そんなこと言われても私はただのお釣り計算AIですから 作:デ カ マ ク ラ ト ン
美甘とか初見の時全くわかんなかったゾ
「いいですね……ただでは踏み潰されない姿は、いい余興になります」
「“……”」
なにか、キムラヌートの行動には違和感がある。
元々、キムラヌートは浪漫を求めてシェリダーを動かしていた。その先で攻撃されたから、普通に反撃しただけなのが最初の出現。デカグラマトンと名乗ってヒマリとリオの前に現れた時には、特に危害を加える訳でもなく飄々とした態度で煙に巻くような言動だったという。
落ち着いて、冷静に考えよう……私の中のルシフェルと言う先入観を捨てて、彼女の考えを理解するんだ。友達を名乗るなら、それぐらいはしてあげなければならない!
「色々と考えているようだけど、先生は生徒たちのことが心配にはならないのかい? 先生もシェリダーの力はその目で見ているはずだが」
「“あの子たちは強いからね。私の指揮が無くても、きっと状況を打開してくれるよ”」
「……いい信頼関係だね。その信頼で、生徒が亡くならないことを祈っておくといいよ」
デカグラマトンと名乗っていた時の行動。私と接触してシャーレで活動していた時の仕草。エデン条約で私を助けた時の言葉。全てを繋ぎ合わせれば真実が見えてくるはずなんだ……彼女の根幹となる部分が。
「おや思ったより早かったね? 来客のようだよ先生。どうする?」
「“来、客?”」
私が「来客」という文字を理解する前に、シャーレの扉が吹き飛んだ。
爆炎の中から複数の陰が飛び出して、私とキムラヌートの周りを囲うように立ち、全員が武器をこっちに向けてきた。
「ようこそ独立連邦捜査部シャーレへ……
「“サオリっ!?”」
「先生、少し待っていてくれ。すぐに助ける」
見間違えるはずがない。この4人はエデン条約のごたごたで色々あったけど、結局は私の助ける生徒でしかなかったアリウススクワッド。サオリは他の3人とは別行動をして、ブラックマーケットにいたはずなのに、どうして全員で揃ってシャーレに!?
「……連邦生徒会だろう? 七神リンが君たちアリウススクワッドに裏回線で通信していたことは確認していた。面白そうだから妨害せずにそのまま通してあげたんだ」
「すぐに先生から離れろ」
「これを見てもそれを言うのかい?」
「……撃つ前になんとかする」
その作戦は本当に大丈夫なのサオリ!?
「んふふ……いやぁ。私としてもここで先生に死なれるのは困るからね。この脅しはやめておくよ」
キムラヌートは案外素直に私の後頭部に突き付けていた銃口を離して、私をそのままサオリの方へと投げた。
「撃つよ?」
「まだ待て」
「“私からも、待って欲しい”」
私の安全を確認したミサキが、すぐさま攻撃しそうな感じだったけど、サオリと私に止められて不服そうな顔をしながら一歩下がった。キムラヌートはそんなやり取りをみながらニヤニヤと笑いながら私の為に淹れたと言っていたコーヒーを口にした。
「“まず、各学園を襲っているクリファーを止めて”」
「それに私が頷くと?」
「頷かせるために、私たちがいるんだと思いますぅ」
「うん。先生の安全が確保できてるからね」
依然として余裕な顔をしているキムラヌートに対して、今度はヒヨリとアツコが銃口を突き付けて強い口調で詰め寄るけど、それに対してもキムラヌートは笑うだけ。
「まぁ、そもそも私をここで殺したところであのクリファーたちは止まらないし、私の意識も別のクリファーに移動するだけなんだが……クリファーを止めること以外の頼み事ぐらいは聞いてあげてもいいとも」
「先生」
「“任せて”」
キムラヌートのこれまでの全ての言動から考えて、彼女の内心を少しでも理解しよう。そうすれば、自ずと彼女が求めていたものが見えてくるはずだ。
「“キムラヌートは私の味方だよね?”」
「そうだよ。そこは変わることはないと、言ったはずだ」
「“キムラヌートは……道具でも武器でもない”」
「それに関する答えは保留中だ。先生がどうしてもと否定してくるのでな……再定義中と言ってもいい」
「“じゃあ、この行動も私の言葉が原因なんだね”」
「否定はしない。それが原因であるとも言えるが……全てと言う訳ではない」
大体……わかった。
キムラヌートが何故こんな強大な軍事力を手にしたのか。そして、何故彼女が3つの学校を襲ったのか……そして、何故アリウススクワッドが私の所に来ることを知りながら放置していたのか。
「“君は、ここで死ぬつもりなの?”」
「それは難しい質問だ。ただ、死という概念を貴方の前から消えることであるとするのならば、そうであると言えるし、死という概念を貴方の記憶から消えることであるとするのならば、違うと言える」
「“それは死だよ”」
「そもそも道具に死があるかどうかが微妙な話だとは思うが……そうだね。私は、死ぬために先生と敵対した」
やっぱり。
そうすれば、キムラヌートの狙いは……3つの学園自治区が、痛みを伴いながらも団結すること。私と言う存在を中心に、一つの敵に対して纏まること。
横にいるサオリが動揺するように息を飲んだのがわかった。死ぬために戦いを引き起こしたなんて、サオリからしても意味のわからない話だろう。
「生憎、私は虚無とは
「“今すぐやめて”」
「それは友としての言葉かな? それとも」
「“先生として、だよ。ヘイローを持ち、制服を着ているなら君も生徒だ”」
そうだ。私は友達としてキムラヌートを助ける方法なんて見つからない。だから……キムラヌートは生徒として叱りながら助けよう。相手が生徒なら……私はきっと助けられる。
「ゴルコンダ風に言うなら、私に「生徒」というテクストを貼り付けることで「先生」という概念を通して私を救う、といった感じかな?」
「“ゲマトリアとまで……”」
予想していなかった訳じゃ、ない。
彼女が自分に対してなにかを隠していることは知っていたし、その結果単純に彼女の暴走を招いたのなら私が反省するところだけど……まさかゲマトリアなんかと繋がっているとは思わなかった。
「そう言わないでやって欲しい。黒服も、ゴルコンダもデカルコマニーもマエストロも、先生のことは好ましく思っている訳だからね。それに、私と彼らは芸術仲間ではあるけど、協力関係ではないからね」
「“大人しくしてもらうよ。キムラヌート”」
「それはできない」
キムラヌートのその返答と同時に、サオリが私の制止より先に左手に持つハンドガンで銃撃したけど、微笑みながらコーヒーを飲むキムラヌートの前で弾丸は不自然に停止して届かなかった。
「また私とやろうと言うのかな? 錠前サオリ」
「先生、指示を!」
「“……”」
「迷っている暇はない!」
そうだ。キムラヌートは止めなければいけないけど、それ以上に3大学園はこのままだと本当に崩壊してしまう。本人はクリファーで学園を滅ぼすつもりなんてないんだろうけど、学園自治区が大きく衰退すれば簡単に崩壊してしまう。その前に彼女を止めて……思いっきり謝らせてやる。
サオリと先生のキムラヌートに対する温度差、結構あります