☆2恒常聖女キャラだけど、ピーキーな性能で解雇されないようにしたいっ!   作:立場が逆転するやつ好き

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魅せてやんよ、僕のピーキーな性能を!②

 

 

 

 村、燃えてるよ……。

 

 翌日、村の市場で買った物品や、頂いた食品を仕分け、日課に取り組んでいると、焦げ臭い匂いが漂って来た。

 何事かと思って外に出れば、村から煙が上がっていた。勇者様も「たいへん!たいへん!」と慌てているし、どうやら緊急事態だった。

 

 昨日のクルゴのように、村には気に食わない人物もいるが、圧倒的に良くしてくれた人々の方が多い。聖女としての役割以前に、御世話になった人達を助けたいという想いが先行していた。

 

「行きましょう……!」

 

 勇者様の方を見て、合図する。彼女もやる気満々の様子だ。彼女は丸腰であるが、いざとなった時は、この身命を賭してでも勇者様を守護ろうと思う。

 

 どうか無事でありますように。

 

 僕達は、村へと急いだのだった。

 

 

***

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 命からがらといった具合に逃げ出した人々の波と合流する。皆が絶望に満ちた表情をして、終焉でも見ているかのようだった。

 

「魔です!魔が攻めて来たのです!」

 

 僕の声に反応してか、集団を掻き分けて、村長が近付いて来る。悪い予感ばかり当たってしまう。

 

「まだクルゴや村の若衆が戦っています!どうか、どうか聖女様、力を貸してやってください……!!」

 

 僕は村長に懇願される。もはや僕以外に縋るものはないかのように、藁にも縋る思いで求める。僕は誰かが居ないと役に立たないが、藁なんかよりも役に立つ。

 刻一刻と、自分の出番が迫って来ていた。

 

 

***

 

 

 村は酷いものだった。昨日までは確かにあったはずの豊かさは奪い去られ、全ては燃えて消えようとしている。地面には赤い血溜まりが点在し、肉の焼けた異臭が放たれていた。

 敵の元に走る傍ら、ぴくりとも動かずに倒れた人を見る。彼らは戦って死んだのだろう。武器だけは決して手放さずに逝っていた。

 

 ——これではまるで、“あの日„の繰り返しではないか。

 

「はぁ、はぁ……うっ……。」

 

 動悸が激しくなって、足が竦む。けれど、僕は呑気にも『これが心的外傷後ストレス障害ってやつなのかな……。』なんて考えてしまっている。心では乗り越えたと思っていたトラウマも、躰は言うことを聞いてはくれないらしい。

 

「大丈夫ですか!?」

「これが大丈夫に見えるか!?」

 

 やっとの想いで駆けつけた前線で、クルゴは果敢にも戦っていた。どうやら、彼は本気で自分の村は自分で守ると考えているらしい。逃げもしないで争っている。

 軽口を叩けるだけの余裕は有るようだが、それも知れたこと。すぐに押し切られてしまうだろう。

 

「ぜぇ……ぜぇ……、はぁっ!!」

 

 相手は魔蝙蝠。人間が持たない翼を使い、空中から攻撃してくる厄介者だ。蝙蝠の特長通りに超音波を出して、闇の中を移動したり、相手を混乱させたりする。

 クルゴは息を乱して、魔蝙蝠を叩き切るが、相手の回避率の方が高いようだった。

 

「ハレナシ……。」

 

 勇者様が、不安そうに僕の服を掴んでいる。この状況の打開策は、僕のピーキーな性能を活かす事であるが、ぼろぼろの彼らに使っては、傷口に塩を塗ることと同じだ。

 

 ——誰か、誰かいないのか……。

 

 そう思っていた時、背後より馬の駆ける音が聞こえた。音はだんだん大きくなり、近づいて来る。

 

「はぁあああ————!!」

 

 宙を舞った何者かの躰によって、陰が差し、晴れた時には魔蝙蝠は真っ二つに両断されていた。

 

 立ち上がる、鎧に身を包んだ、ショートヘアーの黒髪の騎士。

 

 

 これはまさか、助っ人……!?

 

 

***

 

 

「皆さん、無事ですか?」

 

 戦の最中だというのに、彼女は冷静に問う。実力者故の落ち着きか、気を抜いているようではなかった。

 

「助かったぜ……。」

 

 助けが入ったためか、クルゴは気を抜く。周りで戦っていた人々も、同様だった。魔蝙蝠は、自身の同胞を討つ強者が現れたためか、一旦猛攻を止めていた。

 

「遅れて申し訳ありません。私は王国軍より参りました。微力ながら助太刀致しましょう。」

 

 そう言う彼女は、途端に凛とした空気を纏い、剣を振るう。切り裂かれた魔蝙蝠。彼女の前では翼も無意味なようだ。まるで居合だ。

 

「これだけの魔蝙蝠、必ず“親玉„が居るはずです。それを探し——っつぅ!!」

 

 言いかけた彼女に、先までの魔蝙蝠の何倍もの体躯をした魔が襲い掛かる。これが彼女の言う親玉なのだろうか。既のところで防御した

 

 彼女によって切り捨てられたモノとは違い、体毛は紅く輝いている。いったい、何人の人々を殺したのだろうか。牙の先は血濡れしている。赤い瞳が不気味に光って、攻撃が始まった。

 

「くっ……!?」

 

 騎士の彼女は、親玉の攻撃に耐えられてこそいるが、破綻は時間の問題だった。

 

「ハレナシ……お願い、助けてあげて……!」

 

 勇者様が願う。僕は声は出さずに頷いた。僕の躰は、PTSDがなんだと動けないでいたが、彼女の一声で欠けていたパズルのピースが埋まったような感じだった。今なら、なんでも出来るような気さえする。

 

 まるで、主人公からの指示を受けたかのようだったのだ——。

 

 

「今こそ見せてあげますよ!!僕の、誰にも負けない()()()()()!」

 

 

***

 

 

「なんだ……!?力が湧いてくるようだ……!」

 

 僕は騎士の彼女に、とっておきの能力を使用した。

 

 誰にも負けない、誰にも劣らない、解雇されない、スペシャルな力を求めていた。

 だから、聖女なのに回復なんて凡夫の道には進まず、思考し、僕だけの何かを追究したのだ。

 

 そして、答えを出した。見つけた。編み出した。完成させた。——僕のピーキーな性能を。

 

「はぁっ!」

「ぴぎぃいいいい!?」

 

 騎士は増した力で、反撃し、親玉に傷を負わせる。相手はそれで警戒すべき敵だと認識し、次の攻撃に全てを賭けた。

 

「不味いっ!?」

「——大丈夫です。避けないでください。」

 

 僕の声に、騎士は「正気か!?」と訴えたような目を向けるが、アイコンタクトで答える。“僕のとっておき„なら大丈夫だ。

 

 凄まじい速度で襲いかかった親玉だったが、騎士の躰には当たらなかった。回避したのだ。もちろん、僕が回避率を上げたから避けられたのだ。

 

「これは……?」

 

 驚いたような声を漏らす騎士。重い鎧では、本来避けられなかっただろう。不可能を可能にする効力。やっぱり素晴らしい、僕の能力。

 

「これは聖女様、貴女の力なの、か……かはっ……ごほっ……!」

 

 僕に驚きの言葉を言おうとした瞬間、彼女は咽せ返って、吐血する。まるで何かに躰を蝕まれているかのように、苦しんでいる。敵にやられたと思うのが普通であるが、そうではなかった。

 

「ごめんなさい。それも僕の能力です……」

 

 僕のとっておき——パーティー全体の攻撃力・防御力・素早さ・命中率・クリティカル率・回避率を上昇させる。しかし、代償に猛毒も付与してしまうのだ。

 

 これが僕の全て。僕が考えた、たった一つの冴えた抜け道。

 

 毒のダメージ量を上回る回復で押し切ればデメリットは無い。僕は回復できないけどね。

 

「毒は一行動につき、一回です!そのまま押し切ってください!」

 

 自分の力を把握している僕が、騎士に促した。今の彼女ならボスだって倒し切れる。

 

「……信じてくださるのですね。それなら、我が剣を持って応えましょう。」

 

 途端に高まる彼女の闘気。とてつもない集中力で、全身全霊を捧げる。その一太刀に、全てを出し切る。彼女は限界まで力を刀身に流しこんで、闘剣が自身の躰の一部であるかというところまで研ぎ澄ませた。

 

 来たる、最強にして最後の斬撃。僕と彼女のコラボレーション。“彼女のとっておき„。

 

「————ウェーブストライクッ!!」

 

 向かって来ていた親玉も、何かを悟って逃げようとするが、もう遅い。戦場で背中を見せた者は敗戦の運命にある。

 

 彼女の全てを注いだ一太刀は、一刀両断。硬い筋肉も穢れた魔も、物ともせずに、切り裂いてしまう。

 大地を割り、炎を割り、空を割り、脳天を割る。

 

「……すごい。」

 

 彼女自身も自分の力に吃驚している。僕の力と彼女の力が合わされば、無敵だ。

 

 親玉を倒したためか、他の小物もいなくなり、戦闘は終了した。

 死傷者、救出すべき人々は絶えないが、辺りの様子を見回して、僕もようやく一息ついた。

 

「わぁあっ……!」

「すごい……!すごいよ!あれってハレナシも何かしたんでしょ!?いきなり力がズバーンって上がって、騎士の人がドカンって!騎士の人も凄いし、ハレナシも凄い!」

 

 興奮冷めやらぬといった様子で、勢い良く抱きついてきた勇者様。捲り立てるように早口と褒めてくれる彼女に、僕も気分を良くする。

 

 そのまま僕の需要に気づいて解雇しなければ良い。

 

「ありがとうございました、聖女様。おかげで助かりました。」

 

 続いて、近寄って来た騎士が、礼を述べ、手を差し伸べてくる。握手を求めているようだった。

 

「いえ。僕の能力は、貴女のような勇士がいないと成立しないんです。それに、毒という枷もありますから。」

 

 感謝されるほどの事をした覚えはない。僕はああするしか無かったのだから。

 

「それでも、私だけでも敵わなかったのも事実です。だから、二人で掴み取った勝利ですね。」

 

 握り渋っていた僕の手を強引に繋いで、陽気に笑う騎士。誰かを守るってこういう強引さが無いと駄目なのだろう、と僕は得心した。

 

 「二人だけでズルい、ズルい!」と喚く勇者様にも、彼女は手を差し伸べる。勇者様はぱーっと笑顔を満開にして握り返していた。

 実際、勇者様がいなければ僕は力を発揮出来なかったので、今は黙っておくとしよう。

 

「あの……、貴女はどうして戦場なんかに?」

 

 騎士の彼女は、勇者様に当然の疑問を向ける。無事だから良かったものの、戦闘にも加わっていなかったし、見た目は市井のそれだ。危険を冒してまで戦場に居る必要は無かろう。

 

 普通なら、ね。

 

「彼女は勇者様です。魔に抗う人々に勇気を与え、導く存在。」

「ちょっと!?」

 

 勝手に正体を明かされるのは、嫌だっただろうか。ただでさえ、彼女は『勇者様』と呼ばれる事に抵抗が有った。

 けれど、目の前の騎士になら教えても良いような気がしたのだ。いずれは僕達と共に戦ってくれる、そんな予感がしたのだ。

 

「なんと……!王国が勇者を異世界より召喚し、剰え悪待遇で逃げ出してしまったとは耳に入っておりましたが……まさか彼女が勇者様とは……。」

 

 何か考えるように腕を組む騎士。数十秒ほど思考し、彼女は僕達に向き直った。

 

「して、勇者様は今後どうするおつもりですか?」

「私は……。」

 

 彼女は問うている。勇者様の未来を。そして、勇者様は迷った。自分の使命を。

 彼女は勇者だなんだと言われるのを嫌っている。使命がなんだという事だって、彼女からしてみれば知ったこっちゃない。

 

「——私は、今日みたいなのをもう見たくない。だから……お願い!ハレナシ、私と一緒に戦って!」

「勿論です。」

 

 僕は、さも当然と言わんばかりの表情で前に出る。

 彼女が望むのなら、僕は彼女の為に戦おう。この身を剣に盾に、杖に変えようと、彼女を守り切る。どうせ乗りかかった船、一蓮托生、ブラック企業よろしく沈む時は同じ。

 

「私には何も出来ない。足手纏いにもなると思う。でも、私が勇者だっていうのなら、逃げたくない。この世界で私に出来る事があるなら、助けたい、一人でも多くの人を。」

 

 勇者様から、迷いが消えていた。彼女の表情は、朝日なんかよりも澄み渡っていて、決して折れない決意が窺えた。何よりも、今の彼女の姿は“本物の勇者„のそれであり、僕が着いて行くべき存在だった。

 

 どうしてだろう。以前迄の彼女と明確な違いなんて無いのに、どうしてこうも惹かれてしまうのか。これが、主人公の本領なのか。

 

「……それに、私には助けてくれる娘もいるもんね?」

 

 彼女が何事を口にして、此方に向けてはにかんだ。周りの騒がしさのせいで聞き逃してしまったが、頼られているような気がした。

 

「ふふっ。面白い人だ。私は貴女達から決意を見ましたよ。それなら、私の答えは簡単だ。」

 

 騎士は、納刀していた剣を再度引き抜き、胸の前で構える。何処までも洗練された静かな動作。一朝一夕では身につかない努力の形。

 

「王国軍騎士団長、メルメールメール・メ・メールメルメル。この身、貴女達の剣として尽くしましょう。」

 

 騎士メルメールメールは、漸く仕えるべき王を見つけたかのように微笑んだ。彼女が着いて来てくれるというのなら、心強い味方になりそうだ。

 

 そよ風が吹く。燃えていた家屋も、いつしか鎮火している。——夜明けは、もうすぐそこだ。

 

 何処かでファンファーレが鳴ったような気がした。

 

 

 メルメールメール・メ・メールメルメルが仲間になった。…………!

 

 

 





 このタイミングでチュートリアル10連が入ります。
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