☆2恒常聖女キャラだけど、ピーキーな性能で解雇されないようにしたいっ!   作:立場が逆転するやつ好き

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魅せてやんよ、僕のピーキーな性能を!①

 

 

「勇者様、今日は市場にでも行きましょう。」

 

 いつものように質素な朝食を頂いていた食卓で、勇者様に提案する。ちょうど王国から聖女宛てに給金が届いたのだ。決して多い額ではないが、たまの贅沢が許される程度にはある。本来一人分の生活費であるが、物価の安い村の市場でなら十分だろう。

 

「ひちばぁ〜?」

 

 僕の作ったカブのソテーを貪り食いながら喋る勇者様。カブと言っても、あくまでもカブっぽい植物である。

 

「僕が管轄ということになっている村の市場です。僕は聖女なので、その村に魔が現れた時は率先して守らなければいけないんです。」

 

 まだ行った事は無かったが、村にしては立地が良く栄えていると聞き及んでいる。丘の上に在る、この教会からも見ることが出来る。と言うよりも、見晴らしの良い場所に教会が建てられている、というのが正解だ。

 

「ハレナシと一緒ってことだよね!?それって“デート„じゃん!」

「まぁ、そうかもしれませんね。」

 

 パリッと耳触りの良い音で噛み切り、勇者様はもぐもぐと咀嚼してから話し始める。どうにも興奮している様子。

 

 昨夜の一件が有り、彼女のことを意識してやまないが、だからといって思春期の男子みたいに冷静さを欠いていてはいけない。僕は恰も気にしていない素振りで、ナプキンで口を拭った。

 

「い、行きます……!」

「良さげなのがあれば、服も買いましょうか。何時迄もその格好では人目を引いてしまいますから。」

「あ……!そうだよね、スーツ!」

 

 僕の私服では彼女は着られないだろう。そもそも、この世界に彼女の丈に合うレディースの服はあるのだろうか。

 長身で知られるアマゾネスなんかは何処で衣服を仕立てているのか。もしかしたら、創作みたいにビキニアーマーを着ている種族かもしれない。答えは少年の夢を崩さない形であってほしい。

 

「上の羽織りを脱げば、奇異の目には晒されませんよ。素材が良いので格式が高い人、何処かの令嬢くらいには見られるかもしれませんが。」

 

 後はネクタイを外せば構わないだろう。彼女のスーツはパンツスタイルなので、村人達には驚かれる可能性もある。しかし、彼女は背が高く、すらりとしているし、女性達にモテる可能性もあった。

 

「素材が良いだなんて。ハレナシ〜、褒めても何も出ないよ?」

「服の話ですよ……。」

 

 やっぱりこの人、ダメかもしれない。

 

 

***

 

 

「おでかけ♪おでかけ♪」

 

 ステップでも始めそうな勢いで揚々と歩く勇者様。そんな姿を見ていると、僕も彼女が楽しそうで良かったと思えた。けれど——。

 

「どうして手を繋いでいるんですか!?」

 

 まるで引率の先生のように、彼女は僕の手を握っている。逸れるとしたら、どう考えても勇者様の方なのに、まるで僕が連れられているようだ。

 次第に人数も増えて来て、手を繋いでいるのが恥ずかしくなる。すれ違う人々は、さも微笑ましいものでも見たかのように笑っていた。

 

「え?デートなんでしょ?」

「デート、違う!!」

 

 僕が否定すると、勇者様はしょんぼりと落ち込んでしまう。此方の罪悪感が募るので露骨に気落ちするのは止めてほしい。

 

「ハレナシって聖女って言っても『この身は神様に捧げし〜』って感じのじゃないんでしょ?じゃあいいじゃん!」

 

 確かに、おぼこでないといけないなんて決まりは無いが、だからと言って誰から構わず許すような尻軽でもない。

 

「だいたい、デートだから手を繋ぐなんて固定概念が可笑しいんです。まるで阿婆擦れですよ。」

 

 我ながら酷いことを口にしている。しかし、人には人のパーソナルスペースがあるわけで、何者にも侵す事は許されないのだ。

 それに、付き合いこそ短いが、冗談を言い合える仲にまで至っている……はず。

 

「阿婆擦れ……?ビッチってこと!?誰にでもこんな事するわけないじゃん。ハレナシだけだよーだ。馬鹿言ってないで行きますよ。」

 

 勇者様は、ぷんぷんと擬音が出そうな表情をして進む。怒らせてしまっただろうか。けれど、手は一向に放してくれそうにはなかった。

 前を進む彼女は呑気にも「今のハレナシの真似だよ?似てた?」なんて言ってくる。どうやら『馬鹿言ってないで行きますよ。』の部分がそうであったらしい。

 

 全然似てなかったけどね。

 

 

***

 

「お〜!!此処が市場か。ファンタジーって感じだね。」

 

 隣を歩く勇者様は、感嘆の声を漏らした。道を挟むように、両脇に所狭しと並べられた天幕を見渡しながら、子供みたいに、はしゃいでいる。

 僕の生まれた村では市場なんて無かったので比較対象も無いが、村の市場にしては栄えていると思った。

 

「貴女は聖女様ですか……?」

 

 そうして各天幕を見ながら歩いていると、急に御老人に話かけられた。白い髭を生やして、杖をついて、見るからに偉い人って感じの貫禄に溢れている。

 

「はい、そうですよ。」

 

 聖女ですか、と聞かれたものだから、素直に答えた。此処で身分を偽る必要も無い。なにせ、この村は僕の管轄なので。

 

「おぉ、やはりそうでしたか。いやぁなに、村の若いのが近頃教会が騒がしいと言うものですから、まさかとは思っておりました。」

 

 教会が騒がしいって、僕は野盗や不法侵入者とでも思われていたのだろうか。赴任してくるという話はされているはずだ。なにか手違いがあったのだろうか。

 

 それとも、僕が見落としている何かが有るのか……。

 

「あ!村の人達、ハレナシが来てるの知らなかったんじゃない?ハレナシ、此処に来てから村に挨拶とか行った?大事だよ〜?御近所付き合いは。」

「あ……、すみません。まだでした……。」

 

 にやにやとして茶化すように勇者様は告げる。どうやら、僕はマナーも忘れていたらしい。それなら、村の人々が僕の存在を知らなくても、おかしな話では無い。と言うか、本当に謝りたい。完全に驕っていたのだ。

 まさか、勇者様に気付かされるとは。

 

「すみません!大変申し訳ございませんでした!挨拶が遅くなりましたが、私、この村の教会に赴任する事になりました、聖女のハレナシ・アメナシ・クモリナシです!」

 

 ぺこぺこと頭を下げて、誠心誠意謝罪する。いつの間にか市場の人々や村人達の目も集まって、羞恥プレイのようになっている。それでも仕方ない。この一件は僕の落ち度だ。

 周りの人々は「頭を上げてください」とか「謝る必要なんてないですよ」と言ってくれてはいるが、今はそんな優しい言葉が傷口に沁みるようだった。

 

「私達こそ、なんのおもてなしも出来ず申し訳ない。そもそも此方から様子を見に行くべきでした。」

 

 目の前の御老人は僕を宥めるように言ってくれる。

 

 謝り合戦なら僕も引けを取らないぞ。誇る事でもないけどね。

 

「自己紹介がまだでしたね。私は村長のカルゴ・エスカルゴ。こっちは孫のクルゴ・エスカルゴ。こう見えて村の用心棒をしております。」

「……うっす。」

 

 今まで話していた御老人は村長だったようだ。彼の横に居た青年は無愛想だったが、村長の孫であるようだった。確かに体付きはがっちりとしているし、腕っぷしは強そうだ。

 

「クルゴは青年団の団長も務めておりますので、わからない事があれば彼に頼ってください。……クルゴ、案内してやれ。」

「わぁったよ……。」

 

 孫に案内を任せて、村長はそそくさと立ち去った。村長だというくらいだし、忙しい人のようだ。クルゴはあまり乗り気ではないらしく、渋々僕達の案内係をしてくれる。

 

 それなりに顔も良いのだし、もう少し愛想良くすればモテるだろうに。

 

「ハレナシぃ〜?」

「なんなんですか……。」

「彼をジロジロ見てたようだったけど、まさか……惚れた!?」

 

 誰が野郎に惚れるものか。

 

 

***

 

 

「で、そっちの人はなんなの?」

 

 クルゴが初めて話題を振る。彼は淡々と村を案内してくれた。しかし、無口なのか無愛想なのか、此方と雑談する事はなかった。

 途中、村の人々が「聖女様、これ持っていきよ。」「こっちのもサービスしちゃうよ。」と話しかけてくれたが、彼は冷めた目をして無言を貫いていたのだった。

 

「彼女は……()です。」

「恋人か……。」

 

 僕が言いあぐねて、一瞬口籠もってから答えると、彼は勝手な憶測をして決めつけた。僕と勇者様の何処に恋人要素があるのか、甚だ疑問である。

 

 勇者様も勇者様で、「バレちったか〜。」みたいな顔をして満足げである。

 

「……違います。」

「なに、俺は理解はある方だ。」

「違います!」

 

 わかってます、わかってますとニヤつく孫。こんなファンタジー世界で同性愛に理解があるのは素晴らしいけれど、根本的に間違っている。

 

 コイツ、失礼すぎないだろうか。村長さーん!貴方の息子さん、子供の躾ミスってますよ!

 

「だいたい俺はな、まだアンタ達を認めたわけじゃないんだ。」

 

 クルゴは喧嘩を売ってくる。よくもまあ、この話の流れで、そのような事を宣えるものだ、と僕は呆れた。

 だいたい、アタッカーってのは短気で良くない。その点聖女は優れている。証拠は僕の同期のマリハナさんだ。とても優しくて、時にふわふわしている人だった。“家の事情„で修道院を辞めていったけれど、元気にしているだろうか。

 

「村の事は村の人間だけで解決する。俺は一人で魔を倒したこともあるんだ。俺だけで勝てるってのに、余所者に頼る必要なんて何処にあるんだ!?」

 

 声を張り上げて主張するクルゴ。僕は聖女なので、いざという時は村の戦士達を頼りにしていた。しかし、彼は僕の存在を良しと思っていないようだ。

 

「必要があるかどうかは、その時が来てから判断してください。まぁ、来ないに越した事はないですが。」

 

 僕は挑発的な笑みを浮かべて踵を返す。このまま一緒に居ても、お互いに良くない。彼は一度冷静になるべきだった。

 

 先程から、貰った菓子をもぐもぐと齧る勇者様を連れて、村を後にしたのだった。

 

 

 

 





 長くなったので分割で。続きは今日中にあげときます。
 マリハナさんのその後は想像にお任せします。名は体を表す。

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