「髪型を変えたい」
学園都市のとある学生寮の一室。
部屋の主、上条当麻はテレビのヘアアレンジ特集を見てつぶやいた。
「………とうま、髪切っちゃうの?」
「インデックスさん、考えてもみなさいよ。もう夏だぞ?不幸でエアコンも壊れやすいのに、なんでこんなクソ暑い髪型ですごさにゃならんのかとふと思ったんですよ」
同居人その1にはあまり好評では無いようだ。冷房が付いている中でさえ本人は暑さで銀髪をまとめてポニーテールにしているというのに、なんの文句があると言うのか。
「言っちゃああれだが、お前がその髪型をやめてみろ。途端にクラスメイトから認識されなくなるぞ」
「おっとオティヌスさん?暴言の切れ味があまりにも鋭すぎるぞ?お前は魔神目線で見ているから侮っているかも知れないが、大体の人間は他人をちゃんと顔を見て判別するんだぜ?」
同居人その2まで髪を切らせたく無いようだ。ここ最近毎日水風呂を用意させているくせに、なぜ言葉のナイフで刺してまで人の涼もうとする提案を却下してくるのか。
「というか視覚的にも暑苦しいだろ。お前らだって一緒にいるなら涼しげな見た目の方がいいハズだ!」
「寒色系の服でも着てたら良いんだよ」
「扇子持って爽やかな笑顔でも浮かべてろ」
「そんなに俺の髪型が変わるのが嫌かっ!?見ろ!スフィンクスだってもう夏毛になったんだぞ!毛を減らすというのは生物学的にも効率よく涼むのに良いとされている証拠だ!証拠が今!目の前に!いるの!」
「いつになく理論的に攻めて来た…」
「暑さで頭がやられて逆にIQが上がったのかもしれん。いいぞその調子だ!データを増やして文章をそれっぽくしたらそれはもう論文だ!自由研究に出せるぞ!夏休み前から取り組むなんてまるで優等生じゃないか!」
「やっぱり暑いままの髪型の方がいいかも!」
「バカにしてんだろ!ねえよ高校生の夏休みの宿題に自由研究なんか!」
「………まあ冗談はさておきだな…お前、自分が髪を切るにあたって問題点があるよな」
「えっ何急にシリアスな雰囲気出して…問題点?」
「お金だ」
「…いやホラ、最近はちゃんと貯蓄出来てるよ?皆毎日美味しくお腹いっぱいになって、猫まで養ってるにも関わらず上条さん家は黒字経営ですことよ?これも俺の努力の賜物で…」
「インデックス」
「3700円なんだよ」
「………なんて?」
「さっきテレビに出てた美容室のカットだけの金額。3700円なんだよ」
「3700……?」
「ああ…お前が大好きなもやしが三桁袋は買える額だ」
「もやしが…123.33袋も買える………だと?」
「計算が妙に早いんだよ」
「こいつやっぱり今日なんか頭いいぞ」