雷陽と黒龍   作:久遠れもん

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開闢の一撃を(VSシャイニングサタンズ①)

 

 曇り空が広がる東京。涼やかな雰囲気の中にも関わらず『FFスタジアム』は超満員大熱狂。熱いんだか涼しいんだかといった空気の中、イナズマジャパンはベンチ入りした。

 今回の相手は、オーストラリア代表『シャイニングサタンズ』。以前に円堂が敗北したサタン・ゴールも、もちろん相手側のベンチに存在が確認できる。

 

「大丈夫か。円堂」

 

「……ああ! 今度こそ、サタンのシュート。きっちり止めてやらないとな!」

 

「フッ……、そうだな。楽しみにしてる」

 

「おう!」

 

 鬼道と円堂の会話の裏で、氷浦が明日人の肩をつついた。

 明日人が「どうしたの?」と尋ねると、何やら真剣な表情の氷浦が小声で言った。

 

「自主練期間中ずっと思ってたんだけど、サタン以外のこと何もわかってないよな? 俺たち」

 

「え?」

 

 突然の氷浦の言葉に明日人はハッとした。確かに言われてみればその通りだ。

 自分たちは、『サタンが円堂を単独突破出来るほどの攻撃性を持つ』という一つの情報しか知らない。そのせいで、相手チームが攻撃を得意としているのだと思っていたが、もしかしたらディフェンスを得意とするチームかもしれない。

 そんなことを考えていると、明日人は準備万端だと思っていた自分の状態に一気に不安を感じてしまう。

 

「……結構不味いよな。俺たちの現状」

 

「確かに……。監督はどういうつもりなんだろう……」

 

 明日人が作戦用のボードを弄る趙金雲のことを横目で見ると、氷浦も明日人の身体を避けるように顔を出し、趙金雲の様子を確認した。

 すると突如、趙金雲がボードをパチンと閉じた。そして、いつものようにニコニコと笑いながら、三歩ほどベンチから歩き出てくる。

 

「それでは、本日のスターティングメンバーを発表しますよ〜♪」

 

 全員の間にピリッとした空気が流れる。

 剛陣が音を鳴らしながら首を回す。佐久間が静かに目を瞑る。吉良はベンチで脚を組んだままでありながらもどこかツンとした態度で、灰崎は一人、拳を握りしめた。

 豪炎寺がいなくなった後の初めての試合。チームのストライカー陣の気合いも前試合から大きく変化している。

 

「…………」

 

 そんな中、倉掛と目が合った。倉掛がこちらに頷き、明日人もそれを返す。

 何となく言いたいことは伝わった。

 

(──そもそも俺とクララを監督は出す気あるのかな……)

 

 実質追放といってもいいような特訓を続けさせられてメンタルを抉られながらも、毎日夜遅くまで二人で特訓を重ねた。

 そのおかげで倉掛からディフェンスの動きのマンツーマン指導を受けることができたとも言えるが、昼の特訓全抜けはキツい。

 

 趙金雲が再びボードを開き、順にポジションを発表する……かと思いきや、久遠にボードを手渡した。

 ずっこけられる雰囲気でもなく、明日人たちは引き攣るように笑うこともできなかった。

 関係ないとばかりにそんな空気を断ち切って久遠が発表を始める。

 

「GK『円堂』」

 

「はい!」

 

 サタンへのリベンジのチャンスが訪れることがほぼほぼ確定し、円堂がパチンとグローブを叩く。

 

「DF。左から順に、『風丸』『岩戸』『坂野上』『倉掛』」

 

「「「はい(ゴス)!!」」」

 

「……! ……はい」

 

 倉掛は驚きながら趙金雲の方を見ると、他の三人から遅れて返事をした。

 

「MF。左SHに『一星』。右SHに『亜風炉』。前後に『鬼道』『稲森』」

 

「「「はい!!」」」

 

 返事をした後、アフロディが拗ねるような表情をしながら笑った。

 

(呼び方こだわるよなぁ……)

 

「FW『佐久間』『吹雪』」

 

「はい……!」

「え……っ、は、はい!」

 

 ぱあっと表情が明るくなった佐久間と、DFで呼ばれず少し落ち込みかけていた吹雪が真逆の態度で返事をする──。

 

(……って、あれ?)

 

 久遠がスタメンを発表仕切ったことを確認して趙金雲がボードを選手たちに見せた。

 そして、それに食い付くように二人の選手が前へ出る。

 

 

「「──俺が入ってねぇ!?」」

 

 

 灰崎と吉良が叫んだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 サタン・ゴールにとって今日という日は、待ち望んだ日だった。

 円堂守というクラリオ・オーヴァンの実力を知るアジア唯一の選手。

 彼と戦うことで自分の実力を正当に評価できる。自分の強さを証明するその時が、迫っている。

 

 ピッチに立ったサタンは首を回しながら、手首足首のストレッチをしていた。

 そんなサタンにセンターサークルの近くで待機をしていた二人が近寄る。

 

「サタン様、本気なのでございますか?」

 

「まさか『財団』からの『調整』の指示を無視なさるなんて……」

 

 サタンに問いかけたのは、『シャイニングサタンズ』のFWを務める『アス・タロト』と『サル・ガタナス』。

 いつになくオドオドとした様子のアスとサルに、サタンは薄黄色の綺麗な髪を整えながら微笑んだ。

 

「もちろん本気さ。ボクも彼も真っ向からの真剣勝負を望んでいる……。負けた時の保険程度にしか意味を持たない『調整』なんて、今回は従う価値を見出せないね……」

 

 サタンはニヤリと口元を持ち上げながら言った。

 『調整』の指示を受けたのは今回が初めてということもあってか、その表情には余裕がある。逆に『財団』に従わないことの意味を知るアスとサルは苦し気な表情をした。

 サタンが二人のそんな様子に気がついた。そして、二人を試すように笑う。

 

「キミ達もそう思うだろう?」

 

 アスとサルの目が見開かれ、二人は諦めたように笑みを浮かべた。

 それは決して悪意のあるものではなく、自分の決めた道を曲げないという決意の表れのように見える。

 

「──全く持ってその通りでございます。サタン様」

 

「──私たちは貴方様の下部、貴方様のために存在しているのですから」

 

 アスとサルがサタンに跪くと、首からの奇音を放ちながらサタンが高笑いを始める。

 アスとサルは子供のような純粋な表情でその変化を見つめていた。

 そして、完全の髪の色が橙色に変貌したサタンが口角を吊り上げた。

 

「ハハハッ! そうかそうか。言われてみると中々気分が良いぞ? アス・タロト! サル・ガタナス!」

 

「「勿体なき御言葉……!」」

 

 サタンの視線がコートの向かい側に立つイナズマジャパンの面々の表情を見渡す。

 彼らの表情に宿る闘志と緊張を感じとり、サタンが笑みを崩すことなく数歩ほど前方に足を運び──、

 

「──では行くぞ。世界がオレ達を呼んでいる……!」

 

「「はっ!」」

 

 マントを翻すように腕を掲げ、サタンはイナズマジャパンと向き合った。

 

 ◇◇◇

 

『さあ、『FFI』アジア予選第二試合! 『イナズマジャパン』VS『シャイニングサタンズ』! 両陣営が完全にフィールドに着きました! 注目選手はもちろんこの男、サタン・ゴール! 未だ無敗の記録を残す天才ストライカー! しかし、今度はイナズマジャパンにもそれに並びたてる『神と悪魔』がいるぞ!』

 

 客席の一角。

 男は機材を広げ、韓国戦と同様にイナズマジャパンの試合の観戦に来ていた。

 

「おっ、ここもまあまあ良い席なんじゃないかな?」

 

 そんなことを言いながら、カメラの向きを一度コートから離した時、

 

「──あのー、すみません」

 

 通り道を歩き降りて来た少年と幼女の二人組に声を掛けられ、男はペコペコと頭を下げながら、身体と荷物を前列の席と自分の席との間からどかす。

 

「え……っと、そうじゃなくて……。貴方のお子さん、なんですよね? この子」

 

「え……?」

 

 自分に全く心当たりのない話を疑問に感じ、男は間抜けな声と共に顔を上げた。

 すると、その視線の先に立っていたのは、黒と白色の上下セットのジャージを着こなす青髪の少年。

 

「水神矢成龍……!?」

 

「あれ……!? 紀村さん……ですよね? この間、星章(ウチ)に取材に来てくれた……」

 

 紀村は水神矢と面識があり、互いの表情が驚きと気まずさで曖昧な表情を浮かべる。

 すると、水神矢と繋いでいた手を離し、自分を親だと間違った少女が紀村の肩を叩いた。

 

「ん? あーごめんね。君のご両親じゃなくて────って!?」

 

「──久しぶり。このカメラ退けて? 紀村陽介さん」

 

 韓国戦で紀村に豊富な知識を提供し続けた謎の少女が、飴を舐めながら紀村にそう要求した。

 名前を名乗った記憶はなかったが、触れるべきではない予感がしたため触れないでいた。

 

「──いや、君の席があるでしょ? そっちに行った方が……、もったいなくない?」

 

「私の席取られちゃってたの」

 

「……そんなことあるかなぁ? まあ仕方ない、のか……。はぁ……、君の話、今日も期待してるよ」

 

 無視をされながら紀村が機材達を床に置くと、二つの席の空きができる。紀村の隣に少女がぽすん、と座り込んだ。

 すると、水神矢が疑問符を浮かべていることに紀村は気がついた。確かに、知らない第三者からしたら意味のわからない話だったな、と紀村は自分の変化に少し驚きながら、帽子の鍔を少し上げながら水神矢に微笑みかける。

 

「良ければ、座る? そこ、もう一席分僕のとこだから、空いてるよ」

 

「いえいえ、俺は自分の席があるので──、……いや、せっかくですし御一緒させて頂きます……!」

 

 そう言って、水神矢はペコペコと申し訳無さそうに愛想笑いをしながら、席に座った。

 

(この女の子と偉く態度が違うな……)

 

 そんな水神矢の礼儀正しさが紀村には、とても中学生のものとは思えず感動してしまっていた。

 

(あれ、学生……?)

 

「あっ! そうだ水神矢君。友達とかは来てないの? わざわざ残らなくても良かったんだよ?」

 

「いえ、御心配なさらず。……ここには一人で来たので」

 

「…………一人? 『星章学園』のキャプテンともあろう君が……?」

 

 そう言った直後、失礼なことを言ってしまってしまったか、と紀村は後悔した。が、それも杞憂に終わる。

 水神矢はニコリと笑いながら言った。

 

「ある人の指示なんです。『イナズマジャパン』と『シャイニングサタンズ』の試合は、俺が今後絶対に必要とするものがあるから、と」

 

「ほう? そんなにこの試合を注目している人がいるんだね」

 

 紀村が顎に手を当て、興味深そうに水神矢の言葉に食い付いた。

 すると、二人の会話を間に挟まりながら聞かされていた少女が一度飴を舐めるのを止めた。

 

「この試合は良くも悪くも『円堂守』に勝敗が委ねられているわ。全て止め切れるようになれば、勝ち。一つでも対応できなくなれば、負け。単純だからこそ、注目している人は案外多いの」

 

「おっ? 今のって、もしかしてこの間みたいな予言も混ぜてくれた?」

 

「予言……?」

 

 きょとんとした表情の水神矢が顎に手を当てながら首を小さく傾げた。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 試合開始直前、コートに二十二人全員が揃い、互いのスターティングメンバーとフォーメーションが明らかになる。

 だが日本のサポーター陣は、敵国のフォーメーションよりもイナズマジャパンのスターティングメンバーに視線が集まっていた。

 至る所からざわめく様子が伝わり、何故だか汗が流れる。

 

『おっと!? イナズマジャパン、韓国戦で連携技を見せた『“ゴッド&デビル”』吉良、灰崎の姿がありません! 一体どうしたのでしょうか……?』

 

[イナズマジャパン]────

   FW吹雪  FW佐久間

 MF一星  MF鬼道 MF亜風炉

       MF稲森

  DF風丸      DF倉掛

    DF岩戸 DF坂野上

      GK円堂

 

[シャイニングサタンズ]────

   FWサル  FWアス

MFアスモ MFサタン MFベルゼ

      MFベリアル

DFアムドゥ      DFアガリア

  DFベルフェ DFデモゴ

     GKパズズ

 

「──二人とも喧嘩はやめておけよ……?」

 

「「してねえ!!」」

 

 万作に仲裁されると、喧嘩中の吉良と灰崎が反論をする。

 万作は少しビクリと驚く。そして、諦めたように氷浦に視線で訴えかけるも、クスクスと笑われるだけだった。

 

 そんなベンチで頭を抱える万作の様子を見ていた明日人が苦笑いし、隣の鬼道がやれやれと息を吐いた。

 

「はは……、いつまでやってるんですかね……」

 

「灰崎……、昨日のことを忘れているわけではないだろうな……?」

 

 鬼道と共に灰崎と吉良の変わらない態度に呆れる明日人は、ふと左サイドで深呼吸をする一星に気がついた。

 一星は大会初出場だった、と思い返しながら明日人は鬼道の元を離れ、一星の方へ駆け寄った。

 

「緊張してるの? 一星」

 

 明日人の存在に気がついていなかったのか、声を掛けられてようやく一星がこちらを向く。

 一星は、近くに来たのが明日人だと分かり安心したように笑みを浮かべた。

 

「はい……! 予選とはいえ、こんな大きな舞台で母国のために戦える……! とても緊張してますが、それと同時にすごく楽しみなんです!」

 

「一星……。ああ……! 世界の選手との試合ってすごくワクワクするよな……!」

 

「はい!」

 

 明日人と一星が笑い合う。無意識に明日人自身も緊張していたらしく、少し気が楽になった。

 そんな二人の様子を、鬼道は無言のままゴーグル越しに目を光らせていた。

 

「鬼道、何をしているんだ?」

 

 鬼道は、自分を呼ぶ声が聞こえた方を見た。すると、声の主は手を小さく振りながら笑顔でこちらに近づいて来ていた。

 

「……佐久間か」

 

「ああ、久しぶりだな。お前と並び立つのは……!」

 

「そうだな。俺も楽しみにしていた」

 

 鬼道の言葉に佐久間が嬉しそうに笑う。それを見た鬼道も釣られるようにふっと笑った。

 

「どうやら、新技を用意しているらしいな」

 

 佐久間の双眸に赤が宿る。

 

「──ああ! この試合で見せてやるさ。俺の新技『皇帝ペンギン3号』をな!」

 

「……!? 『皇帝ペンギン3号』だと……!?」

 

 鬼道は佐久間の口から出たまさかの技名に一驚した。

 

(──どこでその技を知った!?)

(──あの技をたった1人で!?)

(──まさか影山も…………ッ!!)

 

 最悪の想定すらも頭によぎり、鬼道の表情が段々と焦りに変わる。

 佐久間はそんな鬼道の様子を不思議そうに眺めていた。

 

「……色々考えてくれるのは嬉しいんだが……、鬼道?」

 

 頰を掻く佐久間に鬼道の視線が向けられ、佐久間の顔がこわばる。

 佐久間はそんな自分の状況に気がつくよりも早く、顎に手を当て疑問符を浮かべる鬼道に自分の新技の正体を告げた。

 

「──『皇帝ペンギン3号』はまだ誰にも見せたことがないはずだぞ?」

 

「……」

 

 その宣告と同時に鬼道と鬼道の頭の中がスン……と固まった。

 よく考えてみれば、まだ未完成でアフロディ以外に共有して来なかった『その必殺技』を何も共有されていないはずの佐久間が知っているはずがなかった。

 あくまで『皇帝ペンギン2号』を超える技として、佐久間が考え抜いた結果付けられた技名と、未完成の『その必殺技』の技名が偶然一致してしまっていただけなのだろう。

 

「いや、名前は確かにお前の功績に被せているようでおこがましいなとは自分でも思ったけど……、そんなに固まることなくないか……?」

 

 鬼道は自分の勘違いに確信し、あんなに焦ってしまっていた自分が阿呆らしく思え、先程までの自分の動揺を恥じると共に「はぁ……」と大きく息を吐いた。

 

 

 

「──溜め息吐くほどダメか!?」

 

 佐久間が流れ弾を受けた。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ──試合直前、とある飛行場。

 

 不動と音無の二人は、最後の一人の到着を待ちながら、偶然置かれていたベンチに腰をかけていた。

 

「あっ、不動さん! 二回戦目のスターティングメンバー、出ましたよ!」

 

「ああ、助かる」

 

 音無が自分にも見えるようにと不動の元に身体をスライドさせ近づくと、携帯を不動に見せつつ自分もスターティングメンバーを確認する。

 

 そして、音無が少し興奮気味に鬼道や円堂の出場を喜ぶ中、不動はある人物の出場に気がついた。

 

(佐久間……! 灰崎と吉良を抑えて、アイツが……!?)

 

 不動の表情が驚愕で染まる。だがその直後、すぐに不動は理解した。

 

「何かあんだな……! 佐久間!!」

 

 口角を吊り上げる不動の言葉を聞いた音無は苦笑いを浮かべた。

 

(不動さんって、仲間の方のこと大好きですよね……)

 

 普段自分や集めた選手達に見せているような『“孤高の反逆児”』としての面とは全く違う不動の表情を横目でチラリと見た音無は、不動に対してそんなことを考えた。

 

(でも、どうしてなんだろう……)

 

 共に過ごせば過ごすほど、想像していた『不動明王』とはまるで別人な目の前の不動への疑問を、音無は聞かないでおいた。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 全員がポジションで待機をしながら、試合開始のホイッスルを待った。

 相手は、円堂を破るほどの選手『サタン・ゴール』率いる『シャイニングサタンズ』。それ以上の情報はなく、漠然と格上なのだろう、という意識のままに明日人はその場に立っていた。

 

「稲森──」

 

 鬼道から名を呼ばれ、明日人は前を向く。

 すると、鬼道からアイコンタクトで指示を出された。

 

(初っ端からってことか……)

 

 吹雪が、目を閉じ胸に手を当てる。

 アフロディが、スパイクの爪先で地面を叩く。

 

 明日人は、再度深呼吸をし、指で作った銃口を相手のゴールに向けた。

 

「よし……っ!」

 

 

 ピ──────ッ!!

 

 

 明日人の準備が終わったタイミングにちょうど良く同時に試合開始のホイッスルが鳴り響いた。

 

『さあ、試合開始! 『イナズマジャパン』アジア予選第二試合は、一体どんなプレイが飛び出すのでしょうか!』

 

 佐久間から吹雪へキックオフ。そして、吹雪が鬼道へとボールを回す。

 

「──稲森!」

 

 『シャイニングサタンズ』の選手達が続々と行動を始め、鬼道は明日人が上がると同時にボールを軽く蹴り渡した。

 

「ナイスパスです! 鬼道さん!」

 

 鬼道のパスを受け取ると同時に、ボールを空に蹴り上げる。

 相手の手の出せない位置からのボールに地面と水平に打撃を加え、回転させると同時に着地と跳躍。そのまま招雷の爪撃を叩き込む。

 

クロスドライブ!!」

 

 明日人の雷撃の先導と共に、アフロディと吹雪がシュートの軌道上に割り込みそれぞれの代名詞とも呼べる奥義を放つ。

 

 一方は暴嵐を、一方は豪雪を、明日人の一撃に叩き込む。

 

「「はああああああ──ッ!!」」

 

 平穏を揺るがす災禍の胎動、恵みをもたらす救世の絶唱。

 明日人のシュートにアフロディと吹雪の一撃が重なり合い、必殺技の超融合(オーバーライド)が起こる。

 

「これが俺達の必殺技────!」

 

 相手の情報が限られているからこそ、こちら側が先行して試合の流れを握る。その為の超距離砲撃(ロングシュート)

 

「「「──エレメントブレイク!!」」」

 

 いつかの世に(きた)る災厄の一撃。その一部とされる七色の神歌が、混沌とせめぎ合いながら、三属性の光球に変わり射出された。

 落雷が、暴風が、豪雪が、大気を震わせコートを縦断していく。

 

 相手の前線にいた選手達は即座に方向転換し走り出すが、シュートに追いつけない。

 

 試合開始とほぼ同時に放たれた鮮烈の超動に、サタンは金髪を揺らし静かに口角を上げた。

 

「全力……、いいじゃないか。流石、マモルのチームだね……」

 

 そして、自陣にいる二人の選手が待ち構えていることに気がつくと、その口角は更に突き上がった。

 

「──まあ、ボク達のオーバーライドと相性最悪だけど……!」

 

 サタンの独り言と同時に、DFの一人、ベルフェゴールが面倒そうに手を掲げた。

 続くように、MFの一人、ベリアルが足に邪気を貯め始めた。

 

 ベルフェゴールの手のひらに太陽の光が煌々と集められていく。 あまりのエネルギーの総量にベルフェゴールの身体が体勢を崩しかけた瞬間──、それは放たれた。

 

クレイジーサンライト──ッ!!」

 

 拳の内で閃光の星と化した陽光を、ベルフェゴールは弾きだすように投げ込んだ。そして、星が砕け散り地上を強襲せんと飛び出す。その瞬間──、

 

デーモンカット──」

 

 ベリアルの放った悪魔が陽光を飲み込んだ。

 

 閃光の星は完全に吸い尽くされ、悪辣の衝動に変わる。

 神歌の衝動、それすら打ち消す烈日の発狂。これが、『シャイニングサタンズ』第一の天絶融合(オーバーライド)

 

 

「「──サングレーザー!!」」

 

 

 『サングレーザー』。即ち、太陽をも恐れることのない身の程知らずの悪魔のイタズラが、神歌と真正面から一進一退の衝突を引き起こす。

 その衝撃は空を覆う曇り空を切り裂くほどで、差し込んだ日の光と巻き起こった衝撃に、選手達は思わず一瞬目を閉じた。

 そして、次に全員が目を開けた頃には────。

 

「な……ッ!?」

 

 明日人が思わず絶句する。だが、それも仕方のないことだった。何故ならその視線の先にあったのは──、

 

『──止めたああああッ!! 『シャイニングサタンズ』MFベリアルとCBベルフェゴールのオーバーライドが、稲森、吹雪、アフロディの開幕の一撃を殺しきったぞ!!』

 

 明日人が前方を見ると、ベリアルが足元のボールに足を乗せ、こちらをじっと睨みつけていた。

 

 

 

「流石、()()()()()()()()()()()()()の『シャイニングサタンズ』ってところか……」

 

 左サイドを走りながら、一星がどこか興味がなさそうに口を開けた。

 





『エレメントブレイク』
→『クロスドライブ』×『ゴッドノウズ・インパクト』×『エターナルブリザード』のオーバーライドシュート技。雷、嵐、氷が混ざり重なり合った災厄への第一歩。元々は本戦になってから今とは別キャラに使わせての登場予定だったけど、韓国戦にアドリブでぶち込んだ。結果的に良さげになってよかった。

『サングレーザー』
→『クレイジーサンライト』×『デーモンカット』のオーバーライドブロック技。悪魔を想起させる波動が、流星の如く駆け抜けボールを奪い取る。ネーミングは、まあ……ね? 元ネタまんまじゃんっていう。
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