超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち 作:環 藍河
「は…はぐっ…!」
ぐぐぐっ…がくっ。
エスカルビーが志願した特訓は、一対一のエンドレス勝ち抜き戦。だが、その緒戦はルビーの師とも呼ぶべき最強の超昂天使・エスカレイヤー。
鍔迫り合いのスタートダッシュから、紙一重の差でエスカレイヤーの一撃がルビーのボディを撃ち抜き…サブリミット・エスカレーションがルビーの全身を切り裂く。
頭から墜落し、ボディブローからのコンボダメージを五体に刻まれたルビーは…
(い…一瞬の、隙だけで…。
ダメージごっそり…もらっちゃった…。)
突っ伏し、エスカレイヤーの戦闘巧者ぶりに舌を巻きながらも、反撃の闘志を新たに燃やす。
(はあっ…はあっ…)
一方、先手の一本勝ちを奪い、更にルビーを追い詰めるエスカレイヤーの表情に、慢心や油断は無かった。
(ルビーの踏み込みがあと少し速ければ、膝蹴りもかわされて…
こっちがストライクエスカレーションでやられてた…。)
紙一重、刹那の一挙手一投足が、栄光の勝者と惨めな敗者を分ける。百戦錬磨のエスカレイヤーだからこそ、勝負の非情を誰よりも解っていた。
追い詰めた敵ほど…まして手負いのエスカルビーほど恐ろしいものはない。
まだ…とどめを刺していないのだから…!
だだだだだだっ!
「やああーーーっ!
はあっ! やっ! とおおっ!」
がすっ、びしっ、どすっ、どがっ…!
「くううっ…あぐっ、ぐううっ!」
だからこそ、全力で倒す。可愛い後輩だからこそ、その勇気とガッツを、全力で折りに行く。
俊敏性の鈍ったルビーに、容赦なく追撃をかけるエスカレイヤー。
セイバーをかわされても、ハイキックで、エルボーで、左のナックルで。
先輩の猛攻に防戦一方、ガードの上からじりじりと体力を削られ、脚を止めてしまうルビー。
がすっ! ばきっ! どすっ!
「うっ…! ぐふっ…かはあっ…!」
遂にルビーのガードは綻び始め、かい潜るエスカレイヤーの左拳が頬を、ローキックが震える右脚を、ミドルキックが左脇腹を、そしてリボンが鞭となってルビーの肩を、両胸を、両腿を打ち据える。
軽々と繰り出す攻撃も、その一つ一つが超昂戦士のパワーを乗せた重量級。何十キロものハンマーの打撃に匹敵するエスカレイヤーの拳が、蹴りが、逃げ場なくルビーを打ちのめす。
…がくっ。
「かはあ…っ、…は〜っ、は〜っ…」
防戦一方の紅き超昂戦士が、いよいよ限界を覗かせる。握る両拳でギリギリのファイティングポーズを保つも、肩で息をするたびにツーサイドアップが弱々しく震え、全身からしたたる汗を雫と振りまく。
(…決めるっ!)
湧き上がる確信に、エスカレイヤーは地を蹴り、華麗に飛翔する。
(私の最大火力で…ルビーを倒すっ!)
「ビートエンド・エスカ…」
「はあああーーーーっ!!」
(なっ…!!)
エスカレイヤーも、見落としていた。
ガードの両腕の向こうでも、ルビーの翠の両眼は輝きを失うどころか…!
「いけええええっっっ!!!」
がすっ!!
「くはあああーーっ!!」
闘志を滾らせ、エスカレイヤーへの反撃をじっくりと狙い、爛々と煌めいていたことを。
類い稀なる全身のバネにパルシオンの爆発力を乗せて放つ、ルビー渾身のアッパーカットがエスカレイヤーの左顎を撃ち抜いた。
高く舞い、振り下ろすセイバーと共にありったけのエナジーを叩き込む、エスカレイヤー最強の必殺技…ビートエンド・エスカレーション。
その獲物と狙われた相手は、空駆ける超昂天使が放つ絶大なエナジーの翼に、身ばかりか心まで魅了される。
FM77、ガレイズ、プレスバーン…ダイラストの数々の悪が、一歩も動けないまま自らの命運尽きたことを悟り…この技の前に倒れてきた。
だが…翼の虜となったはずの紅き超昂戦士は、怯まず、恐れず、その胸に飛び込んだ。
一歩間違えば、その拳を肩から腕ごと断ち斬られ、たとえダイビートの医療技術で繋ぎ直そうとも、武器を正面から粉砕されたルビーの心は…きっと、ずたずたに裂かれていただろう。
脳裏に本能で浮かぶ恐怖を、ルビーはそれ以上の戦士の本能で自ら封じ込めた。
そして掴み取ったのは、エスカレイヤーの顎を撃ち抜く逆転への一撃。
ぐらっ…。
「あ…ああっ…」
だだだだっ…!
顎から上半身ごと揺さぶられ、体幹の支柱を失ったエスカレイヤーに、チャンスを逃すまいと今度はルビーが追撃する。
「ストライクーーっ!!」(しまった…!)
ばしっ、どぼっ!
「あああっっ!!」
初めの右・左のハイキックにさえ耐えきれず、全身を空へ持っていかれるエスカレイヤー。
だが、ここぞと勇んだルビーの蹴撃は激しく…エスカレイヤーを浮かせすぎた。
背面跳びからオーバーヘッドで叩き込むいつものストライクエスカレーションでは、打点が高すぎて威力が殺される。
ルビーは一瞬思考し…ここから撃ち込める、エスカレイヤーに最大のダメージを与える蹴撃を組み立てる。
ざっ!(なっ…!)
ルビーが床を蹴り、飛び込んだのは…空中のエスカレイヤーではなく、その真横の壁。
ターゲットと高度を揃え、壁をさらなる踏切板として繰り出す超ハイジャンプが、荒鷲のように獲物を捉え…
「エスカレーションっっっ!!!」
どしゅっ!!
「きゃああああーーーっっ!!」
天使よりも、さらなる高みへ。
カクテルライトと重なるルビーの飛翔は、見守る誰もが心奪われる煌きを散りばめて…高く、高く。
どしゃっ。
「ぶっ…くはっ…!」
今度は、最強の必殺技を正面から打ち破られたエスカレイヤーが墜落する。
胴体は床に叩きつけられ、パルシオンごと横たわる。その食いしばる口元からは、噛み殺しきれない嗚咽が漏れた。
ビィーーーッ!
《そこまで! エスカルビー、勝ち抜け!》
わああああーーーーーっ!!
エスカルビーは大先輩への恩返しを成した。
(はあっ…はあっ…かはっ…!)
獲物を仕留め、雄雄しく大地に降り立ったルビー。
そのまま天に拳を突き上げるかと思いきや…
「エスカレイヤーさんっ!!」
「くっ…うう…!」
いま倒した最強の敵に、泣き出しそうに駆け寄る。
脳震盪に意識を奪われかけ、倒れ伏すも…全身の衝撃を振り切り、何とか再び起つエスカレイヤー。
「す…すみませんでしたっ!」
「何言ってるの、真剣勝負よ。
…あ〜あ、1勝1敗かあ。もう3勝は挙げないと先輩としてカッコつかないんだけど…ねっ。」
そのまま立ち上がり、エスカレイヤーはリングを後にする。
「あ〜っ、悔しいっ! 悔しいけど…!
こうなったらルビー、私以外に負けたら許さないからねっ!」
茶目っ気混じりの捨て台詞を…成長した後輩への称賛と、この後の健闘を祈るエールを残して。
……
…
ビィーーーッ!
《第2戦、戦士、入場完了よ。》
(…えっ?)
ルビーは慌ててリング中央を振り向くも、誰もいない…?
カアァーーーン!
ざくっ、びしゅっ! ずばあっ!!
「ぐう…うっ!? …くはあーーーっ!!」
ざわっ…!
ルビーしかいないはずのリング。
だが響くのは、ルビーを背後から切り裂く爪の奏でと、なすがまま斬られるルビーの悲鳴。
「なっ…何っ!? 何が起きてるの!?」
「むう…見えず、わからず。」
「案ずるな、拙者にも認識できない。」「然り。」
ライカはともかく、ルビーとも互角に戦えるイノリや、百戦錬磨のレジェンド閃忍・スバルとムツカにも。
ダイビートの精鋭・オーディエンス全員が…事態に狼狽え、眼前の有り様を疑う。
そこに確かにいるはずなのに、目には見えない新たな敵は…面白いようにルビーを左右から、下から上から、ときに正面からも撫で斬りにしていく。
ざしゅっ! ずしゃっ! すぱあっ!
「うっ…うわっ! あああっ!
…うわあああーーーーっっ!!」
初戦で消耗しきったルビー。
だが、休む間も無く次の地獄が門を開け…恐るべき不可視の門番が、ルビーを嬲りにかかっていた。
【続く】
作者です。第2章、お届けします。
今回のダイビート紅白戦では、絶対に「誰かをカッコ良く描くために、他の誰かをオトす描写はしない」つもりなのですが…上手くいっていなければ、筆者の未熟と不徳の致すところであります。
少なくとも僕にとっては、エスカレイヤーとエスカルビー、どちらも大好きで、どちらもカッコ良く描きたい気持ちです。そこに嘘偽りはありません。
※その観点からでも、他の視点からでも構いませんので、ご感想を賜れば次への反省材料に致します。
それでは、第3章・謎の敵(バレバレ)との第2戦にもご期待ください。