零と無限の呪術師、ついでに時の不良監督   作:リョウ77

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もうすでにサブタイをことわざとか格言弄りにしたことを後悔しそうになってます。
語彙力が弱すぎる・・・。
それと、今話から原作の時間軸へと移行します。


嵐の前は思ったより自己主張が強い

時透が東京高専に所属してから、なにか特別なことがあったというわけでもなくいつも通りの日常が続いた。

強いて言うなら、神凪を中心とした喧嘩に時透が加わるようになったことくらいだ。

それ以外は五条が神凪に一発も当てられないことも含めていつもの日常が続いた。

それから1年後、神凪たちは2年生になり、後輩ができてからも普段通りの生活を過ごしていた。

 

「ふぅ~、今回は遠出だったから疲れたな・・・」

「まぁ、青森なんて仕事でもなきゃ行く機会なかっただろうし、別にいいんじゃね?」

 

この1年で、神凪と時透は準一級へと昇格した。

それによって地方に長期間派遣される案件も増え、五条と絡む時間が減ったことを退屈に感じながら仕事をすることも多くなった。

とはいえ、今回の出張を終えたらしばらくの休暇に加え依頼も東京近郊になると聞かされていたため、それを気概に面倒な出張を終わらせて戻って来たところだった。

 

「にしても、あいつら俺たちが出張だからって土産を頼みまくりやがって・・・」

「容赦なく押し付けてきたよな・・・」

 

そう言う2人の両手には、それなりの量の紙袋が握られていた。

その大半が五条らにリクエストされた土産であり、五条が「買ってこなきゃ神凪の休みを潰す勢いで襲撃してやる」と脅してきた勢いで夏油と家入も悪乗りしたため仕方なく帰り際にあちこちをさまよいながら買い集めたものだ。

一応、自分たちの分も確保してはいるものの、おかげで今回の給料の大部分が吹き飛ぶことになった。

 

「くそっ、次あいつらが出張行ったら俺らからも土産を請求してやる」

「それでいいんじゃねぇの・・・そういやぁ、なんか思ったよりも静かだな?」

 

珍しいこともあるもんだと、時透は周囲を見渡しながらそんなことを呟いた。

最近ではまだ落ち着きつつはあるものの、それでも五条と夏油の盛大な喧嘩は日常茶飯事であり、2人が任務から帰ってきたら校舎から爆発音や轟音が響いてくることも珍しくはない。

だというのに今日は不気味なほど静かで、戦闘音どころかいつもなら任務帰りの神凪を奇襲するはずの五条の気配すら感じない。

 

「どっか任務にでも行ってるんだろ」

「でもそんな話聞いてねぇけど?帰り際に電話した時に話すもんじゃね?」

「必ずしもそうとは限らんだろ・・・まぁ、2人揃ってこっちに来ないのも珍しいっちゃ珍しいか。あり得るとしたら、緊急の任務が入ったとかそんなんか」

「なんだよ、その任務って」

「俺が知るか。夜蛾先生にでも聞けばいいだろ」

 

そういうわけで土産を両手に校舎内をうろつく2人だったが、同じく任務帰りだったのか校舎に向かう途中で夜蛾を見つけることができた。

 

「夜蛾先生、戻りました」

「夜蛾せーん、戻ったぜー」

「零と寧音か。報告は受けている」

「これ、青森の土産です。五条たちにも渡したいんですけど」

「ありがとう。それと、悟に土産は渡さなくてもいい。お前たちで消費しておけ」

「長期任務でしばらくいないとか、そういうのですか?」

「いや、冥冥と歌姫の救出の際に帳も降ろさずに廃屋を丸ごと壊した罰だ」

「あのバカは何やってんだ・・・?」

「そういえば、静岡でガス爆発がどうのってニュースやってましたね。あれですか」

 

冥冥と庵歌姫は神凪たちの先輩で、それぞれ一級術師と二級術師の手練れなのだが、歌姫については等級が五条らと比べて低いためよく弄られている。

とはいえ救援に行く程度には知った仲であるため、良くも悪くも親しいと言えるだろう。

 

「そんじゃ、五条に頼まれた奴は日持ちしないやつから消化するとして・・・任務もある、って話でしたよね。それってなんですか?」

「星漿体の護衛と抹消だ」

 

星漿体、護衛と抹消。

聞き覚えのない単語と相反する任務の内容に、時透の頭上に大量の疑問符が浮かび上がる。

 

「・・・星漿体?てか護衛と抹消ってなに?夜蛾センついにボケたん?」

「寧音」

「星漿体は座学で習ったはずだろ。あとボケたとか言ってやんな。夜蛾先生だって次期学長確実って言われたら浮かれることくらいある」

「零」

「いえ、冗談なんで気にしないでください」

「冗談で済ますかは俺が決めるからな。まったく、お前たちも悟たちと似たようなことを・・・」

「あいつらも言ったのか・・・まぁ、任務の内容はさておいて、ちょっとこいつに必要な知識を教えときましょう。俺も再確認しておきたいんで」

「・・・もしかして、補修やる流れ?」

「お前が物覚え悪いせいだからな」

 

そんなわけで、急遽教室で何も知らない時透のために今回の五条たちの任務について詳しく説明することになった。

 

「まず大前提として、高専の結界はどうやって張られているかは知ってるよな?」

「たしか、天元?さま?が展開してるんだっけか?」

「そうだ。付け加えるなら、いくつかの霊場を基点として日本全土を覆うように結界を張っている。これによって、補助監督の結界術や呪術界の各所に存在する呪術界の拠点の結界の強度を底上げしている」

「へぇ~。でも、なんで星漿体の話に天元さまが出てくるんだ?」

「それは天元様の術式が関係している。天元様は“不死”の術式を持っていて、少なくとも1000年前の呪術全盛期の時代から生きているらしい。ここでミソなのが、“不死”であっても“不老”じゃないってことだ」

「ほーん。じゃあなんだ?天元さまってのは、よぼよぼでしわしわの爺さんか婆さんだったりするのか?」

「それに関しては俺も詳しくは知らん。だが、普通に老いる分には問題ないが一定以上の老化を迎えると術式が体を創り変えようとする。それは“変化”ではなく“進化”と言うべきもので、人でなくなりより高次の存在と成る」

「じゃあ別にそれでよくね?」

「天元様が言うには、その段階の存在に“意志”は存在しないらしい。天元様であって天元様ではなくなってしまう。そうなった場合、天元様の力添えを失くして任務の遂行に支障がでるか、最悪の場合天元様が我々の敵となる可能性すら存在する」

「そこで星漿体の出番ってわけだ」

 

夜蛾の説明に被せるように神凪が口を開いた。

思わず夜蛾の額に青筋が浮かびそうになるが、神凪が理解しているかの確認と話題が逸れるのを防ぐためにグッと堪えて神凪の説明に耳を傾ける。

 

「星漿体っていうのは、天元様と相性がいいっていうか、呪術的に近い存在のことだ。そいつを500年に一度、天元様と同化させることで肉体の情報を書き変えて術式をリセットするわけだ。そうすれば、天元様の“進化”は起こらない」

「そういうことだ」

「はぁ~・・・なんつーか、よくわからん」

「お前マジでふざけんなよ?」

「あだだだだだっ!?」

 

わざわざ時間をとってまで説明した重要事項を「よくわからん」の一言で片づけられた神凪は、額に青筋を浮かべながら時透の頭を鷲掴みにした。

その様子をため息を吐きながら頭を抱えて眺める夜蛾は、特に神凪のアイアンクローには触れず五条たちの任務について補足をいれた。

 

「だが、その星漿体の少女の所在が漏れてしまった。そのため、護衛として悟と傑が同行することになった」

「なるほど、期限は?」

「2日後の満月だ。星漿体を狙う主な勢力は天元様の暴走による現呪術界の転覆を目論む呪詛師集団『Q』と、星漿体と混じらない純粋な天元様を崇拝する宗教団体『盤星教・時の器の会』の2つだ」

「まぁ、それなら『Q』はよっぽど問題ないっぽいですね。ざっくり資料を見た感じ、あのバカ2人より強い呪詛師がいるとも思えない」

「その言い方だと、盤星教が不安要素ということか?」

 

神凪の言い方に、夜蛾は僅かに首を傾げる。

星漿体を狙う二大勢力として数えられている盤星教だが、その実態はQとは異なり非術師による宗教法人となっている。

そのため、資金は潤沢でも実戦力に欠け、殺害には外部の呪詛師を雇うしかない。

集団ではなく野良の呪詛師であれば五条たちが不覚をとるとは考えずらいと考えていたが、神凪の考えは少し違っていた。

 

「金があるってことは、その分とれる選択肢も相応に多いってことですからね。それこそ、国外のPMCなりなんなりにミサイルでまるごと吹き飛ばしてもらうとか」

「なかなか突飛なことを考えるな・・・」

「とはいえ、伝手があるかどうかは別なんで可能性としては低いですけど。何にしろ、500年前と比べれば現代は予測不可能なレベルで手段が豊富ですからね。警戒しないに越したことはないです。あと、野良の呪詛師でも上が確認していない手練れがいないとも限りません」

「・・・心当たりがあるとでも?」

「まさか。一人、強い奴がいるってのを聞いたことがあるだけです。そいつが今どこで何をしてるかなんて知りません・・・それに、いくら強くてもあいつの無下限を突破できれば意味なんてないでしょう」

「そうだな・・・」

 

最終的に問題ないと切り捨てた神凪だが、対して夜蛾の頭の片隅に引っかかるような感覚を覚える。

たしかに五条は現代の術師として限りなく最強に近い存在だが、それでも全能というわけではない。反転術式を使えないこともそうだが、無下限バリア自体が常時展開できるものではないため、隙はないわけではない。

そこに五条に対抗できるほどの戦力と戦術、そして五条の無下限を突破する手段が揃っているとしたら?

普通に考えて、そんな偶然が重なるとは思えない。だが、あり得ないと断ずる根拠もない。

そのことが、どうにも気になってしょうがなかった。

 

「いや、そもそも高専で保護すりゃあいいじゃん。それなら護衛なんて必要なくね?」

 

すると、顔面を神凪に掴まれたままの時透が素朴な疑問を投げかけた。

それは神凪も思っていたことで、夜蛾も似たようなことは考えていたのかため息を堪えるように説明した。

 

「天元様からのご命令だ。星漿体の要望はすべて応えよとな」

「んで、その星漿体が高専じゃなくて普段の学校に通いたい、って言ったってことですか」

「そうだ」

「なんだそりゃ?護衛対象の癖に我が儘というか・・・」

「つーか、事情が事情とはいえ天元様の対応が甘すぎる。五条がいるなら問題ないって高を括ってんのか?」

 

普通に考えて護衛対象の身の安全を第一にするのであれば、護衛対象の意思をある程度無視してでも最善の策をとる方が良いに決まっている。今回でケースであれば、結界で呪詛師は侵入できない高専内で保護をする方が確実と言える。

それでも、襲撃のリスクが高くなっても高専の外で生活させるのを良しとさせるのは、神凪の言う通りあまりに甘い考えだった。

とはいえ、1000年も生きているのであれば自分たちの知らない何かを知っている可能性もあるので、それ以上の不満は飲み込むしかなかった。

 

「とにかく、期限まで星漿体は高専外にいる可能性が高い。お前たちも同化まで高専待機だ」

「はーい」

「わかりました」

「それと、傑の分の土産は俺が預かっておこう。硝子は今は・・・」

 

そこまで話した夜蛾の携帯に着信音が鳴る。

画面に表示されているのはとある補助監督のもので、訝しみながらも通話ボタンを押した。

 

「私だ。何があった・・・なに?そうか、わかった」

 

さっさと通話を切り上げた夜蛾は携帯をしまい教室の外に出ようとしながら神凪と時透に指示を出した。

 

「零、寧音、休むのは構わんが何が起きても対応できる状態で待機していろ」

「何がありました?」

「星漿体に期限付きで3000万の懸賞金がかけられたそうだ。俺も対応のために行ってくる」

「わかりました」

 

緊急事態というのが夜蛾から発せられる雰囲気で伝わってきたため、神凪は多くを言わずに夜蛾を見送った。

ここでようやくアイアンクローから抜け出した時透が神凪に問いかける。

 

「やっぱ、盤星教ってとこがやったんかな」

「普通に考えればな。期限付きってのが気になるが・・・」

 

どうせ天元との同化前というタイムリミットが存在するのだから、わざわざ自分から時間制限を狭める理由があるものなのかと神凪は首を傾げる。

あるいは呪詛師の集りを良くするための策なのかもしれないが、それはそれとしてどうにも神凪の中に違和感が残った。

とはいえ、今ここでなにか出来ることがあるわけでもない。

 

「とにかく、即応態勢で待機だな。よほど俺たちまで駆り出されるとは思わんが、いつでも護衛対象を迎えられるようにしておくくらいの準備はした方がいい」

「あいよ」

 

ひとまず必要最低限のことだけ理解した時透は、背筋を伸ばしてから再び青森土産を両手に持つ。

 

「そんじゃ、早くこいつらをしまいに行こうぜ」

「・・・まぁ、必要なことではあるか」

 

土産をいつまでもほったらかしにしておくわけにはいかない。

状況を理解しているのかしていないのか微妙な時透に思わず神凪の気が削がれるが、今更になって遠征で疲れが溜まっていたことを思い出したため、ひとまず意識を切り替えてその疲れを抜くことに集中することにした。

 

 

 

 

『俺ら、これから沖縄に行ってくるから』

「は?」

 

その夜、五条から突拍子のないメールが送られてきて神凪は思わず困惑したが、それはそれとしてちゃっかり土産の要求は忘れなかった。




文章内は基本的に名字呼びですけど、歌姫については名字の“庵”より名前の“歌姫”の方が分かりやすいんで、これからも歌姫は歌姫でいきます。
今後もそういうケースがあるとしたら、一文字の名字よりも二文字の名前を優先するくらいに考えてください。
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