世界を救った聖剣の担い手さん   作:ラスキル

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GO!GO!アルゴー船編
Re:


さて、その神話を知っている人間はいないでしょう。

白き巨人と神々の戦い。

白きマキアと呼ばれるその戦いを、とても長生きな古い竜なら覚えているかもしれませんが、とっても古い出来事でしたから、どうでもいいと忘れてしまい、誰も覚えていないのです。

神様たちを除いては。

だから、その恐怖だけは伝わっていました。

あまりの恐怖から、壁に画として残すほどに。

 

・・・たい

 

けれど、それは今は関係ありません。

この物語は、その神話の後。

罪を犯した、██のお話なのです。

 

・・・なりたい

 

それが、唯一人類史に名を残すことができた██の物語なのです。

 

———█になりたい———

 

 

罪を犯した██の処遇は、オリュンポスの神々に委ねられました。

██の罪は、『巨人の血肉を喰らった』こと。なんの因果かは分かりませんが、██は巨人の力の一部を取り込み、あろうことか巨人が神々から奪った権能を有してしまったのです。

神々は震え上がりました。たださえ、彼らにとって巨人は心に傷を残した存在です。ましてや、その力を有する化け物など排除すべきだと糾弾しました。

けれど、オリュンポスの神々は違いました。

彼らは、先の戦いで負けてしまった汚名を晴らすため、この化け物を調伏して見せると宣言しました。なにも、意地だけで声を上げたのではありません。彼らの国は真っ先に巨人によって踏み潰されましたから、文明の復興も、冥界の管理も、とにかく人手が足りないのです。██を都合の良い労働力にしようとしました。

それを見ていた、メソポタミアの神々は『我らにも権利はある』とごねましたが、彼らはそもそも命乞いをして真っ先に降伏したので他の神々から白い目で見られました。結局、不老不死の水草の管理を数千年間ほど██が行うことで納得しました。

 

██はその様子を呆然と見ていました。

神々の言葉は難しくてよく分かりません。

幸い、巨人の血肉を取り込んだおかげか、戦いで負った傷は完治し、体には活力がみなぎっていました。

今なら、周りの神々も喰らってやることができるでしょう。しかし、ボーッと視線を泳がすばかりで何かしようなど思うことはありませんでした。

『死にたくない』

最後に祈ったその願いは確かに叶ったのですから。もうどうでもいいのです。

 

———わたしは、誰だっけ———

 

そう、何もかもどうでもよくて、何もかも空っぽになってしまったので、流れに身を任せることにしたのです。

神々が自分を人間扱いしていないことはわかりますが、慣れっこだったと思うのでいいのです。

 

———なにをしたかったのか———

 

あっという間に話は進み、██はまず、冥界へと連れて行かれることになりました。

長い長い、贖いの日々が始まりました。

幾千年ほど冥界の橋渡しを担当しました。見覚えのある死者もいましたがなにも感じませんでした。

やっとのこと冥界での労働が終わると、今度は東の地で不老不死の水草を管理をしました。ほぼ、不老不死に近い肉体を持っていた██にとっては永劫の時とも思える日々も砂が落ちるように過ぎていきます。

その役目を終えると、再びオリュンポスの神々の膝下に戻り神々への贖いを繰り返します。

それが、何千年続いたでしょうか。

 

———ああ、そうだ。人間になりたかったんだ———

 

聖火の番の最中、久しぶりに言葉らしい言葉を溢しました。

空っぽになったカラダにも想いは残っていたのです。しかし、ただ溢しただけです。すくうものがなければそれで終わりです。

 

『———可哀想に』

 

それを、炉の神ヘスティアがすくいあげました。

慈悲深いヘスティア神は枯れ木のようになってしまった██を哀れに思い、主神であるゼウス神に進言しました。

 

『あの子を人間に堕としてしまってはどうでしょうか?』

 

巨人の力を取り除き、ただの人間にしてしまえばいいと、そうすれば神々に抗えるはずもなく罪の贖いの必要もありません。

一部の神々も、それに賛成しました。いつ爆発するかも解らない爆弾を側に置くのは気が気でないのです。

しかし、ゼウスはすぐには頷きません。

彼には大きな悩みの種がありました。———ギガント———、白き巨人の落し子たち。強大な力を持つその怪物たちは、今は冥界よりも地下深くに幽閉されていますが、刻々と神々への憎しみを募らせ今か今かと反撃の機会を狙っています。怪物たちは知恵や理性もありませんが、力だけは強大です。今の神々だけでは手に負えず、どうしたものかと頭を悩ませます。

ギガントたちは神々だけでは滅ぼせないのです。———人間の英雄が必要だったのです。

 

『・・・・・うむぅ』

 

そして問題は██です。

目の前の化け物はあろうことか白き巨人の力を奪いました。下手をすればギガントたちの神輿になりかねません。ここで殺してしまった方がこの星のためになりますが、それができたら苦労しません。もはや調伏どころではありません。

ならば、ただの人間にしてしまうのが一番ではありますが、今の神々にはそれを行えるほどの権能がありません。その権能は白き巨人に奪われ、今は██の元にあるのです。なんとかして、その権能を取り戻す必要があるのです。

 

ですから決めました。

██が自ら権能を返還する方法を。

 

『哀れな愚者よ。汝に試練を与えよう。我ら12神の試練を乗り越え、最期、その全てを返還すれば・・・お前を人間にしてやろう』

 

予言によれば、ギガントたちは神々だけでは滅ぼせず、そのためには人間の英雄が必要でした。

ゼウスは人間の女性であるアルクメネーに半神半人の子を産ませ、ギガントを滅ぼすための英雄の子を作りました。そして、██はその子供を英雄にするための足場にしようと考えました。12神には、その子供を英雄にするための試練を与えるように命じました———まあ、大半の神々は私利私欲を満たすため、守ることはありませんでしたが———。その英雄に殺されてくれれば手間が省け、権能が返還されればただの人間にしてしまえばいいのです

 

こうして、██は偽りの身分と名を与えられ、地上へと送られました。

英雄のための足場として。

 

 

 

「助かります、ケイローン。なにぶん、弓を扱った経験があまりないもので見よう見まねでは限界があったから」

 

「いえ、構いませんよ。1人手では苦労するでしょう。わたしが力を貸せることならなんでも言ってください」

 

「あはは、それはお互い様でしょう。そうだ、以前教えて頂いた保育のイロハなのですが・・・」

 

ケイローンとよくわからない青年が話している。

その様子をまだ幼いイアソンは見ていた。国を追われ、地位を失い、ケイローンの元に預けられたイアソンは教えを乞い、己の野望のため日夜励んでいる。しかし、数日前にあの男が来てからケイローンはかかりっきりで全然相手をしてくれない。イアソンに渡されたのは大量の課題の山。面白くありません。

「早く帰っちまえ」と青年を睨みます。

ふと、目が合いました。

青年はにっこりと笑い、手を振ってきます。こっちの気も知らないで、とムカっとし無視して引っ込みました。

 

「あら、嫌われたかな」

 

「ん? ああ、イアソンです。最近預かった子ですがなにぶんやんちゃでして。怒らないであげてください」

 

「いえ、いえ。

 それにしても綺麗な顔立ちをしてますね。随分いい家の子のようだ。うんうん、可愛い子は好きです。食べちゃいたいくらい」

 

「・・・いけませんよ」

 

舌なめずりをする男をケイローンは咎める。

青年は笑って冗談だと言った。

 

「おいおい、マジにならないでください。ジョーク、ジョークですよ。あいにく、そういう趣味はない。今はこの姿ですしね」

 

「それなら結構。ですが子供の前では遠慮してくだいよ。本当に嫌われますから」

 

もし話をすることがあれば、仲良くしてやってくださいと簡単な挨拶を交わし、男は去っていった。男には待たせている者がいるようだ。

それを見ると、イアソンはケイローンの元へ駆け寄った。

 

「なあ先生」

 

「こらイアソン、挨拶は大事だと教えたでしょう。礼儀知らずは誰にも相手にされなくなりますよ」

 

わかったよ、とぶっきらぼうに返事をし「アイツは誰なんだ」と問うた。

 

「先生の生徒か?」

 

「そうですね。生徒と言えばそうですが、あなたのように預かっている生徒ではありません。いわゆる聴講生というやつです。たまに顔を見せてくるので教授したり、課題を与えたりなど、こちらとしては覚えが早いので教えがいのある生徒ですね。熱心なところは、貴方も見習って見るのも良いかもしれませんよ」

 

「・・・ふんっ、何処の馬の骨かも知れないやつを見習えるか」

 

「ああ、まだ名前を教えていませんでしたね。彼は———」

 

 




キャラクターイメージは枯れ木。「こういう時はこうすれば良いんだっけ?」、そんな感じで演じてる。偉大なる大英雄の踏み台。
やり直し、余計な設定を取り除いた怪物って感じで
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