超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち   作:環 藍河

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第3章 拳よ、闇に届け! ルビーVS孤独の暗殺者

「ああーーっ! うぐっ、ぐふっ…!」

ざしゅっ、ずばっ、びしゅっ!

 

ルビーが志願した勝ち抜き特訓戦は、初戦のエスカレイヤーを辛くも打ち破り、迎えた第2戦。

しかしその対戦相手は目に見えず、ルビーは一方的に…闇討ちのごとく嬲られる。

リング中央では四方八方から滅多斬りに遭うルビーがただ独り、血しぶきを上げながら踊り続けていた。

 

「くうっ…、かはっ、はっ…!」

リング隅へ後ずさり、コーナーを背にするルビー。

「はあ…っ、はっ、はっ、はっ…」

警戒する方向を正面と上方に絞り込み、呼吸を整えながら敵を観察する。

(相手はダイビートの、私が知ってる戦士…。

認識阻害の能力を持つ…!)

 

 「ムダだよ。」

 (えっ…!?)

 

 がばっ、ぐぎっ、ぎゅううう……!

 

 「あっ、かはあっ、あああ~~っ!」

 

敵の手がかりを嗅ぎ取ろうと、闘志で前に踏み込み、よろけるように壁から離れた瞬間。

見えぬ敵はルビーの背中に飛び乗り、両脚をルビーの胴に回すと、そのまま両腕でルビーの左肩と首を極め、羽交い締めで落としにかかる。

 

 ぎりっ、ぎしいっ、ぐぐっ…!

「くはあっ! …ぐうう〜〜〜っ!!」

 

斬撃をこれでもかと食らい、肩も背中も脇腹も…ルビーは全身、至るところ既にずたずただった。

刻まれる猛獣の爪痕に、滲み、吹き出す血飛沫と冷や汗。

そして、続けざまに首に絡みつく追撃は…喉笛を噛みちぎるがごとき、鋭く獰猛な牙のひと噛み。

体中が酸素を求め、心臓を打ち鳴らし…、解き放たれようともがくルビーから、ごっそり体力と精神力をそぎ落とす。

 

(う…うあ…あっ…!)

 ずしゃっ。

 びくんっ…どくっ、どくんっ…!

 

遂にルビーの両膝が、冷たい床に堕ちる。

膝立ちのまま踏みこらえるも、意識が断続的に暗転し、もはや誇りの両脚も闘志を支えられない。

 

  ぐりっ。ぐぎゅっ。ごきっ。

 

それでも暗殺者は容赦しない。

ルビーがしぶとく振り絞るガッツを残らず断ち切ろうと、ヘッドロックでルビーの頸動脈を締め上げ、抵抗の意思を闇に呑み込む。

肩口から極められたルビーの左腕は、真っ直ぐに天に伸ばされ…神に救いを求めるように掌を開き、震える指を残らず伸ばすも、祈りは空しく。

 

 「お…おえっ…。」

 

唇の端からは、泡とも涎ともつかぬ苦悶が漏れ出す。歯を食いしばり、耐えに耐えるも…

 

 (あ…ああ〜…っ…)

 

仰け反らされる胴体で、首は更に斜め上に締め上げられ…視界は真上を仰ぐ。

ルビーの溢れるガッツも、もはやカクテルライトすら呑み込むほど深く吸い込まれ…

 

 (…あっ…。)

 

 遂に、闇に呑まれた。

 

……

 

「ダメだ…。ルビーさん、落ちてるよお…!」

「むう…これは、ルビーでも…?」

言葉少なに戦士の絶望を代弁するライカ。

もし自分があの戦場にあろうとも、ここからひっくり返すのは困難だと、ルビーの敗色濃厚をうそぶくイノリ。

 

「…まだだ。」「『えっ…?』」

「あの極限を知るルビーなら…まだ終わらない。終わるものか。」

 

若い閃忍に訓示するように、スバルが確信を呟く。

 

……

 

 (あ…っ…)

意識と無意識の狭間を、自我がたゆたう。

 (まっ…くらだ…。)

一面の夕闇にたたずむように、ふわりと自我がたゆたう。

 

 (強い…なあ…。)

姿も気配も全く見せない暗殺者。

ルビーの背中に飛び乗るほどの、小さな小さなサイレントキラーに翻弄され…まだ序盤のはずのバトル第2戦にして、もはや崖っぷちのルビー。

 

圧倒的劣勢で、反撃の糸口も掴めない。

それなのに。

 (…どうしてだろう。私…!)

締め上げられる苦しさ、為す術もない悔しさ。

でも…それ以上に。

 

 (…楽しい。

  私…わくわくしてる…!)

 

スパーリング相手には恵まれていると、ずっと思っていた。

秘めたパワーで一撃必殺の、リバースやイノリ。

一瞬のスピードで翻弄する、スバルやキリエル。

一挙手一投足が想定外、技巧派のナリカやムツカ。

そして、全てを備えたレジェンドたち…!

 

みんな、みんな個性豊かで、スパーリングはいつも新鮮な発見がある。この2年半、私だっていっぱい吸収して、いろんなタイプの敵に立ち向かえるようになった。

でも…この子のスタイルは、いつも手合わせする誰とも、全然違う。

身近に、ダイビートに…こんな戦士がいたんだ。

 

 (…負けたく、ないなあ…。)

 

どんな敵にも怯まない。崖っぷちでも諦めない。

そんな戦士に憧れ…自分もその高みに登りたい。

そんな一心で挑んだ、このエンドレスバトルだから。

 

そうだ…決めたんだ。

どんなに切り刻まれても。どんなにガッツをへし折られても。

こんな程度じゃ、終われない。

だって、私が目指すゴールは…もっと先なんだから…!!

 

……

 

 「…。…ま…。」

 ぐっ。ぐりっ…ぐぐぐぐぐぐうっ…!

 (う…うげっ!?)

 

「まあ…だ、だああああーーーーっ!!」

「ひっ…うわああああーーーっ!!」

  ぶおんっ…どごおおおっっ!!

 

小動物のような暗殺者がその短い左腕で極めた、ルビーの肩口。

上半身のトルソーを両脚と両腕でがっしり固めきった以上、パワーで勝るルビーでも、そうそう外せはしない。

それでもルビーが見つけた突破口。それは…。

 

締める両腕をこじ開けようとねじ込んできた自分の右腕を…敢えて外す。

首を護る最後の砦を外してでも、腰に左右から絡みつく両脚のロックを外す。

 

脳が酸素を失い、完全に失神するのが先か。

その前に暗殺者を振りほどけるか。

 

乾坤一擲のギャンブルは…ルビーのジャックポット。

意識が完全に締める腕に行っていたのも幸いし、蜘蛛絡みは呆気なくその糸をほどかれる。

下半身の支えを失った宙吊りの暗殺者は、ルビーのしなやかな上体の屈伸に吸い込まれ、270度反転しながら一本背負いで強化コンクリートの床に打ち付けられた。

 

「げぼおおっ!!…くっ…くそおっ…!」

小さな暗殺者は、辛うじて受け身で衝撃をいなし、間合いを離して体勢を整え直す。

 

  どおおおおおっっっ……!!!

 「っ!!」

 

絶体絶命、もうリタイアと思われたルビーの再起に、オーディエンスの誰もが歓喜する。

 

 (…っ、~~~っっ!)

 

ここでもう一度気配を消せば、引き続き半死半生のルビーに優位を取ったままだったはずの暗殺者は…一瞬だけ激昂し、我を失ったように見えた。

そして…ルビーに正対し、その姿を堂々とさらす。

 

 「もう…隠れる意味は無い。

 ルビー…最後くらいは見せてあげるよ。お前の亡骸を冥府の神に捧げる、地獄の番犬の姿を。」

 

微かに中二病を香らせるその口上に、場の誰もが…不可視のケルベロスの真名を胸に抱く。

 

一方。

 

 「…うげっ!!」

 「どうした、実況ライカさんっ…? …あっ。」

 

 どろっ…。(ううっ…!)

 

ヘッドロックをかけた右腕も、アームロックの左腕も、彼女の武器…ダガー(?)を握ったままだった。そのまま強引に背負い投げで払い飛ばした代償に、外れた右腕の軌道に入ったルビーの額と左のまぶたは切り裂かれ…視界が紅に染め抜かれる。

 

「せ…せっかく敵の尻尾を掴んだのにっ…!」

ライカが語るように、ルビーは再び暗殺者の姿を見失う。

 

「…否。」「へっ?」

「今のルビー殿に、視界の有無は関係ござらん。」

今度はムツカが断じる戦いの趨勢に、ライカは言葉を飲み込み、ルビーを再び見やる。

 

 (…すう〜っ…はあ〜っ…。ふう~っ…。)

 

地獄の番犬を…不可視の猛犬を、退治する。

ルビーは敢えて自らの視覚を封じるように両眼を綴じ…まぶたを伝う血の滝は流れるままに、気功の極意のように呼吸をやり、戦士の神経を五体に張り巡らせる。

 

陳腐な駆け引きの優劣で勝負が決まるなら、暗殺者は姑息なフェイントやフェイクでルビーを翻弄したかもしれない。

だが、なぜだろう。暗殺者はそれを良しとせず。

闇討ちが常の暗殺者が、クリーンファイトを求めて放つ一閃は、正面からの真っ向勝負だった。

 

 「闇に溺れろっ、ルビーいい!!」

 「やあああああっ!!」

 

 しゅっ…ばきいっ!!

 

……

 

 訪れた結末は、一撃。

 

 「がっ……」

 どごおっ! 「ぐふっ!」

 

 ずるずるずる…がくっ。

 

闇に疾走するツインダガーの斬撃より先に届く、ルビーの真っ直ぐな拳。

音速のカウンターの衝撃に、ゴムまりのように吹き飛ぶ暗殺者は…壁に抱かれてずり落ち、気絶する。

 

 ビィーーーッ!

 《そこまで! エスカルビー、2人抜き!》

 わああああーーーーーっ!!

 

 (はあっ…はあっ…はあっ…)

 …!!

 

逆転の一撃を打ち込んだルビーだが、ヘッドロックのダメージも加わり、息も絶え絶え。

だが、意識を戻すと…自らの一撃に倒れ伏す仲間に、血の気が引く。

 

 「こもりちゃん!」

 

 …ふらっ。(くっ…!!)

思わず駆け寄ろうと力を込めるも、脚がもつれ、体が意思に追いつかない。

代わりに、いの一番にこもりに寄り添う人影が一つ。

 

 「あっ…!!」

 にこっ。

 

 「こもりさんは、私が連れて行きます。ルビーさんは3戦目に集中してください。」

 

戦いの結末を知っていたかのように、こもりに誰より早く駆け寄っていた、くさりだった。

 

 …ぱちっ。

 ぱちっ。ぱちぱちぱち…

 

 …わあああああーーーーーーっっ!!!

 

ルビーをこんなにも苦しめ、後一歩まで追い込んだこもりの奮闘を、誰もが讃える。

体さえまともに動けば、ルビーさえも小さな勇者を拍手で見送っただろう。

万雷の拍手に包まれてのリングアウトを…こもりだけは知らないまま、くさりの腕の中で眠る。

 

……

 

 ビィーーーッ!

《第3戦、次の戦士…入場よ。》

 

 しゅっ…びたんっ。

「うっ…!」

 …ことっ。

「…あ、あれっ? これって…」

 

こもりを見送り、ステージに一人立ちすくむルビーに投げつけられた小箱。

「止血キット一式よ。使い方は、ルビーなら渡せばわかるってユユエルさんから聞いた。」

 

「えっ…どうして…?」

リングに上がった3人目の対戦相手は…敵であるルビーに塩を送る。

「ルールなんか知ったこっちゃ無いわ。戦えない敵を倒すのは…」

 

  じゃらっ…がしいっ!!

 

「このりるか様の正義に反するからよっ!!」

「り…りるかちゃんっ!?」

 

右手に軍配を、左手に鎖を。

外法天あらため、閃忍リルカがエスカルビーに宣戦布告。

 

「さあさあさあ、とっとと手当てしなさいよっ!

軍配が見えなくて私に負けたなんて、間抜けな言い訳させないんだからっ!!

そして末代まで語り継ぎなさいっ! このりるか様の慈悲深さと、ネオノロイ党の素晴らしさ!

何より、生まれ変わった閃忍リルカの恐ろしさをおおっ!!」

 

「…はい?」

 

「あーーーっはっはっはっ、はあーーあっ!

 はああーーっ、はっはっはご…、かぶっ…」

 

「…あ。」

 

「ぶふおっ!! げほっ! がぶっ! がはっ…がほおおっ!」

 

「た…たはは…!」

「わ…わらひゅなーーーっ!! …げほっ。」

…生まれ変わっても、土壇場でかむようだ。

 

……

 

「…よしっ。りるかちゃん、お待たせ…」

ルビーは止血を終え、りるかはむせ返りを落ち着かせ、あとは開始のブザーを…

 

  ぶんっ。…ごおおおおおおっ!

 「…えっ?」

 ずどおおおん! どごおおおおおおっ…!

 

…開始のブザーを待たず、軍配をひと扇ぎ。

ルビーの左半身を掠めたビームは、背後の壁をつんざき…超昂戦士の攻撃にも耐える隔壁を、瓦礫に変える。

 

「あ…ああっ…!?」

「不意打ちじゃないわ、デモンストレーションよ。

ルビー! こないだのタイマン勝負、まだ決着はついてないっ! 

覚悟なさいっ! あんたとあたし、どちらかが倒れるまでの、デスマッチだああーーーっ!」

「えっ…うええええーーっっ!?」

 

 

突如申し込まれた果たし合いに当惑しながらも。

 

…ごくっ。

(一撃でも喰らったら…全部もぎ取られる…!)

 

止血を終えたばかりのルビーの額を、代わりに冷や汗が伝う。

ルビーは固唾を飲みながら…次戦への覚悟を新たにした。

 

【続く】

 




筆者です。第3章をお届けしました。
何とかここまで最新話を毎日更新できております…明日はちとヤバいですが、な…何とか頑張ります(汗)。

「ルビー…私を倒しても、いずれ第2第3のこもりが…!」
「ククク…こもりはケルベロスの中でも最弱…(by姫路)」
…と言うかどうかは謎ですが、こもりを次鋒に(5人対戦とは限りませんけど)選んだトキサダの思惑は今後描きます。

そして中堅りるかの因縁の対決、さらにルビーを待ち受ける敵やいかに。
エスカルビーの戦いは、まだまだ終わらない!
…打ち切りフラグではなくホントに完結まで書きますので、次章にもご期待を賜れば幸いです。
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