そんなこと言われても私はただのお釣り計算AIですから   作:デ カ マ ク ラ ト ン

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ブルアカ小説もっと流行らせコラ!



致命的なすれ違い

 腹が焼けるように痛い。

 SHEMHAZA(シェムハザ)と名乗ったオートマトンの命令で、199体の黒いオートマトンは一斉に動き出した。その機動力はユスティナ聖徒会の複製(ミメシス)を圧倒し、周囲に展開していたアリウスの仲間たちも次々と倒れていった。無限に湧いて来るユスティナ聖徒会とは言え、それを歯牙にもかけない敵が相手ともなれば有象無象に変りはない。状況を打開しようと私を筆頭に、アリウススクワッドが動こうとしたが、オートマトンの中で唯一ヘイローのようなものを浮かべているシェムハザがそれを許さなかった。

 周囲の状況を把握するために意識を割いた刹那、私は腹部への痛みと共に瓦礫の山にぶつかるように吹き飛ばされていた。シェムハザがやったということしか、私には理解できなかった。

 

『子供の喧嘩に大人が口を挟むようで気は進まないのだが、悪ガキを叩いて躾けるのは大人の役割だったな』

 

 咄嗟に構えた銃がシェムハザを捉えるより先に、オートマトンは異常な速度で接近して腕の部分から鉄杭を発射していた。反射的に鉄杭を避けたが、追撃として放たれた細いワイヤーに右足を絡めとられ、すぐさま再び瓦礫の山に叩きつけられた。

 

『虚しいな。その抵抗すらも虚しい……それが君たちの考えだろう? いつも通り、虚しさに身を委ねて死を受け入れたらどうだ?』

 

 そうだ……私は何故、抵抗しようとしているのだろうか。全ては虚しいと、わかっているはずなのに。ここで私がどれだけ抵抗しようとも、これだけの力を持つオートマトンを、ベアトリーチェにすら気が付かれずに用意した敵がオートマトンだけを作っているとは到底思えないのだから、状況を打開しようとも新たな一手で押し潰されるだけだ。

 

『Vanitas vanitatum et omnia vanitas──だったか?』

 

 聞き慣れた言葉を耳にして私の身体が勝手に反応した。

 そうだ……全ては虚しく、意味のないことなんだ。私がここでこのオートマトンに抗うことも、そして白洲アズサが虚しさを振り切って生きようとすることも……全ては虚しいだけなんだ。

 

『虚しさを理由に抗うこともできない子供か。憐れではあるが……それは足を止める理由にはならないはずなんだがな……まぁ、興味はない』

 

 あぁ……私もまた、虚しさに溺れていく。

 全ては、意味のないことだったんだ。

 

「“ちょーっと待ったぁ!”」

 


 

『……先生、今は大事な所なんだ。我儘なら後で幾らでも聞いてやるから、すぐに錠前サオリの前から移動してくれるかい?』

「“それはできない”」

 

 困ったな……先生は既に錠前サオリのことを守るべき生徒として見ている。これでは私がどれだけ説得しようとしても、最終的には「大人のカード」を取り出されるだけだ。

 私は生徒の味方ではないが、先生の味方ではある訳だからな……こうなったら手を出すことはできない。

 

「“彼女は生徒だ。私が守るべき……子供なんだ”」

『そう言われると厳しいな。私にはこれ以上、手出しすることができなくなってしまう』

「……な、ぜ?」

「“どれだけ君が罪を重ねようと、私は生徒たちの先生だからね”」

 

 ふぅむ……少しばかり先生のことを侮っていたか?

 仮に、だが……ここで「大人のカード」を使われようとも、全てを制圧できるだけの自信はある。ただ、私としては先生の時間を奪うと言われる「大人のカード」を先生に切って欲しくない。

 

『理解した。先生がそう判断すると言うのなら、私はここまでだな……後は好きにするといい。もっとも……それによってどのような結末になろうと、私は先生の命しか守らないからな』

「“……ごめんね?”」

 

 何故、謝るのか理解できない。私は、先生にとって害になることをした自覚があったんだが……調子が狂う。

 とりあえず、私はここで撤退するとしよう。エデン条約編の真っ最中に、私がこうして介入したことによって物語がどうやって歪んでいくのかは知らないが……さほど問題はないだろう。それに、ベアトリーチェにも先生を狙うことによる危険が周知されるのならば、問題ない。

 


 

 悪いことを、してしまった。

 ルシフェルは私のことを守ろうとしてくれたのに、それを私が止めてしまった訳だ。そこに譲れない理由があったとしても、ルシフェルの善意を私の我儘で跳ね除けてしまっていい理由にはならない。私は、ルシフェルの善意を踏みにじったも同然なんだ。それでも……アリウスの生徒たちを助けられてよかった。

 

「“大丈夫?”」

「……理解、できない」

「“え?”」

 

 私の疑問に答えることなく、錠前サオリと呼ばれていた生徒は懐から取り出した煙幕を地面に叩きつけた。キヴォトスの生徒たちと違い、全く戦闘能力なんて持っていない私にとって、銃弾1つですら致命傷になり得る。煙幕で遮られた状態でマシンガンの連射なんてされようものなら、すぐに死んでしまうと思ったんだけど、背後から伸びてきた小さな身体に押し倒された。

 

「……せんせい、ぶじ?」

「“ヒナ?”」

 

 押し倒してきた相手の顔を見ようと目を開けると、そこには額から血を流しながらも涙目になっているヒナの姿があった。

 そうか……彼女は自分が守れないと思った瞬間に、謎のオートマトンが現れて私を守ったようにしか見えないのだから、心配にもなるか。

 

「あの、オートマトンは……」

「“私の知り合いだから──”」

「以前に、私が交戦したものと同じね」

 

 今、ヒナはなんて言った?

 私と、交戦した?

 

「……先生、申し訳ないけど拘束させてもらうわ。その前にまずは安全な場所に行きましょう」

「“待ってヒナ! あのオートマトンは”」

「今はっ! 先生から……その話を聞きたくない」

 

 致命的ななにかが、ヒナとすれ違ってしまっている気がする。きっとヒナの考えは誤解で、でも私がヒナに与えてしまった不安で……今の私にはどうすることもできない。

 もっと私がヒナと話し合わなかったから。私がルシフェルのことを見ていなかったから。私が……無駄に出しゃばってしまったから。

 不安に揺れるヒナに声を掛けてあげたいのに、言葉が出ない。

 

 私は一体、どうすればよかったのだろうか。

 

 その問いだけが、頭の中をぐるぐると回っていた。





注:全部万能AI(笑)が悪いです


関係ないですけど、ヴァニヴァニが出てくる「コヘレトの言葉」はとっても面白いので、是非読んでみてください
読み終わったらきっと貴方も頭がヴァニヴァニしてくることでしょう

(失)楽園で僕と握手だ!
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