雷陽と黒龍   作:久遠れもん

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 今回、オリオンアニメで代表入りしていなかったキャラたちの補足小ストーリーみたいなものが挟まっているので、稲森視点だけで読みたい方は、始め読んだ後に◇◇◇ではなく、◆◆◆で区切られている部分から続けて下さい。



集結②『個性的な仲間達!』

 

 他の代表選手たちと共に東京からの合宿所までの長旅を終えた明日人は、バスの扉が開くと同時に駐車場へ飛び出した。

 

「着いたーっ!」

 

 まず明日人の目に入ったのは、駐車場からでもよく見える絶景。

 富士山の近くにある合宿所だとは聞かされていたが、これほどまでとは想定していなかった。明日人は息を呑んだ。

 そんな明日人を万作と氷浦が押しながらどかし、続々と選手たちが駐車場に降り立つ。

 

「すごい、絶景ですね!」

「マジで麓じゃん」

「湖も近くにあるな」

「やっぱ富士山でけーな」

「思ってたより広くない?」

「野坂さん……」

 

 やはり、皆目につくのは景色なようで、各々が思ったことを口にしていく。

 そんな中、バスから最後の一人が降りてくる様子が、ふと明日人の視界に入った。明日人がバスの方に駆け寄ると万作と氷浦もそれに着いて行った。

 

「君が海外のクラブチームでプレイしてた選手? 俺、稲森明日人。よろしく!」

 

「よろしくお願いします。僕は一星充。一応、ロシアの方でプレイさせて頂いていました」

 

 明日人の自己紹介に、自身の手を胸に当てながら答えた一星。その仕草や口調から礼儀の正しさがわかり、明日人は同じ中学生とは思えず、内心少し驚いていた。

 

「ロシアかぁ。サッカーがかなり盛んな国だよね」

「はい──と、言っても僕はそこまでですが」

「いやいや、そんなところでプレイしていたってだけでも凄すぎると思うぞ?」

 

 氷浦の言葉に謙遜しながら答える一星に万作がそう言うと、一星は照れくさそうにはにかんだ。

 

 ◇◇◇

 

 

 

「──鬼道くん、豪炎寺くん」

 

 駐車場の選手たちがはしゃいでいる中、普段とほとんど変わらない様子で談笑していた鬼道と豪炎寺に声がかけられた。

 二人は顔を上げるとその人物を発見し、優しい笑みを浮かべた。

 

「どうした? アフロディ」

 

 鬼道がアフロディに問いかけると、アフロディはニコリと笑い返し、

 

「これからはチームメイトとして過ごしていくことになるからね。改めて挨拶をしようと思って」

「そうか。……お前のプレイは先日のFFで見させてもらった。すっかり反省したようだな」

 鬼道が手を差し出すと、アフロディも手を差し出し、握手をした。

 その後、豪炎寺ともアフロディは同じように握手をした。

 

「まさかお前と共に戦う日が来るとはな」

 

 面白そうに微笑みながら豪炎寺が言った。

 

 豪炎寺と鬼道の二人、この場にいない他のメンバーでは、円堂、風丸。イナズマジャパンのこの四人は元雷門サッカー部で、『イナズマイレブン』と呼ばれた選手たち。昨年、円堂たち雷門サッカー部は、FFの決勝戦でアフロディの率いた世宇子中と戦っていたため、因縁の相手のような認識を両陣営少なからず持っていたのだった。

 

「……本当にその通りだね。僕の贖罪が終わったとは思わないけど、これからは君たちの仲間として精一杯全力を尽くすよ」

 

 鬼道と豪炎寺は「ああ」と頷き、アフロディを交えながら会話を再開した。

 

 ◇◇◇

 

 

 

「どこもかしこもでけーな。やっぱ」

「さっきから“でけー”しか言ってないけど、大丈夫?」

 

 いつの間にか吉良の隣に立っていた倉掛が、独り言を言っていた吉良に話しかけた。

 

「あ? 何がだよ」

 

「頭」

 

 ……

 …

 

「──良い加減にしろよ、クララァ!」

 

 怒りを顔に表しながら、倉掛に迫ろうとした吉良を基山が後ろから抑える。倉掛は吉良に呆れた表情で、自分の身体を守るように腕を組んで身を縮めていた。

 

「クララ! 何を言ったらこうなるんだよ!?」

「何も大したことは言ってないもん」

「何を言ったんだ!」

 

「『知能がないから会話が出来ないのねミミズ頭』としか言ってない」

 

「──付け加えてんじゃねぇか!」

「お前たち、最近ずっと同じようなやり取り繰り返してるだろ! ヒロトも怒って当然だ!」

 

「そうだけど、いつもの反応と違うのよね。残念」

 

 スン……、と態度を変えた倉掛の言葉に、基山は「『そうだけど』を信頼しすぎだろ」と倉掛に呆れながら、いつもの態度が戻ってきた吉良を腕から離した。

 

「はぁ……、親しき仲にも礼儀ありって言葉もあるんだ。次から気をつけてくれ」

 

 すると、わかりやすく二人の表情が変わる。

 

「別に親しくはねーんだって、タツヤ!」

「リュウジみたいなこと言わないでよ気持ち悪い」

 

 吉良と倉掛が基山に遺憾の意を示した。

 タツヤは理解の出来ない状況に早くも悟り出してしまう。

 

(もうそれで良いから……)

 

 そんな基山の心境とは裏腹に、吉良は自分と同時に発言した倉掛の言葉を聞き逃していなかった。

 

「──ことわざ嫌いとかマジかよ! もしかしてお前の方が知能薄いから苦手なんじゃねーの?」

「はぁ……、リュウジの真似が気持ち悪いって言ったことも理解出来ないの? あーあ、ホント可哀想ね」

 

(…………真似なんてした覚えないけどな)

 

 再び始まった口喧嘩から目を逸らしながら、基山が適当なことを考えていると──、

 

「な、何か揉めてない!?」

「バカが騒いでるだけだろ気にすんな」

 

 明日人と灰崎の二人が偶然その場を通り過ぎた。

 喧嘩中の二人の耳にもその言葉は届いたようで、すぐに吉良の意識が喧嘩から離れる。

 

「あの野郎……。悪魔だか何だか知らねーが、言ってくれんじゃねーか」

 

 吉良の発言の対象は、自分を『バカ』と評した『フィールドの悪魔』の異名を持つ灰崎。最早、吉良は普段から言い争いをしていて「正直ウザい」以上の感想が湧かない倉掛よりも、自分を大して知らないくせに侮辱を口にした灰崎へ、意識が移ってしまっていた。

 

 吉良は灰崎を追いかけるために鞄を肩にかけ直した。

 すると、倉掛は「え……」と、どこか寂しそうな声を漏らす。

 

「じゃあな。タツヤ」

「……変なことはするなよ」

「わーかってるっての。ガキじゃねーんだから」

 

 吉良と基山の二人のやり取りの間、倉掛は「えっ、ちょ、ちょっと?」と狼狽えながら、基山にチラチラと視線を送るが、無反応。

 そして、吉良は基山と倉掛に軽く手を振りその場を走り去ると、灰崎に「お前、中々言ってくれんじゃねーか」なんてことを言い、灰崎と話しながら、建物の中へ行ってしまった。

 その場には倉掛となぜかその場を離れにくくなってしまった基山が取り残された。

 

「──何で止めなかったの!?」

 

「どうせすぐ会えるだろ……」

 

 珍しく動揺する倉掛に、基山は呆れながらも返答した。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 風丸はバスから降り、ふと辺りを見渡すとバスの手前で背中を縮めている長髪の少年を発見した。

 

「どうかしたのか? 佐久間」

 

 すると、銀髪を揺らしながら佐久間が振り向いた。

 風丸が、どこか青褪めたように見える佐久間の表情を心配し「大丈夫か?」と尋ねる。すると、佐久間は、

 

「酔った……」

「おー、平気か?」

 

 ……

 …

 

 風丸は佐久間を連れて駐車場の隅の段差に座る。

 

「帝国の機関車みたいなバス乗っても酔ってこなかったのにな」

 

 風丸がそんな冗談を話すと、佐久間は手をぶんぶん振ってその発言を否定した。

 

「車酔いじゃなくて……、……ここに」

 

 佐久間が地面を指差し、それに釣られるように風丸の視線が移る。だが、そこにあるのは駐車場のコンクリート。佐久間が何を言いたいのか理解できず、風丸の脳内に疑問符が浮かんだ。

 

「帝国から突然こんな自然だらけの場所に放り出されたから……」

「あ〜、なるほど。確かに帝国は木の一本もないからな」

 

 青褪めながら片手で口元を抑える佐久間がコクコクと頷く。

 

「園芸同好会でも作ってみたら良いのに」

「自然破壊の権化みたいな奴がいたから仕方がない……」

 

 独り言のつもりで発した言葉に返事が返ってきて申し訳なくなった風丸は、余りの袋を自分の鞄から探しながら佐久間の言う人物について考えた。

 

(どうなったんだろうな。あの人)

 

 そして、風丸の頭にふと浮かんできた言葉をパッと口にしてしまう。

 

「アレはどちらかと言うと学校破壊の権化な」

「ふふっ……そうだな……ウッ」

「ちょ、おい!?」

 

 袋を諦めて遠くに見える建物の裏まで疾風ダッシュした。

 

 ◆◆◆

 

 

 

 合宿所の入り口を入ってすぐ、靴を脱いだ明日人や灰崎たち全員を出迎えたのは、星章の監督である久遠だった。

 確か、イナズマジャパンにコーチとして参戦するんだったか、と明日人が思い返していると、「『ミーティングルーム』に集合しろ」とだけ全体に伝えて、久遠は先に『ミーティングルーム』へ向かってしまった。

 

「色々話してみたかったのにな……」

「アイツに聞くようなことがあるのかよ」

「──星章にいたときの灰崎の態度とかさ!」

「絶対聞くんじゃねぇ!」

 

 灰崎の隣にいたヒロトが「後で聞いてやろ」と面白そうに笑った。

 

 

 

 ──ミーティングルーム。

 円堂と坂野上を先頭に明日人たちがミーティングルームに入室すると、雷門中の監督でありながらイナズマジャパンの監督も務めことになった凄腕監督、趙金雲と他の関係者たちが集まっていた。

 

 少しすると、全員がミーティングルームに入室しきり、モニター前の壇上に立つ趙金雲が口を開き始める。

 

「はーい、どうも〜。ワタクシが貴方達の監督を務めさせていただく趙金雲です。そしてこちらが……」

 

 趙金雲が手を伸ばし、選手たちの視線を誘導し、

 

「コーチを務めて頂く、久遠くんと、私の助手の子文くん」

 

 久遠ともう一人、大頭面を被った小柄な少年がそれぞれ紹介を受け、軽く挨拶をする。明日人や万作のような雷門イレブンから集まった者たちは、雷門中での部活動中にこの謎の大頭面少年をよく目撃していたので、その姿に言及する者はなく「またか」といったように自然に受け入れていた。しかし、円堂や坂野上たちは、大頭面すらあまり見る機会がなかったのかぎょっとしてしまっていた。

 

(これが普通の反応なんだろうな)

 

 明日人はそう思いながら、全員とタイミングを合わせ「よろしくお願いします!」と返事をした。

 すると、趙金雲がミーティングルームの隅に待機していたマネージャーたちにアイコンタクトを送る。

 明日人にとって慣れ親しんだマネージャーの少女たちが小走りで壇上に上がる。剛陣が「マネージャーは変わらずか!」と、嬉しそうに笑った。そんな剛陣へ返すように笑顔を向けると、再び一人ずつ自己紹介が始まる。

 

「大谷つくしです! 精一杯皆さんのサポートをさせていただきますので、よろしくお願いします!」

 

「神門杏奈です。よろしくお願いします」

 

 そして、さらにもう二人が明日人のよく知る二人に続く。一人は円堂や風丸たちの知り合いなのか「おお!」と剛陣のように嬉しそうに反応をする。

 

「木野秋です。一生懸命頑張ります!」

 

「風秋ヨネです。一人だけお婆ちゃんで申し訳ないけれど、食事は私が作るからよろしくね」

 

 風秋ヨネは、現雷門中サッカー部である明日人たち伊那国イレブンが寝泊まりしている『木枯らし荘』の管理人を務めている人物。

 木野秋は、円堂や風丸たちと同じ『強化委員』の一人で、元雷門中サッカー部のマネージャーを務めていた人物。確か、坂野上の『利根川東泉中』に円堂と共に配属されていたはずだ。

 

「あの人の飼ってる狸、可愛いのよね」

「超わかるでゴス」

「あら、聞こえてた?」

 

 ボソリと独り言を呟いた倉掛とそれに同調した岩戸が秋についてコソコソとそんな会話をしていると、秋は近くにあった鞄を抱え上げながらジッパーを開け、「わっ!」と、小さな狸の顔を出させた。それを見せられ、触れてみたいのかチーム唯一の女子選手である倉掛がそわそわとし始める。

 

(あれがファンサ……!)

 

 明日人は何故か関心してしまって、「おおー」と声を漏らしていた。

 

「そんな関心することか?」

「何に関心しても良いだろうが」

 

 灰崎が正直に言うと、吉良が雑に突っ込む。

 

(そこ仲良くなるの早いな)

 

 なんてことを明日人は考えながら、進行の再開を待った。

 

 

 

 他の職員たち等の自己紹介が一通り終わり、久遠が今回の合宿についてのルールを話し始めた。

 何とルールを守れない者は代表を除名されるらしい。だが、『イナズマジャパン』は日本代表のチーム。それくらい厳しくても当然だろう、と明日人は納得させられた。

 

 久遠がルールを一通り話すと、趙金雲がニコニコと笑いながら、突然壇上を降りた。

 

「今日は皆さんにもう一つ、とっておきを用意していますよ♪」

 

「とっておき?」

 

 キャプテンの円堂守がチームを代表して、趙金雲に聞き返す。すると、趙金雲は楽しそうに足を運びながら、

 

「ええ♪ 特に円堂くんや強化委員の皆さんなら、喜んで頂けるであろうスペシャルゲストです♪」

 

 円堂は「?」と、豪炎寺や鬼道と顔を見合わせた。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 合宿所敷地内の雷門や星章にあるものと同じような広さのスタジアム。その中央のサッカーコートに、ユニフォームに着替えた明日人たちは趙金雲に誘導されながら進入した。

 普段は地元の学生、成人のチームらの練習試合等に利用されるこのスタジアムの客席には、当然人一人も座っていない。

 すると、明日人はコートの中央に立っている人物を発見する。

 

「……っ!」

 

 その人物に気がついた風丸が目を丸くする。

 

「思ったより再会が早かったな」

 

 鬼道はその人物の存在に動揺しているようだが、僅かに口元が上がっている。

 

「確かにこれは“とっておき”と言っていいな」

 

 豪炎寺はニッと笑みを浮かべながらも視線をその人物から離さない。

 

 ふと、その人物は、進入してきたばかりのイナズマジャパンの中心に立つとある人物に視線を送る。

 視線を送られると、その少年の驚きは興奮へとすり替わり、表情が笑顔に変わった。そして、

 

「久しぶりだな! クラリオ!」

 

 円堂守は、昨年の自分たちを打ち負かしたその人物、クラリオとの再会を喜んだ。

 

 

 





 ルシャは、例の国→ルシア→ルシャね。何となく使いたくない感。
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