超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち 作:環 藍河
不可視のケルベロス・こもりを辛くも倒し、ルビーが臨む特訓第3戦。
静かな闇討ちから始まった第2戦とはうってかわって、りるかの宣戦布告が続く。
「エスカルビー! あんたの正義を、私は認めないっ! 閃忍リルカとなった今も、それは揺らがない、あたしの信念なのっ!!」
「…りるかちゃん…!」
「このデスマッチで、あんたを完膚無きまでブチのめしてっ! あたしの信じる正義の形、あんたにわからせてやる!
ルビー! あたしが間違ってるっていうなら、
その拳で示してみなさい! できないならあんたの正義は、あたしに潰される程度のヤワな代物ってことよっ!!」
……
…
「だあああーーっ!! あいつっ、まだ懲りてなかったああああっ!?」
「むう…アルティメット粘着気質。」
外法天時代のりるかの挑戦を退け、今は共闘する2人だったが…ライカは呆れまじりに驚嘆、イノリは驚嘆まじりに嘆息。
かつて、灰崎瑠璃を外法天に変えた…世の理不尽と、のさばる偽善への憤怒。
(ダイビート…エスカルビー。
惨めに嘆く市民を傍観する、偽善者たち…!)
ネオノロイ党党首・外法天りるかの行動原理と、彼女を衝き動かす憎悪の源。それがダイビートであり、エスカルビーだった。
(だったら…私が実現してやる。
見て見ぬ振りを許さない、真の正義を!
この外法天が…ダイビートを、エスカルビーを成敗する!)
「しかるにあやつは…ルビー殿に襲いかかるも、結局はアメイズ殿とサファイア殿に制圧され、あるじ殿に力を奪われて、落ち延びたでござろう?」
「ええ、フツーはアレで終わりっスよ! あいつその後、リベンジマッチどころじゃなくなったし!」
りるかの正義は、堕天使カンザエルに心臓ごと引き千切られ、ノロイ復活の供物に奪われた。
その後、イノリにお手製心臓をねじ込まれ、トキサダのDチャージで脈を取り戻したりるかは、今は想破上弦衆の閃忍として、頭領トキサダのもと戦っている…。
「じゃあアレですか!? これってルビーさんの特訓第3戦に便乗した、あいつの泣きの1回!? 土下座もナシの!? 上から目線の!?」
「【閃忍に光堕ちしたからって、信念までダイビートに、エスカルビーに屈したわけじゃないわよー!】
…さしずめ、こんな心情であろうか。」
「イノリ…モノマネなら、も少し似せる意思を持とうか…?」
……
…
カアァーーーン!
「一撃必殺! 外道焼身爆破光線っ!!」
「わっ…わああああっ!?」
どごおおおおっ!!
ゴングを掻き消す最大火力の轟音で、ルビーの勝ち抜き特訓第3戦の火蓋が文字通り切って落とされる。
探りの小技も何もあったもんじゃない、いかにもりるからしい戦法。
「悪滅っ! 引導っ!! 成敗いっ!!!」
ぶおんっ! ぐおおっ! ぶんっ!
出鼻からゲージ無視の必殺技連打でごり押し。
「こぉらあーーーっ! 逃げるなっ、自称正義のヒーロー!」
「む…ムチャ言わないでっ…こんなのっ、まともにっ、受けたら…!」
2戦分のダメージを引きずり、這々の体でりるかのビーム連撃をかわすルビーだが…。
「たああっ!」
大振りの隙を縫って、反撃に打って出る。
距離を詰め、ビームを撃ちづらい間合いに入り、反撃のジャブを繰り出す。
「ふんっ!」
だっ…がしっ!
「あぐっ!!」
だが…りるかは近接戦闘を受けて立ち、軍配を盾代わりにルビーの拳を防ぐ。
「おりゃああっ!」
じゃらっ…がしいいっ!
「あ…っ!」
「それを待ってたのよっ!!」
軍配の柄から伸びる鎖を、ルビーの腕に一巻き。
そのまま引き込み…
「ちぇすとおおーーーーっっ!!」
「う…わあああーーーーっ!!」
ぶおんっ! ずどんっ!
「うぐううっ!!」
「もらっ…たあああーーっ!!」
引っこ抜くや否や、床に叩きつけ。
さらに大地に仰向けのルビー目がけて、フルスイングの軍配を斧のように打ち込む。
ごぐっ。「あああーーーーっ!!」
とっさに右にかわし、脳天かち割りこそ防いだものの…こもりに締め上げられたダメージが回避を鈍らせる。
躱しきれず、軍配は背後の床ごとルビーの左肩を撃つ。
至近距離が幸いし、必殺技ほどのパワーはなかったものの、左腕は限界に追い込まれる。
「ちっ…そのまま頭で喰らえば長引かせないのに…うおっ!?」
「だあああーーーっ!」「ぐぼっ…!」
右肩を支点に下半身を引き上げ、ルビーのロケットキックがりるかの下っ腹に炸裂。
どうにか馬乗りのりるかを引きはがし、起き上がる。
だが…
「こんん、のおおーーーっ!!」
戦略ほぼゼロ、頭に血が上ったりるかは…
どどどどどどどっ…ずどん。
「ぐふっ…!」
突進し、タックル同然にルビーに体当たり。
「止められる…もんかあああっ!!」
「う…うあっ…あああーーーーっ!」
だだだだだ…
ぐしゃっ!
「がっ…あはあーーー〜〜っ!!」
両足で踏ん張り、タックルに抗うルビー。
だがりるかはそのまま、ノーブレーキのダンプカーのごとく吶喊…!
ルビーの抵抗を馬力でねじ伏せ、そのまま淫力全開のスクラムで壁に叩きつけ…ルビーの五臓六腑をぺしゃんこに押し潰す。
「がはっ…ううっ…」
「もらったあああーーーっ!」
がしっ…ぎりっ、ぐぐぐっ!
「くはああっ! …あ…うああ〜っ!!」
とどめにりるかは、左手でルビーを喉輪で吊り上げる。改めてルビーの全身を藁人形のように壁に打ち据え、さらに右手の軍配を首筋へ。
押しては引き、ときにねじり上げ、のこぎりのようにルビーの喉笛を潰しにかかる…!
ぎしっ…ぐりっ、ごりごりっ…!
「くうっ…くああ〜〜っ!」
抵抗するルビーも辛うじて右手で軍配を止めるが、無理な体勢からのガードで、力がうまく掛からない。
首枷のように軍配に自由を奪われ、ルビーは壁に磔となる。
ぐりっ…ぐりぐりっ、ぐぐぐ~~っ…!!
「か…かはあっ…ああっ…!」
左肩の感覚は既に失われ、引きずられた全身は悲鳴を上げ…今やルビーの意思通りに動いてはくれない。
ハイネックのインナーごとルビーの細い首を絞め上げる喉輪と、左顎に喰い込む軍配。
絞首刑の執行、待ったなし…!
「どうしたあ、エスカルビー! やる気が無いなら、ハナから戦うなっ!!
これはデスマッチ、あたしはあんたをブッ潰すつもりって、言ってるでしょうが…!」
(て…手加減なんか、してないっ…。…でも…!)
ここまでルビーは、りるかに何一つまともに反撃できていない。
いつもなら大技をひらりとかわし、何度でも右へ左へ、拳を、蹴りを。…たとえ飢えた大熊であっても、ルビーなら削り抜き、たやすく仕留めるだろう…普段のコンディションならば。
だが、既にエスカレイヤーに全身縛り上げられ、こもりに切り刻まれ、自慢のフットワークをすり減らされたルビーには、いつもの戦法は不可能。
結果、躱しきれず捕まり、りるかのデタラメなパワーでねじ伏せられる。
左腕を壊され、いま首吊り台に架けられ…攻防のたびに濃くなる敗色。
…ぴくっ、びくんっ、…どくんっ。
(う…、…ううっ…、ぐうう〜〜っ!!)
ぐっ…くぐっ…!
痙攣する全身を奮い立たせ、奥歯を食いしばり、力なく下へ伸びる左腕になけなしの力を入れて…懸垂のように軍配を掴む。
軍配を持ち替え、つかの間の自由を得た右のグローブを静かに、喉輪でルビーを吊り上げるりるかの左手から…奥襟へ。
地に着かず震えるブーツを、左斜め下へありったけ伸ばし、反対の足首のパルシオンに祈りを込めて…
「やあああああっ!!」
「ごぼはあっ!!」
一瞬の怒濤が、静寂を破る。
瀕死のルビーは、震える右手で上半身をたぐり寄せ、左膝をりるかの急所に叩き込む。翠のオーラをまとった蹴撃は、パルシオンの爆発力をこれでもかと乗せたニーキック。
りるかの両胸の谷間をルビーの鍛え上げた蹴撃が捉え、心臓を真下から叩き潰した。
「あ…あがっ…!」
いかにノロイ由来の心臓とはいえ、超昂戦士の起死回生のキックをまともに受けては、ひとたまりもない。
ほんの数秒、白目を剥き泡を吹くりるかの、五体が、理性が、凍り付く。
「げっ…げほっ、かはっ…、くううっ…!」
その一瞬は、ルビーが処刑台から逃れ、消えかけていた闘志に再び炎を灯すには、十分であった。
「…行きますっ!」
だっ…がっ、がつっ、ずどっ!
「がっ! がはっ、あがあっ!
…げぼっ…!!」
ダッシュからの右パンチ、左右のキックはロー、ミドル。動けないりるかを流れる連打で確実に撃ち抜く、ルビーの反撃。
「たあああーーーっ!!」
がすっ!! 「ぎゃっ!!」
…どさっ。
最後は右のハイキック。
ストライクエスカレーションの口火を切る、ルビーの十八番が決まる。
連撃でぐらつくりるかは吹き飛ばされ、軍配ごと手足を明後日の方角に伸ばし、ダウン。
…が。
びきっ! ずきんずきんずきんっ!
「あああーーーっ!! あ…ぎっ…
ぐううう〜〜っ!!」
りるかよりも大きな、苦悶の悲鳴を上げたルビー。
全力の右キックを放つために力を込めた左腕が…こもりとりるかに痛めつけられた左腕が遂に泣き叫び、追撃を拒んでしまった。
よろっ…ぐらっ。
「う…ぐっ…、〜〜〜っ!!」
失神しそうな激痛に、歯を食いしばるルビーと。
ぐぐっ…ぐらっ、…がっ。
「……、…うう~~っ…!」
這い上がり、首を二度、三度と振り直し、正気を取り戻すりるか。
序盤の全開ブッ放しもあって、りるかも虫の息。
だが連戦の疲労蓄積に加え、りるかのパワーをその身で浴び続けたルビーも、気力でやっと立っていた。
「『はあ…っ、はあ…っ、はあ…っ…』」
双方が悟った。
次で決めないと、もう立てない。
……
…
「エスカ…、ルビい~~っ!!」
手負いの狂気を孕み、軍配にありったけの握力を込めて構え直す。
「…りるかちゃん…。」
「次でえっ、決着だあーーーっ!!
あたしの信念、あたしの正義!! 全部、全部でえっ!!
あんたの…エスカルビーのエセ正義っ、糺してやるうううううっっ!!!」
手負いの猛獣が獲物を威嚇するような気迫とオーラで、腹の底から放つ怒声。
だが、何故だろう。
…今は敵のはずなのに。偽善者と罵るほど、憎まれているのに。
真っすぐで、打算も駆け引きも無い、師匠ゆずりのむき出しのハートで叫ぶ、りるかの最後通牒。
ルビーは…りるかを憎めなかった。
「もうごちゃごちゃ考えないわっ! エスカルビー、あたしの全力で…一発殴らせろおおおおっっ!!」
「…ふふっ。」
「なっ…何よっ!」
「私も…タダじゃやられないっ! りるかちゃんの全力、私の全力で上回ってみせるっ!!」
…とはいえ、りるかの一発は山ひとつ吹き飛ばすナパーム爆弾級。喰らったらひとたまりもない。
更に。
(…はあっ…はあっ…くっ…!)
左腕をぶらりと落とし、ファイティングポーズもままならないまま、呼吸を整えるのが精一杯のルビー。
もはや、万事休すか。
…否。ルビーの闘志はまだ消えず、逆転の一手を求めて思考を巡らせる。絞め上げられた酸欠と、疼く左肩に邪魔されながら。
(…どうする。りるかちゃんがどう来ても、喰らえば私の負け。
そして…たとえ逃れても、こっちも一撃を外せば…やっぱり負けだっ…!
左がきかない私が…キックに体を乗せられない今の私は、何ができる…?)
闘争本能と冷静のせめぎ合いの果て、ルビーは…
…ざっ。
「なっ…!!」
…ひざまずき、両手の平を地に着ける。
一瞬、命乞いの降参かとも見て取れた、その姿勢は…
「…あっ…!」
「りるかちゃん…行くよっ!!」
陸上短距離走のクラウチング・スタートの姿勢で、ゴールをりるかと狙い定めて構えるルビー。
それは…りるかへの一騎打ち宣言。
(腕がダメになった、キックが全力で撃てなくなった私の、最大火力は…これだ。
この一撃…、誰にも…防がせはしないっ。
りるかちゃんにだって…殴り返させるもんかっ!!)
「じょ…っ、上等だあああーーーっ! エスカルビーっ、死んでも後悔するなあああっ!!」
逆上するりるかと対照的に…場の誰もが凍り付き、スタートの瞬間を見逃すまいとまばたきを止める。
(On your marks.)ごくっ…。
(Set…!)
…ばんっっ!!!
「だあああーーーっ!!」「ふんっ!!」
誰も鳴らさない号砲を、誰もが耳にしたかのように。
真紅の弾丸がダッシュ一閃、漆黒の断罪者が裁きの軍配を打ち下ろす。
その決着は…?
……
…
どごおおおおっ!!
「『〔《ぎゃあああああっ!?》〕』」
ハンマー投げのように吹き飛ぶ軍配が割り砕いたのは…ルビーの全身の骨ではなく、すっぽ抜けて命中した、ギャラリー席の防弾ガラス。
その裁きがルビーに届く、ほんの一瞬だけ先に。
スプリンターの捨て身の突撃は、処刑執行人のトルソーを捉えていた。
「ぐはああーーーーっっ!!」
…どしゃっ。
ぶっつけ本番、エスカルビー初挑戦のダッシュアタックは…同じクラウチングから繰り放つ神騎キリエルの必殺技、アブソリュート・ストライクにも負けない、最高の威力で敵に突き刺さった。
きりもみで吹き飛ばされ、大の字で床に叩きつけられるりるか。
一方、駆け抜けたルビーは、勝者の雄叫びのように輝く右足首のパルシオンと対照的に、静かに…ゴールに呆然とたたずむ。追撃する体力も精神力も、そこには残されていなかった。
ビィーーーッ!
《そこまで! エスカルビー、3人抜き!》
わああああーーーーーっ!!
(りるかちゃん…!)
精根尽き果て、駆け寄ることもできない。
それでも、執拗なまでのりるかの攻撃は、私への…エスカルビーへの憎悪の裏打ち。
うららから聞いた瑠璃の過去と、寄り添えないりるかの闇に、ルビーは哀しくうつむく。
「…ありがとう、エスカ…ルビー…。」
「…えっ?」
だが、誰よりもルビーを憎むはずの閃忍から返ってきたのは…照明灯を仰ぎ見ながらうそぶく、真逆の謝意。
「…うん。全力でぶっ飛ばしてくれて…ありがとう。
これで…吹っ切れるから。クソみたいな過去も、裏切られた屈辱も…、
優しくて、誰より正義を知っているあなたを逆恨みする、ひどいあたしも…!」
「…りるかちゃん…!!」
うららに庇われ、イノリとライカ、エスカチームに支えられ、日に日にダイビートに馴染んできたりるかは…。
それでも絡み付く過去に、道に苦しんでいた。
閃忍リルカの挑戦は…外法天に決別し、新たな自分を掴み取ろうとする、自分への挑戦だった。
……
…
ビィーーーッ!
《第4戦、次の戦士…入場よ。》
りるかを救護室へ搬送し、再びルビー独りきりとなったリング中央。
アナウンスに応えたはずの超昂戦士は…駆け上がったとも降り立ったともわからない、目が追いつかぬほどの早業で…ルビーに正対する。
しゅっ…ずざっ。
「ルビー、次は私が手合わせを所望する。」
「…サファイア!」
立ちはだかるは、デビュー戦からルビーと苦楽を共にし、一緒に最強を目指し続ける…最高のチームメイト。
ルビーが常に背中を預けてきた戦巧者は、敵に回せばダイビートで最も警戒すべき刺客。
その蒼き超昂戦士が、本気でルビーを倒そうと対峙する。
「…うん、行くよっ!」
限界をとっくに超えたルビーだが…怖れよりも気後れよりも、武者震いに身を打たれる。
エスカチーム同門対決が、幕を開ける。
筆者です。お盆休みを2日いただきましたが、コミケ参戦していたわけではございません。
キャラクターブック、早く通販始まらないかなあ…わくわく。
第3戦は遺恨試合っぽくなりましたが、バトルは単純明快、読者さまにスッキリ楽しんでいただけて…いたらいいですねえ。
りるかは、ルビーの強敵としてガチンコ勝負できる(かつファイティングスタイルが前の2人と棲み分ける)相手を考えるうち、自然に浮かんだ次第です。
瑠璃とのギャップ、うらら譲りの直情径行…今後の原作でも楽しみにしてます〜!
今回は(も)お立ち寄りありがとうございます!
第5章はしばしお時間いただきます。
のんびり時々チェックいただければ幸いです。