【最期】
冗談じゃない。
殺されるのもごめんだ。都合よく使われるなんてもっとごめんだ。
幸い、聖剣はまだこの手にありました。だから、追ってくる人間も神様も、みんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
斬り捨てました。みんな殺しました。聖剣はいつの間にか黒く染まっていました。
可笑しな話です。
星を救ったはずなのに。世界を救ったはずなのに。人を救ったはずなのに。
いつの間にか、私は救世主から悪役になっていたんです。
それからは・・・あまり記憶がありません。
西に逃げたのか、東へ逃げたのか。ともかく果てへ、果てへと目指したのは覚えています。
食料も巨神のおかげで草木すらありませんでしたから時折見つけた村から奪ったり、奪われたり、どうしようもない時には神様を喰らったこともありました。
・・・そうですね。巨神となんら変わらなかったのでしょう。
確かその頃です。聖剣が私の手から無くなったのは。奪われたのかもしれないし、資格がないと見限られたのかもしれません。
まあ、どうでもいいことでした。
そうして、私は辿り着きました。
———巨神の亡骸に。
致命傷を負った巨神は、当てもなく地上を歩み続けたがやがてこの地で力尽きたようでした。
「やっぱり、美しいな」
人間よりも、神様達よりも。
死んでもなお、その肉体は輝きを放ってました。
心地が良かったんです。怯えた人間や怒る神様達の目とは違って、その瞳には生気がなくて、私と同じでしたから。
味はあまりしなかった。
もう、どうでも良くて。
死にたくなくてここまで歩いたはずなのに、ここで終わっていいなんて。
何もかも投げ捨てて、目を閉じかけました。
『汝の魂、その肉体、全てを貰い受けたい』
ふと、そんな声が聞こえてきました。
今思えば、それが「抑止力」の声だったのでしょう。人類と星の願望がカタチとなった安全装置。私に掛けられた声が星側か人類側かは不確かなものでしたけど、確かに聞こえたのです。
『汝の力が必要だ』
必要。
このクソッたれを必要だと言ったんです。
元気があったら笑い転げてたところです。どこの誰がこんな化け物を必要とするのか。
「・・・好きにしたらいい。この魂も、肉体も。使い捨てればいいさ」
どうせ人格も持たない傀儡となるのだろう。
結局、都合のいい防衛装置か。
とっくにどうでもよくて、何も残ってなかったので、そのまま目を閉じた。
◇
【辞めてもいいんだよ】
「———と、これで私の昔話は終わり」
長い長いお話はこれで終わり。
マスターは何とも言えないような顔で私を見てきた。むっ、こちらとしては笑い話のつもりだったのだけれど。
「まっ、こうしてあなたに召喚されたということは私にも役割があるということでしょう・・・もしや、私を必要としていたのはあなただったのかも? わー!なんだか運命?感じちゃいますね」
なんてありもしないことを言ってみる。
・・・「そうかも」って、うわー、頭大丈夫ですか?
正直言って私、貴方みたいな人間大っ嫌いなんです。
「なんでって・・・別に、あなたじゃなくてもいいじゃないですか。逃げ出せばいいじゃないですか。他の英霊だってそうです。どうして、進み続けられるんですか。辞めても良かったじゃないですか」
マスターは困ったように笑う。
ほら、あなただって押し付けられただけじゃないですか。
「諦めてもいいんですよ?誰も文句は言いません。言えるわけがない。私はそれを肯定してあげます」
———そうだね。
「ほら、やっぱり・・・」
———でも、このままじゃ終われない
「・・・はあ?」
———こんな結末は認められない。友達や家族に会いたい。それにマシュやドクター、ダヴィンチちゃん・・・所長。みんなが戦っている中で一人だけ逃げる訳にはいかない
「・・・背負うっていうんですか、全部」
燃え尽きた人類史、その全てをその小さな体で。
———うん。それが自分にできることなら
そう言って、頷いた。
ああ、やっぱり嫌いだ。私とは、違う。この子は一人じゃないんだ。
———それに
「・・・何、まだあるの?」
幼子は顔をあげ、私の目を見つめる。
逸らすことができない。
けれど、その目は畏怖でもなく私を一人の人間として見ている。
———セイバーだってあの時逃げなかったじゃないか
「ッ」
ああ、そうだ。
思い出した。
あの日、たしかに私は逃げなかった。逃げれなかった。
その時だけは、誰かの・・・いや、自分のため。
——————『明日』を手に入れるために立ち向かったんだ。
「ふふっ、そうだね。なら、私があなたに言う権利なんてなかったわけだ。
やっぱり、似ているのかもね私達」
そう言って、笑いかけた。
諦めさせることはできない。その権利はない。誰も彼も止めることはできない。
私にはできなかったことが、この子にはできる。
そう信じて。
「言葉を一つ残しましょう。
誰が為、なんて理由で走り出してはいけない。あなたは自分自身の為に———明日を手に入れるために走りなさい」
人理保障機関カルデアは7つの特異点を乗り越え、直に最後の特異点に向かう。
なら、その背を押そう。
それが私が呼ばれた理由であるのであれば、もう一度、この力を振るおう。
「その時がきたら私を呼びなさい。名も無き担い手の身ではありますが、この力、あなたに預けましょう」
———そう言って、セイバーはどこかへと行ってしまった。今まで、誰の前でも見せてくれなかった笑みを浮かべて
クラス:セイバー
真名:———
宝具:
本来であれば召喚されるはずのない存在だが、カルデアのマスターの“世界を救う者”という縁が繋がってしまい召喚される。特異点Fあたりで召喚されている設定で、ぐちぐち言いながらも力は貸してくれたり、くれなかったりして絆が全然上がらない。けれど、少しづつ自分のことを話してくれたり、頑張りすぎるマスターのことを内心は心配している。根は真面目で、性格が捻くれて悪ぶっているだけ。
多分、アルトリアとかそういうタイプの英霊は死ぬほど嫌いで、それ以上に羨ましく思っている。