何もかも巡りゆくものだ。
過去から現在、現在から過去。
子が生まれ、産声をあげ、歩き、自身を認識すれば物語は始まる。
恋をして、愛を知り、子をなし、家と家を繋ぎ、親と同じく子を産む巡り。
何もかも巡りゆくものだ。
ここに一つの巡りがある。誰の記憶にも残らない、忘れ去られる物語ではあったが、それでもわたしが生きた物語だ。
その子供は、妖精によって生み出された。いつかくる、終わりの日に備えて。そうあれと、姿を定められず、楽園の家族に預けられた。幸せな日々を過ごした。けれど、終わりの日は来る。
巨人が落ちてきて、わたしの人生は変わった。
辿り着いた集落では、この力を忌み嫌われ、都合の良い道具として使われた。今日もまた、名も知らぬ誰かに体を好き勝手に犯され、わたしは夢をみた。
本当は、誰よりも不幸せだったのだ。家族の手前、幸せを演じていただけ。
募る想い。哀愁、怒り、憎しみ、悲哀、混ざり合う愛憎。
解放されたかった。何もかもから逃げ出して、自由になりたい。認めてもらいたい。愛してほしい。特別扱いなんていらない。ただ、ただ・・・わたしは。
何もかも巡りゆく。
———「かみさま、わたしは 」———
巡り巡って、自分に返ってくる。
◇
「西の機神もやられたらしい。国はめちゃくちゃだとさ」
「西の海に都市を築いていた奴らだろう? 随分発展していたと聞いていたが・・・そうか。もう、俺たちも」
「・・・東の神々は?」
「真っ先に降伏したらしい。あの巨人には一切手を出さないてっさ」
「仕方ない。あとは、その時を受け入れるだけだ」
あれからしばらく経ち、世界は滅びているかと思いきや、人間達は意外にも生き汚かったようで、細々と生き残っていた。
巨人は各地の国々を襲い、神々を喰らい、土地を収穫し、蹂躙を繰り返していた。それに負けじと、神々と一部の人間は抗うが無駄な徒労に終わったようだ。
「我らに『歓び』を与えてくれた汝らを、我らに居場所を与えてくれたこの美しい星を・・・必ずや守護してみせよう」
アランは少し前に現れた、大きな顔の神の言葉を思い返した。
「(大口叩いておいて、結局ダメじゃない。冗談は顔だけにしてよ、ってね)」
木陰で、束の間の休息をしながら空を見上げた。
じきに星は滅ぶ。
それは、もうどうしようもない決定事項で、もうどうでもいいことだった。
“早く滅べばいいのに“、と少しだけ期待しながらあくびを溢す。
この数ヶ月で頼りの神々も大半が姿を消し、人間達は気力を失った。星の終わりを受け入れ始めているのだ。
集落から程近い山の頂上からは、巨人の影が見え始めたらしい。アランも作業に駆り出されることはなくなり、他の人間は家にこもってしまった。
そんなある日、
———妖精達がやってきた。
突然のことだった、6人の妖精たちは一振りの聖剣を集落に持ってくると、こう告げた。
このつるぎはいのちのトモシビ。
このつるぎはほしのいのり。
ヒトをすくいたいとねがうなら。
ほしをまもりたいのならば。
つるぎはきっとこたえるはず。
つるぎはカガヤキをはなつはず。
ほしを、ヒトをオモウのであれば、つるぎときみはアレをころせる。
すべてをそそいで、いのちをささげて、いのりをこめて。
さあ、そのつるぎをてにとって。
何もかも諦めていた人間たちはもう大慌て。男衆はすぐにその聖剣に飛びついた。
彼らも、全てを諦めていたわけではなかった。
まだ、明日を望んでいたのだ。
けれど、誰が握っても聖剣は答えなかった。また人々は落胆した。お告げはでまかせだったのかと。
誰もがそう思い始めたころ、ついにアランにもその番がきた。
とにかく、お告げがあったなら聖剣の担い手はこの集落にいるはずで、手当たり次第に確かめていくしかなかったのだろう。だから、どうせあり得るはずないと誰もが確信をしていたが、ともかくアランは呼ばれた。
もうとっくにアランはどうでもよくて、トボトボ、広場の方に歩いていった。
周囲からは嫌悪の視線を浴びせられる。もう慣れっこだった。
たった数メートルで聖剣の元へ辿り着く。それは果てしないようで、あっという間の道だった。
ぶっきらぼうに、男から聖剣が手渡され・・・
さあ、そのつるぎをてにとって。
わたしたちのうんめいのこ。
———想像していた明日は、どこかへ消えていった。
聖剣は輝きを示し、その日、担い手が生まれた。
アラン、という要らない記号は捨てて、“聖剣の担い手”となったのだ。
———「かみさま、わたしは普通の人間になりたい」