転生した世界が判らない、だが……俺の敵がいるから確実にDC世界だ、多分 作:影後
バットマンはスーパーマンじゃない。
スーパーマンでも、救えない命もある。
それを、瑠璃は、ラピスは、バットマンは深く刻んだ瞬間だ。
ソレは誰にも止められなかった。
運命は決まっているのだ。
0歳児ながらアクアとルビーは喋れるようになり、瑠璃の事を『お父様』と呼んでいた。そんな瑠璃は双子を実の子供の様に褒め、愛していた。
「むぅ…私はアイドルになりたい」
「……ソレは困るな、アクアはどうだ」
「僕は別に」
「……未来を定める訳じゃない、だが表向きはお前達は私の子だ。二人のどちらかに私の跡を継いでほしいのだが……難しいかな」
「もう、お兄ちゃん!アクアもルビーもまだ子供だもん!」
瑠璃はそう怒る自身の妹の声に笑う。
「子供の成長は速いというさ、それに……アクアは何処か私の仕事を理解している節がある。幼いうちから育て、完璧な後継者にしたいものだ」
「むぅ………」
「それに……お前達の生活が成り立っているのは私のお陰だというのは忘れるなよ?まったく……アイドルじたい、一人暮らしすら辛いものであるのに子供、しかも双子だ。私が居なかったらどうするつもりだった?話してみろ」
「……ごめんなさい」
「……未だに父親の事も話す気はないか。まぁ良い、何時か必ず突き止める」
「………はい」
「お父様!ママを虐めないで!」
ルビーはアイを守る様に瑠璃の間に入る。
「ルビー、アイが大好きなのは構わないが……これは兄と妹の問題だ。子供が口を出して良いことじゃない。それに、もしお前達の父親が仮に犯罪者だとしよう。世間は俺も、お前達家族も痛めつけ、傷付け、そして………ボロ雑巾捨てる。あの女の様に」
「でも…お母さんは」
「アイ……巫山戯るな!!」
普段の瑠璃の声よりも何倍も低い声で怒鳴る。
ルビーは目に涙を浮かべ、アクアも驚いている。
「あの女はただの売女だ。俺達を捨てた、葛だ。二度と…私の前であの女を庇い立てするな!」
「……なんで……なんで……お兄ちゃんは判ってくれないの?」
「判ってないのはお前だ!お前は………何故……お前を守る為に俺は全てを犠牲にしてきた。俺は……お前の為にやってきた。なんで……なんで……わからない」
瑠璃は一人称が俺になっていることに気付かなかった。
アルフレートはそんな主人の方に手を置き、離れるように促す。
「……旦那様、おやめください」
「アルフレート」
「妹様、判りました。旦那様と妹様はお会いになるべきではない」
それは瑠璃自身がわかっていたことだ。
瑠璃は妹『アイ』を護りたい、だが『アイ』は鳥籠の中に居ることを望まない。
「そんな……お兄ちゃんは」
「………貴女と、旦那様の為です。兄妹で傷付け合うのは私も、見たくはない。旦那様も……御理解していただけますね」
「……判っている、アルフレート。私は帰るぞ」
「お父様はそれで良いんですか!」
アクアが叫ぶが瑠璃は既に振り返ることはしない。
「アクア、お前が私の後継者となってくれるなら何時でも歓迎する」
そこからだ、瑠璃とアイが顔を会わせることはなくなった。
資金援助は口座振込、苺プロダクションへの仕事の凱旋は全て瑠璃のスターテックの広報部長(バットマンの仲間)が務めるようになり、息子、娘と対外的になっている双子とも話すことはなくなった。
「アルフレートさん、お父様はなんで……会いに来てくれないの?」
「ルビー様、旦那様は皆様を愛しておられます。しかし、その愛は大き過ぎるのです。瑠璃様はそれを理解しました。あのままでは自分は鳥籠であり、中の鳥の翼すら奪ってしまうと」
「それって……詩的」
「えぇ、アクア様。旦那様は詩的なお人です」
「……私達だけで会いに行けないの?ママも暗い顔をしてて私達もお父様と」
「……ルビー」
「……アイ様がお戻りになられるのは18時です。判りました、スターテックの高速ヘリをお呼びします」
アルフレートはスターテックから迎えの高速ヘリを呼び寄せ、そこに双子を乗せた。
双子にとって始めての空は感動するものだ。
「わぁ……ここが、お父様のお仕事の」
「スターテックの本社ビル」
「えぇ、日本から付近を購入し人工島を建設。高さ200m、地下150mを誇る我がスターテック本社ビルとなっています」
スターテックの本社ビルは人工島であり、本土とを繋ぐ道路とモノレールが走っている。共に社員限定か見学許可証が無いと入れない様になっている。
しかし、人工島の中は充実しており数多のレストラン、社員とその家族用のレジャー施設もある。
それだけでなく、極秘だがバットモービルの整備基地を兼ねている。
「ようこそ、アクア様、ルビー様。私はスターテック警備部長。バーナード・リーチと申します」
バーナード・リーチ、瑠璃が引き入れたバットマンのヒミツを知る仲間であり戦友だ。元はフランス外人部隊にいたのだが、偶然、バットマンに生命を救われ、その秘密を知った。
現在は家族と共に日本に移住し瑠璃の戦友にしてバットマンの相棒『ダークウィング』となり、犯罪者と戦っている。
「バーナード様、旦那様は」
「ご安心を、社長室にてお待ちです」
バーナードに案内され、アクアとルビーはスターテックの内部に入る。
そして、質素ながら機能性と生活性が合わさっている社長室に入った。
「……ふぅ。この社長室はマスコミは愚かこの会社の一部の者しか入ることは叶わない。アクア、ルビー、久し振りだな」
「はい、お父様」
アクアは礼儀正しく返事をした。だが、今にも瑠璃の発する気配に呑まれそうになる。前世で始めてあった時と同じだ。二度目の人生だがアクアは瑠璃が苦手だ。アイを妹として心配し愛しているとわかるが、その瞳は何処か暗く更に恐ろしさが多い。
ルビーはこの気配、いや威圧を浴びるのは始めてな為かアクアを縦にし、今にも泣きそうになっている。
「お父様、あの………怖い……です」
「恐怖を感じるのは当たり前のことだ、ソファに座ると良い」
「あの……お父様」
「……まったく…旦那様は愛せませんか?」
「ラピス、子供に罪はない。あるのは親だけだ」
アルフレートとバーナードは瑠璃を睨む。
「判っている、たとえ父親が稀代の大犯罪者といえど双子に罪はない。あるのは、あの男とアイだ」
「え?」
ルビーは状況が呑み込めていないようだったが、アクアは生唾を飲む。
「幼いお前達に……と言いたいが、お前たちは十分に成長している。父親の事を知るべきだ」
瑠璃は重苦しい口を開いた。
「私はこの事実を知った時、ショックだった。ただでさえ、アイに……妹に裏切られた。お前達双子を私は愛しているが、お前達双子はアイの裏切りの象徴だからだ」
「それって………」
「お前達の父親の名前はカミキヒカル。またの名を……」
「JOKER」
そう呟いたのはルビーだ。それどころか、目から光が消え怯えている。
「この4年、私はお前達から離れアイに子供が居たという証拠を全て消した。それだけでない、お前達が安全に暮らせる環境を作った。すまなかった」
「え?」
「私は………お前達に、家族に会いたかった」
「…そんなの………ママはお父様が来なくなって暗くなって………」
「ルビー、だがお前達の近くでは、守る事はできなかったんだ」
「あの……お父様、ママとは」
アクアが不思議そうに聞いた。
「アイに会うことはしない。金輪際、私達が会うことはないだろう」
アクア、ルビーと瑠璃の会談は5分にも満たないものだった。
社長室から追い出され、レジャー施設を巡った後は再びヘリコプターでの移動だ。
「…アルフレート、お父様がママの電話を奪ったりしたのって」
「……はい、カミキヒカルとの連絡を経つためでした。あの様な別れ方をしましたが、旦那様は本気でご家族を愛しておられます。それは………信じて頂きたく」
その後、二人はアイが帰宅するのを待っていた。
そして、運命の日。星野アイ、ドーム公演。ここに漕ぎ着けるまで、数多の苦難があった。
「ねぇ、アクア、ルビー。お兄ちゃんも……見てくれるかな?」
「………うん、きっと」
アクアは何も言えず、ルビーは何処か辛そうにしている。
そんな時だ、アイ達の住む自宅のチャイムがなった。
「はーい」
アイは気にすることなく扉に向う。
しかし、ルビーは見ていた。カメラの先で嘲笑うピエロの姿を。
「ママ、開けちゃ駄目!!!」
「よぉ………アイ。俺の子供は元気か?」
BANG
一発の銃声が響く。
「アイ様!」
「アルフレートさん、来ないで!」
「んん~……バッツの奴を苦しめるならお前を……セイ、ピース!」
JOKERは苦しむアイを尻目に写真を取った。
「ふぅ…じゃあな………お前の兄貴。バッツに宜しくな!IHI……IHAHAIHAHAHAHA!!!!!」
「……愛してるって……思ってたのにな」
「喋るな!弾は貫通……止血……止血しないと」
「アクア様!離れて下さい!」
「ねぇ!ママは!ママは大丈夫なの!」
「ルビーは来るな!」
アルフレートは家にあるものを使い、止血をしようとする。
「…これ、駄目かも」
「目を閉じるな!呼吸を……呼吸を続けろ」
アクアの悲痛な叫びが響く。
「旦那様が来ます、それまで……それまでお待ち下さい」
「お兄ちゃんか…………私ね………駄目な妹だよね。でも………お兄ちゃんの鳥籠の鳥なら、私はアクアとルビーに出会えなかった。……ごめんなさい……ごめんなさい」
それは瑠璃が仕事をしている時だった。
「よぉ、バッツ。お前のお宝を壊してやるよ、なぁ?バッツ」
社長室の端末がハッキングされ、JOKERの顔が映し出された。
瑠璃は即座にバットウィングに飛び乗り、大切な家族がいる家へと飛んだ。
「バットマン?!」
「旦那様、来てはいけません!」
「……あは……おに……ちゃん」
バットマンはマスクを外し、涙を流しながら妹の手を握っている。
「俺は………俺は何もできないのか………」
「二人を……お願……い」
「判ってる、だがお前が母親だ。俺達で育てよう、お前が母親で……俺が父親で…………」
「………だい……好き…」
「逝くな……俺を……俺を置いて行かないでくれ………」
この日、星野アイの生命は止まった。