推しの主役やる回だと思って書いてたら、三分の一くらいしか活躍がないでがんす
次の回来週以降になります。多分終わりまで一気に行く。
今がストライカー編なら次章はラスボス編です、という何となく匂わせ的なのもついでに出しときます。
──ピコンッ
音無の携帯が通知を受け取った。
つい数秒前に兄が得点を入れたばかりの試合の中継映像に夢中になっていた音無は不動に一度断りを入れると、通知の内容を確認した。
「あっ、不動さん! そろそろ飛行機着くみたいですよ!」
そう言いながら、片耳ずつ分けていたイヤホンを不動から無理矢理引っこ抜く。
不動は突然の不意打ちに小さく舌打ちをしながら首を掻いた。
「……ならもう観戦は終わりだな」
どこか残念そうにそう言った不動に音無は小さく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。日本は強いですから」
「ああ、別にそこは疑ってねえ。鬼道有人も、円堂守もいる」
「え?」
疑問符だけで問い返す音無のことを無視しながら、不動は席を立つと、ゲートのある方へと進んでいく。
「もう!」と、音無も立ち上がり、不動を追う。
すると、先を歩いていた不動は立ち止まり、天井に向かって呟いた。
「痛い目見るなら今のうちだぞ。二流キャプテン──」
その言葉の意味が、音無には理解ができなかった。
◇◇◇
ピ──────ッ!!
試合が再開すると、サタンにボールが渡り、試合が再開される。
そして、サタンが攻め込むと同時に吹雪が対面の形を取った。
「アスモ・デウス──」
右サイドから攻め込んでいた敵左SHのアスモへボールが渡る。
「行かせない──!」
進行方向に倉掛が割り込むと、アスモは口角を吊り上げた。
「おいおい二の舞だろ君だけじゃあ!」
未だ余裕を見せるアスモを倉掛は「黙りなさい」と、一蹴。そして──、
「アルターセブ──
「フローズンスティール」
──……ハァ?」
驚愕に塗り変えられたアスモの表情にほくそ笑み、倉掛はボールを鬼道へと投げた。
「ナイスだ倉掛!」
鬼道は駆け出すと同時、すぐにわかった。
「やはり警戒して使えないか!」
「く……ッ!」
【インビジブル】が来ない。いや、ピンチに陥って仕舞えば使ってくることもあるのだろうが、今は相手全員の思考を警戒心が上回っている。
それなら、と鬼道とアフロディが連携を繋げ、パス回しで判断の遅れたベリアルを抜き去り──。
「──佐久間! お前の必殺技を決めてやれ!」
佐久間次郎へと、ボールが繋がった。
「ああ、見せてやる! 帝国が新たに作り上げた『最強の弾丸』を!」
佐久間次郎は『イナズマジャパン』のストライカー。
つまり、今の日本に飽和しているFW陣から五人。その中に選ばれた存在。
何故自分が、と、佐久間はずっと考えて来た。
──基山や稲森のような優秀なFW選手を置いて、何故、自分がFWとして選出を受けたのか。
──白兎屋や経流背のような才能の原石を置いて、何故、監督は自分を選手したのか。
この一年で、自分の実力を思い知った佐久間だからこその疑問。
佐久間以上の実力者より、佐久間以上の才能の原石より、佐久間次郎を選ぼうと決めた趙金雲の意図が知りたかったのだ。
だからこそ、必死に走り続けた。
だからこそ、必死に考えた。
だからこそ、見つけた。
『皇帝ペンギン1号』。それは、影山零治の残した全てを喰らう飽くなき復讐心によって生まれた禁断の一撃。
『皇帝ペンギン2号』。それは、鬼道有人と帝国の勝利への信念によって作られた神の手を貫く必殺技。
そこに、佐久間の妙案を混ぜることによって、更に高次元の必殺技に昇華した新たな『皇帝ペンギン2号』。
そんな二つの必殺技を佐久間なりに組み合わせた結果が──、
「皇帝ペンギン3号──」
指笛を吹くと共に、地中からペンギンが顔を見せた。
およそ五匹。
色は、鮮血と同色。
「何──っ!?」
その違和感に始めに気がついたのは鬼道。
「久遠さん、まさか貴方──」
次にベンチの趙金雲が目を見開き、佐久間を試合に出す提案をした男を見た。
久遠は表情を変えることなく真剣に、佐久間のことを見ていた。
だが、佐久間が止まることはない。
弾丸を打ち出すかのように速く。槍を突くように鋭く。
ボールに足の触れたその瞬間、赤いペンギンが次々と脚に牙を立てていく。
「やめろ佐久間! 何をやっている!!」
「オオォォォォ────ッッ!!」
佐久間は身体の異変にも鬼道の絶叫にも気が付かず、ボールを
「太陽のギロチン!! ────
打ち出された必殺技『皇帝ペンギン1号』。佐久間のシュートを受けたパズズは思わぬ激痛に悶えながらも、ボールを抑え込もうとするが──、
「うああッッ!!」
そんな抵抗も無惨に散る。
これで同点、激突を終えた佐久間はホッと息を吐きながら、着地をすると、
「が────ッッ!?!?!?」
絶叫を放つ口を無理矢理閉じ、膝から崩れるように倒れ込む。
失敗した。
ようやく気がついた佐久間は、それでも、と前を向く。
「良くやった。パズズ・ザハム──」
点が入るならいくらでも失態を晒す。
そう切り替わっていた思考ごと、ディフェンスに降りていたサタンの足が佐久間のシュートを弾いた。
「は────、ァァ……ッ!!」
呆気に取られた佐久間を再び激痛が襲う。
『皇帝ペンギン1号』は、ただでさえ『禁断の技』とされる究極奥義。使用者への負担もあらゆる必殺技を凌駕する。
だが、『皇帝ペンギン3号』としたこの技ならば、空中から叩き落とすことにより負担を誤魔化せたはずだ、と言い訳をするように思い返す。
そしてすぐに立ちあがろうと膝を立てた瞬間、既に鎮痛の術はないのだ、と佐久間は理解した。
「アァァァァ──────ッッ!?!?」
自分は、恨まれるようなことをしただろうか。
佐久間は崩れ落ちる視界の中、運命への八つ当たりをした。
だが、そんな佐久間を置き去りにして、試合は展開を加速する。
「──溢れ玉抑えろ!」
だが、サタンの叫びに味方が反応するより速く、風が吹き抜けた。
「まだ──っ!」
吹雪士郎。イナズマジャパンのDFにして、白恋中イレブンのエースストライカーの一角。
ボールの着地の瞬間、赤と黒のブリザードが発生する。
「見てて、アツヤ──」
弟の指導の元、習得に至った『エターナルブリザード』とはまた違う。もう一つの兄弟の必殺技。
『エターナルブリザード』は、何度もボールに回転を与えることで高威力の氷撃を放つ必殺技。
だが、この技はその逆。強大な熊に気が付かれぬようにと、一撃で息の根を仕留めに掛かる狩人の如く、一度の衝撃のみでボールへ完璧に威力を乗せる──。
「必殺クマゴロシ────
クマを引き裂くように鋭く、風を断つ。
────────────斬ッッ!!」
パズズが反射的に逆側のポストへ跳ね、腕を伸ばす。
「クソォォォォオ──ッ!!」
手が届いたと思った瞬間、腕を退かされ、ゴールネットにボールが届いた。
『何と言うことだ! イナズマジャパン、吹雪士郎!? まさかのサプライズ! 吹雪アツヤの必殺技『必殺クマゴロシ』を放ちましたッッ!!』
ピッピ────ッ!
『そして、ここで前半終了! 前半終盤、イナズマジャパンが一気に巻き返しましたッ!!』
観客達の歓声と共に、吹雪が興奮気味に拳を握りしめながら言った。
「君も風になりなよ……!」
すぐ後、佐久間の耳に観客達の歓声を押し除けるようにベンチの会話が聞こえた。
「基山君、出ますよ」
◇◇◇
試合が中断され、相手の選手達がベンチへと一度戻る中、鬼道は一人の選手の元にしゃがみ込んだ。
「ほら、立てないんだろ」
「…………」
手引くと、佐久間は立ち上がった。激痛に悶える佐久間の身体を肩で支え、鬼道は歩き出す。
細かく息を吐く佐久間の双眸は、鬼道のことをまともに見れていない。
自分に何か隠したいことがあるのか、新技を見事に失敗させた自分を哀れに感じているのか。
その奥の感情までは理解してやれない。
だが、一つだけ聞きたかった。
「何故、こんなことをしたんだ」
「……!」
佐久間の目が見開かれる。
「あの技は処分してあったはずだ。どうやって──いや、影山がいたな」
佐久間をこんな目に合わせた自分を悔やんだ。気がついてやれたはずだ、と責めた。
「佐久間、お前は何故そんなに──」
だが、そこで鬼道の静かな糾弾は途切れる。
「──佐久間さん! 鬼道さん! 俺も手伝います!」
「……一星か。助かる」
鬼道がそういうと、一星は真剣そうな表情で「はい!」と返事をし、鬼道のいない方の佐久間の身体を支えた。
「話は後で聞く。試合の後で、な」
「……っ! …………ああ」
佐久間が目を伏せた直後、三人はベンチに着く。そして、すぐにマネージャー二人が、佐久間の脚の応急手当てを始めた。
基山を始めとした全員が、心配そうに佐久間のことを見ている。
そんな空気の中いさせるわけにはいかない、と鬼道は吹雪に話しかけた。
「見事なシュートだったぞ吹雪」
「えっ、ああ、……そうかい? ありがとう」
「あれは確かお前の弟、吹雪アツヤの技だったな」
「……うん。アツヤが『熊殺し』なんて呼ばれ出した頃に編み出した技。実は『エターナルブリザード』なんかも元はアツヤの技なんだ」
鬼道の気遣いに気がついたのか、吹雪は自慢げな態度を作りながら微笑んだ。
鬼道は、そんな吹雪に罪悪感を感じながら、更に問いを重ねる。
「自慢の弟なようだな」
「ああ、僕とアツヤは最高のタッグだから。……きっといつか、この舞台でも見せる時が来るよ」
「ほう、それは楽しみだ」
当たり前のように勝つつもりで語る吹雪。
鬼道はそんな吹雪を試すかのように笑顔を作ると、その場を離れた。
◇◇◇
コートから出てベンチに座ったサタン。
その両端に自然と立っていたサルとアスに彼が休憩を命じると、二人はその場を離れ、各々の休憩を取り始めた。
一人でベンチの端に座るサタンが前のめりになりながら、地面を眺めていると、ふとサタンのある地点にのみ暗く影が映った。
「サタン・ゴールよ。……あれはどういうつもりだ」
サタンは面倒そうに顔を上げた。
「何の話だ? ディアボ・ロス」
サタンがシャイニングサタンズの監督であるディアボにそう問い返すと、監督の補佐に回っているコーチのシモンが「監督になんて口を!」とわざとらしい怒りを露わにする。
確かにディアボも顔を怒りに沸騰させている。
だが、わざわざそこまでしてコイツに気に入られたいのか、とサタンはうんざりとした。更に、サルとアスのように無償で自分に尽くす存在がいるのは幸せなものだな、とも思った。
そんなサタンに対して、地面を思いっきり踏みつけながら、ディアボが怒る。
「『調整』の指令が出ていただろうが! 貴様まさか受けた恩を忘れているわけではあるまいな!」
「何のことだ。オレ達は皆、この試合を全力で戦っている。訳の分からない戯言を抜かすのであれば、キサマは即刻この場から消えるべきだと思うが?」
「お前はどの立場から監督に〜〜ッ!」
シモンがサタンの胸ぐらを掴み、立ち上がらせる。
だが、観客席の一部からわずかに動揺が聞こえ、シモンは咄嗟に手を離した。
「キサマこそ何様だシモン・アザゼル。これは『FFI』、何者であっても決して穢してはいけない聖域なのだ」
その言葉を言い終えると、サルとアスがサタンと監督の間に割って入る。
「『調整』を受けない。受けずとも勝つ。サタン様はそう言っておれらるのだ愚か者が」
「我々を導く存在に、貴様らの愚行を押し付けるな」
そう、静かに怒りを燃やす。
他のシャイニングサタンズの選手達はその様子をぽかんとしながら眺めている。
サタンはフッと息を吐くと、
「アス・タロト、サル・ガタナス。良い」
「「…………。……ハッ」」
納得ができていないながらそう言って一歩引く二人の間を通り、サタンはディアボの元に立った。
「だがまあ……、そういうことだディアボ・ロス。我々は財団に従わなくとも、財団に利益を与えられる。そう判断した」
「無敵だった貴様らが同点にまで
「それでもだ。我々にとってこの試合は、大きな意味がある」
サタンは向かいの陣地側に並ぶベンチに立つバンダナの少年を見やる。
「──だからこそ、正々堂々と戦うのだ」
サタンのまっすぐな言葉に、ディアボが一歩足を引く。
すると、気味の悪い笑顔を浮かべながら、大きく笑い声を上げた。
「──?」
サタンにはその意味が理解できない。
『オリオンの使徒』のうち、全てが監督と財団に背いているこの状況。最早、命令は何の意味も持たない。
仮にもサタン達をここまで導いた監督がそれをわかっていないはずがない。
(コイツにオレ達を制御する術などもうないはず……)
確認するように自分に言い聞かせて、サタンはディアボの口から語られる言葉に耳を傾けた。
「──ならば、もう一人。いると言ったらどうする? サタン・ゴールよ」
「は──?」
サタンはその言葉に呆気に取られてしまった。
何を。『使徒』を? そんなことがあるはずない。
サタンだけでなく、アス、サルもこのチーム内にいる『オリオンの使徒』は自分達三人だと聞かされている。
そんなことはありえない。
監督が叫ぶ。
「アスモ・デウス! 交代だ!」
「えぇー、突然すぎませんかぁー?」
交代させるなら、先ほどようなミスをもう一度やりかねないアスモ・デウス。そこまでは理解できる。
だが一体誰を────、
「ルシ・ファノス! 出ろ!」
「……ルシ、やる」
ベンチに座る一人の選手が立ち上がる。声も容姿も、少年とも少女とも取れるその選手は、サタンが唯一まともにコミュニケーションを取ってこなかった選手。いや、正確に言うなら、どれだけ語りかけてもまともに心を開かなかったというのが正しい。
そんな選手だからこそ、試合に出すことはまさかないだろう、とサタンが考えてしまっていたチームの穴が、無機質な視線をサタンに向けた。
その視線に動揺するサタンを嘲るように笑いながら、ディアボは言った。
「コイツは『ルシ・ファノス』。財団の有する選手達にかける予定の実験を先行して受けた
何故だかもう勝ち誇ったような声音のディアボに何も言うことが出来ず、サタンはコートへ向かうルシの背を見ていた。
「第四の……、『オリオンの使徒』──?」
自分達を壊す存在。サタンは認められずにいた。
吹雪のクマゴロシは、「必殺クマゴロシ」のとこは早口で、「斬」はちょっと貯めて叫ぶ感じだと嬉しい。わかってくださる?
『皇帝ペンギン3号』
→佐久間の技。失敗した。ペンギンシリーズじゃなくて『デススピアー』想像したほうがいいかも。鬼道とアフロディが構想中の必殺技と同じ名前。