「比較的新しいハサミだからハサミの刃が悪い可能性は低いし、私だってさすがに髪一本切れないような貧弱な握力じゃないはずだ」
確かにハサミを見てみれば新品そのもの。刃こぼれひとつ無い綺麗なものだった。
「つまり…上やんの髪が異常に硬いと?」
「そんなことあるか!?え、どうなってるんだ俺の髪?」
「とうま!とりあえず右手で髪を触ってみるんだよ!」
「そ、そうだな!さすがにこんなの魔術とかじゃなきゃおかしいもんな!」
「……髪そのものが異能によるものに置き換わっていたとしたら、一瞬でハゲになるのか触った所だけハゲるのかが気になるところだな」
「ステイルくん?微妙に嫌なラインの冗談やめてもらえる?ちょっとこわくなってくるから」
「さっさと触れよ。今朝普通にシャンプーをしていたんだから結果はわかりきっていると思うがな」
ステイルの発言に若干の怯えがありつつも、ボリューミーな髪に手櫛の要領で恐る恐る右手を入れてみる。
「あ、ああ…よし、これでどうだ。切れそうか?」
「むう……切れないな。本当にどうなっているんだ?一本だけつまんで見てくれ…これでもダメか」
その後も能力最大出力で剃刀を使って切り付けたりしてみたものの、髪の毛は一本たりとも床に敷いたブルーシートに落ちない。
「つまり…異能関係無しにとうまの髪が異常な硬さになってるって事かも」
「上やん、整髪料を変えたとかは無いかにゃー?学園都市の商品はたまにイカれたコンセプトの実験品が安く提供されてたりするからな。完全科学の産物なら打ち消せないのも合点がいくぜい」
「それは無いはずだ。この男はヘアワックスどころかシャンプーやボディソープに至るまで私がこの家に来てから同じものしか買ってきて……待てよ?インデックス、聞きたい事がある」
「何かな?」
「ここ最近、そもそもこいつがヘアワックスで髪をセットしている姿を見た覚えがあるか?私は少なくとも一か月は見た覚えが無い」
「………無い…かも。とうまは元々は髪をセットしないとこの髪型にはなって無かったはずなのに、最後にセットする姿を見たのは三か月前なんだよ!」
「……言われてみりゃ確かにしばらくヘアワックスを買ってない!?なんでだ!?」
「とにかく髪が切れない以上は一旦散髪は撤収だ……摩訶不思議すぎて強度が上がる気もしないな」
「おう…なんか悪いな」
テキパキと片付けが進む中、何やら考え込んでいた不良神父が口を開いた。
「…………上条当麻、少し試してみないか?」
「え…なんだ急に?内容によるよ。何をする気だ?」
「僕の魔術で君の髪が焼けるかどうかをだ」
「本当に何する気だっ!?焼けたとして整えられないんだよ!ハサミ入んねえんだからっ!頭皮にも熱ダメージが来そうだし変なこと考えんのはやめとこうぜ?な?」
「大真面目に言ってるんだ。その右手が効果を発揮しなかった以上は、学園都市で開発された能力によるものでも魔術によるものでも無いんだぞ。そんな得体の知れないものの影響下にある男を、自分の出来得る方法での調査も無しにインデックスの側に置いておくのを僕が良しとする訳が無いだろう?」
「うっ…それを言われると確かにそうなんだけどさ?やっぱり怖いなあって……」
しかもこの不良神父、「そんな得体の」のあたりから何気に目がキマっている。
こわい。
「安心しろ。僕が万全の状態で魔術の制御を失ったのを見た事があるか?まずはさっきのリクエスト通りに、全ての髪の毛を1センチずつ焼いてやろう」
「言い方がいちいち怖いのよあなた!もっと『ボクちゃん天才だから完璧な精度で丸坊主からインデックスたんの髪型まで自由自在だもんね!』みたいに可愛げのある言い方を心がけてもらってもよろしくて!?」
「髪の毛と言わず全身の毛を肌まで焼いてやってもいいんだぞウニヘッドがッ……!」
「それは世間一般では火だるまって言う状態じゃないか?」
「それは上やんの全身に毛が生えてるという前提で…ハッ!?つまりどこかのタイミングで上やんの全裸を見た事が……もとい、上やんは年下メイドさんに全裸を公開した事がお有りで!?」
「ちげえよっ!そういう冗談は男子だけの時にしろ!見ろよウチの銀髪シスターのあの絶対零度の目を!なんで土御門じゃなくてこっちに向けてくるのかマジでわかんないけど!あとステイルさん本当にすいませんでした!ここ一応賃貸なんでそんなに大量のルーンをばら撒かれるとマジで困りますっ!主にその量を使うレベルは規模が不安って意味で!」
「安心しろ……!新開発のこの魔術は全てを避けてお前と土御門のみを焼き尽くす…………!!」
「!?なんで俺も…いやマズイ!逃げるぞ上やん!」
「ああっクソ!不幸だあああああ!」
という訳で本編兼プロローグは終了です。
書きたいと思ったら続き書くやもしれないです。