まぁ、前情報が夏油以上に気に食わなかったということで・・・。
内臓をボロボロにするレベルで五条をボコした神凪だったが、無効化したとはいえ五条の無限の影響を完全に無視できたわけではなかったこと、家入の処置が素早く的確に行われたこともあって、すぐに五条は目を覚ました。
「おはよ~、ボコボコにされた気分はどう?」
「さっいあくに決まってるだろ、硝子。くっそ、インチキみてーな術式持ちやがって」
「それを言ったら、悟の無下限呪術の方がよっぽどインチキだと思うけど?」
「物理にはめっぽう弱いから、それでチャラってことでいいだろ。まぁ、大人気なくボコして悪かったな」
「は?なに今さら謝ってんだよ気持ちわりぃ。謝るくらいなら最初から喧嘩売ってんじゃねぇよ」
「いやなに、こっちもイライラしてたんだ、許してくれ」
「よし分かった表出ろ第3ラウンドを始めようじゃねぇか今度こそ返り討ちにしてやるからよ」
「どうどう、落ち着きなって悟」
まったく悪びれる様子のない神凪と額に青筋を浮かべながら殴りかかろうとする五条の間に家入が挟まることでどうにか仲裁する。
そんな様子を見て、夏油は主に神凪に対して呆れを露わにした。
「イライラしていたから最強に八つ当たり、か。いったい、どんなことがあったらそんなことになるんだい?」
「・・・ここに来る前に、理事?上層部?のクソジジイ共のところに呼ばれた」
「あぁ、なるほどな。それはたしかにムカつくわ。ボコボコにしたのは許さねぇけど」
神凪から理由を聞かされた五条は、先ほどのことは根に持ちつつもある程度理解を示した。
それに対し、こちらも一般出身でその辺りの事情に疎い夏油は神凪の言いようを窘めながら眉をひそめた。
「神凪、さすがに目上の人に対してクソジジイなんて言葉遣いは良くないと思うな」
「向こうから呼び出しておいて、“呪力を練るどころか自分の術式すらまともに扱えない未熟者”だの、“呪詛師認定されなかっただけありがたく思え”だの、“五条悟に敵うからといって我々に指図できるようになると思うな”だの、そんなことを延々と聞かされたこっちの身にもなってくれ」
「えぇ・・・」
古来より日本を陰から守ってきた呪術師ではあるが、だからといって誰もが正義の味方としての意識を持っているわけではない。というより、現在の上層部は腐ったミカンのバーゲンセールとでも言わんばかりの掃き溜めと化している。
義務は果たす、だがそれ以上の権利を要求する。自分たちは呪術によって日本を守っている、ならば呪術の才能のない者は足手まとい以下。それこそ『呪術師にあらずんば人にあらず』などと言い放つ家も存在する。
神凪とて大人の汚いあれこれについて知識はあるが、あの時見たのはそのどれよりも醜悪で害悪だった。
「特に呪詛師認定云々のことをしつこく言われた気がするな。途中から聞き流してたからよく覚えてないけども」
「なんでそんな話になってんの?」
「寧音もだが、目についた呪霊を無許可で祓ってた。けっこうな数。あと、ガチの呪詛師に喧嘩吹っ掛けられたこともあったから、適当にボコして放っておいたこともあった」
「そりゃ自業自得だわ」
「規定について言及してるだけならいいが、口ぶりから察するに『わしらの稼ぎを奪うな』って感じのニュアンスも多々あったな」
「前言撤回、そりゃクソだわ」
家入のドストレートな物言いに、夜蛾は否定はしないが立場的に過ぎたことは言えないため微妙な表情になる。
「そんなんだから、『そりゃ残念だ、もし呪詛師とやらに認定されていれば、あんたらを躊躇なく殴り倒せるんだけどな』って言ったら、さらにヒートアップしやがって。鬱陶しいったらありゃしない」
「・・・さっきから思ってたけど、お前どういう経緯で
そういえばと、五条はまだ聞いていないことを尋ねた。
今までの神凪の口ぶりから察するに、おおよそまともな方法で転入したとは思えない。
それに、無許可での活動を抜きにしても根本から呪術を否定する神凪の術式は上層部からすれば目の上のたんこぶだろう。
問いかけられた神凪は、遠い目をしながら口を開いた。
「あぁ、あれは2週間くらい前の話か・・・」
* * *
「あれ、もう終わり?手ごたえねーなぁ」
「大抵の場合、金属バットで殴られたらこうなるんだよなぁ。しかもお前の場合、輪をかけて馬鹿力だし」
「そりゃあ、アタシはこの謎パワーを使ってるし。ていうか、謎パワーを使えてないのにタメ張れる零の方がよっぽどおかしいからな?」
「なら、その謎パワーを使ったのにボロ負けしたこいつはなんだろうな」
「ガ、ハァっ!」
何でもないような様子で話す神凪を時透だが、その足元にはボロボロになった1人の男が倒れていた。
それは呪術高専から要注意人物としてマークされている呪詛師であり、快楽目的で呪術師の卵である子供や学生を殺して回っている
今回も『呪術師としての教育を受けていないが呪力や術式を使っている一般の学生がいる』という噂を聞いて、いつものように嬲り殺すつもりだった。
だが、結果的に時透が呪詛師の過去を視たことで術式や戦闘パターンを解析し、神凪が作った隙を時透が金属バットで全力殴打したことであえなく地面に倒れ伏すこととなった。
「なんつーか、たまにいるよなー。アタシたちが見えてる幽霊的な奴と関係があったりすんのかな?」
「どうだろうな。使ってる力は同じっぽいが、さすがに人間と幽霊は別物としか思えん」
「ねーおじさーん。そこんところ教えてくれない?」
高専や術式のことはおろか、呪霊や呪力の知識すらまともに持っていない。
そんな筋金入りの素人に負けたと思い知らされた呪詛師は、砕かれた顎で喚き散らす。
「ふざ、けっ!きっ、きさまらのようなガっ、ガキに負げる、なんでっ!」
「あーもう鬱陶しい。教えてくれないなら黙ってろ」
「グギャっ!!」
嫌気が差した時透は、呪詛師の腹を思い切り蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた呪詛師はそのまま建物の壁に激突し、破裂した内臓の痛みと壁にぶつけられた衝撃で気絶した。
「あー・・・救急車とかどうしよう」
「ほっとけ。俺たちを殺しに来たようなろくでなしだ。このまま野垂れ死んでも文句は言われんだろ」
「警察は?」
「少年院行きになるのも面倒だ。それに、あの幽霊もどきが死体を食べるなら手間も省ける」
「ははっ、相変わらず倫理観が終わってんね」
「そりゃ互い様だろ。とにかく、さっさとここから・・・」
「2人共、ナイスファイトだったよ!でも、このまま放置はいただけないね」
突然、この場にいなかったはずの第三者の声が響き渡る。
戦闘後ということで少なからず気を抜いていたが、それでも接近をまったく察することができなかったという今までにない事態に、緊張感が一気に高まりながら声がした方向を振り向いた。
「君たちは、どんな子が
そこにいたのは、金髪を腰まで伸ばした黒いジャケットの女性だった。
そして、唐突に好みのタイプを尋ねてきた女性に二人は面食らいながらも、思わずその質問に答えた。
「アタシは一緒にいてストレスにならねぇ奴がいいな」
「俺は考えたことがない。が、少なくともあんたは好みじゃないな」
「あらら、手厳しい」
真面目に答えた時透に対し、辛辣な言葉を吐いた神凪に女性は思わず肩を竦めた。
「なら、その隣の女の子がタイプなのかな?」
「どうだろうな。抱きはしたが、タイプかと聞かれると・・・」
「余計なこと言うなっ!!」
突然のカミングアウトに時透は顔を真っ赤にして神凪の脛を蹴った。が、呪力で強化せずに放ったローキックは鍛え上げられた神凪の脛に負けてしまい、逆に足を痛めて涙目になりながら飛び上がる羽目になった。
そして、女性もまた思わぬ返答に動揺を隠せずに狼狽する。
「え?だ、抱いた?あー、そう、最近の子って進んでるのね・・・」
「んな納得しなくていいから!こいつの言ったことは無視していいから!てか聞かなかったことにしろマジで!!」
思わず変な方向で納得しそうになる女性に対し、時透は自身の黒歴史を掘り返されてはたまらないと全力で吠える。
そんなカオスな状況を作り出した張本人である神凪は、そんな二人の様子に関わらず女性に対して問いかけた。
「で、そういうアンタは誰だ?」
「あ、あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね」
そこでようやく気を取り直した女性は、改めて自己紹介をした。
「ゴホンッ。私は九十九由紀。特級術師ってのをやってる者だよ」
「特級、術師・・・?」
「あっ、特級っていうのはざっくり言うと階級のことね。術師は、正確には呪術師のことを指している」
「つまり、特別な階級の呪術師、ってことか?」
「そうそう、呑み込みが早いね」
「いや、そもそもじゅじゅつし?ってのが何なのか分かんないんだけど」
ここでようやく足の痛みが引いた時透が会話に参加した。
「簡単に言えば、世のため人のために呪力を使って呪霊を祓ったり悪い呪詛師を懲らしめる人たちのことだ」
「じゅりょく?じゅれい?」
「呪力ってのが謎パワーのことで、呪霊があの幽霊的なやつか?」
「・・・一般人だから知らなくて当然とはいえ、何で知らないままそこまで戦えてたのかな?一応、そいつ二級相当の呪詛師のはずなんだけどね・・・」
基礎的な知識もないまま二級相当の実力を身につけたという事実に、九十九は軽く頬を引きつらせる。
仕事柄、呪術師はどこかしら人間としての欠落がないとやっていけない仕事ではあるが、だからといってここまでぶっ飛んでいるのも少数派だ。
とはいえ、前途有望なのには変わりない。
なにより、時透はともかく、神凪は九十九にとって是が非でも引き込みたい人材でもある。
「呪力って言うのは、人間の負の感情から生み出されるエネルギーのこと。ごく少量なら一般人からも出てくるけど、実用的なレベルまで呪力を引き出して操ることができる呪術師はそういう家系を除いてごく稀にしか生まれないね。でも、塵も積もればって言葉があるみたいに、ただの一般人でも大勢の感情が集中すれば積み重なって形を成すことがある。そうやって生まれるのが呪霊。呪霊は呪術でないと祓うことができなくて、元のイメージがしっかりしているほど強大な存在になる」
「えーっと、つまり・・・?」
「墓とか病院、学校みたいな場所は呪霊が生まれやすかったり、怪談や気持ち悪い生き物みたいな分かりやすい負のイメージから生まれる呪霊は強くなりやすい、ってことか?」
「そゆこと。理解が早いね。ちなみに、日本における呪霊や呪いによる死者・行方不明者の数は平均で年間1万人を超えている」
「・・・?」
「はぁ・・・」
受診できる情報量を越えた時透が宇宙ネコ状態になっている中、曖昧ながらもある程度は理解できた神凪が思わずため息をついた。
「なんつーか、途方もない話だな。人間が存在する限り現れ続ける悪・・・いや、がん細胞みたいなもんか?ともかく、そんなん倒し続けるとか、やってらんねぇわ」
「そう、ずばりそこ!」
まさに神凪の指摘通りだったのか、九十九はビシッ!と神凪を指さして本題に入った。
「私としても、そんな世の中をどうにかしたくてね。だから、呪霊が生まれない世界にするための方法を模索しているところなんだ。そこで現れたのが君ってこと!」
「俺がなにか?」
「呪術師や呪霊は生得術式って言うのを持っていることがある。言ってみれば、呪力を消費して使える特殊能力みたいなものだ。術式は持っている人や呪霊によって千差万別なんだけど、君が持っている術式はおそらく呪力を消滅させるというものだ。つまり、君はまさに私が求めていたサンプルってわけ!」
「人をサンプル呼ばわりするな。できれば余所をあたってくれ」
「いや、実は他にもいたんだけど、その人にはフラれてしまってね。私としても無理強いはできない、というかしたら死にかねない相手だったから諦めたんだけど、その後で君という人材を見つけることができたのは、もはや運命みたいなものだと思わない?」
「好みじゃない女に言い寄られても嬉しかねぇ」
「辛辣だね・・・とはいえ、それを差し引いても君たちは呪術師になるべき、というかならないといけないのに変わりはないから」
「は?なんでそんな話になるんだよ」
だんだんと不穏な流れになってきたのを感じた時透が、持っていた金属バットを九十九に向ける。
それにひるむことなく、九十九はその辺りの理由を説明した。
「呪術規定って言って、呪術師の活動とか諸々のルールを決めたものがあるんだけど、許可のない呪霊の祓除や呪詛師の討伐は違反なんだ。それこそ、呪詛師に認定される場合もあるほどのね。言ってしまえば、犯罪者扱いされて警察に指名手配されるようなものだと思ってもらっていい」
「はぁ?アタシら別に悪いことしてねぇじゃん。呪霊も呪詛師も悪いやつなんだろ?」
「気持ちは分からなくもないけど、呪術師が一種の暴力装置である以上、決められたルールというのは必要だ。それに、呪術師は危険な仕事なこともあって高給取りだから悪いことばかりじゃない」
「つっても、アタシらにその辺の知識なんてないんだけど」
「そこは大丈夫。日本には二カ所、呪術師を育てる教育機関である呪術高等専門学校、通称・呪術高専っていう学校がある。君たちにはそこに入学して呪術師になるための教育を受けてもらうから」
「学費とか転入手続きとか面倒なんだけど」
「学費は任務の依頼料で払えるるし、面倒な手続きは大人の方でやるから心配いらないよ。親への説明も関係者がやる」
「命の危険がある仕事とかしたくない」
「ここにいる方がよっぽど危険だと思うし、そもそも今さらじゃない?そいつ、界隈じゃそこそこ有名な殺人鬼だよ」
組織に所属するのに抵抗がある時透はどうにか断ろうと反対意見を並べようとするが、そのことごとくを九十九に封殺される。
その横で、神凪が顎に手を当てて何かを考えこんでから口を開いた。
「・・・わかった。呪術高専とやらに行くことにする」
「ちょっ、零!マジで言ってんの!?」
「そっちの方がいろいろと都合が良さそうだ。とはいえ、いくつか聞いておきたいことはある」
「どうぞどうぞ。好きなだけ質問していいよ」
「まず一つ。あんたと上の連中の関係は?」
「正直に言って最悪かな。私がやろうとしてるのは、言っちゃえば呪術師の仕事を根こそぎ奪うようなものだからね。昔からの家系出身ほど私のことを嫌ってる。たぶん、術式と今までの行いからして君もけっこう嫌われるんじゃないかな。私が後ろ盾になれないことはないけど、入学するまでならともかく、その後のことはちょっと保証できない」
「なんかもう行きたくなくなってきたんだけど・・・」
「耐えろ。次に、親にはどう説明する?」
「呪術高専って、表向きには宗教系の学校なんだよね。見た感じ素行悪そうだし、高専で引き取って矯正させるってことで納得させられるんじゃない?その辺のことは私は知らないけど」
「最後に・・・入学できたとして、上から条件を取り付けられる可能性は?」
その問いかけに、九十九はニヤリと笑ってみせた。
「ないとは言い切れない。でも、たぶん君にとって退屈なものにはならないんじゃないかな?」
「どういうことだ?」
「君たちが入学したとして、同期に五条悟って男子生徒がいる。御三家っていう昔からの呪術師の家系トップ3の中の一家の次期当主なんだけど、“現代最強の呪術師”って呼ばれているんだ」
「そいつが何か?」
「私は直接会ったことはないんだけど、五条悟ってものすごい問題児らしくてね。でも、君の術式ならその最強に対抗できるかもしれないから、抑止力としての役割を期待される可能性はあるんじゃないかな」
「めんどくせぇ・・・」
「でもまぁ、本当に気にしなくて大丈夫だと思う。一度学生になれば上も分かりやすく排除するような真似はしないはずだし、君の術式なら縛りも意味を為さないだろうからね」
「縛り?」
「呪術による実行力のある契約って感じかな。他の意味もあるけど、その辺はおいおい高専で習えばいい」
「わかった。それじゃあ、呪術高専に案内してくれ」
「OK!それじゃ、私についてきて」
そう言って、どこからか取り出した人一人が入りそうな黒いバッグを背負って踵を返した。そのバッグの中に入っているのは先ほど神凪と時透がボコした呪詛師が入っており、九十九が話している最中に最低限の止血と固定をした上で中に詰め込まれていた。
その後ろをついていく中、時透は神凪にこっそり耳打ちをした。
「なぁ、本当に良かったのか?聞いた感じ、クソッたれな環境みてぇだけど」
「俺たちみたいなろくでなしでも食っていける世界があるなら、そっちに行った方がいい。俺としては呪術師か呪詛師かのこだわりはないが、国家機密クラスの組織に追われ続けるくらいなら、いっそ多少縛られてでも所属した方がマシだ」
「そんなもんか?」
「そんなもんだ」
未知の世界に足を踏み入れることに躊躇がないわけではないが、世間一般の中でまともに暮らせると思っていなかった神凪からすれば、渡りに船とも言える申し出を断る理由はなかった。
あるいは、謳歌することができなかった学生生活というものに興味があったのかもしれない。
それなりに濃い付き合いをしてきた時透は、そんな神凪の内心をなんとなく察すると共に、自身の中にも同じような感覚があったことを認めた。
「なら、せっかくのクソッたれな生活を楽しむとしようぜ!今までだってそうしてきただろ?」
「どちらかと言えば、俺の方から言い出したんだがな・・・ま、それは同意見だ。俺たちは俺たちで、クソッたれの世界を思うままに過ごせばいい」
そう言って、2人は今日まで長い時間を過ごしてきた路地裏から表通りへと踏み出した。そして、表に出てきた2人を歓迎するように、あるいは新たな門出を祝うように、太陽の眩い光が2人を照らした。
その眩しさに目を細めながら、2人は獰猛な笑みを浮かべて新たな生活へと足を踏み出した。
「あっやべっ、私バイクで来てたから2人を乗せて連れていけないんだった」
「しまんねぇなぁ。あんた本当に特別な術師なのか?」
「これが後ろ盾とか、俺の選択は間違いだったかもしれねぇ」
* * *
「とまぁ、そんな感じで別の日に待ち合わせした補助監督に車で連れて行ってもらって、その中で過去視の術式の話をした寧音が補助監督にドナドナされて、俺は上の連中と会ってさっき説明した嫌味やら罵声を浴びせられた、ってわけだ」
「いろいろとツッコミどころはあるけど・・・とりあえず分かった」
「何が『そういう関係じゃない』だ。ガッツリやってんじゃん」
「いやツッコむところはそこじゃねぇよ。俺も言いてぇことはあるけども」
神凪が一通り過去語りを終えると、夏油はあまりの情報の多さにこめかみを押さえ、家入は神凪が経験者だったという事実に釘付けになり、五条はそんな家入に呆れかえった。
「特級術師、九十九由紀か。名前は聞いたことがあるな。特級のくせに碌に任務を受けず、海外をプラプラしているろくでなしって話だけど」
「ろくでなしってのはそうだな。結局、入学までの後ろ盾云々の話もなかったし。あの人マジで上から嫌われてたんだなって思わず感心したわ」
「それはあんたらも大概でしょ」
「まぁ、そういうわけだ。上から嫌われている者同士、仲良くやっていこう」
友好な関係を求めているにしては煽っているようにしか聞こえないことを言いながらも、仲良くなりたいのは本心なのか五条に右手を出して握手を求める。
「ハッ、やだね」
その申し出を、五条は鼻で笑うとともに蹴飛ばした。
「でもそうだな、一度ボコしてくれるっていうんなら考えてやるよ」
それに加え、先ほどの憂さ晴らしとしか思えない条件まで要求してきた。
対する神凪は、「ふむ」と顎に手を当てて少し考えてから口を開いた。
「それなら、好きな時にかかってきてもいいぞ。その代わり、お前が負けるたびに『ざぁこざぁこ♡術式がないと何もできない貧弱モヤシ♡』って言ってやる」
「殺すっ!」
「いい加減にしろ!!」
結局、この日は夜蛾が五条と神凪に指導的拳骨をかましたことでお開きとなった。
九十九由紀って実は下ネタに耐性がなさそうって思ってるのは自分だけですかね。
まぁ、逆に呪術廻戦で下ネタに耐性がありそうなキャラは誰だって聞かれても困りますけど。
禪院家の男どもは下ネタ以前の問題として、家入は医者だからちょっと違いますし、秤ならワンチャン・・・?