世界を救った聖剣の担い手さん   作:ラスキル

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———嘘つき。死にたくないから、嫌われたくないから、助けてほしいから振るったくせに。それがきっと、間違いだったのです。



何事も中途半端は良くないよねって話。振り切っちゃえばよかったのに。


世界を救った聖剣の担い手

それから、担い手の人生は一変した。

集落での扱いもまた、一変した。

誰もが、担い手を崇める。人類、いや、世界を救うただ一人の存在なのだ。ソレを迫害していた者、道具のように利用していた連中は集落の人間たちの非難の的になり、そのうち、見せしめのように殺された。全ては、担い手の機嫌を損ねないように。

例え、本人がそれを望まなくても。

人間とは恐ろしいもので、自分が正義ならどこまでも粗暴へと容易く変化する。自分たちが行ってきた行為を棚にあげ、より目立った者を非難の的に選ぶのだ。

 

今日も外はお祭り騒ぎ。

次々と貢物が担い手の部屋に運び込まれる。豪華な食事など、喉に通るはずがない。

こんなはずではなかったと後悔する。

集落のみんなは可笑しくなったのだ。

最初はよかった、みんなが喜んでくれて、認めてくれた、生きてもいいって、思った。やっと、受け入れてくれたんだって。わたしもこれで、人間になれるって。

・・・けれど、みんながアイツらを非難し始めて、それで言い争いを始めた。みんなに囲まれていたのは、特にわたしを嫌っていた奴らだ。「俺たちだけじゃない」、「お前らだって」、「押し付けるのか!?」。そうして、急に殺せって声がして。

 

 

静かになって、全てが終わったあと、

 

『———聖剣の担い手よ。どうか私達をお救いください』

 

気持ち悪い、笑顔を向けてきたのだ。

 

担い手はあてがわれた家の隅で震えている。

それは聖剣を持ち、巨人に挑むことへの恐怖ではない。もし、もしも失敗してしまったら? 不要な存在として、自分も殺されるかもしれない。用済みの役立たずの化け物として。

 

「・・・プリア、ヤー。怖いよ、助けてよ」

 

もう居ない誰かの名前を呼ぶ。答えはない。ここに担い手の味方はいない。

聖剣を握っても、ただ光を示すだけで答えてくれない。

明日は、いよいよ巨人のもとへ向かう。

もう、逃げ道は残されていなかった。

 

 

担い手は人々に見守られながら、決戦の地である丘に立ちました。

少し前までは、豊かな緑で包まれていたこの場所も、神様達と巨神との戦いで見晴らしのいい真っ平らな荒地と化しています。

いつの間にか、生き残った神様たちも集まってきました。

彼らには戦う力はありません。人間たちと終わりを共にしようとしているのかもしれません。どちらにせよ、今日が最後の日なのです。

 

その日は美しい満月でした。

浮かび上がってくる満月を背に、ソレが見えてきました。

 

———はじめてその姿を見たとき、わたしは心を奪われました。だって、その姿は神々よりも、綺麗で、美しくて、不気味なほど人に近しかった。今から、アレを打ち倒さねばならないというのにわたしは、その巨人を———

 

「神様みたい」

 

だなんて思ってしまったのですから。

 

担い手は思わず、声を漏らした。

花嫁のようなベールに包まれた夜空に散らばる星のように綺麗な肉体、流れ星が流れたような美しい紋様、全てを包み込む大穴が空いたとても大きな手。

神様みたいにわたしたちとは違う。でも、神様よりはマシだし。迫り来る姿はとても恐ろしい。けど、神様もソレは変わらない。でも、人間に近いのはよく考えればとても気持ち悪いことかもしれない。そんなの神様だって同じこと。変に似すぎていればなんだって気味が悪い。

 

だから、神様より、よっぽど神様らしいなんて思ってしまった。

 

「っ——————」

 

目が合った。

見下ろしてくる巨人と目が合った。その瞳は、確かに私・・・聖剣を捉えている。

 

ああ、だめだ。確かにアレは美しい。

でも、

それでも、恐ろしさのほうが勝る。

 

「告げる」

 

———死にたくない。

 

大丈夫、この化け物を殺せば(誰もわたしを化け物だと言わない)

 

———死にたくない。

 

みんなが褒めてくれる。(みんなが喜んでくれる)

 

———死にたくない。

 

わたしを見てくれる。(わたしを見てよ)

 

———死にたくない

 

だから、わたしは、みんなのために(わたしのために)

 

「・・・これは・・・・星を救う戦いである」

 

誰が為に、と聖剣を振るったのです。(そう思い込んで)

 

 

 

『◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇』

 

聖剣の極光は確かに巨人の脇腹を抉った。

巨人は苦しみに満ちた呻き声をあげ、フラフラ、どこかへ去っていった。

致命傷を受けたのだ。そのうちどこかで力尽きるだろう。

なんにせよ、これで星は救われたのだ。

 

「はっ——————やった、ざまあみろ。あははっ」

 

達成感からか、恐怖から解放されたからか、担い手は笑い出した。

これで、自分は世界を救ったのだと。

そう確信して、後ろを振り返る。

 

けれど、それは予想していたものではなかった。

歓声があると思っていた。笑顔で迎えてくれると信じた。認めてくれるはずなのに。

 

「・・・化け物だ」

 

聖剣は人々の希望を、星の祈りを全て込めて光を放った。

もしかすると、担い手に対する期待、希望、それすらもあの巨人へ放ったのかもしれない。いや、そもそもそんな期待なんて微塵もなかったのだろう。

残されたのは巨人を打ち倒した担い手という化け物への恐怖。担い手は、あの巨人を殺したことで巨人と同類になってしまった。

 

「やっぱり化け物だ」

 

「次は私達を殺すのかも」

 

「巨人の次はあの化け物が・・・」

 

違う。

違う、違う、違う。

 

「なあ、巨人も居なくなったしアレ、もう要らなくない?」

 

「そうだな。平和になったら、もう役割もないし」

 

それは高揚だったのかもしれない。あるいは恐怖だったのか。

誰も彼も、担い手を英雄として担ぐつもりはなかった。期待していたのは、巨人と相打ちもしくは、聖剣の力に耐えきれず塵にでもなってくれればよかったのに。

 

『待て、人間たちよ。それにはまだ利用価値がある。我らに任せよ』

 

『そうだ、星の防衛装置にしよう。効率の良い運用方法があるはずだ』

 

それは神々も同じだった。

人間のように排斥するつもりはなかったが、都合の良い使い道を見つけた。

 

神々と人間たちが迫る。

誰も担い手を人間として見てはいなかった。担い手は“貴重”だったとしても、誰かにとって“大切”な存在ではなかった。

冗談じゃない。

殺されるのもごめんだ。都合よく使われるなんてもっとごめんだ。

幸い、聖剣はまだこの手にある。だから、追ってくる人間も神様も、みんな

 

みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな

 

 

 

斬り捨てました。みんな殺しました。聖剣はいつの間にか黒く染まっていました。

 

可笑しな話だ。

星を救ったはずなのに。世界を救ったはずなのに。人を救ったはずなのに。

いつの間にか、救世主から悪役になっていた。

 

———お前たちのために、振るったのに・・・!

 

それからはあまり記憶にない。

西に逃げたのか、東へ逃げたのか。ともかく果てへ、果てへと目指した。

追手を殺し、喰らい、とにかく死にたくない一心で歩み続けた。

その様は巨人となんら変わらなかったのだろう。

確かその頃だった。聖剣が手の内から無くなったのは。奪われたのかもしれないし、資格がないと見限られたのかもしれない。

まあ、どうでもいいことだった。

 

そうして、担い手は辿り着いた。

———巨人の亡骸に。

 

(死ねない)

あの日、楽園の島にコレが落ちてきてから、生きててよかったことなんて一つもなかった。

だから死ねって?

冗談じゃない。

聖剣を振るったのはわたしだ。救ったのはわたしだ。

担い手は残った力を振り絞り、巨人の体へと這い寄った。戦いのすえ、もはや体はボロボロ。神々と人間との戦いで致命傷を負っているのだ。命の灯火は消えかけていた。

(まだ、何も成せていない)

巨人の遺骸に歯を突き立てる。そのまま肉を喰らう。

とにかく生き延びたかった。巨人の血肉を取り込めば、この致命傷もどうにかなるかもと思っていた。元々、自分にはカタチがない。うまくいけば、巨人の力を奪えるかもしれない。

(まだ、わたしは———)

担い手の目が紅く染まる。

(———幸せになっていない・・・!)

担い手は一心不乱に血肉を貪り続けたが、どれだけがむしゃらになっても視界が暗くなっていくのは止められなかった。

やがて、意識は闇に誘われていく。

 

『———愚かな。そのまま死んでいれば良かったものを・・・せめてもの情けだ。オリュンポスの神々に引き渡してやろう。今や、天界も地上も冥界も手が足りぬ。

 ・・・結局、お前は都合のいい道具に成り下がることを選んでしまったのだ。楽園の子よ、その業を夢忘れるな』

 

隻眼の瞳が覗き込まれる。

覚えているのはそこまでだ。

 

 

母が、父が、妹が目の前にいる。

わたしは駆け寄って抱きつく。が、力を入れるほどその体は崩れていく。

グシャリと音がして何もかも無くなった。

・・・はて、何を壊してしまったのか。思い出すことができない。何か、大切なものだった気がする。

そもそも、わたしは誰?

何を成した?(聖剣を振るった)

わたしの名は?(聖剣の担い手)

違う、違う、違う・・・!

わたし、わたしは(誰かわたしの名を呼んで)

 

———誰?———




担い手さん マイルームボイス

絆1:・・・気持ち悪い、近づかないでください。アナタみたいな、誰にでも笑顔を振り撒くタイプが一番嫌いなんです。しっしっ。

絆2:せいぜい足掻きなさい。誰が為ではなく、自分のために・・・それぐらいしか、アナタには残されていないでしょう?

絆3:以前から思っていましたが、アナタ、働きすぎ。少しぐらい休んだらどうです? なんならわたしが少しの間、代わってあげましょう。

絆4:たった一人で救える世界なんて、潔く滅んでしまえばいいんです・・・でも、アナタは1人ではない。それはとても幸福なことです。決して忘れないように。

絆5:アナタのことは好きですよ。下から3番目ぐらいにはね。ふふっ、冗談、冗談です。割と好きです。

会話1:あれがアーサー王。次代の担い手。どのような最期を迎えたかは知りませんが、きっと碌なものではなかったのでしょうに・・・自らその道を選ぶなんて、きっと反りが合いませんね。

会話2:ヘラクレス。偉大なる大英雄。うぅ、劣等感がやば〜、絶対に一緒のパーティーに入れないでください。舌を噛み切っちゃいそう。ああ、どうしてもというなら霊基を変えなさい。あっちのわたしに押し付けます。

会話3:牛若丸さん?その、確かに今のわたしは首を斬られた程度では死にません・・・ええ、興味深いのは分かりますが、そう何度も斬られてはその、・・・躊躇というものはご存じ?

会話4:ギルガメッシュ王。ああ、その節はどうも。あの後、水草はどうしました? え、蛇に取られた?・・・ザマァ・・・いえ、なんでも。聡明な判断だったかと。

絆上げるのにすごい時間がかかる。例えるなら捨て猫を手懐けるくらい。でも、一度火がついたら爆速だぞぉ!

次回からはGO!GO!アルゴー船編
パッパと流して、FGO編に繋げます。結局アタランテに収束させてしまう。
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