雷陽と黒龍   作:久遠れもん

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VSレッドバイソン『友情と信頼』
永世学園


 

 

 夢を見ていた。

 

 みんなでサッカーをしている夢。

 

 強大な巨人騎士、炎の魔術師、影を纏う妖狐、銀毛の狼。

 

 そこでは全ての生き物がサッカーをしていて、彼やイナズマジャパンのメンバー、雷門中のメンバー、明日人の故郷の伊那国島の住民もいた。

 

 明日人はその夢の中、サッカーを通じて全ての生き物たちと繋がっていたのだ。

 

 ……

 …

 

 ◇◇◇

 

 

 …

 ……

 

「……、! ……、りくん! 稲森くん!」

 

 未だ夢の中に意識をおいている明日人の耳に、自分を呼ぶ声が聞こえる。

 

「う〜ん……。銃にサッカーボールは無謀だよぉ……」

「稲森くん? どんな夢を見てるんだい?」

 

 明日人の身体がユサユサと揺らされる。

 唸りながら明日人は夢から覚め、やがて意識が戻る。明日人は両目をゆっくりと開けた。

 

「あ、アフロディさん……?」

「おはよう。稲森くん」

 

 合宿所二日目にして、初めての朝。

 明日人の同室のアフロディが、自分の金髪を耳にかけながら、明日人の眼前で、覗き込むように確認をすると、ホッとしたように笑った。

 

「ふふ、ちゃんと起きたみたいだね。早速ルールを破って除名になってしまったらどうしようかと焦ったんだよ?」

 

 その笑顔に明日人は目を狭める。あまりにも眩しいすぎたのだ。何がって? 決まっている。明日人の枕元に椅子を置き、その悪戯っぽく輝かしい笑顔を明日人に向けるこの美少年が、だ。

 

(何この最高な目覚め……!)

 

 明日人は心の奥でそう叫んだ。

 

 

 

 ──食堂。

 明日人が着いた頃にはほとんどの選手たちが席に集まっていた。明日人がアフロディに待たせてしまっていたことを謝ると、アフロディは「十分くらい余裕はあるように起こしたから大丈夫だよ」と明日人に笑いかけてくれた。

 先に食事を始めていた風丸に手招きをされ、アフロディと明日人は空きていた席に座った。

 風丸の隣には、同室の万作と一星の二人が並んで朝食を食べていて、アフロディと明日人はそれぞれ、風丸と万作の隣の席に座り、運んできた朝食に手を伸ばした。

 

「お前たち二人は同室か」

「そうですね。風丸さんは……」

 

 風丸に問いを返しながら、明日人が万作に視線を向けた。

 風丸は「そうだ」と、頷く。どうやら、風丸と万作の二人が同室らしい。それを知ると共に明日人の疑問点がもう一つ湧き上がる。

 

「一星は? 誰と同じ部屋だったの?」

 

 一星は「えっと……」と、歯切れの悪い返事を返す。明日人たちが首を傾げていると、突然食堂の扉が開いた。

 明日人は自分たちより遅く集合した人がいるのか、と、軽く背伸びをしながら食堂の入り口を確認する。

 

「──灰崎! おはよ!」

 

 明日人は目に入った灰崎に手を振りながら立ち上がると、「来るの遅かったんじゃない?」と、灰崎に確認をする。近づいてみると、灰崎は他に二人連れて来ていたようで、灰崎の隣に立つ基山と吉良の視線が明日人の視線と偶然交わる。明日人が挨拶をすると、基山は「おはよう稲森」と、返事をくれたが、吉良は「おう」とそっけない返事をして、視線を逸らした。

 すると、不機嫌そうな灰崎が口を開く。

 

「ああ、遅れかけたな。誰かさんのせいで」

「──んだと?」

 

 吉良が灰崎に反応するが、灰崎はそんな様子を気にもせず、朝食を食堂の手伝いをしていた秋から受け取りに向かう。吉良も舌打ちをしながら、それに続く。口喧嘩をし合う二人を見て、基山はぐったりと息を吐いた。

 明日人が基山に視線を送ると、基山は小さく首を横に振った。

 

「昨日は仲良かったじゃん……」

「ホントにな……」

 

 明日人が再び目を向けると、灰崎と吉良はまた言い争いをしている。

 

「それは俺様の狙ってたオムレツだろうが!」

「知らねぇよ! なんだって一緒だろ!」

 

(えぇ……)

 

 明日人はそんな二人に苦笑いすると、自分の席に戻った。

 

 

 

「あれ? そういえば、円堂さんと坂野上は?」

 

 食事を取りながら辺りを観察していた明日人が、円堂と坂野上の不在に気がつき、万作に尋ねた。

 

「確かに、いないよな。でも剛陣先輩はいるぞ」

「ホントだ。ゴーレムもいる」

 

 万作と明日人は、円堂と坂野上の同室の選手である剛陣と岩戸を食堂内で発見し、それぞれが一緒にいるわけではないことを確認した。すると、何やら知っている様子の風丸が二人に「円堂は坂野上の朝練に付き合いに行く、と言っていたぞ」と教えてくれた。明日人が「朝ってコート空いてるんですか!?」と驚く中、万作は、

 

「坂野上、すごいな」

 

 と、同じリベロの役を持つ選手として感心しながら、ボソリと呟く。

 それを聞いたアフロディが「明日の朝はみんなで朝練しないかい?」と明日人と万作に提案してくれた。

 

 ◇◇◇

 

 

 

「はいはいはいは〜い、皆さーん? 注目してくださーい」

 

 ──ミーティングルーム。

 朝食の時間を終えた選手たちは、ここに集まってその日の日程や次の対戦相手についてのミーティングを行うこととなっている。

 そして、今、明日人たち全員が集合し、趙金雲がミーティングを開始した。

 相手のチームはどんなチームなのか、どんな選手がいるのか、と明日人は、代表発表会のとき以上にワクワクとしながら、趙金雲の言葉に耳を傾けた。

 

「では、つくしさん。お願いしますね♪」

「えっ? は、はい!」

 

 突然そう言われた大谷が急いで、持っていた資料をめくっていく。

 明日人は、趙金雲がやるわけではないのか、と苦笑いしてしまう。

 どうやら明日人以外にも、そう思った人はいるようで、剛陣が趙金雲に対して、皆を代表するように「お前がやるんじゃねぇのかよ!?」と、突っ込んでいた。

 そんな中もパラパラと資料から情報を探し続けていた大谷が手を挙げ「はい! ありました!」と、叫んだ。それを合図に全員が会話を止めた。

 大谷は、一瞬で空気が変わったことに驚きながらも、話を始める。

 

「……今回の相手チームは、韓国代表『レッドバイソン』です。個々の選手たちの突破力が高い一方、アジアの他の代表チームに比べて連携意識が薄いようです。そのためこのデータを見る限りだと、必殺タクティクスを持っているなんてこともないはずです。特に注目すべき選手は……、」

 

 ステージ側の壁に取り付けられているモニターの画面が切り替わり、二人の選手が映し出される。

 

「FWの『ペク・シウ』と、キャプテンの『ソク・ミンウ』の二人。そして、ソク・ミンウさんはアジア内で見ても頭一つ抜けた突破力を持つ必殺技『特攻!バッファロートレイン』を使用することができます。『特攻!バッファロートレイン』は三人の連携技なので、ソク・ミンウさんが他の選手の周りにいる際は要注意です。……と、こんなところでしょうか……?」

 

 大谷が趙金雲の顔色を伺いながら、少しずつステージから降りる。すると、趙金雲は椅子に座りながら、大谷に御礼を伝え、イナズマジャパンたちに向き直る。そして、

 

「つまり、今の貴方たちでは勝てない相手ってことですよ♪」

 

(何てことを言うんだ……)

 

 全員の空気がズーンと沈む。

 

「では、何か策があるのですか?」

 

 鬼道が全員を代表して、質問をした。

 すると、趙金雲の表情が、真剣なものに変わる。

 

「実はですね……」

 

 ゴクリ、と明日人は息を呑んだ。

 

「実は……」

 

 一体、どんな厳しい特訓が待ち受けているのか、既に全員覚悟は済んでいる。どんな特訓でも耐えて強くなって見せる。そんな強い意志が、今のイナズマジャパンにはある。

 

「──“スペシャルゲスト”が来ていまーす♪」

 

「またかよ!?」

 

 こういう時の剛陣は頼もしいな、と、皆が思っただろう。

 趙金雲と子文に押し出されるように明日人たちはミーティングルームを後にした。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 合宿所敷地内の雷門や星章にあるものと同じような広さのスタジアム。その中央のサッカーコートに、ユニフォームに着替えた明日人たちは趙金雲に誘導されながら進入した。

 普段は地元の学生、成人のチームらの練習試合等に利用されるこのスタジアムの客席には、当然人一人も座っていない。

 昨日をなぞるような展開に困惑しながら、明日人たちはコートに立った。

 趙金雲がアップをしておくようにと、明日人たちに伝え、どこかに行ってしまったため、明日人たちは趙金雲に言われた通り準備運動や走り込みを始めた。

 

「誰が来るんだろうな」

「さあ? でも昨日、クラリオと戦ったばかりだぞ? 誰が来ても正直驚かないよな」

「まあね。でも、監督すごい楽しそうだったのが気になるんだよね」

「あの人いつもあんな感じじゃないか?」

「確かに」

 

 明日人と氷浦がコートの両端にあるサッカーゴールとサッカーゴールを往復してランニングをしていると、

 

『ピーーッ!』

 

 突然アップを見ていた神門杏奈が笛を吹き、集合を呼びかけた。どうやら趙金雲が戻ってきたらしい。

 

「結局誰だと思う?」

「じゃあ、ソク・ミンウ」

「えー流石にないでしょ」

 

 他の皆が杏奈の元に駆け寄っているのに続くように、明日人と氷浦が走り寄っていくと、入り口から趙金雲が現れた。

 そして、趙金雲は入り口の方を見た。

 

「入ってきて良いですよー♪」

 

 趙金雲がそう言うと、全員の視線が入り口へと向かう。

 入り口に人影が見えると、基山が「え……っ」と声を漏らす。吉良と倉掛もその人物たちに驚いた様子だ。

 

「──いや〜、大山鳴動して鼠一匹。オレたち何もしてないのに、こんなに大袈裟な登場になるとは思わなかったなあ」

「──そんな言葉使うほど力不足だとは思わないが……。そうだな、流石に緊張する」

 

 FFで明日人や氷浦とも戦ったとある学校の選手だ。緑髪の少年と紅白バンダナの少年の二人、そしてその奥にはさらに四人。つまり、計六人。

 

「リュウジ!? 夏彦!?」

 

 基山が驚いた様子で声を上げた。吉良もそれに続くように「久しぶりじゃねーか」と笑う。倉掛も更に奥にいた水色の髪の少女に気がつき、顔を明るくした。

 

「……と言うわけで、『永世学園』のみなさんに来て頂きましたー♪」

 

 趙金雲がそう言うと、六人がイナズマジャパンと向き合うように横に並んだ。

 

(あれ……?)

 

 久遠が彼らの紹介を始める。

 

「では、左から順に、

 

 緑川リュウジ、

 

 熱波夏彦、

 

 八神玲名、

 

 本場激、

 

 白兎屋なえ、

 

 海腹のりか、だ。

 

今日はこの者たちと合同で行う」

 

(……え?)

 

 明日人や氷浦たちの視線が右の女子二人に固定される。

 

「あのー……、監督?」

「うちら『永世学園』じゃないやっぺ」

 

 右端二人、『雷門中』“癒し系ゴールキーパー”海腹のりかと『白恋中』“白恋のプラチナスノー”白兎屋なえは、言い出しにくそうに手を挙げた。

 

 

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