聖剣なんてクソ喰らえ
これはずっと、ずっーと、昔のお話。
まだ神々が人間を支配していた頃。ようやく、私達が文明を持ち始めた頃。
ある日、空から
━━━━━━ソレは堕ちてきた。
地表が燃えている。
世界が燃えている。
文明らしきものは全て踏みつぶされた。
知性あるものは隷属さえ許されなかった。
早すぎる、と予言者は慄いた。
戦うのだ、と支配者は奮い立った。
手遅れだ、と学者たちは諦めた。
でも、少しぐらい残るだろう、とわたし達は楽観した。
━━━━━━ソレが、姿を現すまでは。
◇
『収穫者』、あるいは『セファールの白き巨人』と呼ばれるソレは、あっという間に、星の命、文明を喰らい、侵攻を続けた。
幾万もの神々や人間が立ち向かったが、破壊尽くされ、ついには当時一番強かった神である戦神さえ破壊された。
誰が見ても、勝敗は明らかだった。
この星の運命は潰えた。
それでも。
それでも明日を夢見る者はいた。
世界が焼かれた瞬間、無数の誰かが叫んだ。
やりたい事があった。
子供の帰りを待つ親がいた。
明日も遊びたい子供がいた。
誰もが明日を願っていた。
━━━その願いを、星は聞き届けた。
星は人々の祈りを星の内海に持ち帰り、その最奥『宙の炉』で6人の妖精によって鋳造された。
その剣の名を『██・████』
始まりの神造兵装とも呼べるその聖剣は、人々の願い故に鋳造された。
されど、いかに聖剣いえど担い手がいなければ聖剣なぞ、ただの剣。
ならば、誰が振う?
星は『人間の願いによって造られたのならば、人間が振るうべきだ』と判断した。
そうして、妖精たちにより聖剣は星の内海から、巨人の侵攻から生き残っていた人間たちの村へと運ばれた。
◇
【星を救う者】
ある日のこと。
あの巨神の侵略から僅かに生き残った私達の村に、6人の妖精達が現れました。
このつるぎはヒトのねがい。
このつるぎはほしのいのり。
ヒトをすくいたいとねがうなら。
ほしをまもりたいのならば。
つるぎはきっとこたえるはず。
つるぎはカガヤキをはなつはず。
ほしを、ヒトをオモウのであれば、つるぎときみはアレをころせる。
すべてをそそいで、いのちをささげて、いのりをこめて。
さあ、そのつるぎをてにとって。
そう言って、一振りの剣を残していきました。
さて、困りました。
そんなこと急に言われるものですから、村中大騒ぎ。
まあ、この村に聖剣が運ばれたということは、この村に担い手となるべき者がいるというわけでして。ならばと、村の力自慢が、知恵者が、権力者がその剣を手に持ちましたが、その誰も剣に相応しいものは居なかったのです。
そうなると、誰だろうと構っていられません。
男、女、子供に病人。次々と剣を持つように言われました。けれど、聖剣はうんともすんとも応えることはありません。
そうして、私の番がきました。
・・・正直に言っちゃうと、どうでも良かったのです。
父も母も、とっくの昔に死んでいましたし、今の私は身寄りのない孤児でした。まあ、村のみんなは働いてさえいれば邪険にすることはなかったし、それも、明日も生きていられるか分からない時代でしたから、みんな必死だったんです。他人のことなんて考えている暇なんてなかった。
だから、人を救うとか、星を守るだとか、どうでも良かった。
手に取って、何も起きなくて、みんなは残念がって。そして、また明日が来る。
それだけで良かったのに。
「——————おおっ! 聖剣が・・・輝いた」
剣は、こんな私を選んだのです。
◇
【同類】
「まっ、選ばれた時は死ぬほど嫌でしたよ。
・・・けど、村のみんなが凄い持て囃してくれたんです」
私は、私を召喚したというマスターに向かって昔話をする。
聞けば人理の危機だとかなんとかで力を貸して欲しいとのこと。そして目の前の子供は人類最後のマスターらしい。ともすれば、私とこの子は似たもの同士で、でも決定的違いがあるのだ。
「人生が変わったと言うやつです。悪い気はしませんでした。私、親に褒められた記憶がそんなになくて、村に来てからも誰かに気にかけられるということも無かったですから・・・体のいい神輿です。内心みんなホッとしてたんですよ。「選ばれなくて良かった」って」
この子は一人ではない。
多くの英霊達が力を貸してくれている。
私のように、たった一人であの巨神に挑むわけではないのだから。
「あなたもそうでしょう? こんな出来るわけもないもの押し付けられて・・・・・哀れですね」
でも、貴方は首を振るのでしょう?
私とは違うのだから。
———続く
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