世界を救った聖剣の担い手さん   作:ラスキル

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これは世界を救う戦いである

【終局特異点】

 

「無駄だ。何もかも無駄だ!

 ハハハ!ハハハハ。ハハハハハハ!!」

 

「———そんな・・・! 魔神柱、再度出現!

 復元でも回復でもありません!いま、新しいフラウロスが誕生しました・・・・!」

 

———キリがない!・・・もしかして、この地面が全て———

 

その時、通信の乱れと共にカルデアに衝撃が与えられたことが伝わってくる。

 

「っああ、何があった!? 今の衝撃はなんだ!?」

 

ロマンの声が聞こえてくる。

その声に、焦った声でスタッフ達が返す。

 

『外部からの衝撃です!

 第二攻性理論、損傷率60%を超えています!』

 

『崩壊まであと5分・・・!

 ドームが破壊されれば管制室の不在証明が保てません!カルデアは直に時間神殿に取り込まれます!』

 

『館内の電気供給を中央以外カットしろ!炉心からの電力は全て攻性理論とカルデアスに使え!管制室はなんとしても持たせる!

 レオナルド、キミが言ってた切り札とやらはまだか!?』

 

『っ・・・もう、少しだ!

 こっちも霊子演算用のスパコンの制御に精一杯なんだ!霊子制御率は・・・現在84%!あと数分だ!数分だけ持たせてくれればいい!

 だが、焼石に水だぞロマニ!カルデアを襲っているのは魔神柱だ!私が出てもいいが、相打ちで一柱消せるか消せないかだ。巻きついている他の奴はどうしようもない。根本的に解決するなら、潰される前に、特異点を消すしかない!』

 

駆け回るような通信が耳をつんざく。

それを知ってか、フラウロスは見下すような笑い声をあげる。

 

「ハハハハハハハハハハハハハ!

 それは不可能、不可能なのだよ諸君!私は不死身だ。我々は無尽蔵だ。この空間全てが我々なのだから!

 顕れよ、顕れよ———同胞たちよ、その姿を見せるがいい!」

 

「まだ魔神柱が———

 いえ、これは———」

 

マシュは何かを悟る。

そう、彼ら魔神柱は常に七十二柱。いくら殺されようとその数を減らすことはない。

この大地が、玉座がある限り、数を減らすことはないのだ。

 

「ハハハハハハハハハ!

 私を殺したければ七十二柱の同胞、すべてを殺し尽くすことだ!だが?そんな火力が、そんな軍勢がどこにある? もはや地上の何処にも、そんなものは存在しない!」

 

勝ちを確信した笑い声。

次々と出現し始める魔神柱。そうか、自分たちは飛んで火に入る夏の虫にすぎなかったのか。

 

「マスター、どうすれば・・・!」

 

「ハハハ!意気揚々と飛び込んできてご苦労様!貴様たちは我々に追いついたのではない。自ら、死ぬしかない墓場に飛び込んだのさ!」

 

———・・・いや・・・いいや!

 

精一杯、力を込めて睨みつけてやる。

 

「お見それした!まだ敵を睨むだけの強がりが出来るとは!だがもういい、諦めが悪いのは十分に理解した!それが通用するのは昨日までだ!

 最後のマスター、最後の人類である君達に我々は敬意を示す!しかし、それもここで終わりだ。お前に明日は永遠に訪れない!!カルデア諸共、その旅もここで終わりでっす!ハハ、ハハハハ、ハハハハハハハハハ!」

 

フラウロスの攻撃が迫る。

マシュが必死に抑えてくれるが、彼女も限界が近い。

 

「先輩ッ・・・!」

 

———マシュ!・・・ッッッ・・!

 

そのまま吹き飛ばされ、自分は地面に叩きつけられた。

 

・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

・・・・やっぱり・・・・無理、だったのかな・・・・

 

 

『———まだです。顔をあげなさい』

 

 

 

 

 

『——————霊子制御率97、98、99・・・100%!! 聖杯起動準備完了です!』

 

『間に合ったか! フジマル聞こえるかい!?まだ諦めちゃいけないぜ、なんたってこのダヴィンチちゃんの切り札がまだ残っているんだからね!」

 

———え?

 

『これまでの旅で、君たちが7つの特異点で集めた7基の聖杯。その全てを大量の魔力リソース源として起動した!そして、生み出された魔力と私がために溜め込んでいたへそくりリソースを君の礼装へと今から送る!予め刻まれた、決戦術式が起動するはずだ!』

 

その言葉通り、礼装に魔力が送られ術式が起動する。

 

『———まったく、出番がなく終わるかと思いました』

 

どこからか声が聞こえる。

 

『———言ったでしょう?その時が来たら私を呼びなさいって』

 

———ああ!

 

『そうさ、その術式はあるサーヴァントを召喚するためだけのもの。そしてその条件は揃っている!

 7つのクラスに該当しない霊基、人類悪といわれた災害の獣。その業、人類史の焼却。そして———世界を救うマスター!』

 

人類最後のマスターは立ち上がる。

もう一度、立ち向かうために!

 

『これこそ、ダヴィンチ式決戦冠位召喚術式エクスカリバー! さあ、フジマルくん!あとはキミが導くだけだ!』

 

「なんだ? 何をしようと・・・いや、もはや何もかも無意味!貴様らはここで消え去るのだ!!」

 

フラウロスが今度こそ息の根を止めようと攻撃を放つ。

それを、

 

「———ッ・・・・先輩!!」

 

マシュが必死の形相で守る。

どちらにせよ、残された時間はない。彼女は僅かな命の灯火を燃やし尽くす。ただ一人、自分を救ってくれた一人の人間のために。

 

『———さあ、今を生きるあなたが導きなさい・・・あなた自身のために!』

 

藤丸は胸に手をあて、言の葉を紡ぐ。

 

 

 

 

———告げる。

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

 

聖杯の寄るべに従い、人理の轍より応えよ

 

汝、星見の言霊を纏う七天

 

降し、降し、裁きたまえ

 

天秤の守り手よ———!

 

 

 

 

カルデアに貯蓄されている7基の聖杯による魔力リソースに英霊ダヴィンチによる補助。

そして、礼装に刻まれた決戦冠位召喚術式エクスカリバーを通じて、無限ともいえる魔力を、この領域に満ちる真エーテルさえも際限なく取り込んで———ソレは遂に、この神殿に降臨する。

 

「貴方の戦いは人類史を遡る長い旅路でした。ですが悲観することは一度もなかった。だって、貴方は一人ではなかった。無数の出会いが貴方を待っていた。この星の全てが、聖杯戦争という戦場になっていても貴方は決して諦めることなく、結末は決まってない、と空を睨んだ」

 

光に包まれていたソレは、召喚者の前に姿を現した。

自分を導いた人類最後のマスターのために。

 

「それは今も変わらない。

 さあ———世界を救いましょう、マスター。これは、貴方と私達が、明日を取り戻す物語だったでしょう?」

 

時間神殿に現れた魔神柱が突如光に包まれ消失していく。

 

「ぐあああ——!?なんだ、今のはなんだ!?なぜフジマルが消えていない!?なぜ、カルデアがまだ残っている!?お前は、一体!?」

 

一歩、また一歩進むごとにその光は敵を包み込む。

星に敵対する者を決して許さぬ、聖なる光。

 

「————我が真名は無く、されど再び英霊として呼び声に応えた」

 

人類史において、その名は残されていない。

否、この場において人類最後のマスターである藤丸だけは、彼/彼女の神話を知っている。

 

かつて、世界を救った聖剣の担い手。

 

「冠位を以て罷り越した。

 我が肉体に人理が与えし霊基は、剣の冠位。

 星の敵。

 世界の敵。

 その全てを打ち倒す、グランドセイバー・・・まあ気軽にクラス名で呼ぶがいい」

 

忘れ去られた担い手が冠位を以てこの場に降り立つ。

 

———セイバー!

 

その声に担い手は微笑みで返す。

フラウロスは動揺を隠せない。有り得ないという声色で担い手に叫ぶ。

 

「馬鹿な!馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!

 グランドクラスだと!?有り得ぬ!有り得ぬ!グランドキャスターたるソロモンは、こちらの手にあるというのに!」

 

「そりゃあ、使えなくなったら次を寄越すでしょう。汝は、星の敵であるのだから」

 

「星の敵だと!?」

 

「人理焼却、それこそが汝の罪。すでに人理は星の延命のために必要不可欠な理である。人理の消失、それ即ち星の死同然。

 ならば、それを破却するのが私の役割・・・・まあ、いつだって手遅れ寸前なんですけど」

 

「だが、だが、だが!

 たった一騎、お前だけで何が出来る!たかが、サーヴァント風情、我ら72柱にかかれば・・・!」

 

不敵な笑みを担い手は浮かべる。

それは違うと否定するように、天に向かって指を指す。

 

「いいえ、一騎ではありません」

 

「なんだと!?」

 

「私は呼び水に過ぎません。彼らと、マスターの縁をつなげるためのね。

 

 ———さあ、ソラを見上げなさい!そこに運命が示される・・・!」

 

そう、一人ではない。

その声に応えるのは藤丸が歩んだ軌跡に触れた英霊。

 

「あれは・・・宙を駆けていく、何条もの流星は———」

 

『・・・これは夢か? 計器の故障か?特異点各地に召喚術式が起動している! やった、さすがダ・ヴィンチちゃんだ! 凄い! まだこんな切り札を用意していたのかい!? でも、こんな物騒な秘密兵器があるなら、報告ぐらいしてほしかったな!』

 

『いや。私が準備したのは冠位召喚用の術式だけさ。

 これは———』

 

———ああ、あれは!

 

魔神達は狼狽える。

消滅を繰り返す72柱。サーヴァント達が次々と現れ、その数は増大していく。その猛攻に、次第に数が維持できなくなっていく。彼らは、なぜ自分たちが押し負けるのか理解できない。これまでの人類史を観測してきた魔神柱にとって、相互理解を拒んだ人間が、互いに協力し合っているこの状況を認めることはできない。

 

「・・・貴方達は知り得ないことでしょうけど、私の最期は無様な悪役でした。なら、私は倒されるべき悪という側面を持っている。であれば、ソレを打ち倒すべき英霊が現れるのは必然でしょう」

 

「何を・・・!?」

 

「私は英霊を否定する者でもあり、英霊を肯定する者でもある。

 人類史を肯定するものとしての力と、マスターが歩んできた軌跡で紡いだ縁。ソレをこの領域に繋げました。つまり、私自身を召喚術式に組み込んだということです」

 

「あり得ぬ、あり得ぬ! なぜ貴様らがたった一人に力を貸す!」

 

「否定しかできないんですかあ?・・・まあ、正直どうでもいいんですよ。人類史がどうだとか、未来がどうだとか、所詮死人には介入できないので。それに、私たちは我欲に囚われた生命です。ソレは英霊であろうと変わらない。いえ、英霊だからこそ己が信念を曲げられない

 ———しかし、そんな私達を信じた人間がいる。多くの英霊、多くの争いを目にしながら、なお、私達を英雄と信じた者が。その信に、その声に応えずして英霊を名乗れないでしょう」

 

流星の如く降り注ぐ召喚式、次々現れる英雄達の前に担い手は歩みでる。

 

「———今こそ、約束された勝利をここに。あらゆる絶望を切り開くために、あらゆる希望を取り戻すために、いま再び聖剣を振るいましょう」

 

高らかに、手にする勝利を掲げる———!

 

 聞け!人理に刻まれし一騎当千、万夫不倒の輝かしき英霊達よ!汝らの誇りを胸に、互いに背を預けよ!人理焼却を防ぐためではなく、我らを信じた契約者の道を開くため!この聖剣の名の下に、輝かしい勝利を———!」

 

宙に駆けるは何条もの流星。

その全てがサーヴァント。細い細い縁を手繰り、特異点で知り合った英霊、戦った英霊。その中に“力を貸してもいい”と思った者たちがこの領域に駆けつけたのだ。

 

「さあ、72柱の魔神柱はその全てが戦闘中だ。これなら走り続けられるでしょう?」

 

———セイバー、うん! 

 

「いい返事です。

 ・・・では、道は私が切り開きましょう」

 

その言葉と共に、辺りに魔力が満ちる。

光が満ち溢れる。

それこそが、聖剣の担い手たる彼/彼女の宝具。

 

「———これは世界を救う戦いである」

 

一人の人間のために冠位をここに返上する。

 

「束ねるは星の祈り、輝けるは人の願い。今こそ、ここに希望を示す———!」

 

其は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 




END

もう少し、生前の話を続けてみようかしら
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