マイニチペダル ~deep and love~   作:御沢

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さらに続く。


嬉し涙

新開に告白されたのがついこの前のような気がする。

でも、いつの間にか大学も卒業して、26歳になった私たち。新開―――隼人との付き合いも順調で、半年ほど前に結婚式も済ませ、今は同居している。もちろん名前も、相良香咲から、新開香咲に変わったわけだ。

 

「香咲ー、ただいまー」

隼人は自転車を趣味の一環として続けつつ、明早大卒という高学歴のおかげで大手の会社に入社した。私も一応教師として働いている。

「おかえり、隼人。お疲れ様」

「ありがとー。はい、ぎゅーっ」

「はいはいっ」

高校の頃からスキンシップは盛んだったけど、結婚してからはさらに盛んになった。

だけど、子供はできない。アルファ同士、それは覚悟していたし、私はそれで断ろうとしていたのだから、しょうがないことなのかもしれないけど、それでも…。

「香咲、何考えてんだ?あ、おめさん、また子供のことだろ?」

「っ!そんなことないよ!ちょっと待ってね、いまご飯作るから」

「…香咲が食べたい」

隼人は優しいから、子供ができないことは何も言わない。毎日飽きずに私を抱いてくれるし、幸せで涙が出る。最近は毎晩毎晩泣いている気がする。

「いいの…私で。毎日飽きない?」

「飽きるわけねぇよ」

そんなこと言ってくれるから、また嬉しくて涙が出る。

 

 

翌日、だるい下半身を無理やり動かして、ファミレスに向かう。土曜日で、偶然仕事がなかった。

「あ、いたいた。靖友ー」

「ん?アー、香咲ィ」

ファミレスの一角に、幼馴染・荒北靖友こと金城靖友と子供が3人。

現在11歳になった娘の唯ちゃん。靖友と金城の結婚式の時は7歳だったのに、時が経つのは早い。ちなみに名付け親は私。“唯一無二の宝物”って意味で唯ちゃん。

そして、実は結婚した時には既に靖友のお腹の中にいたという4歳の娘の真ちゃん。金城の名前から一文字とって真だと言っていた。

さらに靖友の膝の上に乗ってる2歳の息子の友くん。こっちは靖友から一文字とって友くん。

「相変わらず可愛いねー、3人とも」

「ダロォ?俺の自慢の子どもだヨ」

みんなそっくりなのは、大きな口で笑うところ。親子だなぁって思う。

「んで…急に呼び出すってことは、つまり、そういうことだよね?」

「ん…まぁねェ…」

今までに急に靖友に呼び出されたのは2回。その経験から、大方の推測は付いた。

「…おめでとさん」

「あんがとネ」

 

要するに、靖友は4人目を妊娠したということだ。オメガとアルファは子供が出来やすい。3ヶ月に1度のオメガのヒートの時にそういうことをすれば、かなりの高確率で妊娠するらしいし。

「まぁ、私は幸せだよ。アンタが幸せそうで何よりだし。金城と番になってくれたおかげで、フェロモン出てないし」

「俺は未だにびっくりだヨ。いつの間に香咲と新開が…ってな」

「えへへ。…まぁ、子供の面倒見て欲しいとか、いつでも頼ってよ?」

「オウ。あんがと」

立ち上がって、仕事があるって嘘をついてその場を離れる。

正直言って、精神的にものすごく辛い。なんで、っていいたくなる。靖友にはすぐに子供が出来るのに、私にはできなくて。そりゃあ、アルファの方が色々世間的にはいいから、子供くらいって思うかもしれない。だけど、でも…されどもだ。

悔しくて家に帰って、隼人が帰ってくるまでずっとベッドに伏せていた。息苦しい。頭が痛い。もう何もしたくない。

 

 

「ただいまー」

隼人のその言葉で、うっすらと目を開ける。急いで意識を手繰り寄せ、起き上がろうとした。だけど、泣きすぎて体に力が入らなかった。

「香咲…?どうかしたのか…?」

「隼人…ごめん、靖友とあって…寝てた…」

俯いて、あからさまに何かあったって態度をとってるのはわかった。でも、今はこうするしかなかった。

「…なにがあったんだ」

「靖友ね…妊娠したんだって。4人目だよ」

頑張って笑おうとしたけど、筋肉がひきつる。あ、やばい。涙が出そう。

靖友が嫌いなわけじゃない。むしろ、大切な幼馴染で、あいつが幸せなのが幸せなのも嘘じゃない。でも、だけど…。

「…そっか。俺はさ、香咲。何回も言うけど、おめさんだけいればいいよ」

「うん…だけど、隼人、子どもすきだし…悔しいんだよ…」

あー、ダメだ。フラフラする。まだ寝起きだししょうがないのかもしれない。

でも、今だけは、隼人、頼らせて―――…

「香咲…?香咲!?」

「だいじょぶ…眠いだけ、だから…」

「いや、すごい熱だって!働きすぎ!追い詰めすぎ!病院行くぞ!」

抱き抱えられて、隼人に車に乗せられたところで、意識は途切れた。

 

 

目を覚ましたのは、病院のベッドの上。右手に点滴が繋がれてる。

「隼人…?」

「あ、香咲、起きた?」

大きな手が私の頭を撫でる。そんなことされると、2人でも充分幸せだと思ってしまう。

「…高校の頃の香咲はさ、自由で元気でさ…輝いてた。でも、今は違う。俺のせいってのもわかってるけど、輝いてない」

「…自覚済み。わかってるんだよ、頭では。だけど、整理ができないっていうか、なんていうか…」

体を起こして頭を支えると、隼人が優しく抱きしめてくれる。それだけで、また涙があふれる。

「隼人…っ!」

「おいおい、香咲。しっかりしろよ、お母さん」

 

え…待って、隼人。今、なんて言った…?

「なんて言った、って顔だな」

「は…え…?」

「病院に運んで、検査したらさ、妊娠3ヶ月だってさ」

あぁ、そっか。私の思いは無駄じゃなかった。頑張ったかいがあったんだ。

「隼人…っ!」

「香咲、おめでとう。ありがとう」

初めて、嬉しくて涙が出る。

 

 

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