遂にこの舞台に立った。
正真正銘、サッカーの『てっぺん』を掛けた最高の試合。
コートをぐるりと囲うように配置された席全てから降り注ぐのは、観客達の熱狂と興奮の豪雨。
真上を見上げると、夕日がギラギラと赤の光を届け入れながら両チームを迎え入れるのがわかる。
その中心に、俺達は立っていた。
この後、二時間も経たない内に、この試合の決着がつき、俺達の挑戦は終わる。
だから、後悔したくない。
この大舞台で、最高のライバルと、俺達の夢を賭けて競い合う……。
負けたくない。
俺達の全てを、この戦いにぶつけるんだ──。
「──オイ、明日人」
「……? 灰崎?」
「膝ガクガクしてるぞ。平気か?」
「な──!?」
思わず自分の膝を覗き込んだ後に顔を上げると、灰崎がケラケラと笑う。
急速に頰が熱くなるのを感じながら、俺は灰崎に掴み掛かった。
「はーいーざーきー!?!?」
「悪かった悪かった。俺も落ち着かないのはお前と同じだ」
その言葉に、ハッとさせられる。
俺が改めて緊張に馴染もうと小さく俯くと、隣で聞いていた一人がこちらに近づいて来た。
「──僕も同じだよ。雷門との決勝戦では緊張なんてしていなかったはずなのに……、僕も少しは成長出来ているのかな? 明日人」
「野坂……」
皆、思いは一つだ。
この最終決勝での勝利という『てっぺん』に向かって進んでいく。
そのために、ここにいる。
「覚えてるか? 明日人。俺がお前らボコボコにした時、お前らは諦めずに俺の
「あはは……。あの時は追い込まれてたから、それ以外選択肢がなかったって感じだけど……」
「だとしても、きっとあの時から始まったんだ。キャプテン達の世界への挑戦とはまた違う、俺達の運命との戦いがな……」
「……。そうなのかもな……」
『光』を、『仲間』を、『約束』を、俺も皆もそれぞれの背景があって、壁があって、全て乗り換えながら辿り着いた。
「なら、最後は……」
──あの最高の『親友』。いや、『ライバル』に……!
「掴もう……! 世界の『てっぺん』! 世界の『玉座』を……!」
「「おう……!」」
誰にでも、負けられない瞬間がある。
自分に従えば、道はその先に見えてくる。
(見てて、母ちゃん……)
明日人は指で象った銃口を相手に向け、宣言する。
「──楽しもうぜ! ペトロニオ!!」
稲森明日人と、イナズマジャパン。彼等の最後の試練が、始まる──。
◇◇◇
この舞台に、立ってしまった。
正真正銘、全ての『テッペン』を掛けた最後の試練。
私達を監視するかのように配置された席全てから降り注ぐのは、観客の視線と心臓を握られるような緊張感。
真上を見上げると、夕日が赤い炎でぼうぼうと、私達を追い詰めようと狙っている。
その渦中に、私達は立たされた。
きっと二時間もしない内に、全ての決着がつく。
この舞台は、明日人達の夢は、ここで終わる。
後悔は消えない。裏切りの恐怖が収まることはない。
この大舞台で、最高の『親友』を……。そうすれば、私達は……。
そうだ、思い出せ。覚悟は決めたはずだ。
私の全てを、この戦いにぶつけるんだ──。
「──大丈夫か」
「……。何が」
「……全部、かな」
「…………」
その返答に、何も言えなかった。
俺が言い淀んでいると、気を遣わせてしまったのか、彼は再び口を開く。
「──俺達は皆、覚悟を決めてここにいる。だから、いつだってお前についていく……」
「…………」
その言葉に、改めて自分の覚悟を決める。
俺が力強く頷くと、彼は不安そうに俺を見つめていた。
「それに──、稲森明日人。アイツ、友達なんだろ? 自分のこと考えてくれても俺達は──」
「……いや、彼は優しい奴だ、だから、私達のこともきっとわかってくれる……」
「…………そっか」
きっと、皆、思いは同じだ。
この最終決勝での勝利という『テッペン』を奪いに行く。
我らが『姫』がそれを望むのなら、私達は守護者として、それを実現してみせる。
そのために、ここにいる。
──君、強いね。でも、ボク達は負けないよ……!
「──ッ!」
準決勝で戦ったあの男の笑顔を思い出す。
あの者だけではない。
今まで戦った敵達全員が、自分のサッカーを持って、全員が、サッカーを楽しんでいた。
逡巡の末、黒龍が静かに鳴いた。
思わず天を仰ぐ。夕日によって染まった黄と赤の空に、黒が差し始めていた。
「どう思う? 明日人……」
間違うことを恐れるな。
「勝つぞ。優勝は私達のものだ」
怖いのは、諦めることだ。
(その玉座が虚栄のものだとわかっていても……)
絶対に勝つ。
◇◇◇
『フットボールフロンティア・インターナショナル』。通称、『FFI』。
少年サッカーの世界大会、稲森明日人とイナズマジャパンの挑戦が、幕を開ける。
これは、雷陽の少年と黒龍の少年の大切なものを巡る戦いだ。
───
稲森明日人→主人公。雷陽。
灰崎凌兵→明日人のライバルでチームメイト。
野坂悠馬→アレス期のラスボス。