超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち   作:環 藍河

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第5章 ルビー沈黙! 封じられた最強の武器

どよっ…ざわざわっ…!

(エスカ・サファイアが、次の刺客…!)

(長官、ガチでルビーを倒すメンバーを組んでるってことかよ…!)

 

志願の勝ち抜き特訓も第4戦。ギャラリー席では対戦カードを目の当たりにした超昂戦士たちがヒートアップしていた。

ある者はルビーに一目置くライバルとして。

ある者は、自分の目標として、リスペクトの視線で。

立ち位置は違えど、場の誰もがルビーの勝利を信じて特訓バトルを見守ってきた。

 

だが、トキサダが選んだ次の相手は…ハルカやエクシールたちレジェンドとは違う意味で、ルビーにとって最大の障壁。

 

ルビーを超昂戦士デビューからいちばん近くで見続けてきた、自他ともに認める相棒。

ルビーの戦力も戦術も、胸の内も知り尽くした相手…エスカ・サファイア。

最悪の相性に、更に敗色濃厚となったルビーの絶体絶命を誰もが悟る。

 

ましてや、そのルビーは意識も朦朧とし、次のバトルに備えるも脚をふらつかせ…時折、激痛に呻く。

(はあっ…ううっ…、くっ…!)

緒戦でエスカレイヤーに1本取られた後はストレートで勝ち抜いてはいるものの…観衆の誰もがルビーの満身創痍ぶりに固唾を呑む。

特に、こもりの羽交い締めとりるかの軍配で痛めつけられた左腕のダメージがおびただしく、少し動かすだけでも顔をしかめてしまうルビー。

 

 

「リタイアは…しないのだな、ルビー。」

「…うん。正直、すっごく痛いけど…。

 むしろ、ここから、かな…!」

 

「巴懸りの行になぞらえて…か。」

「えっ…!」

「若頭領とハルカ様から聞いた。全く、これまでもお前の無茶には振り回されたが、今日のは断トツだぞ。」

 

「…ごめん。」

 

いつもなら「あははっ…」と苦笑いで返すだろうに、今のルビーにはそんな余裕も無い。だが、ここまでの剣ヶ峰に追い込まれても、ルビーはバトルを止めようとしない。

この特訓に賭けるルビーの思いが、ここまで固いとは。

 

 

 …すっ。

 

ルビーが相棒と認め、ルビーを最高の相棒と信じる超昂戦士…サファイアが、意を決して構える。

「お前が苦難の修行を望むなら、私は全身全霊で応えよう。

このエスカ・サファイア、これより修羅となる。

お前の求める極限の戦い…私がくれてやる!」

「うん…負けないよ!」

 

  カアァーーーン!

 

「たあああーーーーっ!!」「はあっ!」

びしいっ! がっ、がつっ、ばしっ!

「まだまだあっ!」「やあっ!」

 

初めの攻防はルビーの間合いから接近戦。

重傷と疲労困憊を重ねても、エスカルビーは百戦錬磨の超昂戦士。

右の拳の一撃は炎を宿し、連ねる蹴撃は大樹をも砕く威力。

 

(限界だって…やることはいつもと同じ…!

私に今できる全部を…ぶつけるんだ!)

威力だけなら、ベストコンディションのルビーが繰り出すナックル、打ち込むシュートの方が上かもしれない。

だが、残りわずかのバイタルで放つ一撃一撃は、ルビーの覚悟と決意を…魂の重みを込めた最終兵器。

 

 ひゅっ。(…っ!!)

 

撃ち抜くストレートは、的確にサファイアの顎…急所を仕留めようと繰り出された、ルビー渾身の攻撃。

 

(…これが手負いの…限界寸前のルビーの一撃なのか…!?)

 

とっさに躱すも、一撃喰らえば間違いなく意識を断ち切られ、リングに崩れ落ちただろう。

サファイアは改めて、ルビーの底なしのガッツに戦慄する。

 

「やああーーーっ!!」

「はああーーーっ!!!」

全ての拳が、脚が、好敵手の防御を上回るんだと、絶対に倒すんだと撃ち込まれる。

その全てをガードし、あるいは躱して反撃し。

その技の応酬は、まるで赤裸々な対話のように、互いの裸の本心をさらし合うように。

 

(受けてみろおっ!)(止めてみせるっ!)

 

無言のコミュニケーションのラリーに、観衆は誰もが言葉を失った。

場には打撃とガードとフットワークの音だけが反響し…2人だけのゾーンが支配する。

 

 

だが、終わらない対話は無い。

 

「ぐ…うあっ!!」(!!)

 

 しゅっ!…ばきいっ!

「きゃあああーーーっ!」

 

たった一瞬、集中力で消えていた肩の故障が甦った。この激痛が、ルビーの祈るような一撃を絡め取ってしまう。

そして、その好機を見逃すサファイアではない。心を鬼にし、全力で撃つ右拳のカウンターアタックは…ルビーの頬を正確に捉え、小さな体を仰け反らせて、虚空へ吹き飛ばす。

 

 どしゃっ。

「ぐふっ! …あっ…、あふっ…!」

 

互角の戦士ゆえに、運命を分けたのは累積ダメージだった。

ルビー、この連戦で2度目のダウン。

なまじ初戦の1敗の後に3連勝を重ねた分だけ、ここまで歯を食いしばって耐えてきた3戦分のダメージがずっしりとのし掛かる。

 

がくっ。…がくがくっ…! びくんっ…!

「くっ…あうっ、ぐうううう~~~っ!!」

這いつくばったまま肘を引き寄せ、膝を立て、体を大地から引き剥がそうともがくも…ルビーの四肢は生まれたての子鹿のように震え、ボディを支えられない。

 

 ざっ…がしっ。(っ!!)

 

「立て、ルビー。」「え…っ?」

 

 ぐいっ。「あ…あっ、ああ…っ…!」

 

背中からルビーの両肩を、真紅のカラーごとわしづかみにしたサファイアは…そのままルビーを引き起こし、直立させる。

それは、いつもの共闘で差し伸べる手とは違い…

 

「行くぞおおおおおーーーーーっっ!!」

 

 だっ…ばきいっ! がつっ! どすっ!

「ぐはああーーっっ!! ああっ!! がはっ!」

 

数歩後退したサファイアが大地を蹴り、たたずむルビーに畳み掛ける。

再びの右フック、拳を引き戻しての左アッパー、最後にみぞおちへの右ストレート…全て、ルビーの急所をえぐり抜く、超昂戦士の痛恨の拳。

途切れ途切れの意識と、闘志を支えられない五体をむき出しに…ルビーはサンドバッグのように、サファイアの猛攻すべてをその身で受け入れてしまった。

鷹の急襲のごとき連撃は、顎に、頬に、腹に…。

ルビーに残されたなけなしのスタミナとガッツを根こそぎ絞り出す。

「あ…げぼっ…ごふっ…!」

 

「はあああーーーっ!!」

 しゅっ…べきいっ!

「きゃあああああーーーーっ!!」

 

4連目のハイキックがフィールドに満月を描き、ルビーの左上半身を一刀両断。

華麗な軌跡は、サファイアの長身長脚を極限までしならせた一振り。その威力は重戦車の主砲に匹敵し…

 

 どごおおおおっ!! 

「く…がはあーーーっ!!」

 

エスカ・ルビーといえども、ガードすらできず。

吹き飛び、壁に叩きつけられるより他なかった。

 

「あぐうううっ…! …うっ!?」

背中に奔る激痛を耐え、ルビーは追撃に耐えようとサファイアに目を見やるも…

 

(はあ…っ…!)

 

必殺の凍気を練るサファイアに、ルビーは眼前に迫る最大の危機を悟る。

微かに目を瞑り、パルシオンから両手で結ぶ印にエナジーを送るサファイアが…満を持してその目を見開き、僅かに沈み込むと大地を蹴り、ルビーの遥か高みに舞い上がる。

 

「ブリザード・エスカレーション!」

両腕を広げ、翼が虚空をつんざく。

放たれた絶対零度の青い嵐は、避けることも防ぐことも許さず、磔のルビーを呑み込んだ。

 

「ああっ…きゃあああああーーーーーっ!!」

 

 びゅおおおおーーーっっ…!

 ぴきいんっ、ぴきっぴきっ、かきいいんっ…。

 

ルビーの両腕をグローブごと。両脚をブーツごと、パルシオンごと。凍気は鋼の鎖となり、ルビーを雁字搦めに縛り付ける。

今のルビーに、引きちぎる力も跳ね返す機動力も残っているはずがない。

たちまち嵐は戦士を螺旋に巻き上げ…遂にルビーは氷の柩に弔われた。

 

  ぱりいいいーーーーーんっ!

 「うあ…あっ…!!」…どしゃっ。

 

幽閉された氷柱ごと打ち砕かれ…ルビーは力なく崩れ落ち、大地に倒れ臥す。

 

 ビィーーーッ!

《エスカ・サファイア、1本先取!》

 

 

 …すたっ。

 

勝者は着地し、墜落した敗者を一瞥する。

 

(はあっ…はあっ…。)

 

サファイアの荒い呼吸は、心の疼き。

本人が望んだこととはいえ、エスカ・ルビーに…人類の存亡を賭け、数々の強敵を共に打ち破ってきた相棒に拳を向け、氷刃を振り下ろすこの戦いに、サファイアの胸は締め付けられる。

 

だからこそ、自分の最大の技を放った。

これで終わってくれれば。

もう立たないでくれれば。

…ルビーを倒したブリザード・エスカレーションに託したのは、そんな僅かな祈り。

 

一方、氷の柩から解き放たれたルビー。

凍えきった全身は麻痺し、感覚を無くした両腕両脚は疲労もダメージもとっくに限界を突破。

 

…それでも。

「くうっ…ううっ、ぐっ…!」

 

 ぎりっ…ぐぐぐっ…!

 

その瞳には爛々と翡翠の炎が灯っていた。

ボディは床に沈められたまま動かなくとも、魂は前へ、本能は勝利を求め。

サファイアの願い空しく、ルビーの眼差しは頑なに相棒を見上げ、さらなる戦いを促す。

 

(…いい瞳だ。)

たとえ何百度と打ち負かされようと、必ずその果てに一矢報いようとする、確固たる信念。

ルビーがどんな絶望からも未来を切り拓いてきた、その瞳が…今はサファイアを敵と見据える。

 

 がしっ…ぐいっ。(うっ…!)

 

サファイアは覚悟し、今度はルビーの胸元、ジュエルとカラーとインナーの合わさるポイントをねじり掴む。

そのままルビーを引きずり起こすと、直立させたルビーに正対し、間合いを取り、構えた。

 

(…はぁ…っ…。…はぁ…~っ…。…かふっ…。)

ルビーの全身から立ち上るオーラは、真正面から絶望の扉を打ち破ろうと、なおもサファイアを突き刺す。

膝も足腰も無言の悲鳴を上げ続け、肩も肘も重力に抗えないのに。

もう反撃どころか、防御のすべもないのに。

 

  カアァーーーン!

 

 たたたたたたたっ…「はあああっ!」

 

 しゅっ。

 

開始のゴングと同時に、瞬速の青き疾風が再び獲物に襲い掛かり…ルビーの眉間めがけて右の正拳を放つ。

 

 ぴたっ。(うっ…?!)

 

サファイアは、狙い通り拳を止める。

あと数センチ打ち抜けば、確実にルビーを宙に舞わせ、2本目を獲っていただろう。

だが、ガードの腕も上がらないルビーは、最後の一瞬までサファイアの拳を両眼に捉え、瞬きも身じろぎもしない。

たとえ顔面を潰されようと、全身を氷河の奥底に沈められようと、ルビーの心は砕けない。不屈の精神は揺るぎなく、戦士を何度でも立ち向かわせる。

 

……

 

「ルビーいいいっ!! 黙って突っ立ってんじゃないわよーーーっ!!

このくらいの死闘、お姉さまは…エスカレイヤーは何度でも踏み越えてきたんだからあっ!!」

 

「雪乃…泣いちゃダメよ。しっかり観ましょう…!」

「琴音さま…だって、ルビーさんが…あのルビーさんが、こんなにぼろぼろなんて…!」

 

「ルビー様あああっ! 自分で言い出した特訓で、リタイアなんて許しませんわあっ! 貴女をどちゃくそ全殺しにするのはこの私…ビートノーブル・カノン以外には、あり得ませんことよおおおっ!!」

(心を読まなくてもわかるわ…これがカノちゃんの精一杯の、ルビー様へのエール…!)

 

ギャラリー席では、サファイアに手も足も出ないルビーの姿に絶句していた超昂戦士たちが、誰からともなく堰を切ったように湧き上がる思いを絞り出す。

ルビーを奮い立たせようと、活を入れる者も。

ルビーのいま在る絶望に自らも身を裂かれ、それでも諦めない背中に嗚咽する者も。

誰もがルビーの一挙手一投足に目を奪われ、衝き上げる感情を抑えられない。

 

「バ…バカばっかだあ…!」

「ライカ…?」

「見てるあたしらもバカ! 

あんなルビーさんをまだブチのめそうとするヒビっさんはもっとバカ!

でも…ぼろ雑巾でもまだ諦めないルビーさんは…死ななきゃ治らない大バカだあああーーーっ!!」

「おお…ライカの雄たけび…!」

イノリが驚愕するほど、平静を失うライカ。

 

「…然り。ならばライカ。我ら阿呆3人、決着まで刹那たりとも見逃さず、ルビー殿とサファイア殿の戦、見届けようぞ。」

 

ムツカは看破していた。

(普段なら斜に構え、『うえ〜っ、無いわあ…』とか毒づくライカが…。)

このルビーの死闘は、いつものライカがこぼすような皮肉や冷笑で語るような、安いものではない。

ライカらしくもない怒気を孕んだ叫びは、この一戦の価値を正しく痛感しているからこそだった。

 

……

 

「私がどんなに打ちのめそうと、お前はこの戦いを止めないのだな。」

(……。)

サファイアの問いかけに、たたずみ、呼吸も精一杯のルビーは語らず…しかしその瞳に宿す光で、ネバーギブアップの強い意志を伝える。

 

「…わかった。ルビー。

ならば、その底なしのガッツ…封じさせてもらおう。」

 

 …ざわっ…!!

 

歩み寄るサファイアが、再び右手で印を結ぶ。

練った気を込めた2本の指を、ゆっくりルビーの額に乗せ…

「あ…ああ…っ…!」

注ぎ込まれるサファイアの念が、ルビーの心を揺り動かす。僅かなさざ波が共振を呼び、瞬く間に嵐に、津波になり…。

頑なに信じる希望を、未来を、勝利を…強靭なルビーの意思を、その特異な力で揺り動かす。

 

「…喝あーーーーつっ!!」

 

 (ぱきいーーーーーんっ!!)

 

ルビーの内面で、クリスタルが弾け、砕け散る。

 

 

 (まだだっ…!)《否。》

 (諦めない…!)《…否。》

 (負けない…!)

 《…否っ、否っ、否あああーーーっ!!》

 

 (…えっ…?)

 

力が、入らない。

心の炎が、萎れ、くすぶる。

ルビーを奮い立たせてきた、どんな逆境でもはね退けてきた無尽蔵の闘志が。

何度振り絞ろうとも、再点火を試みようとも、全て即座に打ち砕かれ、絶望に突き落とされる。

 

 (あ…ああ…っ…!?

 どうして…私…!)

 

 《…勝てない。》(…いや…だっ…!)

 《…無理だ…。》(そんな…っ…!)

 《立てない…!》(違う…ちが…っ…!)

 

信じる希望が失われた、がらんどうの心に…

絶望が代わりに巣食い、瞬く間に侵略する。

どんなに否定しても、追い払おうと試みても、ルビーは闇の支配に抗えない。

 

 《エスカ・ルビーは…もう終わり…。》

 《ガッツを…希望を…闘志を燃やせない…》

 《私に…勝利は無い…!》

 

 (そ…そんな…っ…!?)

 

……

ムツカが独りごちる。

「…断絶の力に、斯様な使い方があろうとは…!」

「…どういうこと?」

「…っ!! そうか!!

接現力は、人が存在を信じる気持ち!

それを消せる断絶の力なら…ルビーさんの、勝利を信じる闘志にも干渉できるってこと…!」

 

断絶の力。

それはエスカ・サファイアが死闘の中で覚醒させた、幻魔が自らを実存せしめる力…接現力を打ち砕く、究極の意志の力。

サファイアはオルタナスタイン打倒後も、次なる幻魔やノロイとの戦いに備え、日々の飽くなき鍛錬で自らの心技体を磨き続け、遂に断絶の力を、人の心さえ支配しうる領域にまで練り上げていた。

だが…遂に至った境地の力を、真っ先にルビーに使うことになろうとは。

 

「そんな力で心を縛られたら…!」

「ああ、今のルビー殿は…サファイア殿に闘志を全て封じられ、蛇に睨まれた蛙も同然…!」

一を聞いて十を知るライカの明晰さにも感服しながら、ムツカは戦いの大勢が決したことを確信する。

 

 

 ざっ。

(ひっ…!)

本能が打ち鳴らす警鐘に、ルビーはもはや抗えない。

ふらふらの脚と、ファイティングポーズさえ取れない腕と…何よりも、希望を断たれた、ずたぼろの心で…。

エスカ・サファイアに…立ち向かうなんて…!

 

がちっ…かちかちかちっ…!

(ああっ…ああ…っ…!)

体の隅々まで激痛に支配され、心の奥底まで悲観に占拠されたエスカ・ルビーは…

畏怖と絶望に全てを委ね、奥歯の震えを噛み殺すこともできなかった。

 

(せめて…ひと息に。)

 

 しゅっ。

「……っ!?」

 

ルビーの視界から、絶望を注ぐ青き戦士が、消えた。

首も動かせず、ましてや脚さばきもできず、目で追うこともできなかった。

 

 どすっ。

「かはあああーーーっ!?」

 

列車事故かと間違うほどの衝撃が、背中を襲う。

肺と腹と口から、全ての呼気がルビーから絞り出され…前のめりに吹き飛ばされる。

 

 どしゃっ。がすっ。ごろっ…ぐしゃっ。

「ぐふっ…!」

 

川に投じた石が、水面に弾けて飛び、沈むように。

ルビーのボディは二度、三度と地べたを跳ね、飛んでは転がりを繰り返し…

最後に、壁に頭から真っ直ぐ叩きつけられ、ずるずると轟沈する。

 

 ビィーーーッ!

《エスカ・サファイア、1本!》

 

無慈悲なAIレフェリーが、サファイアの連勝を告げる。

ルビーの背中を取り、忍びの体術に超昂戦士のD2エナジーを上乗せした瞬歩で放った、サファイアの全力の当て身が決まった。

選んだフィニッシュブローは、せめて、友の意識を一瞬で刈り取り、苦しまず勝負を決めるための、慈悲の一撃だった。

 

(もう立つな、ルビー…!)

体幹で残心を支え、姿勢を正しながら、潰れて崩れ落ちたルビーを祈るように見据えるサファイア。

 

……

 

かすれる意識で、今起きた事態の理解も半ばのまま、ルビーは全力のサファイアに打ちのめされ、再びリングに横たわる。

 

(私、もう…

 ダメ…なのかな…?)

 

瞳の炎は消し炭の黒に堕ち、再起の兆しは…もはや望めず。

ルビーを最強戦士たらしめてきた、ガッツと折れない心も、既に奪われた。

ルビーの完全敗北、もはや確実か…。

 

(…絶望…か…。)

精も根も尽き果て、僅かに残されたADDDのD2エナジーでバイタルを繋ぐだけのルビー。

 

 

…しかし。

 

(きっとあの日…あの人も…)

 

ルビーの朧の心によぎったのは…今なお追い続ける、始まりの戦士の姿。

その背中にルビーが見出すのは、やはり絶望か、それとも一筋の希望か…?

 

【続く】

 

 




作者です。間に祝1000日を挟んだとは言え、2週間以上の放置となりご迷惑をおかけしました。
でも…次も時間かかりそうですので気長にお待ちを(陳謝)。
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