやる講義内容の予習を終えており、三年の講義内容も理解している。
絶対的な国民的ヒーローであるオールマイトが現役で活動する今の時代に「唯一抜きん出て並ぶ者なし」を意味するヒーローネームを背負うだけの能力が彼女にはある。
ホークスと共にオールマイトの次を担う一人として、社会から認知されていた。
そんな彼女が持つ個性は、閃光。視界内に写る場所まで超高速で移動する能力だ。
雄英高校で実地される個性把握テストで測定した結果、彼女が出す速度は最低でも音速を超える事が確認されている。個性を使う時に全身が光輝く事から閃光という名前が名付けられた。
欠点は、目的地まで直線移動しか出来ない事。それだけだった。
実技試験の最中、彼女は数キロメートルも離れた監視塔の屋上から全ての会場を観察していた。
試験には仮想敵を退治した時に得られるヴィランポイントの他に、他の参加者を助ける事で獲得できるレスキューポイントが存在している為、彼女自身が後遺症の残る怪我をする可能性が高いと判断するまでは監視塔からは動かなかった。ギリギリまで動かずに居られたのは、彼女自身が持つ個性故。監視塔から演習場まで一秒未満で移動できる彼女だから限界のギリギリまで我慢出来た。
心根真純を始めとした受験生の助けに入った時、その一秒前まで監視塔に彼女は立っていた。
「今年は将来有望な奴が多そうだな!」
飛来する装甲版を蹴り飛ばした彼女は、倒れる真純達を見て笑顔を浮かべる。
状況をいち早く把握する為の判断力、遅れて登場じゃ話にならない機動力。どんな状況でも冷静でいられるか判断力。そして純然たる戦闘力。たった一秒の活躍により、彼女は、その全てを満たす完全無欠のヒーローとしての能力を受験生に意図せず見せつける結果となった。
程なくプレゼント・マイクから試験終了の合図が宣言される。
トップワン、誰もが諦めるオールマイトの背中を悠々と追いかける新進気鋭のニューフェイス。今回はまだ彼女の実力の一割も見せていなかった。
そんな彼女が公然と掲げる目標は「全ての悪の打倒!」である。
◆
雄英高校の入学初日。俺、爆豪勝己は怒髪天を衝く苛立ちを抱えていた。
それもそのはずで校門を潜る彼の両脇には、二人の少女の姿があった為だ。二人は共に実技試験の時に協力関係を結んだ仲ではある。一人は制服の下にフード付きのパーカーを着込んだ少女、
そもそも二人が居なければ、超大型と戦おうとも思わなかった。
レスキューポイントを得られたおかげで主席合格。しかし二人が居なければ、得られなかったレスキューポイントでもある。レスキューポイントを抜いた点数では、点数を逆転されてしまっており、二人を出し抜くことが出来なかった事は苦い記憶として残っている。
その二人が、何故か自分を見つけるや否や絡んでくるのが鬱陶しかった。
「にゃー、バクゴー! もっと私と会話するにゃー!」
入学初日に制服を改造するパーカー娘が身体を揺さぶって来る。
意地でも無視を決め込んだ俺は、無言で教室を目指す。
同校の木偶の坊が入学試験に合格している事も納得がいかない。
奴の事は誰よりも俺が知っている。筆記試験は兎も角、あの実技試験の内容でデクが合格するはずがないのだ。奴が俺に顔を見せなくなったのが丁度、十ヶ月前。思い出したくもないヘドロ事件の直後からだ。少なくとも十ヶ月前の時点での奴は、ヒョロガリのオタクだった。
俺の知らない場所で、何かしていたに違いない。
俺の事は何でも探ろうとする癖に自分だけは秘密を抱える奴の事が気に食わなかった。
同じクラスになるのは嫌だ、顔も合わせたくない。
でも、また俺の知らない所で何かされるのもそれはそれでムカついた。
それなら最初から関わらないで済む方が良い。
中学で縁を切れると思ったのに、絶対に受からないはずだったのに、
雄英高校まで付いて来るデクの事が気持ち悪かった。
「そうにゃ!」
先程まで、にゃーにゃーと喚いていたパーカー娘が何かを思いついたように人差し指を立てる。
「今回の実技試験で倒された超大型が三体も居たにゃ」
「ああ?」
と俺が振り返れば、パーカー娘が嬉しそうに話を続ける。
「一体は六人一組のチームアップ、もう一体は私達。最後の一体は一人で倒したっていう話にゃ」
「試験内容の映像は公開されないんじゃねえのかよ」
「人の口には戸が立てられにゃい。噂好きから聞いた話にゃ」
「それで一人で倒したっていう子の名前は知ってるの?」
狼娘の問い掛けに「勿論にゃ!」とパーカー娘が答える。
「その男の名は緑谷出久!」
聞き捨てのならない名前だった。
「超大型の出現と同時に飛び出しての一撃必殺! まるでオールマイトのようなパンチ一発でのしてしまったにゃ!!」
ギュッと拳を握り締めるパーカー娘を「ありえねえ」と一蹴する。
個性の発現は四歳まで、それは覆しようのない事実のはずだ。もし仮にデクが個性を持っていたとして、それが超大型を一撃で倒せる個性があったとして──想起されるのは過去の記憶。かっちゃんの個性、かっこういいもんね、すごいなあ──どの面下げて、そんな事を言ってやがったんだって話になる。
しかし、合格したのは事実だ。
所詮、噂は噂だが雄英高校の評価基準まで疑うつもりもない。俺の知るデクでは、真っ当な手段で合格する事は不可能だ。なので真っ当ではない手段で合格した。レスキューポイントを荒稼ぎした? もし仮に、それを実行したとすれば、奴は最初から試験内容を知っていた事になる。
あのデクが? あんな抜けてる奴が?
それもまた、ありえない。もし仮に知っていたのであれば、奴に協力者が居たはずだ。あれだけヒーローだとか、オールマイトだとか言っていた奴が不正に手を染める?
許せねえ、それが事実だった時は俺が叩き潰してやる。
「おいおい、手の平で火花を散らすんじゃないよ。危ないな」
狼娘の言葉を無視して、教室の扉に手を掛ける。
兎にも角にも、謎は俺の前に顔を出さなくなった十ヶ月の間に隠されているはずだ。
多少、鍛えた程度では埋まらないだけの差が個性と無個性の間にある。
「ちぃーっす」
雄英高校1年A組。縦に五列、横に五列と綺麗に机が並べられていた。
毎年300を超える倍率には訳がある。通年で一般入試の定員は36名、18人ずつで2クラスしかない為だ。しかし去年の雄英高校ヒーロー科の卒業生は30名前後と著しく減少してしまっていた。
その為、雄英高校は今年、合格者を追加で4名も多く取っている。
特待生の2人を加えた計24名が今年の1年A組だ。
「やあ、君は確か爆豪少年。入学早々可愛らしい女を二人も侍らせる所を見るに、なかなかのプレイボーイのようだ」
入学試験の時に見た顔が居た。
プレゼント・マイクの隣で補佐を務めていた雄英高校の先輩。デクの話では、トップワンを名乗る新進気鋭の仮免ヒーロー様。その彼女が何故か俺達のクラスで読書を嗜んでいる。
「入学前から口説くのは反則だろうが、ふざけんなよテメーッ!!」
そして葡萄頭のクソガキが血涙流して何かを喚いていた。
……やべえ、頭が痛く感じる。雄英は自由な校風が売り文句、だが自由にも限度があった。
頭を抱える俺に「あれ?」と聞き慣れた声をかけられる。
「かっちゃん、入り口でどうしたの?」
「クソナード……」
人目がなければ、問答無用で拳を叩き込んでいるところだ。