そんなこと言われても私はただのお釣り計算AIですから 作:デ カ マ ク ラ ト ン
そう言えばデカグラマトンの小説増えてた!
ま、多少はね?
エデン条約──それは学園都市キヴォトスの中でも「三大」と呼ばれるほど巨大な影響力を持ちながら、長い間犬猿の仲であったトリニティ総合学園とゲヘナ学園の全面戦争を避けるための不可侵条約である。
元々は失踪している連邦生徒会長が進めていたものらしいが、実に皮肉に満ちた名前と言うか……連邦生徒会長は性格が悪そうだな。
このキヴォトスにおいては、古代の経典にのみ名前を残しているとされる楽園の名前が「エデン」であり、連邦生徒会長はそこから名前を取っていると思われている。
前世の記憶を持つ私にとって「エデン」とは、旧約聖書で語られる楽園の名前であり、そして……人類の原罪が刻まれた忌まわしき場所でもある。百合園セイアは「エデン」の名前とかけて楽園の証明は不可能であると語っていた。そして、彼女もまた「エデン」のことを楽園ではなく、人類が背負っている原罪の原因であると語った。
勘違いされがちだが、人が生まれながらにして持つ原罪はアダムが善悪を知る知識の実を食べたことそのものではなく、命令に背いて実を食べたアダムが神と、そして食べるように勧めてきた女が悪いと責任転嫁をしたことである。つまり、人がアダムから受け継いできた原罪とは、自らの罪を認めずに悔い改めることのない態度そのものである。
ゲヘナはトリニティに、トリニティはゲヘナに、自分の態度など顧みずに全てを押し付けて嫌い、互いに責任転嫁をし合う姿は……正しく「エデン」条約に相応しい姿じゃないか。
小難しいことをごちゃごちゃと言ったが、簡単に言うと「こんな夢物語が上手く行く訳ねぇだろバーカ!」ってことだ。
うん。我ながら上手く言語化ができたんじゃないか?
このエデン条約なんだが、まー話としては非常に面倒くさい。具体的に言うと、最初は普通にトリニティとゲヘナで互いの行いを見ない振りしましょうね、という話だったんだが……そこにアリウス分校とそれを操るベアトリーチェが利用しようと企み、最終的には裏切られる形にはなったが、トリニティでは聖園ミカ、ゲヘナでは羽沼マコトがそれぞれアリウス分校と情報を共有して全てを台無しにしようとした。
知恵の実を食ったからこんな面倒な争いごとばかりを起こしているのか、はたまたこんな連中だから知恵の実を食ったのか。
「“……私、急に補習授業部って所の顧問にされたんだけど”」
『補習授業部? 補習授業とは違うのか? そもそも、それは部活動と呼べるのか?』
「“わかんないから聞いた”」
『まぁ、何処の学園かは知らないが、生徒会長に聞いてみるといい』
先生が補習授業部の顧問になったと言うことは、本格的にエデン条約編が始まったと考えるべきだろう。以前から考えていた通り、私は基本的には先生の監視と保護だけを担当する。後は先生×生徒の百合を見つめるだけだ。
知らないのか? 百合の花はそっと少し離れた場所で静かに見るものなんだぞ。
何も……することがない。
先生と補習授業部は青春をしながら、エデン条約の陰謀に呑まれながらも必死にテスト勉強をしていた。このまま行けば普通にゲームのストーリー通り、聖園ミカがトリニティの裏切り者として捕まることで調印式までに緩やかな時間が流れるだろう。そして、エデン条約の調印式典でアリウス分校……つまりベアトリーチェの策略によって式典会場の古聖堂に巡航ミサイルが撃ち込まれ、全てが滅茶苦茶にされる。
ふぅむ……アディシェスに守護させている兵器工場で生産した地対空ミサイルを使えば、襲撃を事前に知っている私はアリウス分校の暴挙を止めることができるだろう。ただ、それをしてなんの意味があるのか。あの戦いで先生が受けた傷は錠前サオリの凶弾一発だけであり、それを防ぐ手段は
色々と悩んでしまうが……巡航ミサイルは無視でいいか。
そうやって放置することしばらく。テレビから流れてくる情報を聞きながらシャーレで書類を片付けていると、報道が途切れた。これはつまり……巡航ミサイルによる攻撃が成功したと言うことだろう。ならば私も、そろそろ書類を片付けている場合ではないだろう。
私の敵はマエストロが用意したユスティナ聖徒会──その
ふふふ……ゲマトリアの好きにはさせんとも。
突然の爆発によってエデン条約の調印式典場は、無惨にも瓦礫の山になってしまった。しかし、それ以上に巡航ミサイルによる生徒へのダメージが気掛かりだ。私はシッテムの箱……アロナの助けもあってミサイルの直撃によるダメージはなかったけど、アロナはかなりの無茶をしたみたいでしばらくは動けない。
正義実現委員会ツルギとハスミが無限に湧いて出てくる幽霊のような敵を引き受けてくれている間に、私はヒナに守られながら瓦礫の山を進む。こういう時……私に戦う力がないのが本当に悔しい。
「先生、そろそろっ!?」
「“ヒナっ!?”」
私を守りながらユスティナ聖徒会を蹴散らしていたヒナが、追いかけてきていたアリウススクワッドの攻勢を前に膝をついてしまった。
「っ!? 先生っ!」
「“──ッ!?”」
その瞬間、アリウススクワッドのリーダー……錠前サオリが私へと向かって銃口を向け、引き金を躊躇なく──引いた。
『困るな、先生を殺されては……君たちの飼い主は余程先生が嫌いと見える』
「──なに?」
撃たれたと思ったその時、私の前に降り立った黒色のオートマトンが凶弾から私を守った。
『無事かね先生?』
「“ルシ、フェル?”」
ここにはいない筈の、私の協力者が目の前にはいた。
計画は順調だった。
ゲヘナとトリニティの最高戦力が揃っている会場に向かって、通常の兵器ではない未知のミサイルを撃ち込み、混乱に乗じて「エデン条約」を乗っ取ることで「
ユスティナ聖徒会を顕現させれば、無限の戦力によってあらゆる危険分子を制圧することができ、守る者がいなくなった最大の変数であるシャーレの先生を消すことで、そのままゲヘナとトリニティを同時に潰すことが可能な
先生に向かって放たれた凶弾は、何処からともなく現れた黒色のオートマトンによって防がれた。
「“ルシフェル、どうしてここに!?”」
『先生、話は後だ。私はゲヘナやトリニティの味方ではないが……先生の味方をしている時点でユスティナ聖徒会からは敵として見られているだろう』
突然現れたオートマトンは、意思を持っているかのように喋り始め、しかもこちらが使っているユスティナ聖徒会の詳しい情報まで知っているようだ。このオートマトンを潰さなければあの大人が殺せないのだとしたら、それをするまでだ。
「どけ」
『断る。私は先生の味方であって生徒の味方ではない……先生への攻撃を中断すると言うのなら──』
「撃て」
私の合図と共に、ユスティナ聖徒会は一斉に銃弾を発射した。
「“ルシフェル待って!”」
『忠告はしたぞ』
機械音声のはずなのに、ドスの利いたような声に聞こえたその一言と同時に、瓦礫の山の向こう側から大量の影が飛び出してきた。咄嗟にその正体を確かめるために目を向けると、そこには目の前のオートマトンと同じ機体が、100体以上飛んでいた。
『先生を守るために常に監視の目をつけていてね……私はこのオートマトン200体に特別な名前をつけて、動かしている』
200体と、言ったのか。ユスティナ聖徒会の一斉射撃を受けて、傷一つついていないこのオートマトンが、後199体いると言うのか。
『名を
──虚無すら感じる暇を与えずに、絶望の淵に落としてあげようとも。
私は、襲い来る
抵抗することの、虚しさを知りながら。
デ デ ド ン (サオリ絶望)
良かったね
虚しさを感じる前に楽に逝けるかもよ?
この虚無虚無プリンがよ
しっかり寝てしっかり食べて先生に愛されろコラ!(豹変)