雷陽と黒龍   作:久遠れもん

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 新章開幕。前章からの繋ぎ的な回。長いかも。


VSシャイニングサタンズ『その為だけに放つ』
ゴールに魅せられ、踊らされ。


 

 窓の外の日の出を見届けてから数時間が経った。

 俺はやることもなく、ベッドの上で一人、ただ時間が過ぎるのを待つ。

 窓の外の景色が今はとても遠く感じる。

 

 自然とため息が溢れた。

 

 足が全快するまでにこの『FFI』の大会期間は全て終わってしまうだろう、と担当した医師から通告を受けた。

 俺のこれからの活躍が、人生においてどれだけ大切な瞬間だったとしても、運命の女神は興味がないらしい。

 今の自分はどんな顔をしているのだろう。

 世界を諦めきれず唇を噛んでいるのか、柄にもなく涙を流しているのか。

 どれも違う。何も感じられない。自分がこんな状況に置かれている実感がまだないのかもしれない。

 

「……」

 

 円堂たちと世界と戦うために研究し続けた『ラストリゾート』もあの一度の披露で終わり。

 ここから俺は仲間たちを影から支えていくことになる……。円堂や鬼道たちの戦いを横から……。

 

「……っ」

 

 理不尽な現実に、豪炎寺が拳を握ると──

 

「──豪炎寺ー! お見舞いに来たぞー!」

 

 聞き慣れた声と共に病室の扉が開いた。

 豪炎寺は静かに身体を起こし、その者達を迎え入れる。

 

「……円堂、それに皆。来てくれたのか」

「もちろん。足の調子は大丈夫か?」

「ああ、もう痛みはない」

 

 円堂に続くように鬼道が口を開く。

 

「試合には出られるのか」

「……()()()()()()()。少なくとも予選は戦えなさそうだ」

「予選をお前なしで勝たなければいけない訳か……」

「すまないな。俺の油断だ」

「いや、あれは誰であっても避けようがなかった。今は治療に専念しろ」

「ありがとう」

 

 そう言うと、豪炎寺は静かに他の者たちに目を向けた。

 そして、全員が豪炎寺を心配してくれているのだとわかり、自分のミスを改めて悔やむ。

 

「アフロディや佐久間たちは後日、個人で訪れるつもりらしい。灰崎と吉良はそれぞれ特訓中だ」

 

 豪炎寺の態度で勘違いをさせてしまったのか、鬼道が豪炎寺にそう伝えてくれた。

 豪炎寺は、そうか、とだけ答える。

 

「豪炎寺、俺はお前とまたサッカーがやりたい。だから、必ず戻ってこい!」

 

 円堂の言葉にその場の全員が頷く。

 豪炎寺はそんな円堂たちに微笑むと返事をした。

 

「ああ、俺もだ」

「お前のあの一撃に魅了されたされた選手は間違いなく多い。このまま終わるなんてことは許されないぞ」

「……ああ」

 

 円堂や鬼道、そして、仲間たち。豪炎寺の周りにいるのは優しい者たちばかりだ。だからこそ、その想いに報いてやれない自分が情けないと、豪炎寺は思った。

 

 

 

 皆が病室から去っていき、病室に静寂が戻る。

 豪炎寺もまた、一人の時間に戻ろうとした瞬間、

 

「──修也、入るぞ」

 

 円堂達と入れ替わるように、再び扉が開いた。

 そして、現れた人物に豪炎寺の表情が驚きに変わる。

 

「父さん……!?」

 

 豪炎寺の父、豪炎寺勝也がそこにいた。

 

「先日の試合、大変だったらしいな」

 

 豪炎寺は顔を顰める。勝也はそれを受け止めながら、ベッドの隣に置かれた椅子に座った。

 勝也は豪炎寺がサッカーをしていることに否定的で、豪炎寺に医者の道を進んでもらうことを望んでいる。勿論悪人ではないが、今の豪炎寺を不安を感じさせるには十分だった。

 豪炎寺が勝也の登場に思いを巡らせていると、勝也が見透かしたような目で言った。

 

「その足、大会中には間に合わないのだろう?」

「──! 何故それを……!?」

「私も医者だ。そのくらいわかる」

 

 今まで見たこともないほどに弱々しい態度の息子の言葉に勝也がため息混じりに返答する。

 豪炎寺は情け無さに攻め立てられ言葉を発せなくなり、ただ俯いた。

 そんな時、勝也が唇を開く。

 

「修也、もう一度ピッチに立ちたいのなら、私の元に来い」

 

「……!!」

 

 衝撃を受けた。

 まさかこの後に及んで自分にサッカーを止めろ、と言ってくるのかとも一瞬思ってしまったが、間違いなく違う。父は他人に気が使えないような人間ではない。いや、父の人柄なんてことを考えなくてもわかる。父の目は、本気で自分を心配して、助けてくれようとしてくれていることを伝えてくれていたから。

 

「どうして……」

「……お前たち代表の試合を中継越しに見ていた。初めは、サッカーで誰が救えるんだ、とでも言ってやるつもりだったはずなのだが……。……すごいじゃないか、修也」

「父さん……」

 

 豪炎寺の一撃に魅せられた者は、何も選手たちだけではない。

 

「彼らには、お前が必要なのだろう?」

 

 勝也は小さく微笑んだ。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 監督用に用意された大部屋の扉が二度、叩かれた。

 1人で部屋にいた趙金雲は遊んでいたゲーム機の電源を落とし、ドアの奥で入って良いかと問いかけを自分に送っている人物を呼ぶ。

 

「入って構いませんよ〜」

 

 呼びかけるとすぐに扉が開いた。

 

「──失礼します」

 

 ノックをした人物、鬼道有人は何やら真剣な表情。だが、そのことを特に気にすることもなく、普段の調子で趙金雲は話を始める。

 

「おや、鬼道くん。どうかなさいましたか?」 

「……先日の豪炎寺の怪我の件で相談があります」

「豪炎寺くんのですか? 何でもよろしいですよ♪」

 

 あくまで無知を装いながら、趙金雲は鬼道に議題の提示を持ち出す。

 ニヤニヤと笑う趙金雲に不信感を覚えながらも、鬼道は趙金雲の言葉に頷いた。

 

「先日のレッドバイソンとの試合……、豪炎寺とアフロディは敵選手が反則行為を働いていた、と言っていました。それに俺から見ても、ペク・シウを始めとした数人が不審な行動をしているように見えた。……監督は何か心当たりはありませんか?」

 

(頭の良い鬼道くんなら気が付きますか……)

 

 鬼道は多くの根拠を用意していたが、趙金雲の表情はいつも通りのニヤケ面から変わることはない。そんな態度のせいで鬼道の不信感が更に募る。

 

「ふーむ、勘違いじゃないですか?」

「…………」

 

 しらを切る趙金雲と懐疑の視線を向ける鬼道。

 二人の沈黙の間を先に破ったのは、趙金雲だった。

 

「『FFI』はれっきとした少年サッカーの世界大会ですよ」

 

「……そう、ですか」

 

 これ以上の抗議は無駄だと理解した鬼道は渋々身を引いた。趙金雲は不可解な笑みを崩さずに、議題を移す。

 

「その他に質問はありますか〜?」

 

 趙金雲が分かりやすく話題を変えようとし始めたことに鬼道も気がつくと、仕方ないと思考を切り替え、もう一つの疑問を問う。

 

「……一星充という選手の詳しい情報を────」

 

『──ブブーーーーッ』

 

 何故か手元にあったボタンを趙金雲が鳴らし、バラエティ番組で聞くような不正解を示すための音が部屋中に広がり、鬼道の問いを遮った。

 鬼道はゴーグル越しでもわかるほどの厳しい視線を向けながら、その行動の理由を要求する。

 趙金雲が立ち上がった。

 

「彼のことは私もよくわかっていないのですよ♪」

「──は? この不審な大会の最中だというのに、正体不明の人物を置いておくと!? そんなわけはないはずです監督!」

 

 鬼道が取り乱しながら、趙金雲に詰め寄る。趙金雲は一度瞼を閉じ俯くと、何かを思いついたかのように顔を上げた。

 

「じゃあ、こうしましょう……。──個人のプライバシー侵害に当たるのでお教えできません♪」

 

 鬼道は趙金雲の意図を理解する。が、趙金雲が瞳の奥で捉えている真理は到底理解できなかった。

 

「……今は話すつもりはないと?」

「理解が早くて助かりますよ。鬼道君」

 

 鬼道は不満そうにため息を吐くと、礼をした後に部屋を出た。

 趙金雲が再び、部屋で一人になる。そして、荷物を纏めながら数十分後に迫っているミーティングの用意を始めた。

 

 

「……それに、一星君の件は『彼』に任せるつもりですからねぇ」

 

 

 その手元にあるのは、一人の選手の写真だった。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 レッドバイソンとの試合から、数日が経ち、イナズマジャパンのメンバーは、アジア予選の二回戦に向けたミーティングのために、ミーティングルームに集められていた。

 

「え〜、おほん。予選二回戦の対戦相手が決まりました〜♪」

 

 見事に一回戦を突破したイナズマジャパンだったが、豪炎寺という攻めの核とも言える選手を失った。FFIの予選はトーナメント制。つまり、一度でも負けて仕舞えば、俺たちの世界への挑戦は終わってしまう。

 

(だからこそ、次の試合は大切……!)

 

 明日人は軽く呼吸を整えて、趙金雲の次の言葉を待つ。

 

「次の相手は……、オーストラリア代表『シャイニングサタンズ』です♪ ではつくしさん、よろしくお願いします♪」

「はい!」

 

 趙金雲の言葉に続くように、モニターが写真を映し出すと、大谷がステージに上がった。

 

「シャイニングサタンズは、『太陽のサタン』の異名を持つチームで、その名の通り悪魔に関する技を使う選手が多いです」

「!」

 

 明日人の後列に座っている灰崎が肩をピクリと震わせた。

 

「そして、注目選手はチームのキャプテンでもある『サタン・ゴール』選手。何でも彼の放つシュートを止められたGKはいないんだとか」

「無敗のエースストライカー、と言ったところか」

「鬼道くんの言った通りで間違いないと思います」

 

 大谷が鬼道の言葉に頷く。

 すると、神門杏奈がモニター上に映されている画面を切り替えた。

 

「動画?」

「はい! 子文くんが昨日の時点で偵察に言ってくれた時のものだそうです」

 

 偉そうに座っている趙金雲の隣に立つ子文が胸を大きく張った。

 そんな様子に少しほっこりとしながら、明日人は画面に目を向け、再生されるのを待った。

 

『……うん? これは日本(ジャパン)の偵察か?』

『えぇ? は、はい……』

 

 モニターからでもわかるほど、モニターに大きく顔が映っている橙髪の男に子文がタジタジになっているのが伝わってくる。

 明日人は苦笑いを溢した。

 

『ならキャプテンであるオレが、キサマらに言いたいことがあるんだが』

『え、ああ、どうぞ……』

『フッ、確かエンドウ・マモル……だったか? 日本(ジャパン)のキャプテンであるGK』

「え、俺?」

 

 円堂がキョトンとした表情で首を傾げる。

 

『オレのライバル、クラリオ・オーヴァンのいる『バルセロナ・オーブ』とキミ達『雷門(ライモン)イレブン』の交流試合、見させてもらったぜ?』

「「「……クラリオのライバル!?」」」

 

 全員の仰天したような声が重なる。

 クラリオ・オーヴァンといえば、このイナズマジャパンの集結した日に現れた人物で、イナズマジャパン全員を圧倒した円堂たちの世界を目指すきっかけとなった選手。そんな選手のライバルだと言われて、驚かないはずがない。

 

「そんなにすげー奴なのか! サタン!」

 

 円堂が瞳をキラキラと輝かせていると、画面の中のサタンが更に話を続けた。

 

『キサマの技じゃあ、オレのシュートは止められない』

 

 超舐められている。それがわかる言葉。

 円堂の隣の風丸がムッとした。

 

『まあ、キサマもあれから一年、成長してはいるんだろうからなぁ? 期待してるぜ。だから……、──わざわざ来てあげたよ? エンドウ・マモル、そしてイナズマジャパン」

 

(え────今、どこから声聞こえた?)

 

 モニター横のスピーカーからではない。確かにイナズマジャパンの後ろから声が投げかけられた。

 イナズマジャパン全員の視線がモニターから離れ、ミーティングルームの入り口へ向く。

 

「初めまして、イナズマジャパン。そして、マモル。ボクが、サタン・ゴールだ。よろしく」

 

 モニターにちょうど大きく映し出されている……、よりも若干、色が薄黄色っぽいように見える。そんなハッキリとしない髪色の男、サタン・ゴールがミーティングルームのドアにもたれかかりながらこちらに軽くお辞儀をした。

 モニターの人物とは、別人のようなその態度のギャップに明日人達は困惑してしまう。

 

「ま〜たスペシャルゲストかよ。監督?」

 

 剛陣が、呆れたと言いたげに腕を組みながら笑った。

 すると、趙金雲がいつものように高笑いをした。

 

「いいえ? あの人は私呼んでいませんよ〜?」

「あらそうなの〜。……え? アイツ勝手に入って来てんの?」

 

 剛陣が奇物を見るかのような視線をサタンに向けた。

 

(剛陣先輩に引かれるって相当だぞ……)

 

 明日人がそんなことを考えていると、隣にいた氷浦が何かを考え込んでいる。

 

「氷浦……?」

「サタン・ゴールってことは、サタン・スタートもいるのかな……」

 

(顎に手当てるようなことじゃないだろそれ……)

 

 しょうもないことを大真面目に呟く氷浦に引き攣るように笑っていると、円堂がサタンの元に歩ゆみ寄って行った。

 

「俺、円堂守。クラリオとライバルなんて凄いな! よろしく!」

 

 円堂の差し出した手がサタンの手に弾かれた。

 

「え──?」

「……ボクを他のストライカーと比べるなんて、ナンセンスだ」

 

 突然の罵倒に円堂が困惑していると、サタンが何かを閃く。

 そして、円堂にある提案をした。

 

「マモル。勝負をしないかい? ボクとキミの二人、PK対決だ」

「ええっ!? 俺もお前のシュートを受けてみたくてうずうずしてたんだ! やってきても良いですよね! 監督!」

「私は構いませんよ〜♪」

「よし! 決まり!」

 

 円堂とサタンのやり取りに鬼道たちが割り込む余地もなく、円堂とサタンのPK対決が決定、その場にいた全員がグラウンドに移動することになった。

 

「円堂……、アイツはもう少し危機感というものを持てないのか?」

「まあまあ、受けた勝負からは逃げないのが、円堂くんだから……」

 

 頭を抱えながらミーティングルームを去る鬼道のぼやきを、アフロディが苦笑いをしながらフォローした。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 円堂とサタンのPK対決。勝負は一回限り、シュートとゴールの入れ替わりをしたりするようなわけでもない、ただの受け攻め、といった形だ。

 円堂とサタンがそれぞれユニフォーム姿でそれぞれの立ち位置に着くのを、ジャージ姿のままの他のイナズマジャパンメンバーたちが見届けると、両者が軽くストレッチを始める。

 

 皆が円堂へ声援を贈る中、一人、サタンを睨みつける者がいる。

 

「サタン・ゴール……」

 

 一星の言葉に気がついた明日人は、「どうした?」と聞いたが、何でもない、とだけ返事が返ってきた。

 

「きっと、円堂さんなら守りきれますよね!」

「ああ、そうだな! ──頑張ってください! 円堂さん!」

 

「──おう! 絶対止めてやるぜー!」

 

 円堂が明日人の声に反応して手を振る。

 サタンはボールを足元に置きながら、口角を吊り上げ、目を軽く見開いた。

 どこか狂気を感じ取れるその笑みが傾いていくと同時に、ギシギシと気色の悪い不快音が円堂の耳に届く。

 円堂の肌に自然と鳥肌が立った。

 まるで、本当の悪魔と相対しているかのような錯覚を覚える。円堂は、ニッといつものように笑うと、両手にはめたグローブを叩き合わせ、軽く腰を落とす。

 円堂が再びサタンのことを見ると、そこにいたのは先程モニター越しに見た橙髪の選手、サタン・ゴール。その変化に驚いた他のイナズマジャパンの面々がざわざわと話始め、二人の間を緊張と弛緩の絡んだ異様な雰囲気が包んだ。

 

「準備ができたか? エンドウ」

「ああ! いつでも来い!」

「なら、オレのタイミングで行くぞ……」

 

 サタンがだらんと腕を脱力した瞬間、円堂の身に今までの人生で体験したことのない感覚が駆け抜けた。

 

(時間が止まった……? いや、止まって動くのを連続で繰り返してる……? ぐちゃぐちゃして……、なんだか気持ち悪いな……)

 

 そんな推測をしていると、いつの間にかシュート体勢に入っていたサタンがボールに足を掛ける。

 時計の針が形を歪ませながら、回転し、サタンのシュートと揃った瞬間──。

 

タイムトランス!!」

風神雷神!!」

 

 顕現した双神が激しい雷と嵐を巻き起こしながら、サタンのシュートと激突する。

 サタンのシュートに感じる違和感と共に、円堂がそのシュートを抑える。だが、一瞬経つごとに比例して、その違和感は円堂の中で主張を激しくしていった。

 

「たった一年で強くなってるようではないか! 素晴らしい! 素晴らしいぞ! エンドウ! オレにここまで抗える奴は初めてだ!」

「──うおおおおおおっっ!!」

 

(何だ……? このシュート……全然威力が──!)

 

 円堂が違和感の正体に近づくと、傍からそれを観察していた鬼道が気がつく。

 

「あのシュート、威力が上がっているのか!?」

 

 イナズマジャパンの選手たちが驚きながらもボールの回転が、円堂の掌の中で上がり続けていることに気がつく。

 

「うおおおお──……っっ! ──うわああっ!!」

 

 回転が上がり続けた結果、円堂守の現最強の必殺技『風神雷神』をもってしても押さえつけることが出来なくなってしまい、ボールがネットに叩きつけられた。

 円堂が呆気なくやられてしまい、イナズマジャパンの選手たちが驚き、静まり返る。

 

「え、円堂が……、たった一人に負けた……?」

「あんなに簡単に……!?」

「野坂さん……」

「なるほど、これならば無敗記録も本当かもしれないな……」

 

 各々が各々の驚き方をして、ゴールに倒れている円堂を見た。

 

「レベルをわからせるためとはいえ、やりすぎたか?」

 

 サタンがゴールに歩み寄る。

 すると、円堂が立ち上がった。そして、円堂の表情を見たサタンがニヤリと笑みを浮かべる。

 

「……ほう? オレの『タイムトランス』を受けて笑っていられるか。ますます気に入ったぞ。エンドウ」

「ああ! 俺もお前が気に入った! 流石、クラリオのライバルだけあるな!」

「当然。オレのシュートを止められる人間などいない」

「なら、試合では俺が止めてやる!」

「そうか。期待しているぞ。お前がオレを──、ボクを止められるほどの実力者になっていることをね……」

 

 再びサタンの髪色が黄金色に戻る。突然のサタンの態度の変化に未だついていけない円堂は、ぽかんとしてしまっていた。それを見たサタンがイジワルな笑顔をした。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 翌日、早朝。

 朝食を終えた後、俺はミーティングまでの間の自由時間を利用して合宿所を抜け出し、豪炎寺が入院しているという病院に来ていた。

 豪炎寺に、あの強烈な一撃を完成させた人物に、どうしても聞かなければいけないことがあった。

 

 足取りが豪炎寺の病室に近づくに連れて重くなっていくのがわかる。

 そのすぐ後、俺は廊下の真ん中で立ち止まってしまう。天井を見上げながら、顔を覆った。

 

(俺は…………。なんてことを言ったら、お前は笑うか? 不動────)

 

「──佐久間?」

 

 佐久間の前方から、佐久間を呼ぶ声が聞こえた。

 その声の持つプレッシャーに、佐久間の身体が震えてしまう。

 

「豪炎寺……」

 

 生きる次元が違う。足を負傷して、松葉杖をつきながらでないと歩けない状態で尚、そう思わせてしまうほどの覇気を纏う豪炎寺がそこにはいた。

 豪炎寺は、隣で補助をしている看護師さん達数人に一度止まることを伝えた。

 

「お見舞いに来てくれたのか? わざわざ申し訳ないな」

 

 豪炎寺が小さく微笑みながら、佐久間に話しかける。

 豪炎寺の優しさに甘えながら、佐久間はその問いを発する覚悟を決めた。

 

「なあ、豪炎寺……、教えてくれないか? “ストライカー”とは、何だ?」

 

 鬼道有人、豪炎寺修也、灰崎凌兵、吉良ヒロト。そして、昨日合宿所に現れたサタン・ゴール。彼らのような天才達と自分のような凡人との差は何なのか、ハッキリとさせたかった。

 





 最長章は言うまでもなくアメリカ編なんだけど、この章は2番目に長い可能性がある。
 
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