────大型休暇に入る前のこと
「やっぱり遠いなぁ……」
夜中に湖畔で特訓をするリコとニャオハ。しかしその途中、いつものようにニャオハの気まぐれが発動し、特訓そっちのけで岩で爪研ぎを始めてしまった。
その傍らでリコは星空に浮かぶ満月へと手を伸ばし、遥か遠くに浮かぶあの天体との距離に落胆するように呟いた。
「遠いって、月がか?」
特訓の様子を少し離れた場所から眺めていたキョウヤは、リコが手を伸ばしていた満月を見ながら彼女達の元へ近付いていった。
「うん。届きそうなのに届かないっていうか……今のわたし達みたいで」
「あ~、なるほどなぁ」
「キョウヤも思ったことある?」
「あるよ、めちゃくちゃある。……でも、その度にいろんな人やポケモン達に助けられてきたよ」
キョウヤ自身イッシュ地方を旅してた時に様々な壁や悩みにぶつかった事がある為、理由は違っててもリコの気持ちはよく分かっていた。故にニャオハとの関係に悩むリコを気にして、協力しているのである。
「悩んだり、迷った時は気持ちを切り替えてみるのも1つの手って言った人がいたっけ」
「気持ちを切り替える……どうすればいいのかな」
「例えば……ああ、そうだ」
リコからの問いに暫し考えたキョウヤだったが、周囲を見渡して夜空に浮かぶ満月を見ると、ある事を思い付いた様子であった。
「あの月にもっと近付けるとしたらどうする、リコ?」
「……えっ?で、でもどうやって?」
キョウヤの言葉に疑問符を頭上に浮かべるリコ。キョウヤの言い方的に比喩ではないと気付いたが、果たしてそれをどう実現するのかがリコは分からなかった。
「簡単さ、こいつに乗せてもらうんだ」
そう言うと、腰のホルダーから取り出したモンスターボールを宙に投げるキョウヤ。そのボールから現れたのは背中側は赤色、腹側は灰色の翼を持つ大型のとりポケモンであり、勇猛果敢な性格からアローラ地方では『空の勇者』と昔から言い伝えられてきた大空の戦士。
そのポケモンの名は──────
「ウォーッ!」
『ウォーグル。ゆうもうポケモン。ノーマル、ひこうタイプ。勇猛勇敢な大空の戦士。体の傷が多いほど仲間から尊敬されるという。向こう傷の多いものほど勇敢とされ後ろ傷の多いものは群れでバカにされる』
「ウォーグルかぁ。カッコいいポケモンだね」
「ウォーッ!」
翼を羽ばたかせて宙を舞うウォーグル。スマホロトムの説明を聞いたリコから嬉しい言葉を貰ったウォーグルは喜ぶように声を上げ、俺の横へ着地した。
「こいつには普段から俺を背中に乗せて、色々な場所に連れてもらってるんだ。力も強いし、2人乗る位わけないぜ」
「だ、だけどわたし、ポケモンに乗った事なんて一回もないよ?」
「ウォーグルは人を乗せる事に慣れてるし、俺にしっかり掴まってくれれば大丈夫だって」
背を低くするウォーグルに慣れた手付きで飛び乗るキョウヤ。それに対してリコは『ポケモンに乗る』という初めての体験に不安がり、なかなか一歩を踏み出せずにいた。
「ニャオッ!」
「あっ、ニャオハ!?」
リコの横を通り過ぎ、ウォーグルの背中に飛び乗るニャオハ。キョウヤの後ろに座り込んだニャオハは、そこでリコを誘うように鳴き声を上げた。
「ほら、来いよリコ。ここで一歩踏み出せば、見たことない景色がお前を待ってるぜ?」
「ニャアーッ!」
「う、うん……!」
ニャオハに励まされ、差し出してきたキョウヤの手を握るリコ。キョウヤに腕を引っ張られ、乗り方に迷いながらもキョウヤからのアドバイス通りに動き、時間をかけながらもリコはウォーグルの背中に跨がる事が出来たのだった。
「初めてポケモンに乗った気分はどうだ?」
「えっと……その、大きくて、フサフサしてて、暖かくて……これがウォーグルっていうポケモンなんだなっていうか」
「俺もポケモンに初めて乗った時は嬉しすぎて、自分が何考えてたかよく覚えてないなぁ。よし、それじゃ俺にしっかり掴まっててくれ」
「こ、こう?」
ニャオハが落ちないよう2人の体の間に挟み、リコはキョウヤの体に両腕を回してお互いの体を寄せ合う形となった。つまりニャオハを挟んでるとはいえ、体の上半分をキョウヤと密着する事になったリコは、顔の赤みが増すと同時に心臓の鼓動が早くなりつつあった。
(し、心音が早いし大きいし……な、なんで?というかこれじゃキョウヤに聞こえてるんじゃ!?ど、どうしよう……!?)
(背中越しに聞こえてくるのって、リコの心臓の音?やっぱ緊張してるよなぁ。……というか抱き着かれてる以上、背中に当たってるのってたぶん……い、いや!リコだって女の子なんだからあって当然だろ!?)
お互いに考えてる事は違ってても意識してしまってる事は同じで、そこから暫くキョウヤもリコもなかなか相手に声を掛けられずにいた。その様子を見たニャオハとウォーグルは理由が分からず、首をかしげるのだった。
「……よし。リコ、飛んで大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫だよ」
「ニャアッ」
「ニャオハ、落ちないよう気を付けろよ?それじゃあウォーグル、俺がいいって言うまで上昇してくれ」
「ウォーッ!」
折り畳んでいた翼を広げ、雄叫びを上げるウォーグル。その大きな翼を羽ばたかせ、キョウヤとリコ、ニャオハを乗せてるにも拘わらず地面を離れたウォーグルは、凄まじい勢いで上昇を始めた。
「ひゃっ……!」
(うおっ!?やばいやばいやばい!)
初めてポケモンに乗ったリコはその勢いに驚いて目を瞑り、短く悲鳴を上げた。不安と少しの恐怖からキョウヤの体に回した腕に力が入ってしまうが、リコ自身に自覚はなく、余計に押し付けられる膨らみにキョウヤが心中にて悶えるだけとなった。
▽
「ウォーグル、ここで止まってくれ」
そしてしばらくウォーグルは上昇を続け、ある程度の高さまで達した所でキョウヤは止まるよう指示を出した。その指示通りにウォーグルはそれ以上飛ばずに、その場でホバリングを始めるのだった。
「リコ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫。最初はちょっと怖かったけど、途中から慣れてきたから。でもだいぶ上まで飛んできたん────あっ」
「ニャア~」
周囲を見渡し、自分達が地上よりもかなり高い位置にいる事に気付いたリコは、目の前に浮かぶ地上よりも遥かに近く、そして大きな満月を見て小さく声を上げた。彼女の視線より下の位置にいるニャオハも初めて見る光景に目を奪われたのか、恍惚とした声を上げている。
「綺麗……」
「だろ?」
地上から見るよりもより一層輝いてるように感じる満月に、リコは見とれていた。思わず口から出てしまったたった一言の言葉だが、それはこの光景を言い表すには十分過ぎるものだった。
夜空に浮かぶ目の前の満月へ手を伸ばすリコ。地上からは片手で収まる大きさだったが、上空からでは片手でも両手でも収まらない大きさである事が、届かなかった満月に近付く事が出来たとリコに実感を持たせてくれていた。
「……ありがとう、キョウヤ。わたし、こんなにいい景色見たの初めてかも」
「喜んでくれたようで良かったよ。ウォーグルもありがとな」
「ウォーッ!」
この日の夜、キョウヤと一緒に見た素敵な景色を、リコは絶対に忘れたくないと思うのだった。
▽○
(あの時……キョウヤと一緒に見た満月、とっても綺麗だったなぁ。その後キョウヤにだ、抱き着いちゃってる事に気付いて恥ずかしい思いする事になったけど……あれはわたしとキョウヤとの、大切な思い出。ドキドキしたけど、絶対に忘れたくないな)
「──────い、おい!大丈夫か?」
「ふえっ!?あ、は、はい!」
「そうか。急に静かになったもんだから心配したぜ」
リザードンにニャオハと共に抱かれ、夜空を飛ぶリコは目の前に浮かぶ満月を見て、少し前にあった出来事を思い出していた。しかしその間、ずっと上の空だった為に白髪の男に心配をかけてしまっていたのだ。
(そ、そうだ。わたし、さっきまで知らない3人組に襲われて……でもキョウヤに助けられて、湖に向かって……だけどそしたらこの男の人に助けられたんだ。…………いや、これどういう状況!?何でこんな事になってるの!?そもそもこの人誰!?わたし達をどこに連れてってるの!?)
「あ、あの!わたし達をどこに連れてく気ですか!?」
「ん?何か言ったか?」
「だから!わたし達をどこに……って……」
そこでリコは突然正面から向かい風が吹いてくる事に気付き、その不思議さから視線をそちらに向けた。すると自分達の目の前に巨大な建造物──────稲妻のシンボルが描かれた大きな飛行船が浮いている事に目を奪われたのだった。
「なっ……なにあれ!?」
「俺達の船、ブレイブアサギ号だ」
「お、俺達……?」
「ちょっと待っててくれよ。……俺だ、戻ったぞー。ウイングデッキ、展開してくれ!」
取り出したスマホロトムで誰かに指示を出す男。すると飛行船の後ろ側でまるで翼の形をした複数の板状の物体に変化が起き始めた。機械音と共に折り畳まれて横1枚の板へと変わっていき、空中にバトルフィールドを中心とした広い足場が出現したのだった。
「とうちゃーく!」
「ありがとう、リザードン」
リザードンがバトルフィールドに着地すると、その瞬間に足場の周囲一帯を囲むように青白いバリアが展開されていった。男がリザードンから飛び降り、リコとニャオハも降ろしてもらいお礼を言う。
ようやく地面に足をつけられると喜んだニャオハがリコの腕の中から抜け出すと、船内へと続くと思われる扉から男性と女性、そして彼らの足下にいるこいぬポケモンのイワンコが歩いてくる姿にリコは気付いたのだった。
(あ、あの人達が今言ってた仲間なのかな……?)
「随分と手こずったみたいだな」
「まぁな。でもわざわざ行った甲斐があったぜ」
サニーゴ柄のシャツを着た強面の壮年男性とリザードンを連れた白髪の男がお互いの拳をぶつけ、その握った手を下へと振り下ろす。そして最後には開いた手を同時に上へと振り上げるという彼らにとっての挨拶らしきハンドサインを行った。
「おかえり。……貴女がリコね?」
「は、はい!で、でもどうしてわたしの事を?それに皆さんは一体……?」
桃色の髪と看護服に黒タイツ、羽織った赤いジャケットが特徴的な女性から話しかけられたリコは、知らない人達が一方的に自分を知ってる事に不安を隠せなかった。その様子に女性は眉間に指を当て、現在の状況を把握していないリコを知った彼女は頭痛を感じたのだった。
「まさか……あんた!この子に何も説明してないんじゃ!?」
「あれ?言ってなかったか?」
女性に詰め寄られた白髪の男がリコに尋ねるが、何も伝えられてない彼女はうんうんと顔を上下に振った。それにより女性だけでなく、壮年の男性からも白髪の男は説教を受ける羽目となった。
「フリード!あんたはそういう所が────」
(この人、フリードって言うんだ。というか名前も今知ったし、わたし本当に何も説明されてない……)
「ホンゲー!ホンゲ、ホンゲー!」
「パモパモー!」
白髪の男ことフリードからのまったくの説明の無さにリコが呆れていると、更にポケモン2匹がこちらへ走ってくる事に気付いた。
「ホゲータ!それにパモまで!」
「ホンゲッ、ホンゲ~!」
ホゲータはリザードンの前に辿り着くと、かなり懐いてるらしく飛び跳ねてその喜びを表現していた。一方でパモは初めて見るリコに興味を持ったらしいが、視線を向けてきた彼女に驚いたようでホゲータの後ろに隠れてしまっていた。
「どうしてパルデアの子たちがここに?」
「ああ、旅をしてる間に住み着いちまったんだ。パルデアのだけじゃないぞ?ほらっ」
壮年の男性が指差す先にはジョウト地方に生息するヨルノズクやツボツボ、ホウエン地方に生息するユキワラシがおり、自己紹介なのかそれぞれが元気よく鳴き声を出してくれていた。
(ポケモン達がみんなこんな風にリラックスしてるなら……この人達、悪い人じゃないのかも)
「自己紹介が遅くなった、私はモリーだ」
「俺はマードック、そしてあいつが相棒のイワンコだ」
「ワンワンッ!」
「ニャオハ~」
紹介されたイワンコはいつの間にかリコのニャオハと仲良くなっており、ニャオハが前足を擦り付ける事で発生した甘い香りがイワンコは気に入ったらしい。それにつられて集まったホゲータやパモも気に入ったようで、3匹共共に横になってその匂いを堪能していた。
(みんな可愛い~!!……って、いやいや!ちゃんと何が起こってるのか聞かないと!)
「あ、あの!すみません!わたし、聞きたい事が────」
『ビーッ!ビーッ!ビーッ!』
リコが意を決して今の状況を確かめようと声が掛けるものの、それはフリードのスマホロトムから鳴り響く警報に遮られてしまった。
「ちょっとすまん。反応が1、2、3……まさかさっきの奴らか?」
「何?どうしたの?」
(3?それにさっきの奴らって……っ、もしかしなくてもわたし……というか、このペンダント狙ってるあの人達だ!?えっ、ちょっと待って……ならキョウヤは!?)
ペンダントを狙っていた3人の内、1人はキョウヤと対決していた。しかし3人全員がブレイブアサギ号に迫ってる以上、ならばキョウヤはどうなったのかリコが気になってしまうのは仕方ない事であった。
「操舵室に行く、船を出すぞ!ヨルノズク、周囲の警戒を頼む!」
「ホォーッ!」
特殊な目を持ち、例え夜でも昼間のように見る事が出来るヨルノズクは夜の見張り役に最適であり、展望台の上にある見晴台へと自ら飛び立っていく。
「フリード、奴らって何だ?学校で何があったんだ?」
「詳しい話は後だ。マードックは下を見てくれ!モリーはポケモン達と、その子を頼む!」
「進路に嵐が発生してるって、オリオがテンパってるけど?」
「なんとかする。いくぞ、リザードン!」
それぞれに指示を出したフリードはリザードンを連れて、船内へと入っていく。その後をホゲータは追い掛け、緊急事態だと察したマードックも動き出した。オリオという電話相手との通話を切ったモリーもそれに続くようにポケモン達を船内へと誘導を始めていく。
(ど、どうしよう……わたしは何をすれば?と、とにかくわたしがどこにいるのかをキョウヤに一度知らせないと……!)
『ロトロトロト……ロトロトロト……ロトロトロト……ロトロトロト──────』
(で、出ない……?何で!?もしかしてわたしを助ける為に邪魔をしたからってあの人達に捕まったんじゃ……!?)
今この場にいる誰よりも信頼できるキョウヤと連絡がつかない事にリコは不安から焦り始めた。危ない目に遭ってないか、怪我してないか、今どこにいるのかといった心配事が頭の中をグルグルと回り始める。
しかしそこでふと、キョウヤの言葉がリコの脳裏をよぎった。
────心配すんなって。俺のポケモン達の強さ、知ってるだろ?
(そうだ……キョウヤのポケモン達の強さなら何度か見せてもらった事がある。あんなに強いポケモン達がそう簡単に負けるなんて事ない……それにもしもキョウヤがここにいたら……きっと自分に出来る事を精一杯やっていたに違いない。だったらわたしも──────)
「あ、あの!わたしにも何か出来る事ってないですか!?」
「あんた……なら私と一緒にポケモン達の傍にいてほしい。みんな怖がりだから、安心させてほしいんだ」
「はい!ニャオハ、いくよ!」
「ニャアッ!」
(戸惑ってばかりで頼りない子かなと思ってたけど……案外そうじゃないのかもね)
◯
「あれか……!アーマーガア、あの船に向かって全速力で飛べ!」
先頭でアーマーガアを駆るアメジオは上空を飛ぶブレイブアサギ号を視界に捉え、より早く追い付く為に指示を出す。その横ではコニアがその先に嵐がある事に気付いた。
「前方、嵐ですが如何しますか?」
「ここで退けるか!追い付くぞ!!」
「「はっ!」」
ペンダントを奪うチャンスは今しかないと判断したアメジオは、ジルとコニアに命令を下した。ここで撒かれれば彼らを追う手懸かりを失ってしまうからである。
(ペンダントは何があっても手に入れてみせる。そして必ずギベオン様の手に……!!)
◯
ガタンッ!!
「っ!?て、停電……」
「くそっ、こんな時に限って……」
不運というのは時に重なるもので、リコ達が逃げ込んだ展望台を含め船内全体が停電に見舞われた。幸いブレイブアサギ号の動力源はポケモン達が生み出すエネルギーが主である為に墜落するという展開にはならないものの、明かりを失うというのは不安を煽る大きな要因となる状況である。
「ツボツボォ~……」
「キ、キシシィ~」
「だ、大丈夫だよ。きっと大丈夫だから」
「ニャオニャア~」
椅子の上で殻にこもるツボツボと体を丸めるユキワラシを安心させようとするリコとニャオハ。リコは優しく声を掛けたり、ニャオハは足を擦ってリラックス効果のある甘い匂いを放ったりとそれぞれが出来る事を頑張っていた。
「ホォーッ!ホォーッ!」
「っ、ついにお出ましか……!」
天井から聞こえてくるヨルノズクの声からフリードの言う“奴ら“が来た事を悟ったモリーは、展望台に備え付けてある望遠鏡でその姿を確認した。そして追ってくる3人組を視界に入れた瞬間、目を大きく見開いたのだった。
「うそっ!?あいつら、エクスプローラーズじゃん!」
「エクス……?な、何なんですかあの人達って?」
「私も詳しい事は知らない。だけど目的の為なら手段を選ばないって言われる位には悪名高い組織だよ」
「そ、そんな……」
(な、何でそんな危ない人達がわたしのペンダントを狙ってるの?このペンダントはお婆ちゃんから貰ったただのペンダントなのに……!)
『待てっ、エクスプローラーズだと!?フリード、お前なんてもんを……ていうか本当に学校で何があった!?』
『マードック、後で説明するって言っただろ?』
『あのなぁ、いつもいつも言ってるが……』
「はぁ……男共は黙ってて。オリオ、もう少しスピード出ない?このままだと間違いなく追い付かれるよ」
『やってるんだけどねぇ……!』
情報共有が出来るようにスマホロトムを使って会話する4人だが、この事態を突破する為の糸口が掴めない。暫くの間無言が続くが、唐突にフリードが動きを見せた。
『雷雲に向かって進路を取るぞ』
『はぁ!?なに言ってんだ!?』
「また無茶な事を……」
『そうでもしなきゃあいつら帰ってくれないだろ?オリオ、頼んだぞ!』
『好き勝手言ってくれるじゃん……でも了解!やったろうじゃん!』
(えっ、雷雲に向かうって……それってつまりあの嵐の中に飛び込むって事!?こ、この人達……豪快すぎる……!)
本来ならば避けるべき嵐へと進路を変え、そのまま飛び込んでいくブレイブアサギ号。大雨と雷、そして突風が吹き荒れる中を突き進んでいき、エクスプローラーズの3人組を引き離そうとするが──────
「あのっ、まだ来てます!」
「なにっ!?……っ、まさかこの船を風よけにして!?」
モリーの考え通り、アメジオ達はブレイブアサギ号を盾にする事で雨風を最低限防ぎながらウイングデッキを囲むバリアを破壊しようとポケモン達に攻撃を繰り返させていた。ウイングデッキから侵入する事が出来れば、雨風をバリアにより防げると判断したからである。
「フリード!奴ら、まだ諦めてない!ウイングデッキから突入してくる気だ!」
『なんだと?ウイングデッキ、畳めそうか!?』
「停電してる以上、自動は無理だ。……仕方ない、私が手動で閉じてくる」
『頼んだ、モリー!』
スマホロトムの通話を切り、展望台の自動扉を両手で開くモリーに、話を聞いていたリコは自分も手伝えないかと尋ねようとしたが、その前にモリーが彼女を手で制した。
「リコはここでポケモン達の事を頼む」
「で、でも……」
「大丈夫、こんな事は今まで何度もあったからね。慣れっこなのさ」
そう言って扉を閉めて行ってしまうモリーをリコは見送り、バリアを壊そうと奮闘する3人組を不安な表情で見つめるのだった。
◯
「マードック、悪いが操舵室に来てほしい。舵を頼みたいんだ」
『分かった、すぐ行く!』
エクスプローラーズがすぐそこまで来てる事に危機感を抱いたフリードは自身が出る事を決意した。この船のリーダーとしての役目を果たす為である。
「キャップ、いつでも出られるよう頼んだぜ」
「ピッカァッ!」
フリードにキャップと呼ばれたピカチュウ、その名もキャプテンピカチュウは操舵席にオタチのように尻尾を突き立てて直立した状態で彼にサムズアップを返した。
『ビーッ!ビーッ!ビーッ!』
「今度は一体なんだ……?ん?」
再び警報を鳴らすスマホロトムを見れば、既に確認されてるエクスプローラーズの3人の他に、もう1つ反応がブレイブアサギ号の遥か後方で拾われていた。しかしその速度はブレイブアサギ号を越えており、距離を徐々に縮めているのである。
「何だ、この反応……まさかあいつらの仲間か?」
「ピッカァ……」
◯
バリンッ!!
「っ!!」
巨大なウイングデッキを女性、しかもたった1人で素早く閉じる事は叶わず、アメジオ達はバリアを破壊してバトルフィールドへと降り立った。その光景を見ていたリコは思わずニャオハを抱き締め──────そして思ってしまった。
(ちょっと待って……こ、この展開……ペンダントを巡って追い回されてるってわたし……わたし……物語のヒロインですかぁ~!?)
キョウヤの手持ち②
ウォーグル
性別:♂
特性:???
性格:ゆうかん
個性:しんぼうづよい
手持ちポケモン2匹目は飛行要員として選んだウォーグルです!初めはBW2で出てくるフライゴンでもいいかなーと思いましたが、かっこいいのでウォーグルを選びました!
手持ちはあと4匹ですが、1匹だけどちらにするかで迷ってるんですよね。いつか出すまでには決めたい所です。