そんなこと言われても私はただのお釣り計算AIですから 作:デ カ マ ク ラ ト ン
覚悟(礼装)の準備をしておいてください!
新たなる手足を手に入れた私は、上機嫌で先生のクレジットカードの利用記録を無言で先生のスマホから勝手に早瀬ユウカのモモトークに送信しておいた。全く……一度で止まらないのならば何度でも言って聞かせるしかあるまい。
話は変わるが、どうやらパヴァーヌが始まったらしい。と言うのも、現在先生はミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部と共に頑張っているらしい。既に「無名の神々の王女」つまりは「天童アリス」は見つかったらしい。正直、天童アリスが眠っていた廃墟の近くには、私がバレないように動かし続けている兵器生産工場があるので見つかったら困るのだが……今回はなんとか見つからずに済んだらしい。まぁ、万が一発見されたところで、あそこには新たなるクリファーである
第4のセフィラである
ブルーアーカイブのケセドは、本体に一切の攻撃性能はなく、ひたすらに生みだしたドローンや防衛設備などで攻撃する指揮官タイプで、見た目は強力な防護によって守られた機械的な球体である。しかし、私の目指すかっこよさからは少しばかり離れている。
アディシェスは、ケセドと同じ様に一切の攻撃性を持たず、廃棄された工場を丸々利用することで戦闘用のドローンやオートマトンを生産して戦う。違うのは、生産するオートマトンやドローンには高性能なシールド発生装置を装備させていること。アディシェスはあくまで拠点防衛が目的であり、相手を殲滅する必要などないのだ。時間を稼ぎ、他のクリファーがやってくるまで耐えるのがアディシェスの仕事。そしてアディシェスの見た目も、ビナーに似せたシェリダーのように、しっかりとケセドに似せている。私は機械的でありながら、どこか生物のような部分も感じられるデザインが好きなので……思い切って見た目をドス黒い心臓に機械が幾つか貼り付いているようなデザインにした。クリファーから名前を取っているのだからアディシェスは「悪魔の心臓」っぽくしたいと思って作った訳だ。
アディシェスは順調に稼働していて、ゲーム開発部のために先生がミレニアムサイエンススクールとシャーレを行ったり来たりしている間にも、大量の兵力としてのドローンができている。途中から暇になったので、ドローンやオートマトンだけでなく、戦車やヘリコプター、この世界ではオーパーツ扱いされてしまいそうな地対空ミサイル、果てにはエネルギーを馬鹿みたいに食う代わりに空もちゃんと飛べるロマンの飛行戦艦まで作り始めてしまった。これも先生がミレニアムに行ってしまって暇だからだ。
拠点にしていた廃墟だけでは資材が足りなかったので、別の廃墟からも拝借してガンガンと製造を続けているが……暇すぎて生産速度がやばいぞ。
残りのクリファーにしても順調に計画は進んでいるので、それこそエデン条約調印式の時には更に数体のクリファーが完成しているかもしれない。
「“なんか、久しぶりに据え置きのゲームやりたくなってきた”」
『先生は感化されるのが早すぎるぞ。もう少し自分を持った方がいい』
「“そんなことはいいからさ、ちょっと私と格ゲーやらない?”」
『断る。私には未来の演算が可能なほどの能力が存在するんだぞ? やったところで先生が涙目になるだけだ……そもそも以前にやっただろう』
「“ちょ、ちょっとは強くなったもん!”」
『もん、ではない』
可愛いか?
シャーレのビル内に私と先生、そしてシッテムの箱であるアロナの3人だけになると、急に先生が子供っぽくなる。普段は意図的に生徒に頼られる大人として振る舞おうとしているのだろうな。銀鏡イオリの足を舐めるのだけは、理解できないが。
膨れっ面になりながらオンライン対戦を始めた先生を見ていて気が付いたのだが、先生が女なのだから……生徒たちとメモロビる(動詞)と、それは完全なる百合なのではないか?
瞬間、私の中の演算機能がとんでもない速度で動き出し、先生と生徒たちのパーソナルデータを元にどんな百合を繰り広げるのか、あらゆる可能性を試行した。
『先生』
「“このっ! え、なに?”」
『楽園は証明された。先生×生徒の百合は観測することができる地上の楽園だ』
「“ひっ!? アロナ! ルシフェルが壊れた!”」
失礼な……私のかんぺき~な演算処理に狂いはない。先生はパヴァーヌでゲーム開発部と百合百合してきたのだから、次はきっと補習授業部と百合百合しに行くに違いない。ゲーム開発部の出来事など私には殆ど関係ないと思っていたが、エデン条約編は常に先生に監視の目を付けておこう。
その日『それ』は、どこからともなく現れた。
キヴォトスでよく使われる白色のオートマトンとは違い、不気味なまでに黒く塗装されたオートマトンは、1体で驚異的な戦闘能力を見せた。まるで中に人が入っているのではないかと思えるほどの反射速度に、咄嗟に見せる人間的な仕草。なにより、的確にこちらの心理的な部分すらも読み切って攻撃してくる人間性。
「っ!」
機械的な見た目のオートマトンが見せる人間的な動作に、生理的な拒絶感が生まれる。これは「不気味の谷」と呼ばれる現象に他ならない、のだろうか。
そんな無駄な思考に身体が流れたのか、的確にこちらの急所を狙って放たれた弾丸は、私の意識を一瞬だけ揺らす威力を持っていた。
(このままだと、不味いっ!)
自分の体躯に不釣り合いなほどに大きな愛銃を構えて、躊躇なくフルバースト。放たれる破壊の嵐を前に、周囲の建物には尋常ではない弾痕が残ってしまっているが、今はそんなことに気を遣っている余裕はない。私の集中砲火を前にしても、動けなくなるような致命的なダメージだけは的確に避けながら、少しでも甘くなった瞬間に背中に格納している誘導ミサイルを放ってくる。しかし、流石にここまで追い詰めれば負けることは、ない!
「……戦闘、終了」
無惨にもバラバラに破壊されたオートマトンを前に、私は膝をつかないように懸命に堪えながら立っていた。傷を受けた訳ではなく、疲労困憊になってしまった。なにせ、この謎のオートマトンが現れてから既に数十分間は戦い続けていたのだ。私を前にして、これほどに長い時間を耐えた相手なんて、見たことが無い。
『ご無事ですか
「そんなに騒がないで、アコ……問題はないわ」
このオートマトンはどこからやってきたのか、そして誰が動かしていたのかは、全くわかりそうもない。オートマトンを作ったりする技術なんて私にはないけれど、こんな高性能なオートマトンはそう量産できるものでもないだろう。後の処理は全てアコに任せてしまって、私はさっさと帰ろう。
ふーむ……流石に
向こうからは突然空からやってきた得体の知れないオートマトンなので攻撃してくるが、ちょっとした反撃で風紀委員のモブたちをのしてしまったのだ。流石、便利屋68にヒナさえいなければなんとかなると言われるだけはある。更に運が悪いことに、そこに偶々空崎ヒナが通りかかってしまったので、アディシェスの未来演算を利用しながら戦っていたのだが……未来を予知しても避けられなければ意味がないという辛い現実を突き付けられた。
今回は私が直接操作していたのでそれなりに戦えていたけど、AI任せにしたら数十秒でネジ一本残らずに破壊されてるかもしれない。キヴォトス最強格は伊達じゃないね。
どんな理由があったにせよ、生徒と戦闘になってしまった事実は反省しなければならない。先生の味方であると断言したのだから、生徒とはなるべく争わずに済むようにしたかったのだが……ポンコツを見せてしまったな。
汚名返上の為にも、エデン条約編では先生の護衛をなんとかしてみよう。特に、調印式の時に錠前サオリに撃たれる部分とかな。あの罪悪感で錠前サオリは先生に頼り辛くなっている所もあるだろうから、私が防いでやらないとな!
ゲヘナシロモップ好き
ヒナ虐は、ありです(クズ)
でも、曇らせたらちゃんと最後には晴らしてあげてよなぁ、頼むよぉ……