元ウソップ海賊団副船長の航海記   作:天豆

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東の海(イーストブルー)、ゲッコー諸島にあるシロップ村。

穏やかなこの村には、毎朝恒例のイベントがある。

 

「海賊が来たぞー!!」

 

村一番の嘘吹き・ウソップによる嘘の時報である。この村に住む人たちは皆、この時報を合図に一日を始める。怒ったように家から飛び出る者もいれば、いつものねと微笑みながら朝の支度をする者もいる。

彼が嘘をつく理由は、皆分かっていた。彼がまだ幼い頃始まったそれに、心情を察して過ごしている。

 

 

 

そんな日が続く中、時報が聞こえてこない朝があった。たまにある、寝坊して遅くなった日とは違い、なかなか声が聞こえてこない。いつも彼が走ってくる道を見ると、どうやら他の村人も同じことを思っているらしく、顔を見合わせた。何かあったのか、少しばかり心配しているとようやく声が聞こえてきた。

 

その声はいつもより震えている。

 

「だ、誰か~!!この人助けてくれぇ~っ!!」

 

自分よりも大きな体躯の男を何とか引きずりながらやってきた。

まさかの事態に村人たちも慌てて駆け寄る。

 

「浜に倒れてたんだ!!ケガはなさそうだが意識がねぇ!!」

 

その切羽詰まった声に、応えるようにどこに運ぶか、誰なら診てくれるか話し合いが始まる。おおよその見当はついているのだが、念のためだ。行き先が決まると、男衆が彼に代わり、謎の患者を担いで歩き出す。状態がわからない以上、走って揺らすのは得策ではない。冷静に、しかし村のはずれまで急ぐ。

 

 

暫くすると、大きな屋敷が見えてきた。屋敷にいるメリーなら、信頼も厚く、恐らく自分たちが介抱するよりも良くしてくれるだろうと、意見が一致したのだ。

 

村人に先んじて、ウソップが屋敷へ向かい話をつけていたようで、屋敷の玄関には執事とみられる羊のような頭をした男性と、補助をするのであろうもう一人の執事が待っていた。

 

「皆さん!空いている部屋に案内しますので、そちらにお願いします!」

 

運び込まれていく様子を見て、ウソップは胸をなで下ろした。きっともう大丈夫だと。

 

 

 

 

 

 

「どうやら気が付いたようですね。酷い脱水と栄養不足でしょう。暫く安静にしていれば体も動かせるようになりますよ。」

 

急に話しかけられ戸惑うが、恐らく俺は助けられたらしい。この、珍妙な頭の男に。感謝の言葉を伝えようと思うが、口も喉も乾いてしまっていてうまく声が出ない。すると察したように水の入ったグラスを差し出してきた。

一口、水を含み、飲み込めばようやく声が出せた。

 

「ありがとう。貴方が俺を助けてくれたのだろう。礼は尽くす。」

 

珍妙な頭の男は微笑み、口を開いた。

 

「いえいえ、私どもよりも貴方を連れてきてくれた青年に感謝した方が、きっと良いと思いますよ。」

 

俺をここに導いた人物に気が行くが、まずは目の前の男が優先だ。

 

「失礼は承知だが、名前を聞いても?」

 

すると男はにこやかな顔のまま、自分の名がメリーであること、この屋敷に勤めている執事であることを教えてくれた。そして俺の名を聞き返した。

 

「多分、グリム。俺の名はグリムだ。名を聞くより先に名乗るべきだった、すまない。」

 

正直、自分の名前が思い出せなかったが、首にかかったアクセサリーに名前らしき文字が刻まれていた。

いいんですよ、とメリーが返して沈黙が落ちる。

 

「ところで俺はどうやってここに?」

 

「それでしたら、体が回復してからウソップというこの村の青年に会うといいでしょう。貴方の恩人は、きっと彼ですよ。」

 

バンダナを被った鼻の長い方です、とその青年の特徴を伝えて、メリーはひとまず体を休めてくださいと一言残し、部屋を去った。

 

ウソップという鼻の長い男、早く会いに行かなければな。

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